【感想・ネタバレ】カラヴィンカのレビュー

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Posted by ブクログ

遠田潤子さんは、登場人物を絶望の淵に陥れるのが絶妙に上手い作家さんですが、この作品はその中でも最も強烈なインパクトのある物語でした。

主人公の売れないギタリスト、青鹿多聞のところへ歌詞のない旋律を歌う容貌のすばらしく美しい歌手の実菓子から自伝のインタビューの相手になって欲しいと指名の電話がかかってきます。
多聞と兄の不動は丹羽谷村の「藤屋」と呼ばれる旧家の息子で、不動は一年三カ月前に亡くなっています。
実菓子は同じ村の旧家「斧屋」の娘で不動の妻であり、その前は多聞と不動の父の青鹿馨の妻でした。

インタビューの内容は実菓子と不動と多聞の兄弟が実菓子の母の鏡子が父の馨の妾となって一緒に暮らし始めた、子供の頃から始まります。
鏡子は派手好き男好きな女性で、兄弟の母の奈津子は前半は地味で、体の弱い兄の不動ばかり可愛がり、世話をする耐え忍ぶ女性として描かれています。
そして鏡子は家を出て行き、奈津子も離婚して二人を置いて家を出ます。
父の馨は実菓子が16歳になるとすぐに結婚するのですが、新婚初夜に亡くなります。
その後の物語も多聞のインタビューによって語られますが、意外にも離婚して出て行った奈津子がキーマンとなります。

次に直系姻族間の婚姻の禁止により事実婚をした不動と実菓子。なぜ不動は死んだのか…。
そして多聞が実菓子を避けようとする本当の理由とは…。
たくさんの謎が後半一気に解き明かされます。
二つの事件の嘘とは一体何なのか。

遠田さんの初期の作品の傑作だと思いました。
小学生だった多聞と実菓子が『ごんぎつね』の暗唱をする場面が唯一ほっとする場面でした。

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2021年03月22日

Posted by ブクログ

旧家特有の深い闇を表すかのような歪な家族のカタチを描いた本作は目を覆いたくなるぐらいのキツさでしたがぐいぐいと引き込まれていく自分を抑えきれませんでした。後半からの伏線回収はまるで寄木細工のようで綺麗に騙されましたが悪い気はしませんでした。

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2020年04月05日

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彼女の本を読むのは2冊め。

1冊目の「雪の鉄樹」では、思わず涙があふれましたが、

今回は、読み終えた後に、ほぅ~。。。というため息に似た感動が。。。



歌詞のない旋律を母音のみで歌う人気歌手、実菓子。

彼女の自伝インタビューをすることになった、ギタリストの青島多聞。

2人は幼い頃、同じ家で育ち、

さらに、実菓子の夫は、多聞の亡兄だった。。。



読み初めて、多聞が彼女を避けているのがわかり、

過去に、何か複雑な問題があったことがわかってくる。

それでも、断れないインタビューの仕事をこなそうとするのだが、

そこで語られる、おぞましく悲しい出来事に、驚愕する。。。





現代の物語なのに、昭和初期のような、

家と家の対立や、村のしきたりみたいなものに翻弄されて、

まるで横溝正史の世界みたいに、暗く、おどろおどろしい物語で、

私好みで、どんどんのめり込めた。



そして、これで終わりか。。。と思うところで、意外な人物が登場し、

これでもかというくらい、てんこ盛りで、



すごい物語だった。。。

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2018年01月22日

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あまりに凄絶な、愛憎渦巻く家族の物語。いわくありげな人間関係が少しずつ小出しに語られるので、それに引っ張られて読む手は止まらず。どろどろしてひどい物語なのに、それでもぐいぐい惹きつけられて一気読みでした。そして実はミステリ……だったのだけれど。凄まじいまでの物語に引き込まれるあまり、どのあたりが事件であり謎であったのか全然気づかなかった! 愕然としてしまいました。
登場人物にどうも醜悪な人間が多くて、えげつない物語ではあったのだけれど。読後感はそう悪くないし、印象としては美しい物語という気がしました。しかし実菓子の願いがそういうものだったとは……それもまた、あまりに凄絶。「幸せ」という言葉の重みを感じさせられました。

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2018年01月06日

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ネタバレ

まるで昭和初期を舞台にしたような過去話とドロドロの人間関係が、読んでいて鬱な気分にさせてくれます。重苦しくて、晴れ晴れとした気持ちになる内容ではないのですが、じっくりと一言一句漏らさずに読み通したいと思わせる求心力にも似た力を作品から感じ、没頭して読んでいました。

序盤、不動の死の原因とされている実菓子の存在とその態度に、多聞と同じく彼女に対する苛立ちを覚えました。しかし過去の話を読み進めていくと、虐待に起因する「自分に対する興味のなさ」に基づく一連の言動なのかと思い、少しずつ印象が変わっていきました。

多聞も名家の次男坊(かつ、終盤で明らかになるある要因から?)のため、兄の影で存在をないがしろにされながら成長していました。実菓子とは憎み合っていましたが、私から見れば似た者同士のようにも思えます。

また、実菓子は母音のみで歌い上げるヴォカリーズの歌い手という設定ですが、これは過去に助けを呼びたい時に「あーあーあーで良いから(叫べ)」と言われたことが何か関係しているのでしょうか。

ヴォカリーズの収録時、そばにいる多聞に対してずっと「助けて」と叫んでいた? あるいは、偏見なく普通の女の子として私を見て欲しいという叫び?

こうした、節々の設定から人物の思いや関係性の想像が止まらなくなる(解釈が正しいかは別としてですが(汗))のが、遠田潤子作品の魅力の一つと(あくまで個人的にですが)思っています。本作は今まで読んだ中で一番その妄想が掻き立てられ、最も興味深く読むことができた作品でした。

ただ、ごんぎつねが多聞と実菓子の関係を暗喩している点は……それを連想させる結末はあまり心に響きませんでした。けれど、実菓子にとって多聞と音楽を綴ったことが「バケツ」ではなく「人」として生きている実感が得られた唯一の時間で、多聞のギターがその象徴だったのかも? と思うと、多聞のギターを買い戻していたという行動がとても感動的なものに思えてきます。

ハッピーエンドというには多聞と実菓子はあまりに多くのものを失いすぎましたが、ゼロからのリスタートを予感させられるラストは、あとがきにもありますが清々しさを感じました。最後の二人の姿が「雪の鉄樹」のラストシーンと重なり、それを読んだ時の気持ちも思い出し、一層感慨深い心境になりました。

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2017年11月22日

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なるほど、カリョウビンガから取られたタイトルなんですね。それにしても相変わらず凄い筆力で、読み始めた途端、求心力が半端ないす。そして今度も、やっぱり根底にあるのは贖罪。でもマンネリ感はなくて、新鮮な気持ちで楽しめます。同時期に発売になった単行本の方も気になる~。文庫化を待たずに買っちゃうか。

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2017年10月30日

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歌詞のない旋律を母音のみで歌う「ヴォカリーズ」の歌手である実菓子。
彼女の自伝のインタビュー相手として選ばれたのは青鹿多聞。

何か妖しさを漂わす実菓子に対して拒絶する多聞。

2人は、幼い頃同じ家で育ったのだが…
インタビューが、進むにつれて明らかになっていく多聞さえも知らなかった自分の出生の秘密
実菓子の行方不明となっていた母の最期。

終盤に進むにつれて明らかになっていく事実に唖然となる。
悍ましさだけではなく、凄絶な愛憎劇である。

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2022年01月17日

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藤屋の次男・多聞が主人公で過去を語る
どんな展開になるのかわからず読み進むしかない
斧屋の実菓子との関係も徐々にわかりだし
そして先が気になりとまらなくなる
そんな感じでした
終盤の展開もあり楽しめました

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2021年10月17日

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重層的に入り組み、要約するのも簡単ではない悲劇に、慈しみ合っている多聞・不動・実菓子の三人翻弄されて、傷つけ合うことになるのは、いつもの通り。けれども敵役からの非難されるのだが、この三人、ホントに自分たちだけで完結していて、いい意味でも悪い意味でも、他人に興味がない。抜き差しならない悲劇は、実は彼らの外側で展開していたりする。

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2021年06月30日

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まんま解説のとおり、読まされてしまった。
遠田作品は重くてしんどくなるので、ここのところ敬遠してたけど、何故かまた読んでしまった。笑
やっぱり重くてしんどい話だったけど、あれよあれよと読まされて、なんだかんだで今後も気になる作家さんの一人だなと。
ごんぎつね、何十年ぶりかに思い出したらせつなくなった

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2020年06月13日

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『鳴いて血を吐く』の改題とのこと。

であれば、体力のある時に再読するか…

感想の言葉を書けないまま、だけれど星は4つ。
魔的な力がある。

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2020年03月18日

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遠田潤子の3冊目。
雪の鉄樹 アンチェルの蝶と評判につられてつい読んでは後悔が続き 今回ほんとに迷ったけど また読んじゃった。
だって 面白くないわけじゃないし 上手いのは間違いないんだもの。ただ おもーくて くらーくて ヘトヘトになるし 読後感どんよりになるだけで 笑。
ドロドロした血 家族 狂気 憎しみ 恨み まさに遠田ワールド。なにが この人にこういう話ばっかり書かせるのかなぁ 笑。
それでも3冊の中では カラヴィンカが1番好きかも。
読後感が1番軽めだし。
またきっと次も読むな きっと 笑。

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2019年01月01日

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アンチェルの蝶も面白かったがこちらも甲乙つけ難い。錯そうする情と思惑があらゆる人々を不幸にしていく。ハッピーエンドとはいかないがあの二人のこれからに救いが見えたのが良かった。
あらすじ(背表紙より)
歌詞のない旋律を母音のみで歌う「ヴォカリーズ」の歌手として絶大な人気を誇る実菓子。彼女の自伝のインタビューの相手として選ばれたのは、売れないギタリストの青鹿多聞だった。なぜ実菓子は、多聞を指名したのか―2人は幼い頃同じ家で育ち、さらに実菓子の夫は、多聞の亡兄だったからだ。インタビューが進むにつれ、明らかになっていく、おぞましく哀しい出来事。その真実が解き明かされた時、新たな事件が起きる。

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2018年10月08日

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ネタバレ

重い。閉鎖的な村で、封建的な旧家が2軒。

大人たちの最低な振る舞いにむかむかする。でも、読むのをやめられない。

 多聞はちょっとお人好しすぎやしないか。
 

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2018年08月18日

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ドロドロした濃ゆい家族関係を描いた救いのない物語。
家族というのは、ほんの僅かな人数の集まりに過ぎないのに、1人の人間を簡単に殺してしまえる恐ろしい装置です。

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2018年03月25日

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不幸な人生を書かせたら、この作者の右に出る物はいないというレベル。
因習にとらわれたド田舎の名家で繰り広げられるドロドロの愛憎劇(回想だが)。
直前に読んだ遠田作品が「アンチェルの蝶」だったので、それと比べればまだ救いは残っている。

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2018年03月10日

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ネタバレ

重い、やはり。
最も身近で最も濃密なコミュニティーである家族というユニットだからこそ渦巻き、振り払うことが難しい厄介な感情の数々。
村という閉鎖空間を舞台に、その陰鬱さと対照的に今作も著者の筆は冴え渡っている。
個人的には、最後のドンパチの部分はちょっと作品の格を損なっている気がして蛇足かなと思ったし、嘘の応酬こそが核とは分かりながらもその繰り返しがややくどいかな、とも感じた。

「ごんぎつね」があのような形でラストに活きてくるところはまさに遠田潤子氏の真骨頂であり、さすがの腕力だ。

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2018年03月02日

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本屋さんで見かけて手に取った本です。
内容がとてもダークで不愉快なんだけれど、読むのをやめることができない!ああもう!すごく不愉快!いやなことばっかり起こる!でも先が知りたい!ああああああ!
・・っていう感じでした。
すごく不愉快な内容なのに、読むのをほっぽり出せないというのは、すごいですよ。なんて読ませる本なんだろう・・・と呆れながらも読み終えて、この著者は、他にはどんな小説があるんだろうかと思ってしまいました。

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2017年11月23日

hnh

購入済み

タイトル変更

以前読んだ本でしたが、タイトル変わったため、未読だと思い、購入してしまいました。
2回目ですが、面白かったです。

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2023年07月28日

Posted by ブクログ

歌詞のない旋律を母音のみで歌う歌手・実菓子の自伝インタビューに指名された青鹿多聞。二人の繋がりは哀しくも壮絶な過去にあった。徐々に明らかになる真実が解き明かされた時、新たな事件が起こる。
ちょうど映画の横溝正史・金田一耕助シリーズを再見していたので、本作の没落した旧家の雰囲気や因習、呪われた血の因縁やタブー等の雰囲気にはまった。ただし、登場人物全員に感情移入出来ないのは、読み進めるのが辛い。

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2020年08月09日

Posted by ブクログ

遠田さんは、不幸を書かせたら天下一品だと思うが、この本はちょっとやりすぎな感じがした。
遠田作品は大筋が決まっていて、いろんなアレンジで読ませてくれるストーリーが多い。
新鮮さはないのだ中毒性があって、わかっているのについつい手に取って読んでしまう。そしていつも、読み終えてがっくりと疲れてしまう…。

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2019年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

田舎の村の二大旧家、藤屋と斧屋。後者は廃れ、前者は健在。斧屋に生まれた実菓子が藤屋を狂わす。人気歌手となった彼女にインタビューすることになった藤屋の多聞。父親も兄も実菓子に殺されたようなもの。しかし本当にそうなのか。

彼女はそんなに酷い女ですか。最低の女ですか。凄まじい美貌の不幸な少女。男たちが勝手に、彼女をわかってやれるのは自分だけだと思い込んでいたように感じます。彼女は思わせぶりなことなんて何もしていない。冷めた目をしているようでいて、周囲のことをよく見ている。彼女は人をかばって嘘をつく。みんな彼女に救われていたのに、気づかない。結局、相手のことをいちばん考えていたのは彼女なのでは。

『雪の鉄樹』と『アンチェルの蝶』と同じくらい重くて暗いけど、その2作ほどの圧倒的な余韻はありません。信頼していた人が急に変わる様子など、ついていけない部分があります。それでも、たったひと言、彼女が聞きたかった言葉が明らかになったときはたまらない。

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2018年11月20日

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8月-2。3.5点。
ギタリストの主人公。父の愛人の娘と、デュオを組む。
田舎町の、家長の父・兄・主人公、母。父の愛人は同じ街のもうひとつの名家の娘。
ドロドロとした人間ドラマ。ラストの怒濤の展開が、おもしろい。
こういうの書かせると、上手い作家だ。

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2018年08月03日

Posted by ブクログ

解説にもあったけれど「どういうこと?」と思って読み進めるうちに、読まずにはいられなくなっている。遠田潤子の技倆だなあと思う。
なんていうか、ドロドロしすぎて非現実的にも感じてしまったけれど。
最後、上手くまとめたようでいて、個人的には生理的嫌悪が拭えなかったな。

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2018年07月20日

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アンチェルの蝶に続き、二作目の遠田潤子さん作品。相変わらず不幸オンパレードな登場人物と終盤でこれでもか!と回収されまくる伏線。正直もうちょっと息抜きが欲しいかも。しかし、田舎の名家というのはこうも閉塞的で雁字搦めなのか…。

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2018年06月20日

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恋愛?ミステリー?ある意味ファンタジーな作品。

すべての登場人物が嘘をつきまくっている中、主人公てある多聞だけがすべての嘘を知らずにいて、村の人々は事実を知りつつ隠して暮らすし、都会で知り合ったはずのマネージャーたちも実は関係あるという、クローズドな関係性を描いたらうまい作家だな、という印象。

因習に囚われた田舎の村に生まれたことの悲劇が、ひとつの家族を通じてドロリと暗くひたすら書かれている。

最後の最後、主人公の多聞と実菓子がお互いの思いを吐き出すシーンは、過去の因習から解き放たれるクライマックスなのだが、そこでひたすら「バケツ」「バケツ」と繰り返しているのがなんだか滑稽であった。
なんかもうちょっとなかったのか。

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2018年01月04日

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ネタバレ

何から何までひどい。どのエピソードも不快ってのが凄いです。最後のほうで、生い立ちから、仕方なかったって語るけど、それさえも不快。

あまりにひどくて、早く幸せな現実を見せてやってくれと思いながら、読み進めた本です。

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2017年12月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

201711/すっかりお気に入りの一人となった遠田潤子。改題前の「鳴いて血を吐く」ってのもストレートでいいし、新題の「カラヴィンカ」もいい。後半、吉井や及川のくだりは「だとしてもそこまで?」と強引に思えたけど、やはり一気読みさせる吸引力は見事。この独特の遠田ワールド、佐々木丸美とか好きな人はハマれると思う。

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2017年11月05日

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