遠田潤子のレビュー一覧
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身勝手に思える行動も男の性なのだと同性だからか擁護してしまう。男にとって初恋とは一生忘れられない特別な宝物なのだ。だから許してもらえるとは思わないが・・・。個人的にはとても好きな作品でした。
あらすじ(背表紙より)
交通事故で唯一の肉親である父を亡くした、大学生の片瀬在。尊敬する父の「弔いごと一切不要」という遺言に戸惑いつつも、その通りにすませた。しかし、生前は立入禁止だった父の書斎で遺品整理をはじめた矢先、全く知らない女性と自分の名が書かれた母子手帳を見つけてしまい、激しく混乱する。父は一体何を隠していたのか――在は主を亡くした書斎で、まるで葬儀を営むかのように、父親の本当の姿と向き合っていく。単行本『お葬式』を改題。ラストは希望溢れる感動長篇、待望の文庫化。 -
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遠田潤子『あの日のあなた』ハルキ文庫 。
2015年に刊行された『お葬式』の改題、文庫化。確かに『お葬式』という標題では余りにあからさまというか、えげつない感じがする。そういう点で改題は正解だと思う。
遠田潤子の『アンチェルの蝶』『雪の鉄樹』と何とも深く、重い、素晴らしい傑作を堪能したが、本作もまた余韻を残す素晴らしい作品だった。不満を言えば、主人公の片瀬在が極めてファザコンの清純で中性的に描かれている点であろうか。出来れば主人公の在には汚れて欲しかった。
二年前に母親を亡くし、父親の和彦と二人きりで暮らす主人公の片瀬在にとって父親は憧れであり、尊敬する存在だった。ある日、百合の花を買いに出掛けた父親が交通事故死する。父親が残した奇妙な遺言、かつて父親が付き合っていた女性、主人公の名前の書かれた母子手帳…余りにも多くの謎に満ちた伏線に、結末が非常に気になり、物語にのめり込んだ。
まだ遠田潤子の作品は3作しか読んでいないが、信用できる女性作家の一人となった。 -
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13回目の結婚記念日もやっぱり三人で過ごした・・・
不妊治療を始めて10年、「子を産めない」ただそれだけで、義母からも夫からも虐げられ、人間として認められなかった千穂。
夫が車で起こした事故を身代わりとなって解決しろと言われた千穂は、被害者である高山透と出会う・・・
遠田さん、やっぱり期待を裏切りません。「雪の鉄樹」に勝るとも劣らない重さ、切なさ、やるせない思い。。。
ただ、賢治の真実を知りたいという思い、その妻の母としての正義が、周りのみんなを不幸にしたような気がして、正義って諸刃の剣だなとつくづく感じます。
不妊、虐待、無戸籍、算数障害(ディスカリキュリア)、虐め、、、様々な問題がこれでもかというほど襲寄せて来るのに、社会派小説と感じさせないのは、登場人物の気持ちが丁寧に描かれ、それぞれの立場に自然に寄り添えるから。
犯罪を犯してしまう人物も、あ~このまま捕まらないで幸せに暮らしてほしいと願ってしまう。
これほど重い内容であっても、読後には蓮の花開く美しい光景と共に思い出されるのが救いでした。 -
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売れない芸人を続ける娘、
夫の隠し子疑惑が発覚した妻、
父と血のつながらない高校生…
大阪・ミナミを舞台に人のあたたかさを照らす
5つの群像劇。
各話の主人公は違えど、物語全体には
実の姉妹、チョーコとハナコの漫才コンビ
「カサブランカ」が話の主軸にいる。
1995年〜昨年の大阪万博が開催された
2025年までを描き、
およそ30年の物語が紡がれていく中で、
チョーコとハナコの人物像が分かっていく。
とくに父と血のつながらない高校生のお話で、
チョーコとハナコがそれぞれ高校生に伝えた
「親は愛情で子供を壊せる」
「一笑すれば千山青し」
この2つの言葉がとても印象に残った。
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ネタバレどんなに馬鹿げた予言でも、母親から向けられた言葉は呪いとなってその子の一生を縛ってしまう。その怖さを教えてくれる物語。
青川恭子が毒母と絶縁して呪いを断ち切るきっかけは何度かあったけれど、母から愛されたいって渇望が根底にある限り無理だったのかもと思うと苦しい。
生まれてくる孫に執着して妊娠した美沙を監禁する恭子の異常性を息子の英樹も夫の誠一も認めながら、最後は結局良い母良い妻として終わらせてるのが愛でもあり怖くもあり…男って…わかってねぇな…。
ネグレクトで車に閉じ込められた経験から鍵屋になった完の存在が秀逸。際立って印象に残った。 -
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主人公は何かを背負って生きてるのだけれど、なかなかそれが何なのか明かされず、理不尽に1人の少年とその祖母に怨まれ続けてる様子が描かれる。
献身的に世話をし真摯に過去の過ちを償っているように思えるのに、2人はひどい態度を取り続けるし、
まわりの人間でさえ主人公のその償い方が少年をダメにしていると窘める。
理不尽に感じるそれらは、事件の顛末が一から語られると納得に変わり、さらに読み進めると主人公の本当の思いに触れて涙が零れる。
誰にも関心を向けてもらえなかった幼少期、ヤングケアラー、挫折…関係者たちが歩んできた残酷な運命に言葉を失う。
そして、主人公が怨まれ続けても、甲斐甲斐しく少年の世話をしていた本当の理由。
償いではなかった、ただ楽しかった。
少年の世話をすることで子供時代をやり直せたと、どれだけ楽しかったか語る様子が切なくて堪らなかった。
純粋に一緒にいたかった、ただそれだけだった。
どんなに無茶苦茶されても、たった1人できた友達の頼み事を大事にし、自分のさみしさに気付いてくれた恋人を待ち続ける。
人は1人では生きていけないんだと、誰かに理解され認められることが必要なんだと改めて思わされた作品だった。 -
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「備前焼」の窯元の一家の話、ということで。
人間国宝の祖父、父、そして孫。
物語の第一部〜第四部までは主人公の孫の、幼少期からの父、祖父との歪な関係性への、内面の葛藤が中心に物語は展開していく。
そして恋愛、進学、身内の死、見えない将来など、普遍的な問題も現れるも、人間国宝の窯元の孫という立場、そして負けず偉大な父の存在、窯元の後継問題が常に主人公の前に大きく立ちはだかっている。
第四部の終わりに大きな物語の転換点があり、それには非常に驚かされた。そして第五部からは主人公の父の独白が入り、一気に過去の真相が明らかとなっていく。
最期の作品を焼き上げる場面は、読んでいてかなりの熱量、迫力があった。
ただ個人的には三点、気になった。
非常にテンポよく物語は進む。逆に、そのテンポが早すぎて、物語自体がぶつ切りの連続のように感じた。主人公の初体験、えらいあっさり終わったな、などと余計な事を考えてしまった。
次に、ラストがファンタジーのように感じたこと。これは著者の経歴を最後に読み、なるほど、と。良い意味で納得できた。
この二点は、初読みの著者作品なので、個人的な好みにはなるが「人間国宝」「備前焼の窯元」などをテーマにした作品で、読む前から重厚さを求めすぎていたのかもしれない。それだけこの作品への期待値が高かった。
最後に、これを言えば無粋になるが、「方言」の問題。
私は岡山県に所縁があり、現在も身内がいる。備前市伊部を訪れたことも当然あるし、備前焼は当たり前に目にしてきた。そういう意味では読む前からやはり、作品の期待値を勝手に天ほど引き上げすぎたのかもしれない。
もちろん岡山弁をそのまま表現すれば、まあ酷いことになるだろう(笑)
著者は上手く、そこを回避していた。
しかし岡山弁を知る者、いや、あくまで私個人は会話文に小さな違和感を常に覚え、それが最後まで抜けなかった。
こんなことは知らない土地の方言なら、私も何も気にせずふんふんと読んでいるはずだ。些末なことに引っかかる自分の器の小ささを覚えるも恥を忍んで、素直な感想を。
ストーリーはとにかく面白かったし、私にとっては懐かしい風景が随所に浮かび、望郷の念を強く感じた。
読めばきっと誰もが伊部を訪れたくなるだろうし、備前焼を手にしたくなるだろう。 -
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うーん、なんだろう。私には刺さらなかったなぁ。むしろ疑問の方が大きく頭を占めている。
備前焼の窯元一家、親子三代に亘る物語。天真爛漫で人間国宝の祖父、路傍と轆轤の名人で冷徹な父、天河の元、歪な家庭環境で育つ城。
城は路傍には可愛がられて育てられたが、天河には全く可愛がられることがなかった。
路傍が亡くなり、天河も亡くなり、天河との葛藤も消え去り人間として、窯元として成長していく。
そんな物語なのだが、天河の城に対する態度があまりにも理不尽だし不自然に感じた。路傍と天河の関係もあまりにも歪だ。まあ、世の中にはこういう関係もあるのかもしれないけれど、ストーリーよりも、なんとなくそっちの方が気になった。