【感想・ネタバレ】天上の火焔のレビュー

あらすじ

大らかな性格で孫に優しい偉大な人間国宝の祖父。氷のように冷たく息子に無関心な轆轤の名手の父。物心つく前に母親を亡くした少年・城は、陽と陰のような二者の間で育ち、悩み、苦しんでいた。父に認められたいがゆえに歪んでいく心。それは宿痾のように精神を蝕んでいき・・・・・・。備前市伊部を舞台に、備前焼窯元父子三世代の心の闇に斬り込み、愛と憎しみの狭間でもがく人間たちを描いた家族史。

【著者略歴】
遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。大阪府在住。関西大学文学部卒。2009年、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」で第1位、『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」で第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞、『銀花の蔵』が第一六三回直木賞候補に。他の著書に『アンチェルの蝶』『ドライブインまほろば』『廃墟の白墨』『紅蓮の雪』『人でなしの櫻』『邂逅の滝』『ミナミの春』ほか。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

備前焼の窯元を舞台に、陶芸に身を捧げる三世代の親子を描いた長編。

生後すぐに母親を亡くし、人間国宝の祖父に愛されながら育った主人公は、冷徹な父親との関係に幼い頃から悩み苦しむ。が、その父親もまた、長年苦悩を抱えていた。
父親や恋人との関係や、陶芸への思いなど、主人公の青臭く屈折した感情が、陶芸の窯の熱とともにひしひしと胸に迫ってくる。

作者の作品は、これでもかと悲惨な境遇に置かれ苦しむ主人公が多いが、今回はそれを乗り越えて成長していく喜びもあって、重いながらも胸を打たれる読み応えのある1冊だった。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

弱さで傷つけられるのは強さで傷つけられるよりずっと辛い。だからこれ以上弱さで人を傷つけないで。弱さという武器を振りかざす人間にはならないで。でも弱さを失わないで。それは城の強さだから

大切なことは小さい声で信頼できる人へ

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

 感想になってない気がしますが、
読み終わった直後の今書きたくなりました。
私事ですが、一昨年ALSで義兄を亡くしました。
病名が判明してあっという間に病状が進み、わずか4ヶ月でした。
大河さん最後まで頑張りました。
そのこととも相まって、涙なしでは読めませんでした。
家族間の愛情って本当に難しいですね。
一気読みしてしまったくらい面白かったです。
香月さんが撮った写真が見えるようでした。
読み終わった後、城さんの心情を思うと、自分も夕焼けを見てるように心が温まった気がしています。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

備前焼の人間国宝である深田路傍の孫に生まれた深田城。城の父深田天河。
城の母の七瀬は阪神淡路大震災に遭い城を出産後すぐに亡くなっています。

城の住む伊部の町に小学6年生のとき、東京から浜本香月が転校してきます。
城と香月は陸上とゲームを通して親しくなり同じ中学、高校へと進みます。

城は祖父に大変可愛がられて育ち、「お祖父ちゃんみたいになりたい」と言って粘土をこねます。
しかし祖父はくも膜下出血で城が中学の時に亡くなります。

父の大河は城が幼いころから全く城に構ってくれませんが城に大学に行くお金は出してくれます。

一方とあることをきっかけに香月は城の前から姿を消します。

そして城はなぜ今まで全く父親としての愛情を大河が自分に注いでくれないのか疑問に思いながらも大河から陶芸を学びたいとかけあいます。
ある出来事をきっかけに天河は自分の過去を語り始めます。



三代に渡る父子の物語です。
天才だった深田路傍。
そして大河、城。
私はめったに小説を読んで泣きませんが、この小説のラストシーンは私も亡き父を思い出して本当に涙が出ました。
遠田潤子さんの作品は数えてみたら、19冊目でした。
たぶんほとんど全部の作品を拝読していますが、今までの遠田さんとはちょっと違う気がしました。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

人間国宝である祖父の路傍と、轆轤の名手である父の天河。備前焼の窯元に生まれた城は、歪な家庭環境に悩んでいた。優しい祖父に対し、父は冷淡で会話すら交わすこともほとんどない。父の才能に憧れながらも父を恐れ忌み嫌う城は、自らの進む道も分からなくなっていく。つらい読み心地だけれど目が離せず、だけど最後には心に熱いものがこみ上げる物語です。
城の家庭環境は決して悪いものとは言えないのだけれど、父との断絶が彼の人生に及ぼす影響は甚大なものだと感じました。城が魅せられる天河の作陶の冷徹なまでの完璧さもまた、畏怖としかいうほかなく。彼らの過去にいったい何があったのか、恐れおののきながら物語を読み進みました。城の周りにいる人たちも城に対して真剣に向き合ってくれるのだけれど、彼にかけられる言葉が甘いものばかりでないのもまた辛辣……。もちろんその方が、後々の成長につながるであろうことはわかるのですが。しかしあまりにきつい。胸が痛くなります。
明らかになったこの家族の歴史は哀しくて、やりきれませんでした。何よりも天河の孤独が圧倒的で、それに耐え続けた彼の生きざまは、あまりに凄絶。だからこそ終盤の穏やかさに救われる気になります。

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2025年10月30日

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備前焼の窯元を舞台にした、偉大すぎる祖父と冷たすぎる父をもった少年の成長と再生の物語。母は彼が幼い頃に亡くなっており、祖父母に育てられた。もちろん、お仕事小説としての側面も見逃せない。
いつもの遠田作品と違う?いやいや、そんなことはない。確かに、小学生から順を追って語られるスタイルや、妙にお行儀のよい主人公には違和感がある。が、息子に対する父の態度の理由が明らかになるとき、それまで見えていた景色が一変し価値観が反転する。ここからが遠田さんの真骨頂だ。ただ、今回はそこまでエグくはなかった。
本年度ベスト級の作品であり、遠田作品としてもかなり上位に来るのではなかろうか。

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2025年10月19日

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備前焼人間国宝の孫に生まれた城の、家族との確執の物語。一番理解してほしい家族である父親に愛されない哀しみ、理解されない苦しみ、もがいても抗っても冷たく突き放される絶望。そして同じように苦悩を抱えて生きてきた父親。残された日々の中で命を燃やして作り上げた天河の最期の茶碗を、スラヴ舞曲集第十番が流れる中、天上の火焔で焼き上げる城は、父親を救うとともに、真に自分を解放できたのだと思う。美しい伊部の町と備前焼が心に浮かぶ、壮大な物語だった。家族とは何か、考えずにはいられない物語だった。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

懐かしい。煉瓦の煙突が立ち並ぶ伊部の町。「おえん、おえん」あんなに使っていた言葉なのに忘れていた。三代の物語だけど、親子関係、そんなに深く自省したことない身には、あまり共感出来ず残念。親子の愛情に疑問持たないでこれたのは幸せだったのかなぁ。

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2025年11月26日

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