あらすじ
妻・唯を殺害した罪で服役後、37歳の吉川森二は他人との交流を拒み孤独に生きることを決めた。何より大切だった唯とその兄の圭介との絆は失われ、一人娘の冬香からも激しく糾弾される森二を、新たな試練が次々と見舞う。オブリヴィオン=忘却と赦し。赦されざる罪を犯した男に、救済は訪れるのか。闇の中でもがき生きる人間の痛みと希望を描く、傑作長編。
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森二は最初から破滅の匂いが漂っていた。(結果は予想外でホッとしました)
ボタンの掛け違いで森二が妻 唯を殺してしまうのだが、冬香の実の父親が誰かということを考えると、やり切れない事件ではあった。
森二含めた残された家族が少しでも幸せになることを望みます。
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どうしようもない暗さにどんどん気持ちが沈むけれど、救いのないまま終わることはないのが遠田潤子だとわかっているから、その一条のひかり見たさに最後まで。
ある特殊な才能のせいでギャンブル狂の父親を死なせてしまった主人公。ようやく掴んだ幸せも自らの手で終わらせてしまう。出所後の彼を待っていたのは、自分に敵意剥き出しの娘と、切れないしがらみ。
非科学的なその才能が遠田作品の中にあっては異質に感じられましたが、特異な才能のせいで虐待を受ける子どもはいるかもしれません。
最初と最後では実兄を見る目が180度変わる。泣いた。
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森二が唯を殺めた理由、圭介と唯の関係、冬香の本当の父親は誰なのか。
そうした過去の謎に加え、森二に絡んでくる沙羅、光一などとの絡みがどうなっていくのかなど、気になる要素が満載でページをめくる指を止められずに一気読み。更に、森二たちの過去が明らかになるに従い、自分が森二にどんどん感情移入していきました。
そのため、森二がふいに幸せだったころを思い出すたびに、現状の辛い状況とのギャップの激しさにこっちまで辛い気持ちになってしまったりも…… 森二や圭介、唯たちだけでなく、最初は嫌なヤツという印象だった光一にも、その過去を知った後は同情する気持ちが芽生えたりもしました。
ここまで人物たちに感情移入させられた本は初めてかもというくらい、のめり込んで読んだかもしれません。人物描写だけでなく、過去の真相、とりわけ圭介と唯の関係には心底驚かされましたし、人物相関の妙などあらゆる点で素晴らしい作品でした。
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始めはすごく冷たい印象の小説だったが、読み終わったときは温かい気持ちになった。
全部がハッピーエンドではなかったが、それが心地よかった。
遠田さんの本を読むのは初めてだったが、迫力のある文章だと思った。
森ニの一人称で話が進んでいくため、彼の過去や現在の感情の動きにとても引き込まれた。
登場人物が皆、自分の過去と戦うとてもよい小説だと思った。
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吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。
堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。
森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。
森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。
義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。
圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅に招き、毎日森二の勉強をみてくれ大学を卒業させてくれた人物です。
唯との結婚後も二人の付き合いは続き、森二ら家族三人と一緒にしばしば、食事をする仲で、圭介は冬香を溺愛していました。
冬香が実子でないことを知ってからは、森二は血のつながらない兄妹であると聞いたことから、圭介と唯の仲を疑い始めます。
一方、光一は出所した森二を、ヤクザの世界へ引っ張りこもうと手下の加藤・持田とともに、森二に嫌がらせを始めます。
森二のアパートの隣の部屋に住むハーフの少女、沙羅が森二に助けてもらったことから、訪ねてきた10歳になる冬香の面倒をみてくれたり何かと世話を焼いてくれます。
森二には光一ら家族しか知らないギャンブルに強い勘が働き大当てするという特殊能力があり、そのために大きな事件にと発展していきます。
またヤクザの話か…と思いましたが、これは文句なく面白かったです。
森二と圭介の最初の結びつきの話は大変気持ちよく読めて、まさか冬香が圭介の子どもだったら嫌だなと思いました。
そしたら、この作家さん独特の横溝正史ばりの事実が待ち受けていました。
とんでもない結末ですが、これも悪くないと思い納得でした。
ただひとつ、唯が生き返ることがないのが、残念ですが、沙羅という少女の登場が救ってくれている気がします。
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相変わらずの遠田節炸裂。文庫化を心待ちにしていたもの。やっぱりテーマは贖罪で、どれも似たり寄ったりと言ってしまえばそれまでかもしらんけど、その都度味わわされる強烈なカタルシスは、他に代え難いものがある。今回は、ちょっとした超能力をまぶされているのが新機軸。極端に非日常的な力だと、物語の根底を揺るがす瑕疵になりかねないけど、本作においては良いアクセントになっていて、使い方もお見事。クライマックスも含め、存分に楽しませてもらいました。
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遠田潤子『オブリヴィオン』光文社文庫。
お気に入りの作家の一人、遠田潤子の長編小説を久し振りに読み、心行くまで堪能した。忘却、赦しという意味のタンゴの名曲『オブリヴィオン』をタイトルにした本作は、二つの意味を表現した重く、どこまでも深い、感動の物語であった。
妻・唯を殺害した罪で服役していた37歳の吉川森二が出所したところから物語は始まる。森二を待っていたのは、森二の実兄・光一と唯の兄・長嶺圭介だった。
赦されざる罪を犯した森二が忘却しようとしていた過去が少しずつ明かになり、いつの間にか登場人物全員の過去と現在とが複雑に連鎖していく。驚愕の事実と感動の結末は言葉では語り尽くせない。
本体価格780円
★★★★★
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・「いつか」と「今さら」は似ている。どちらも辛い現実から逃避する呪文だ。「いつか」と唱えれば現実から眼を逸らすことができる。「今さら」と唱えれば現実を諦めることができる。
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大阪の下町で極貧の中で育った男が兄妹と出会ってから人生をやり直す。大学を卒業し妹と結婚して幸せな生活を送る。ある日、娘が怪我をしたことから娘が自分の子でない事を知り、妻を詰る中で揉めて殺してしまう。
その男が出所してから物語は始まる。
競艇、予想、宗教、兄弟、血の繋がり、色々な要素が混じり合って物語は進む。
面白い
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一度犯した罪は消えることはない。
ましてやそれが最愛の妻を殺した罪であれば。
償おうとしても周りは許さない。
そして異能の才を持った主人公が命をかけて真実に辿り着く。
久々の一気読み。
作者の筆力に一気に引き込まれ、ページを捲る手が止まらなかった。久々の没頭感。
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妻殺しの罪で服役して、シャバに出てきても、もう何もないって感じ。
人とかかわりたくない、ひとりで生きていく!そう決心したはずやけど…
しかし、かかわる人、かかわる人、訳あり過ぎる!
実兄は、893。
妹を殺された義兄は、真面目な大学の先生のはずが…
更にお父ちゃんを待つ隣りの娘。
自身は、特殊な能力がわざわいして、ギャンブル依存症の父親を…
やっぱり、変にお金に変えられるような能力とかあると、
それを利用しようとする人
嫉妬する人
色々、絡んでくる。
自身の希望と関係なく…
関係ないけど、それが原因で不幸の連鎖…
こんなんなら、自分の存在自体を否定したくなるな…
自身は一度、底辺から抜け出して、再起してるんやから、今回も何とか抜け出して欲しいな。
最後に、良い方向に向かっていきそうな感じで終わってる。
何とか、そのまま進んで欲しい。
ポキっ!とはなりませんでした!
遠田ワールド突き進んで参ります〜
間に休息を入れながら(^_^)v
Posted by ブクログ
『雪の鉄樹』の後に読んだ作品。主人公は相変わらず自縛し、自虐に苛まれる男性だが、前作の主人公よりは、その考えや在り方が理解できる。
遠田さんの物語は、箱庭のようだ。狭い世界で、少ない登場人物が行ったり来たりしている。物語を展開するには、箱庭に暮らす人々が様々な背景を負わなければ行けない。だから、一人ひとりの人生/描写が自然と重く、深くなる。
かと言って、スケールが小さいということではない。これほどまでに人々を深く書き込むことができるのは、作者が登場人物の生をともにする、つまり命を削るようにして作品へ向かう姿が見える。
物語はなかなか動かないが、焦らずじっくり読ませる作家さんだと思う。
浅く軽いノリよりは、よほど好みだし、このスタイルをぜひ続けていって欲しい。
遠田さんならば、カラマーゾフの兄弟のような作品を生めると期待している。
Posted by ブクログ
森二が刑務所を出た日、塀の外で二人の「兄」が待っていた――。
自分を責め、他者を拒み、頑なに孤独でいようとする森二。
うらぶれたアパートの隣室には、バンドネオンの息苦しく哀しげな旋律を奏でる美少女・沙羅がすんでいた。
森二の部屋を突然訪れた少女・冬香の言葉が突き刺さる──「私、あの夜のこと、憶えているんです。
あなたは私の目の前でお母さんを殺しました」。
森二の「奇跡」と「罪」が事件を、憎しみを、欲望を呼び寄せ、人々と森二を結び、縛りつける。
更に暴走する憎悪と欲望が、冬香と沙羅を巻き込む! 森二は苦しみを越えて「奇跡」を起こせるのか!?
はい!始まった瞬間から遠田先生ワールド炸裂です(*^-^*)
刑務所を出た日、いなり二人の兄が外で待っている。
本当の兄と、義理の兄。
何なんだーーーーこのシチュエーションはっ!!!
遠田先生ならではの書き方。もう最初は本当に何が何だかさっぱりわからない。
どういう状況なんだー。コイツは何者なんだーーー!?
それがページを追っていく毎に、次第に全貌が明らかになってくる。
しかし、遠田先生の描く主人公は、色々な人が居るが、
やっぱり「いい人」(*^-^*)
遠田先生の描く「いい人」感。とても好きだなぁ~。
この本も序盤からガッツリ掴まれ、平日あまり読書をしない私も続きが気になってついつい夜中に目が開いたタイミングで読み進めてしまったりした。
Posted by ブクログ
遠田さんの小説は、設定が重く救いようがないものが多い気がします。
この主人公も、最愛の妻を自分で殺してしまい、兄はヤクザ、育ってきた家庭も荒れすさんだ家庭でした。
重苦しい展開の中、次はどうなるのかと気になり、読み進んでしまいました。
自分だけは自分自身でいることをあきらめちゃいけない、と思える本。
Posted by ブクログ
妻を殺害し、出所したところから物語は始まり、なぜ殺したのかわからないまま、進行していきます。過去を振り返りながら、読み手はそれまでの空白の時間を徐々に知ることになります。罪に苛まれながらも生きなければならない人達の痛みや再生が描かれていて、なぜそうなったのか理由を知りたいと思いつつ、グイグイ引き込まれました。
要となるのは、妻を殺害した動機です。それにより、翻弄される登場人物達が描かれていて、骨太な作品になっていました。
全体として、陰湿な雰囲気を醸し出していました。実の兄や妻の兄、娘の昔と今の変貌ぶりに冷酷さが加わって、主人公の目線に立つと、絶望という文字が浮かび上がり、この先どうなるんだろうと気持ち重めで読んでいました。
隣人の女性も加わり、とにかく女性陣の存在感が凄かったです。これが映画だったら、助演賞を獲るのではと思うくらい、発揮していて、より物語を引き立たせていました。
もちろん男性陣も引き立っていますが、特に陰の部分が際立っていました。ゲス野郎ばかりで、良い意味で腹が立ちました。
後半になると、様々な真相が段々とわかってくるのですが、その事実がため息をつくくらい、残酷なことばかりでした。
それでも生きていく登場人物達には、頑張ってほしいと思いました。それまで、淀んでいた気持ちだった分、最後は冷たさの中に温かみを感じたような気持ちになれました。
Posted by ブクログ
『雪の鉄樹』『アンチェルの蝶』『オブリヴィオン』と立て続けに読んだ。どれもすごくおもしろい。
徐々に明かされる秘密と衝撃の事実。そしてかすかな希望が見えるラスト。ページをめくる手が止まらない…のだけど、テーマ、人物のキャラが同じすぎて、おなかいっぱいになってしまった。
壮絶な生い立ちを背負った主人公。ろくでなしの親との確執。過去の傷。ピュアな子ども。救いの音楽…。
3作品の主人公たちが、3人で1つの人格に思える。キャラが一緒。
でも、作品ごとには読み応え充分で完成度も高いのだ。もうまもなく文庫化する『冬雷』も買ってしまうだろう。
Posted by ブクログ
遠田さんが惹かれるという「理不尽ななにか」
妻を殺害した男の服役後
迎えたのは 実兄と義理の兄
男のそれまでの人生を丁重に遡って
男とそれぞれの兄との関係性が
物語が進むにつれて変化していきます
そして 登場人物達とそれぞれの父親との関わりが物語の重要な課題になります
妻を殺してしまったその理由は
可愛い一人娘が誰の子供かわからず
父親としての混乱からか
亡くなってしまった妻と 出所後知り合った
出自の不幸な女の子を重ね合わせながら
これからの幸せを探すラストは素敵だなと思いましたが、奇跡の出来事をストーリーの重要なポイントにしない方が良かったのでは、とちょっと思う
理不尽な何かは奇跡ではないし
奇跡の為に受けた仕打ちは理不尽な何かかもしれないけども
Posted by ブクログ
読み手により色々な解釈ができる話だと思った。圭介は森ニをやり直させようとし、森ニも精一杯努力し、社会的には成功した。しかし、加藤や持田に邪魔をされるというか、自分達のレベルまで引き摺りおろそうとする。これは人間の嫉妬の力は非常に強いことが表現されていると思った。一方で物語終盤、主人公はすべてを受け入れ、それでもやり直そうとし、圭介が自分にしてくれた恩義を沙羅に再現しようとする。これは人間の愛情もまた強いことが表現されていると思った。
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前半がグダグダと長すぎる。後半面白くはなるが、現実離れし過ぎかなぁ…
お兄さんの光一さんが急に良い人になったりして。
ハッピーエンドでよかった。
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オブリヴィオン=忘却と赦し。赦されざる罪を犯した男に救済は訪れるのか。闇の中でもがき生きる人間の痛みと希望を描く長編小説。
遠田作品の男たちは本当に生き方が不器用だ。咎を抱えて生き続ける、それは決して笑うことのない人生である。胸を締めつける展開ばかりだが、常に小さな希望は見え隠れする。その加減が、この作者は巧い。
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銀花の蔵の遠田さんの一冊。
あらすじが気になってチェック。
とある事情から妻を殺した森二の出所から物語が始まる。
大切な人を殺した男が主人公という設定で、開始から既に救われない感じ。
最後には救いのようなものが感じられて良かった。
傷を抱えながらそれでも進んでいく。その姿がとても痛々しかった。
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初・遠田潤子さん。
ざっくり、生まれ育った悪環境から抜け出すのは容易ではないという重いお話。
森二一家は父親のギャンブル狂いで家庭崩壊。
兄の光一とノミ屋を生業としていた森二は、ある事件で将来の義兄となる圭一と出会う。
圭一は良家の育ちの大学院生で温厚な人物。
森二に人生をやり直す機会を与えてくれた。
共に応援してくれた妹の唯と結婚し娘にも恵まれた。
なのに、なぜ唯を殺したのか。
それはそれは複雑に絡まり合った不運のドミノ倒し。絡まってるから綺麗には倒れないのがポイント。
予想つくところと私には不発なところがあったので
強引に複雑にしているようにも感じましたが。
足を引っ張る。と言うのは上を目指してる者同士のイメージだったのですが、ここでは一人だけ悪環境から出ようなんて許しまへんで(大阪舞台なので関西弁で)という下へ引き込む話で使われていて、頑張っても無駄という無力感が絶望しか生まず、悪環境から抜け出すのは相当難しいものだとズンと胸が重くなりました。
最後の方に明らかになる森二の過去。親から受ける体罰とその理由があまりにも身勝手で酷く、それを知ってから見る表紙の絵は悲しいです。
隣に住む少女は指名手配の父親の帰りを待って、アルゼンチンに住む母親に会いにいく希望を持って真面目に一生懸命生きています。その真っ直ぐさ、胸が痛いです( ᵕ ᵕ̩̩ ) ズル賢いヤツらがいい目を見るのはやりきれない。
重い話ではありましたが光は見えたと思います。
⚫︎オブリヴィオン
忘却・人事不省
恩赦・大赦