【感想・ネタバレ】緑陰深きところのレビュー

あらすじ

業を背負う男たち、奇蹟のロードノベル。

兄さん、今からあんたを殺しに行くよ――。
大阪ミナミでカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、ある日一通の絵葉書が届いた。葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。50年前、紘二郎の住む廃病院で起きた心中事件。愛した女、その娘、彼女たちを斬殺した兄……人生の終盤を迎えた紘二郎は、決意を固めた。兄を殺す、と。
思い出の旧車を手に入れ、兄の住む大分日田へ向かおうとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。必死に止めようとする様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。
かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の昏い過去。あまりにも陰惨な心中事件の真相とは。リュウの身体に隠された秘密とは――? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。2020年直木賞候補となり、いま最も注目を集める作家が贈る、渾身の一冊。

※この作品は過去に単行本として配信されていた『緑陰深きところ』 の文庫版となります。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物が背負う過去や想いは非常に重たいものがあるのに、瑞々しさがあり、読後間が清々しい。過去の絃次郎と睦子の恋愛の様子や青春の様子は、とても爽やか。だからこそ、事件の凄惨や人物の苦しさがツラい。最後のシーンは、緑の背景に金髪の人、コンテッサの赤が鮮やかに思い浮かぶ。タイトルの漢詩の意味も、深い。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

すごいすごい感動した感動したこんなにも心震えた物語はないです。ロードノベルミステリー読み終わってもう一度読み返したくなってしまいました。回想を先に読んで次に第一章から読むと別の物語に
感じてしまうでしょう。ラスト近くの殺人の真相は思いもよらない展開に、こんなにも思い入れの深い物語は今までになかった。出てくる登場人物皆好きだよ。皆長く生きてほしかった。あなたも読んで興奮して下さい。涙して下さい。感動して下さい。

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2024年12月23日

Posted by ブクログ

遠田潤子『緑陰深きところ』小学館文庫。

74歳の老人と25歳の若者の不思議なコンビの旅路を描いたロードノベル。遠田潤子がロードノベルとは非常に珍しいと思ったが、物語の重さはやはり遠田潤子だった。

苦しいくらいに重い全く救いの無いと思われた物語は意外な方向に向かい、予想を覆す結末で完結する。恐るべし遠田潤子。


大阪ミナミでカレー屋の『河童亭』を営み、廃病院に独り暮らす74歳の三宅紘二郎の元に、ある日、1枚の絵葉書が届く。古い絵葉書には達筆で描かれた漢詩が書かれており、その字は紘二郎の兄の征太郎の手によるものだった。

漢詩を一読した紘二郎は過去の忌まわしい記憶を思い出し、兄を殺すために大分の日田に向かうことを決意する。50年前、兄の征太郎は紘二郎が唯一愛した女性、睦子とその娘の桃子、さらには寝たきりの睦子の父親を斬殺していたのだ。紘二郎は中古車屋から思い出のある旧車コンテッサを購入し、旅に出ようとする。

しかし、その前に現れたのは紘二郎にコンテッサを売った中古車屋の元店長、蓬莱リュウだった。リュウの話によれば、そのコンテッサはニコイチの不良車で安全の保証は出来ないとのことだった。リュウが必死に止める様子にほだされ、紘二郎は交代運転手としてリュウを雇うことになり、孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まる。

かつて紘二郎が愛した睦子と僅か2年暮らした町、リュウの中古車屋の元従業員との邂逅、コンテッサの故障と様々な出来事を通じて明らかになる2人の過去……

本体価格820円
★★★★★

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2024年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中まではいらいらして読みました。主人公に全く共感できず、ひとりよがりの傲慢な老人の思考回路がめちゃめちゃ腹立たしかったです。暗くて重い人生を選んで、いつでも別の選択肢があったのにそれに気付かず、自分中心の道ばかり選んでいるのに、人の所為にしているし、浅はかにもほどがあると思いながら読みました。

それに比べ、周りの人の善良なこと。兄の死を知ったところからは、ざまあみろと思いましたね。ただ、共感は全くできませんでしたが、それだけ没入しながら読めました。遠田さんの作品としては、他の作品の方が好きですが、これはこれで面白かったです。

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

コンテッサ1300クーペに乗って兄を殺しに行く。
物騒なロードノベルの始まりだ。そんな古い車で、70代の男がなぜいまさら兄を狙いに行くのか。しかも途中で追いかけて来た、金髪のひょろっとしたホームレスの兄ちゃんとともに。

兄の征太郎が、幸せにすると誓った嫁が死んだからなのだが、復讐に出る弟の紘二郎にはそうするわけがあった。そして、追いかけて来たリュウは不良な中古車を売っただけの若者なのか。

遠田潤子、やっぱり毎度のことながらその理由が気になって一気に読んでしまった。全員悪者ではないのに、どんどん人生の歯車が狂って行く様はすごい。

先に逝くのは不幸だが、看取ってくれる人がいるのは幸せと言うのだろうか。

そして幽霊医院の戸を叩いてみるのも悪くはなかったみたいだ。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

暗くて重くて辛くてたまらないのに、遠田さんが紡ぐ物語の最後にはいつも必ずかすかな光が見えます。

想い合っていた女性と無理やり引き離されたうえに、彼女を奪い去った兄によって彼女とその娘が殺されてしまった。その兄から半世紀近く経って届いた葉書を見て、兄を殺しに行く決意をする主人公。そしてなぜだかその地まで同行することになる若者。

主人公ほどには歳を取っていませんが、同じく昭和から令和を生きている者として、さらには登場する大阪に馴染みがある者として、こんな話が実際にあるわけはないけれどあるかもしれないと思わされます。

これもひとつのハッピーエンド。

余談ですが、『ボックス!』と舞台がかぶっています。

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2024年07月29日

Posted by ブクログ

なんだかピンと来なかった。登場人物の振る舞いが納得できないことだらけ。リュウという人物と出会ったことで主人公の心が変化して行くのはわかるが、たった数日で70年余り壮絶な人生を過ごしてきた人が、こんなに変わるかな?リュウの恋人という女性の設定も取ってつけたよう。漢詩とかオールドカーとか雛飾りとか、小道具は凝ってるけど、それだけ。リーダビリティは高いからすぐ読める。

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2025年01月03日

Posted by ブクログ

大阪ミナミの旧家の医者の息子と言っても70歳を超えてるんだけど、大分の日田の兄からハガキが届く。
二人の父は戦争帰りで命の恩人の娘と兄が許嫁となる。結婚式の日、弟と娘が駆け落ちしていた。連れ戻された娘と兄は結婚するが5年後に嫁と娘と義父を巻き添えにした無理心中をはかり、死にきれずに刑期を務めた後、日田で暮らしていたようだ。
70歳を超えた弟が最愛の女を殺された恨みを晴らすために思い出の日野のコンテッサに乗って兄を殺しに旅立つ。このコンテッサがニコイチの悪徳車で売った店の元店長がついてきたり、病気だったり、その恋人が現れたり、クネクネしながら最期に向かう。
そして兄は既に死んでおり、無理心中というより妻の精神混乱による殺人の濡れ衣を自ら買っていた事がわかる。
生きるとは、血筋とは、恨みとは、なんだか難しい話が飛び交いながら終わっていく。

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2024年08月24日

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