遠田潤子のレビュー一覧

  • アンチェルの蝶

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    ネタバレ

    はっきり言ってこれは、読むのがかなりつらい話でした。
    つらいというのは、内容が悲惨だということで、小説としての完成度は星5です。

    一人で、居酒屋「まつ」を大阪で営む藤太のところへ、中学校の同級生だった40歳になった佐伯秋雄が25年ぶりに訪ねてきます、
    秋雄は小学校4年生の女の子、森下ほづみを連れています。
    「この子はいづみの子なんや」といいしばらく預かってくれと、置手紙と500万円を残していかれ、藤太はとまどいながらほづみの面倒を見始めます。

    藤太、秋雄、いづみは中学の同級生で、三人の親たちは賭け麻雀をする仲間で、三人は親たちに虐げられていました。
    でも三人は、三人でいるときだけは明るく、

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    2020年09月24日
  • アンチェルの蝶

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    ネタバレ

    大阪が舞台の小説。どん底に陥っている男が、昔好きだった少女との交流により前を向き始めるストーリー。死や罪といったものが、胃の腑にどじりとのしかかってくる重さを感じた。軽はずみな気持ちでは耐えられない読後感。

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    2020年08月31日
  • オブリヴィオン

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    吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。
    堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。
    森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。

    森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。

    義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。
    圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅

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    2020年08月31日
  • アンチェルの蝶

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    こんなに辛い話に引きずり込ませるなんて
    遠田さんひどいです(TT)

    藤太、秋雄、いづみ、ほずみ。みんな幸せであったと祈ることしかできません。

    ほんとに辛くて酷すぎる内容だけど、本物の思いやりとしあわせを教えてくれたお話でした。
    ひさしぶりに読書できたけど、読んでよかった!

    おすすめの作品だけど、だいぶエグイのでご注意ください!

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    2020年08月28日
  • 冬雷

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    ネタバレ

    古い因習に囚われた家族や村の人たちとの過去など、読み始めた時には謎な事柄がとても気になり、読むモチベは終始限界突破状態。

    代助と愛美、真琴の関係。雄一郎が“諦めた覚悟”とは何か。真琴と雄一郎はただの親類なのか。

    そうした点に加え、百合若大臣や怪魚伝説など、村の言い伝えが主要人物たちの行く末を暗示しているようで、先の展開が常に気になってしまい、久々に読書で夜更かししてしまいました。

    最初抱いていた謎が徐々に明らかになっていき、クライマックスの冬雷閣ですべてが明らかになるわけですが、今思えばその内容は概ね予想通りで驚きはやや少な目。

    ただそれは、主要人物たちとそれらの関係性をとても丁寧に描

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    2020年08月02日
  • 冬雷

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    抜け出せない泥沼。当事者では気付けない異常さが重なると、こんなにも異様な集団が出来上がってしまうんだなと思いました。怖い。

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    2020年07月19日
  • 冬雷

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    ベースにあるのはやはり贖罪。でも本作は、他とは少し趣を異にしていて、ミステリ色が強い印象。そしてそれは、自分的には好もしい系統。謎解きモノとしても、結構趣向が凝らされたものになっている。最後、唐突にファンタジーの世界が現実化したのには面食らったけど、クライマックスまで含めて、かなり楽しめた一作でした。

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    2020年05月18日
  • カラヴィンカ

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    旧家特有の深い闇を表すかのような歪な家族のカタチを描いた本作は目を覆いたくなるぐらいのキツさでしたがぐいぐいと引き込まれていく自分を抑えきれませんでした。後半からの伏線回収はまるで寄木細工のようで綺麗に騙されましたが悪い気はしませんでした。

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    2020年04月05日
  • オブリヴィオン

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    相変わらずの遠田節炸裂。文庫化を心待ちにしていたもの。やっぱりテーマは贖罪で、どれも似たり寄ったりと言ってしまえばそれまでかもしらんけど、その都度味わわされる強烈なカタルシスは、他に代え難いものがある。今回は、ちょっとした超能力をまぶされているのが新機軸。極端に非日常的な力だと、物語の根底を揺るがす瑕疵になりかねないけど、本作においては良いアクセントになっていて、使い方もお見事。クライマックスも含め、存分に楽しませてもらいました。

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    2020年03月23日
  • オブリヴィオン

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    遠田潤子『オブリヴィオン』光文社文庫。

    お気に入りの作家の一人、遠田潤子の長編小説を久し振りに読み、心行くまで堪能した。忘却、赦しという意味のタンゴの名曲『オブリヴィオン』をタイトルにした本作は、二つの意味を表現した重く、どこまでも深い、感動の物語であった。

    妻・唯を殺害した罪で服役していた37歳の吉川森二が出所したところから物語は始まる。森二を待っていたのは、森二の実兄・光一と唯の兄・長嶺圭介だった。

    赦されざる罪を犯した森二が忘却しようとしていた過去が少しずつ明かになり、いつの間にか登場人物全員の過去と現在とが複雑に連鎖していく。驚愕の事実と感動の結末は言葉では語り尽くせない。

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    2020年03月18日
  • アンチェルの蝶

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    子供は親を選べないやりきれなさに打ちのめされるも、一度は世を捨てた男が人間らしさを取り戻していくさまは遠田作品の根底にある優しさを感じずにはいられません。男親達のあまりの非道ぶりに吐き気さえ覚えたので読むには少しだけ覚悟を決めてください。

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    2020年03月15日
  • あの日のあなた

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    この著者はファンタジーより現代ものがいい!
    読み進むたびに謎、疑問が提示され
    またそれが解決されていく
    ストーリーも楽しめました

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    2019年09月17日
  • 蓮の数式

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    ネタバレ

    期待を裏切らない遠田潤子、この作品でも暗くて重い魂のブルースが延々と刻まれていく。楽しい話ではない、やるせない思いが募るばかりなのに、ページを繰る手が止まらない。

    登場人物ほぼ全員が不幸を背負っているが、特に透という算数障害を持つ男が際立っている。「不幸を捨てに行くゴミ箱」…なんという役どころを作ってしまうのか。

    登場人物たちの不幸が、透に収斂されていく切なさ。際立った悪役が2名いるのだが、彼らが(直接的には)透に不幸を捨てなかった稀有なキャラだという皮肉な設定も、上手いというか際立っているというか…。

    遠田潤子の小説を読むと、「こういう生き方をしたくない」と思うことが多いが、この作品で

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    2019年06月10日
  • アンチェルの蝶

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    大阪の下町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生が連れてきた10歳の少女。彼女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい真実が明らかになる。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く群像劇。
    遠田潤子作品初読み。あらゆるシーンの台詞や舞台背景がものすごく映像的である。小汚ない居酒屋『せつ』とバレエ教室や弁護士事務所との対比が、そして藤太の居心地の悪さが痛切に伝わってくる。何より藤太が、今さらながらの成長と希望という光を掴んでいく瞬間が美しい。『新世界より』をBGMにすればより一層の感動が得られる。

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    2019年01月06日
  • 蓮の数式

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    彼女の本は、これで3冊目。

    「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、

    今回も期待大。



    35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、

    夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。

    そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。

    千穂は彼の力になりたいと手をさしのべるが、

    疑い深い夫に、二人の関係を一方的に攻められ、

    これまで押さえてきた感情を爆発させ、ある事件を起こしてしまう。

    そして、千穂と透、二人の遠飛行が始まる・・・



    帯にある「熱量がすごい!」の言葉通りに、すごい展開になっていく。

    これでもか!というくらいに、てんこ盛りなのは、

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    2018年08月31日
  • 蓮の数式

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    遠田潤子『蓮の数式』中公文庫。

    遠田潤子らしい果てしなく重く、暗い物語。登場人物の一人として善人は居らず、登場人物の不幸が伝播してくるのではないかと不安になるような小説だった。決してつまらない小説ではなく、物語の展開と結末が気になる面白い小説だった。例えるならば、吉田修一の『悪人』が近いだろうか。

    不妊と家柄を理由に夫と義母にあらぬ限りの虐待を受け続けていた35歳の千穂は、ある日、夫の起こした交通事故の身代わりを押し付けられる。被害者の男性が算数障害を持ち、悩み苦しんでいることに気付いた千穂は男性に救いの手を差し伸べるのだが…

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    2018年01月28日
  • カラヴィンカ

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    彼女の本を読むのは2冊め。

    1冊目の「雪の鉄樹」では、思わず涙があふれましたが、

    今回は、読み終えた後に、ほぅ~。。。というため息に似た感動が。。。



    歌詞のない旋律を母音のみで歌う人気歌手、実菓子。

    彼女の自伝インタビューをすることになった、ギタリストの青島多聞。

    2人は幼い頃、同じ家で育ち、

    さらに、実菓子の夫は、多聞の亡兄だった。。。



    読み初めて、多聞が彼女を避けているのがわかり、

    過去に、何か複雑な問題があったことがわかってくる。

    それでも、断れないインタビューの仕事をこなそうとするのだが、

    そこで語られる、おぞましく悲しい出来事に、驚愕する。。。


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    2018年01月22日
  • カラヴィンカ

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    あまりに凄絶な、愛憎渦巻く家族の物語。いわくありげな人間関係が少しずつ小出しに語られるので、それに引っ張られて読む手は止まらず。どろどろしてひどい物語なのに、それでもぐいぐい惹きつけられて一気読みでした。そして実はミステリ……だったのだけれど。凄まじいまでの物語に引き込まれるあまり、どのあたりが事件であり謎であったのか全然気づかなかった! 愕然としてしまいました。
    登場人物にどうも醜悪な人間が多くて、えげつない物語ではあったのだけれど。読後感はそう悪くないし、印象としては美しい物語という気がしました。しかし実菓子の願いがそういうものだったとは……それもまた、あまりに凄絶。「幸せ」という言葉の重

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    2018年01月06日
  • カラヴィンカ

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    ネタバレ

    まるで昭和初期を舞台にしたような過去話とドロドロの人間関係が、読んでいて鬱な気分にさせてくれます。重苦しくて、晴れ晴れとした気持ちになる内容ではないのですが、じっくりと一言一句漏らさずに読み通したいと思わせる求心力にも似た力を作品から感じ、没頭して読んでいました。

    序盤、不動の死の原因とされている実菓子の存在とその態度に、多聞と同じく彼女に対する苛立ちを覚えました。しかし過去の話を読み進めていくと、虐待に起因する「自分に対する興味のなさ」に基づく一連の言動なのかと思い、少しずつ印象が変わっていきました。

    多聞も名家の次男坊(かつ、終盤で明らかになるある要因から?)のため、兄の影で存在をない

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    2017年11月22日
  • 蓮の数式

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    【ネタバレ】マザコン夫と義母を疎ましく思う女と算数障害に悩む男の逃避行。ラブロマンスとしてもミステリとしてもきちんと両立している傑作。読後感は必ずしもさわやかではないのですけれどそれもまたよし。識字障害は知ってましたが算数障害は知りませんでした。

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    2016年03月03日