遠田潤子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『雪の鉄樹』の後に読んだ作品。主人公は相変わらず自縛し、自虐に苛まれる男性だが、前作の主人公よりは、その考えや在り方が理解できる。
遠田さんの物語は、箱庭のようだ。狭い世界で、少ない登場人物が行ったり来たりしている。物語を展開するには、箱庭に暮らす人々が様々な背景を負わなければ行けない。だから、一人ひとりの人生/描写が自然と重く、深くなる。
かと言って、スケールが小さいということではない。これほどまでに人々を深く書き込むことができるのは、作者が登場人物の生をともにする、つまり命を削るようにして作品へ向かう姿が見える。
物語はなかなか動かないが、焦らずじっくり読ませる作家さんだと思う。
浅く軽い -
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった本。
少しずつ語られ明らかになる過去はあまりにも重苦しく、それでも続きが気になり手が止まらない。
何故?何故そこまでして?と、全てを知りたくなる中毒性も含む、愛を知らない男が人生をかけた壮絶な物語だった。
絶対的な安心感や安らぎを幼少期から与えられないまま成長し、一般的な常識を知らず、他人との関わり方も知らず、独りで生きてきた男が彼女と出会って惹かれ、「人間にしてもらった」。
初めて自分を見てくれた。
初めて関心を持ってもらえた。
そんな温かい目を向けてもらった事がなかった。
疎まれ、蔑まれ、好奇の目にさらされながらの13年という年月はあまりにも長い時間であったが、身代わ -
ネタバレ 購入済み
算数障害って初めて知りました。
まだ4巻までしか読んでないけど次はどうなるのか続きが楽しみです。算数障害って初めて聞いた言葉に惹かれて読み始めましたがこれから二人がどうなって行くのかとても楽しみです。絵も暗めでこの物語に合っていると思います。小説が原作になっているとのことですが機会があったら読んでみたいです。
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Posted by ブクログ
本のタイトルから想像する情景をわざと裏切るかのように、最初のページを読み始めると、そこには夏がある。
祖父が経営する曽我造園の庭師として働く曽我雅雪は、どうやら7月7日に何かがあるらしい。
ーあと何年。あと何日。
その日を指折り数えるかのように繰り返される雅雪の心の声のつぶやき。彼が心待ちにしているのか、話が随分進んでも分からない。それが彼にとって一体どのような存在であるのか、知らないのは読者であるわたしと、赤ん坊のときに両親を亡くして祖母と二人暮らしの遼平だけだ。
遼平はずっと雅雪に面倒をみてもらっている。それなのに、なぜか雅雪を激しく憎んでいる。遼平の両親の死に雅雪が関係しているようなの -
購入済み
厳しい内容ですが読ませます。
子供が産めないこともあり夫と義母に蔑ろにされ続けている主人公が、計算能力のみに障害のある青年と知り合います。全編ギスギスドロドロした人間関係の中で、緊張感のあるストーリーが展開しますので、読んで楽しい内容ではありませんが、中々に惹き付けられます。
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Posted by ブクログ
父親が営む居酒屋「まつ」を継ぎ、客とはほとんど口をきかない藤太と、幼なじみで弁護士の秋雄の二人がずっと想いを寄せていた、いづみ。
中学を卒業以来、音信不通だった秋雄が、小学生の少女を連れて現れた。
その少女は、ほづみ。いづみの娘だった。
時代や環境もそうだが、やっぱり子は親を選べない。
いづみは、藤太との淡い思い出だけを大切に辛い環境を生きてきたのかと思うとやりきれなくなる。
ほづみが来てから、まつの常連客も、店の中も何より全てに壁を作ってきた藤太が、少しずつ変わっていくのが良かった。
数年後は、小綺麗になったまつで、忙しく手を動かす藤太と、ハンチングや常連客に、バレエの話を聞かせているほづ