遠田潤子のレビュー一覧
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遠田潤子『イオカステの揺籃』中公文庫。
古くから続く『家』や『家督』、『跡継ぎ』といった日本文化を土台にした、息が詰まりそうになるほど非常に重苦しい家族小説だった。遠田潤子らしいと言えば、全くその通りなのであるが、最期には救いが用意されていることが、何時もの遠田潤子らしくない。
ストーリーの大半は、過去から心の中で引き摺る罪の意識と、それぞれが強い思いを抱える家族が、突然起きた小さな波により脆くも壊れていく姿を描いている。家族の絆というのは、こんなにも脆い物だったのだろうか。
妻の美沙と幸せに暮らす新進気鋭の建築家の青川英樹は、大手ゼネコンで働く仕事熱心な父親の誠一と上品で美しい母親の -
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大阪・ミナミを舞台にして、平成初期から現代にかけて紡がれる群像劇。この人の作品って、いつも登場人物の境遇が圧倒的に不幸でしんどいイメージなのですが。今回はそれほどでもないかな。それぞれの登場人物にやはり不幸なことはありますが、しかし不幸なことが何ひとつない人生を送れる人なんてそうそうないと思えば、悲愴感は薄め。そしてもちろん、その不幸を自分自身で乗り越えていく彼らの姿は力強く、読後は温かく希望の持てる物語になっています。
お気に入りは「黒門市場のタコ」。血のつながらない父との関係に悩む少女の物語。ただし彼らの関係は理想的な親子のように見えて、いったい何が不満なの、と周りからは思われそうです。た -
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ネタバレ好きが詰まった盛り合わせ!めっちゃ良かった!
最悪よりは平凡 (岛本理生)
魔美のしんどさがしんどくて、それでも好きな人ができてこれから始まっていく感じに、人生捨てたもんじゃないよねと思えた。
深夜のスパチュラ (綿谷りさ)
ひとりで買物行く時のグルグルハイテンション感にめちゃくちゃ共感。スパチュラに泣けちゃう気持ちもわかりみしかなかった。
カーマンライン (一穂ミチ)
回想から始まるストーリー展開に安心感。「ホテル・ニューハンプシャー」読んでみようと思った。
無事に、行きなさい (桜木紫乃)
「アプンノ パイエ」の言葉の意味と2本の線のデザインがそのまま主人公へのメッセージになっていて良か -
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この著者の紡ぐ物語がたまらなく好きです。たいていは暗い話で、めげそうになるぐらい重いときもあるけれど、最後に必ずひと筋の光が見えます。だから、著者が「救いはあろうがなかろうが気にならない」と言っていると知ってちょっと驚きました。
「救いがないならないできっちり書くべき」というのは確かにそう。安易なハッピーエンドに走らず、でも主人公たちのことを放り出したりはしないから、この人生に惹きつけられます。
こんな子どもに「生きていてひとつもいいことなんかなかった」なんて言わせちゃいけない。生きるのに理由は要らないとしても、生きたいと思ってほしい。 -
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本の雑誌「おすすめ文庫2017」第1位
庭師の雅雪は、20歳の時から
両親を失った小年、遼平の面倒を見続けていた
初めて、預かった時にはまだオムツをしていた
男の子は中学生になっていた
庭師の男は、なぜここまで献身的なのか
何を償おうとしているのか
遼平には、未だ真実を言えないでいた
読みながら、少年と共に苦しむ
庭師はなぜそれほど自己犠牲を続けるのか
許されない罪、終わりのない贖罪
憎しみに隠れた愛情
贖罪に伴った悦び
報われる事はないのかと思われた庭師の献身が
真実の告白と共に受け入れられていく
とても素敵な作品でした
庭師が最後まで過酷すぎるけれど
人間の渇望、羨望が苦しいほどに描 -
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(2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。
この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。
面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く -
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初めての遠田潤子さん、こんなに面白いなんて!
北上次郎氏がこの人の本は〜ってよく話題に出していたのでずっと気になっていた。
今作は連作短編集で、中心にいるのは堀尾葉介という芸能人。
過去に取り返しのつかないことや何かに囚われている人たちが彼との邂逅で人生を前に進めるだけの力をもらうみたいな話。
ぜんぶで8話あるけど全てがとんでもなく面白い。
2話目の時点でこのまま読み終わりたくないなって感じるくらいストライクすぎた。
探偵の話もいいし、炭焼きの話も好きだし、たまご屋さんの話もいいなあ。
遠田さんの持ち味はもっと人が苦しむ話が多いみたい(笑)今作は明確に救いが待ってるので安心できた。 -
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紅滝、紅姫、瀧口屋、その謂れとそれに纏わる数々の逸話。時を超えて縺れ合い、繋がり続ける男と女の物語。古の情念は褪せることもなく、2人を出逢わせては引き離していく。
連作の形で紡がれるこれらの物語は、すべてを読み終えて初めて始まり、そしてさらに続いていくのだ。
本当に素晴らしい筆致と描写、そして物語。著者の作品を読むのは初めてだったが、正直、驚愕した。それぞれの短編の結末も鮮烈で、尚且つすべてを読み終えた時の満足感は言葉に表せないほどで、繰り返し登場する紅滝、祠、もみじの木のイメージが頭から離れない。これはきっと名作と呼ばれるようになるに違いない。
巡りめぐる魂がいつか赦されて完結する時を、願 -
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遠田潤子『緑陰深きところ』小学館文庫。
74歳の老人と25歳の若者の不思議なコンビの旅路を描いたロードノベル。遠田潤子がロードノベルとは非常に珍しいと思ったが、物語の重さはやはり遠田潤子だった。
苦しいくらいに重い全く救いの無いと思われた物語は意外な方向に向かい、予想を覆す結末で完結する。恐るべし遠田潤子。
大阪ミナミでカレー屋の『河童亭』を営み、廃病院に独り暮らす74歳の三宅紘二郎の元に、ある日、1枚の絵葉書が届く。古い絵葉書には達筆で描かれた漢詩が書かれており、その字は紘二郎の兄の征太郎の手によるものだった。
漢詩を一読した紘二郎は過去の忌まわしい記憶を思い出し、兄を殺すために大 -
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読後、映画を1本見終わったような迫力のある小説だ。
半分以上読み進めても、雅雪はなぜ他人の子供の遼平の面倒をせっせとみているのか、その祖母はなぜに雅雪に徹底的に冷たいのか。あと数日で会えるという女は誰なのか…全くわからずもどかしく先に先にと読み進める。
雅雪に遼平、親方に俊夫、文枝、原田、細木老、舞子と郁也、全ての登場人物の描き方が深い。
情をかけてもらえず育った雅雪と俊夫、舞子。
才能を見限られ苦しむ俊夫と郁也。
それらに巻き込まれ波乱万丈の人生を背負い込む雅雪。
だが、原田や細木老、そして舞子の存在が彼を救う。
子供を愛せなかった親がいて、そのためにご飯を人と食べられなくなったことも、 -
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遠田潤子『人でなしの櫻』講談社文庫。
きっと遠田潤子でなければ書けないであろう人間の醜い心の内側を赤裸々に描いた衝撃の小説。
巻末には浅田檀と竹井清秀の邂逅を描いた特別収録掌編『ギャラリスト浅田檀の邂逅』を収録。
8歳から精神的な成長を止めた純粋無垢な蓮子に関わる登場人物はまさに皆『人でなし』であり、思い半ばで非業の死を迎える。人間は生きて行く過程でその心を汚してしまうのだろうか。
天才は紙一重同時言うが、余りにもぶっ飛んでいて、烈しく火傷するような迫力を感じる小説だった。
ギャラリストの浅井檀に見込まれて、そこそこ絵が売れている日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人