遠田潤子のレビュー一覧
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遠田潤子さんは、登場人物を絶望の淵に陥れるのが絶妙に上手い作家さんですが、この作品はその中でも最も強烈なインパクトのある物語でした。
主人公の売れないギタリスト、青鹿多聞のところへ歌詞のない旋律を歌う容貌のすばらしく美しい歌手の実菓子から自伝のインタビューの相手になって欲しいと指名の電話がかかってきます。
多聞と兄の不動は丹羽谷村の「藤屋」と呼ばれる旧家の息子で、不動は一年三カ月前に亡くなっています。
実菓子は同じ村の旧家「斧屋」の娘で不動の妻であり、その前は多聞と不動の父の青鹿馨の妻でした。
インタビューの内容は実菓子と不動と多聞の兄弟が実菓子の母の鏡子が父の馨の妾となって一緒に暮らし始 -
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ネタバレ森二が唯を殺めた理由、圭介と唯の関係、冬香の本当の父親は誰なのか。
そうした過去の謎に加え、森二に絡んでくる沙羅、光一などとの絡みがどうなっていくのかなど、気になる要素が満載でページをめくる指を止められずに一気読み。更に、森二たちの過去が明らかになるに従い、自分が森二にどんどん感情移入していきました。
そのため、森二がふいに幸せだったころを思い出すたびに、現状の辛い状況とのギャップの激しさにこっちまで辛い気持ちになってしまったりも…… 森二や圭介、唯たちだけでなく、最初は嫌なヤツという印象だった光一にも、その過去を知った後は同情する気持ちが芽生えたりもしました。
ここまで人物たちに感情移 -
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ネタバレこれは完成度の高い大人の小説だと思いました。
主人公は結婚して13年間、高圧的な夫の安西真一から、義母を殺して逃げようとした千穂35歳と、一緒に逃げた高山透27歳。
千穂は、夫と義母から異常なまでに子供を望まれ、不妊治療を何年もしていましたが、4度の流産を繰り返しています。
真一は結婚してから、性格も性癖も歪んだ倒錯的な人物だったことがわかります。
高山透は数字認識に障害があり、そろばん塾の講師であった千穂と知り合います。
透には子供の頃の殺人事件の犯人として、追いかけてくる新藤賢治という男がいます。
そしてまた透は人との交流を持つ手段をセックス以外に待っていない女性との関係の絶えない人 -
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ネタバレはっきり言ってこれは、読むのがかなりつらい話でした。
つらいというのは、内容が悲惨だということで、小説としての完成度は星5です。
一人で、居酒屋「まつ」を大阪で営む藤太のところへ、中学校の同級生だった40歳になった佐伯秋雄が25年ぶりに訪ねてきます、
秋雄は小学校4年生の女の子、森下ほづみを連れています。
「この子はいづみの子なんや」といいしばらく預かってくれと、置手紙と500万円を残していかれ、藤太はとまどいながらほづみの面倒を見始めます。
藤太、秋雄、いづみは中学の同級生で、三人の親たちは賭け麻雀をする仲間で、三人は親たちに虐げられていました。
でも三人は、三人でいるときだけは明るく、 -
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吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。
堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。
森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。
森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。
義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。
圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅 -
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ネタバレ古い因習に囚われた家族や村の人たちとの過去など、読み始めた時には謎な事柄がとても気になり、読むモチベは終始限界突破状態。
代助と愛美、真琴の関係。雄一郎が“諦めた覚悟”とは何か。真琴と雄一郎はただの親類なのか。
そうした点に加え、百合若大臣や怪魚伝説など、村の言い伝えが主要人物たちの行く末を暗示しているようで、先の展開が常に気になってしまい、久々に読書で夜更かししてしまいました。
最初抱いていた謎が徐々に明らかになっていき、クライマックスの冬雷閣ですべてが明らかになるわけですが、今思えばその内容は概ね予想通りで驚きはやや少な目。
ただそれは、主要人物たちとそれらの関係性をとても丁寧に描 -
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遠田潤子『オブリヴィオン』光文社文庫。
お気に入りの作家の一人、遠田潤子の長編小説を久し振りに読み、心行くまで堪能した。忘却、赦しという意味のタンゴの名曲『オブリヴィオン』をタイトルにした本作は、二つの意味を表現した重く、どこまでも深い、感動の物語であった。
妻・唯を殺害した罪で服役していた37歳の吉川森二が出所したところから物語は始まる。森二を待っていたのは、森二の実兄・光一と唯の兄・長嶺圭介だった。
赦されざる罪を犯した森二が忘却しようとしていた過去が少しずつ明かになり、いつの間にか登場人物全員の過去と現在とが複雑に連鎖していく。驚愕の事実と感動の結末は言葉では語り尽くせない。
本 -
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ネタバレ期待を裏切らない遠田潤子、この作品でも暗くて重い魂のブルースが延々と刻まれていく。楽しい話ではない、やるせない思いが募るばかりなのに、ページを繰る手が止まらない。
登場人物ほぼ全員が不幸を背負っているが、特に透という算数障害を持つ男が際立っている。「不幸を捨てに行くゴミ箱」…なんという役どころを作ってしまうのか。
登場人物たちの不幸が、透に収斂されていく切なさ。際立った悪役が2名いるのだが、彼らが(直接的には)透に不幸を捨てなかった稀有なキャラだという皮肉な設定も、上手いというか際立っているというか…。
遠田潤子の小説を読むと、「こういう生き方をしたくない」と思うことが多いが、この作品で -
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彼女の本は、これで3冊目。
「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、
今回も期待大。
35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、
夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。
そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。
千穂は彼の力になりたいと手をさしのべるが、
疑い深い夫に、二人の関係を一方的に攻められ、
これまで押さえてきた感情を爆発させ、ある事件を起こしてしまう。
そして、千穂と透、二人の遠飛行が始まる・・・
帯にある「熱量がすごい!」の言葉通りに、すごい展開になっていく。
これでもか!というくらいに、てんこ盛りなのは、