遠田潤子のレビュー一覧
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ネタバレ期待を裏切らない遠田潤子、この作品でも暗くて重い魂のブルースが延々と刻まれていく。楽しい話ではない、やるせない思いが募るばかりなのに、ページを繰る手が止まらない。
登場人物ほぼ全員が不幸を背負っているが、特に透という算数障害を持つ男が際立っている。「不幸を捨てに行くゴミ箱」…なんという役どころを作ってしまうのか。
登場人物たちの不幸が、透に収斂されていく切なさ。際立った悪役が2名いるのだが、彼らが(直接的には)透に不幸を捨てなかった稀有なキャラだという皮肉な設定も、上手いというか際立っているというか…。
遠田潤子の小説を読むと、「こういう生き方をしたくない」と思うことが多いが、この作品で -
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彼女の本は、これで3冊目。
「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、
今回も期待大。
35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、
夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。
そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。
千穂は彼の力になりたいと手をさしのべるが、
疑い深い夫に、二人の関係を一方的に攻められ、
これまで押さえてきた感情を爆発させ、ある事件を起こしてしまう。
そして、千穂と透、二人の遠飛行が始まる・・・
帯にある「熱量がすごい!」の言葉通りに、すごい展開になっていく。
これでもか!というくらいに、てんこ盛りなのは、 -
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彼女の本を読むのは2冊め。
1冊目の「雪の鉄樹」では、思わず涙があふれましたが、
今回は、読み終えた後に、ほぅ~。。。というため息に似た感動が。。。
歌詞のない旋律を母音のみで歌う人気歌手、実菓子。
彼女の自伝インタビューをすることになった、ギタリストの青島多聞。
2人は幼い頃、同じ家で育ち、
さらに、実菓子の夫は、多聞の亡兄だった。。。
読み初めて、多聞が彼女を避けているのがわかり、
過去に、何か複雑な問題があったことがわかってくる。
それでも、断れないインタビューの仕事をこなそうとするのだが、
そこで語られる、おぞましく悲しい出来事に、驚愕する。。。
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あまりに凄絶な、愛憎渦巻く家族の物語。いわくありげな人間関係が少しずつ小出しに語られるので、それに引っ張られて読む手は止まらず。どろどろしてひどい物語なのに、それでもぐいぐい惹きつけられて一気読みでした。そして実はミステリ……だったのだけれど。凄まじいまでの物語に引き込まれるあまり、どのあたりが事件であり謎であったのか全然気づかなかった! 愕然としてしまいました。
登場人物にどうも醜悪な人間が多くて、えげつない物語ではあったのだけれど。読後感はそう悪くないし、印象としては美しい物語という気がしました。しかし実菓子の願いがそういうものだったとは……それもまた、あまりに凄絶。「幸せ」という言葉の重 -
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備前焼の窯の温度は約1200度。
この温度になるまでの大変さと、時間をかけて焼いたものでも少しでも気に入らない点があるとその場で割ってしまうということに、焼き物の世界の厳しさを感じました。
天上火窯の人間国宝の祖父、深田路傍に優しくのびのびと育てられた深田城。轆轤名人の父、深田天河の冷たさに、幼い頃から悩み続け、いつの間にか憎しみさえ持つようになります。彼は備前焼の天上火窯を受け継ぐことへの葛藤と父への疑問を抱えながら成長していきます。
なぜ父は自分に冷たいのか?
その事をずっと疑問に持ちつつ、怒りに変わりそれでも父のことが気になってしまうのは、やはり親子だからなんでしょうね。
深田城が -
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備前の伊部が舞台と聞いて、それだけで紐解いた。備前焼のことに詳しくもなければ、伊部の場所は知っているけど、あまり詳しくもない。遠田潤子さんは初読み。けれども、なんとも懐かしい景色と世界だった。
父子の確執は、漫画「美味しんぼ」や多くの小説で描かれた永遠のテーマである。まさか、ここまでストレートに描いているとは思わなかった。もっとどろどろとしたり、陰湿な作風かと思っていた。3代に渡る父親と息子の愛憎。それを見守るおばあちゃん、死に別れた母親、付き合い成長してゆく同級生、という3人の女性。物語は土と火の芸術、作陶が形を作ってゆく。
伊部(いんべ)を歩き回ったことはないが、親戚家があったこともあ