遠田潤子のレビュー一覧

  • ミナミの春

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    大阪・ミナミを舞台にして、平成初期から現代にかけて紡がれる群像劇。この人の作品って、いつも登場人物の境遇が圧倒的に不幸でしんどいイメージなのですが。今回はそれほどでもないかな。それぞれの登場人物にやはり不幸なことはありますが、しかし不幸なことが何ひとつない人生を送れる人なんてそうそうないと思えば、悲愴感は薄め。そしてもちろん、その不幸を自分自身で乗り越えていく彼らの姿は力強く、読後は温かく希望の持てる物語になっています。
    お気に入りは「黒門市場のタコ」。血のつながらない父との関係に悩む少女の物語。ただし彼らの関係は理想的な親子のように見えて、いったい何が不満なの、と周りからは思われそうです。た

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    2025年04月08日
  • 二周目の恋

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    ネタバレ

    好きが詰まった盛り合わせ!めっちゃ良かった!
    最悪よりは平凡 (岛本理生)
    魔美のしんどさがしんどくて、それでも好きな人ができてこれから始まっていく感じに、人生捨てたもんじゃないよねと思えた。
    深夜のスパチュラ (綿谷りさ)
    ひとりで買物行く時のグルグルハイテンション感にめちゃくちゃ共感。スパチュラに泣けちゃう気持ちもわかりみしかなかった。
    カーマンライン (一穂ミチ)
    回想から始まるストーリー展開に安心感。「ホテル・ニューハンプシャー」読んでみようと思った。
    無事に、行きなさい (桜木紫乃)
    「アプンノ パイエ」の言葉の意味と2本の線のデザインがそのまま主人公へのメッセージになっていて良か

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    2025年04月06日
  • ドライブインまほろば

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    この著者の紡ぐ物語がたまらなく好きです。たいていは暗い話で、めげそうになるぐらい重いときもあるけれど、最後に必ずひと筋の光が見えます。だから、著者が「救いはあろうがなかろうが気にならない」と言っていると知ってちょっと驚きました。

    「救いがないならないできっちり書くべき」というのは確かにそう。安易なハッピーエンドに走らず、でも主人公たちのことを放り出したりはしないから、この人生に惹きつけられます。

    こんな子どもに「生きていてひとつもいいことなんかなかった」なんて言わせちゃいけない。生きるのに理由は要らないとしても、生きたいと思ってほしい。

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    2025年02月25日
  • ミナミの春

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    私にとって普段馴染みのない「大阪」描ききった物凄い作品でした。お笑い芸人を通して人生の浮き沈みや葛藤を描いた素晴らしい作品でした。各章ごとに関連性のある人物が出てきて泣かせてくれます。ラストは涙なくしては読めなく感動しっぱなしでした。あなたもぜひ読んで感動して下さい。涙して下さい。

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    2025年02月10日
  • 緑陰深きところ

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    すごいすごい感動した感動したこんなにも心震えた物語はないです。ロードノベルミステリー読み終わってもう一度読み返したくなってしまいました。回想を先に読んで次に第一章から読むと別の物語に
    感じてしまうでしょう。ラスト近くの殺人の真相は思いもよらない展開に、こんなにも思い入れの深い物語は今までになかった。出てくる登場人物皆好きだよ。皆長く生きてほしかった。あなたも読んで興奮して下さい。涙して下さい。感動して下さい。

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    2024年12月23日
  • 雪の鉄樹

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    本の雑誌「おすすめ文庫2017」第1位

    庭師の雅雪は、20歳の時から
    両親を失った小年、遼平の面倒を見続けていた
    初めて、預かった時にはまだオムツをしていた
    男の子は中学生になっていた

    庭師の男は、なぜここまで献身的なのか
    何を償おうとしているのか
    遼平には、未だ真実を言えないでいた

    読みながら、少年と共に苦しむ
    庭師はなぜそれほど自己犠牲を続けるのか
    許されない罪、終わりのない贖罪
    憎しみに隠れた愛情
    贖罪に伴った悦び
    報われる事はないのかと思われた庭師の献身が
    真実の告白と共に受け入れられていく
    とても素敵な作品でした
    庭師が最後まで過酷すぎるけれど
    人間の渇望、羨望が苦しいほどに描

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    2024年12月14日
  • 二周目の恋

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    (2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
    アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。

    この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。

    面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
    綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く

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    2024年11月26日
  • 雨の中の涙のように

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    初めての遠田潤子さん、こんなに面白いなんて!
    北上次郎氏がこの人の本は〜ってよく話題に出していたのでずっと気になっていた。
    今作は連作短編集で、中心にいるのは堀尾葉介という芸能人。
    過去に取り返しのつかないことや何かに囚われている人たちが彼との邂逅で人生を前に進めるだけの力をもらうみたいな話。
    ぜんぶで8話あるけど全てがとんでもなく面白い。
    2話目の時点でこのまま読み終わりたくないなって感じるくらいストライクすぎた。
    探偵の話もいいし、炭焼きの話も好きだし、たまご屋さんの話もいいなあ。
    遠田さんの持ち味はもっと人が苦しむ話が多いみたい(笑)今作は明確に救いが待ってるので安心できた。

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    2024年11月24日
  • 冬雷

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    遠田さんの作品は初めて読んだのですが、凄く読みやすく、感情移入が出来ました。
    街と神社という関係。これは切っても切れない、古い村などでは今でも必ずあるのではないかなと思います。代助は一時この街、人を憎んでいたたまれないきもちが凄く伝わってきました。それでも離れた街に戻ってきて、真実を探そうとする気持ち。それは紛れもなく、この街、この人達を愛しているからでしょう。
    凄く楽しく読ませてもらいました。今後も遠田さんの作品を見ていきたいです。

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    2024年09月22日
  • 邂逅(わくらば)の滝

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    紅滝、紅姫、瀧口屋、その謂れとそれに纏わる数々の逸話。時を超えて縺れ合い、繋がり続ける男と女の物語。古の情念は褪せることもなく、2人を出逢わせては引き離していく。
    連作の形で紡がれるこれらの物語は、すべてを読み終えて初めて始まり、そしてさらに続いていくのだ。
    本当に素晴らしい筆致と描写、そして物語。著者の作品を読むのは初めてだったが、正直、驚愕した。それぞれの短編の結末も鮮烈で、尚且つすべてを読み終えた時の満足感は言葉に表せないほどで、繰り返し登場する紅滝、祠、もみじの木のイメージが頭から離れない。これはきっと名作と呼ばれるようになるに違いない。

    巡りめぐる魂がいつか赦されて完結する時を、願

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    2024年07月01日
  • 緑陰深きところ

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    遠田潤子『緑陰深きところ』小学館文庫。

    74歳の老人と25歳の若者の不思議なコンビの旅路を描いたロードノベル。遠田潤子がロードノベルとは非常に珍しいと思ったが、物語の重さはやはり遠田潤子だった。

    苦しいくらいに重い全く救いの無いと思われた物語は意外な方向に向かい、予想を覆す結末で完結する。恐るべし遠田潤子。


    大阪ミナミでカレー屋の『河童亭』を営み、廃病院に独り暮らす74歳の三宅紘二郎の元に、ある日、1枚の絵葉書が届く。古い絵葉書には達筆で描かれた漢詩が書かれており、その字は紘二郎の兄の征太郎の手によるものだった。

    漢詩を一読した紘二郎は過去の忌まわしい記憶を思い出し、兄を殺すために大

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    2024年06月19日
  • 雪の鉄樹

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    読後、映画を1本見終わったような迫力のある小説だ。
    半分以上読み進めても、雅雪はなぜ他人の子供の遼平の面倒をせっせとみているのか、その祖母はなぜに雅雪に徹底的に冷たいのか。あと数日で会えるという女は誰なのか…全くわからずもどかしく先に先にと読み進める。

    雅雪に遼平、親方に俊夫、文枝、原田、細木老、舞子と郁也、全ての登場人物の描き方が深い。
    情をかけてもらえず育った雅雪と俊夫、舞子。
    才能を見限られ苦しむ俊夫と郁也。
    それらに巻き込まれ波乱万丈の人生を背負い込む雅雪。
    だが、原田や細木老、そして舞子の存在が彼を救う。

    子供を愛せなかった親がいて、そのためにご飯を人と食べられなくなったことも、

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    2024年06月17日
  • ドライブインまほろば

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    少年に対しどんな残忍な仕返しが待ち受けているかと思う不安と同時に、端々に描画される銀河の根っこからの優しさのギャップが最後まで退屈せず読み終えた

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    2024年06月14日
  • 人でなしの櫻

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    遠田潤子『人でなしの櫻』講談社文庫。

    きっと遠田潤子でなければ書けないであろう人間の醜い心の内側を赤裸々に描いた衝撃の小説。

    巻末には浅田檀と竹井清秀の邂逅を描いた特別収録掌編『ギャラリスト浅田檀の邂逅』を収録。

    8歳から精神的な成長を止めた純粋無垢な蓮子に関わる登場人物はまさに皆『人でなし』であり、思い半ばで非業の死を迎える。人間は生きて行く過程でその心を汚してしまうのだろうか。

    天才は紙一重同時言うが、余りにもぶっ飛んでいて、烈しく火傷するような迫力を感じる小説だった。


    ギャラリストの浅井檀に見込まれて、そこそこ絵が売れている日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人

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    2024年06月05日
  • 人でなしの櫻

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    ネタバレ

    一章が終わるまでは、蓮子の回復と、それと並行して清秀が父親などの呪縛から解放されていく話かと思いました。

    それがまさか、清秀が自身の創作意欲のために蓮子を攫ってしまうとは……

    以降、どんどん壊れていく清秀と、壊れたくないといいつつも清秀から離れられず、絵のモデルであり続けようとする蓮子。極端に破滅的になっていく展開に、戦慄すら感じます。

    清秀の病は悪化の一途をたどり、最終的にはこの世を去っていきます。しかし、その時の表情から察するに満足のいく絵を、久蔵の「櫻図」を超えるものを描き切れたと解釈してよいのでしょうか。

    作者の過去作「蓮の数式」の解説に「蓮という花は、綺麗な水では小さな話か咲

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    2024年05月15日
  • 蓮の数式

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    結婚して10年不妊治療をしながら義母と同居の千穂

    事あるごとに不妊を理由に嫌味を言われる

    結婚記念の食事の帰りに夫が帰りに人を車で轢く

    そして男とコンビニで出会いそろばん塾を開いている千穂はそろばんを教えることにする

    男は透といい計算ができず数字が苦手だった

    夫と喧嘩をして義母と争いになり義母を階段から落ちてしまう

    透の元にいった千穂2人は一緒に逃げる

    そして透が偽名である事そして殺人事件に関わっていた

    2人を中心にいろんな人の見えていなかった過去などが見えてくる

    見えていて思っていたわかっていたと思っていて違う一面があった人々

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    2024年03月19日
  • 紅蓮の雪

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    遠田潤子『紅蓮の雪』集英社文庫。

    相変わらず遠田潤子は読者を物語の中に引き摺り込むのが巧い。双子の姉の自殺の真相を追う弟、姉が自殺する1週間前に観劇した大衆演劇、何故か大衆演劇の鉢木座に女形として入団してしまう弟。序盤からの怒涛の展開に気付けば物語の中に佇んでいる自分が居た。

    そして、いつの間にか物語の世界に浸る自分に忌まわしき血脈の呪縛と禁断の真実が鬼気迫るかの如く烈しく襲い掛かって来る。もう何度も駄目だと思いながら、救いの無い物語として嫌な気持ちのままに結末を迎えるのかと思ったのだが……

    読み終えて、これ程ホッとしたことは無い。


    双子の姉、牧原朱里が20歳という若さで自殺する。大

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    2024年03月04日
  • ドライブインまほろば

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    最初から最後までずっと面白かった、考え得る一番良い終わり方で良かった。

    比奈子の母が、相手を不快にさせるとわかってても謝らずにはいられない気持ちも、それを聞かされ続けて辟易する気持ちも、わかるから辛かった。

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    2024年02月11日
  • 雪の鉄樹

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    圧倒的な孤独。こんな描き方があったのか。
    結末が全くわからない段階でもう喉がヒクつくくらい胸が締め付けられる。家だったら絶対泣いてた(病院待合室で読んでた)
    どうか神様、と願うように最後まで読んだ。
    はじめの方は何があったかも語られず、ちょっとイライラしたがちょっと我慢して良かった。傑作だった。

    ドライブインまほろばでこの作者ただものではない!と勝手に目をつけてたのが間違いでなかったと証明された気分

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    2024年02月03日
  • 二周目の恋

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    恋愛小説のアンソロジー。
    著者ラインナップが『一穂ミチ・窪美澄・桜木紫乃・島本理生・遠田潤子・波木銅・綿矢りさ』こんなの全員海老の天ぷらじゃん。海老天しかない天丼じゃん…。
    私はれんこんの天ぷらが一番好きだけど。文芸誌の恋愛特集のために書き下ろされた作品をまとめたもの。
    どれもほんとーーーによかった。全部好き。
    なんか恋愛ってどうしても自分の生きてきた環境から受け取った価値観がインストールされて、それがよくも悪くも作用してるよなあと読んでいて思うのだった。
    あとけっきょく他人と深く向き合うことは自分と深く向き合うことでもあって、そらつらいわあ…。
    ヒリヒリしてて苦しくて、でも文字からそれを体感

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    2024年01月29日