遠田潤子のレビュー一覧

  • 銀花の蔵(新潮文庫)

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    遠田潤子『銀花の蔵』新潮文庫。

    数奇な運命を背負った女性の半生記という感じでストーリーは展開するのだが、その実は主人公の女性が醤油蔵を守り続ける一族の業と宿命を乗り越えて、本当の家族を造る姿を描いた何とも重厚な物語であった。

    失念していた。遠田潤子の小説は一筋縄ではいかないのだ。

    画家を夢見ていた父親の尚孝が実家の醤油蔵を継ぐことになり、父親と母親の美乃里と3人で大阪から奈良に引っ越し、新たな環境の中で暮らすことになった娘の銀花。意地悪な父親の妹で銀花の一つ年上の桜子、母親の盗癖、祖母の多鶴子と父親の不仲、自らの出生の秘密に悩みながらも銀花は成長していく。しかし、銀花が中学3年生になった

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    2022年10月31日
  • ドライブインまほろば

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    親に虐待されて育って「生まれていいことなんか何もなかった」と語る憂。極悪人に見える親やその兄も苦しみを背負い、そして大切にしたい存在を抱えている。 
    ストーリーに引き込まれて一気読み。

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    2022年07月12日
  • ドライブインまほろば

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    一気読み。
    連鎖する虐待を止めることはできないのか?
    何が正しいのか?
    自分を救うために親を殺すのがそんなにいけないことなのか?
    ずっと「なんとかしたってくれ」と祈りながら読んだ。
    誰も悪くないかもしれないけどみんな罪人。
    普通の人との違いなんて紙一重だなと。
    この作家さんの作品は初めて読んだけど、またもうひと作品読みたくなった。

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    2022年06月18日
  • オブリヴィオン

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    ネタバレ

    森二は最初から破滅の匂いが漂っていた。(結果は予想外でホッとしました)
    ボタンの掛け違いで森二が妻 唯を殺してしまうのだが、冬香の実の父親が誰かということを考えると、やり切れない事件ではあった。
    森二含めた残された家族が少しでも幸せになることを望みます。

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    2022年06月09日
  • 廃墟の白墨(はくぼく)

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    読後に感じたのは「悪い夢から醒めたよう」だった。

    初手に提示された謎は程良く回収されては新たな疑問を残していく。とにかく息をつく間がなく物語に惹き込まれてしまった。

    モノローグと回想で物語は進むが時系列が乱れる事がなく非常に読み易い。もし本作が推理小説であったなら3人の語り部は同じ事象を違う視点から伝える役割を担ったかもしれない。が、実際は三者三様の物語があり飽きにくく謎解きの必要性も感じなかったので没入感が強かった。

    登場人物の誰1人として完全に物語の真相を知らず、読者も同じ様にピース繋いでいく楽しみがあった。その際、現在と過去の対比が舞台となる廃墟と相まって物悲しい本作独自の雰囲気を

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    2022年05月02日
  • ドライブインまほろば

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    最初から最後まで読む手を止められなかった。
    それぞれの立場で考えると、自分も決してそうはならないという自信がない。それだけに救いを求めながら読み続けた。
    結末も無理なく、嫌な感じもなく読み終えることができてよかった。

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    2022年04月24日
  • ドライブインまほろば

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    ネタバレ

    幼い子供が店に転がり込んでそれを手伝うところに「アンチェルの蝶」を、酷い環境で育った兄弟というところに「オブリヴィオン」を想起させられます。

    ただ、それらの作品以上に暗くて重い内容。憂の境遇はもとより、他の人物たちも何かしら過去に “傷” を負っていて、彼らには憐憫の情が芽生えてきます。

    ただ、流星は凄絶な過去があるとはいえ憂への仕打ちがあまりに酷く、後半にその過去が明かされはしましたが同情の余地はないかな、と。

    銀河については流星の過去を知らなかったことを差し引けば、流星に比べれとまだ救いがある方かとは思いますが、やはり過去に数多の女たちを売ってきたことを考えると、感情移入はしにくかっ

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    2022年03月24日
  • アンチェルの蝶

    購入済み

    愛でした

    素晴らしい作品でした。読みながら藤太とほづみの幸せを願うのにそちらに向かう結末が見えない。どうして子どもがこんな思いをしなければならないのか、どうして子どもがこれほどの罪を背負わなければならないのか。そしてなにより悔しく辛いのはこのようなことが完全なフィクションとは言い切れず、実は似たような、もしくはもっと酷い地獄の環境で育っている子どもが想像以上にいるということです。

    #感動する #泣ける #切ない

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    2022年06月26日
  • オブリヴィオン

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    とても重々しい気持ちで読み切った。傷ついた人との接し方。人なんてどんな傷を背負っているかわからない。やり直しの効かない人生なんてない。

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    2022年02月23日
  • アンチェルの蝶

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    人生を諦め切った人間が、一人の女児の存在により再生していく姿を、見事に描いている。とても感動しました。

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    2022年02月19日
  • 蓮の数式

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    算数障害の男とそろばん塾の女の逃避行
    ってことになるのかな
    女は既婚だが夫と姑に挟まれて・・・
    あの展開はしょうがないよなぁ
    でもやりすぎ
    流れの中で徐々に明らかになる男の過去
    そして男を追う男たち
    引き込まれました

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    2021年10月19日
  • 雪の鉄樹

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    うまく表現できないが、一番心に染みをつくった本。とても落に落ち込んだ時に読んだ。そういうときにまた読みたくなる。

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    2021年10月15日
  • 蓮の数式

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    長年の不妊治療と四度の流産と、高圧的な夫、姑との苦しい生活から逃れたのは、年下の影のある青年、高山透との出会いだった。
    そろばん塾を経営していた千穂は、彼が算数障害を抱えて苦しんでいることに気づく。
    浮気を疑う夫に暴行され、それを止めない姑。ボロボロになった千穂が頼ったのは、透だった。
    罪に罪を重ねて、二人の逃避行が始まる。
    久しぶりの遠田作品。
    毎回読む前からわかっているのに、ズンと気持ちが凹む。これでもかという程、理不尽な目に合い、闇を抱えた主人公につい感情移入してしまう。
    逃げて、逃げて、逃げ切って欲しいとラストまで一気に読んだ。
    終章の恵梨視点の内容に唖然とし、無性に腹が立つ。子供だっ

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    2021年09月27日
  • アンチェルの蝶

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    素晴らしかった!この稀有な物語に、心からの喝采を。
    丹念に、一人ひとりの人間の影を深く鋭く描きながら、最後にあてたスポットライトの光に、まだ小さな蝶が高く浮かび上がる。それは未来で、希望だ。
    藤太とほづみだけでなく、秋雄もいづみも、その光の眩さに救われるのだ。
    本作は、間違いなく、遠田さんの到達点のひとつであろう。
    今後の躍進を大いに期待している。

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    2021年09月09日
  • オブリヴィオン

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    ネタバレ

    どうしようもない暗さにどんどん気持ちが沈むけれど、救いのないまま終わることはないのが遠田潤子だとわかっているから、その一条のひかり見たさに最後まで。

    ある特殊な才能のせいでギャンブル狂の父親を死なせてしまった主人公。ようやく掴んだ幸せも自らの手で終わらせてしまう。出所後の彼を待っていたのは、自分に敵意剥き出しの娘と、切れないしがらみ。

    非科学的なその才能が遠田作品の中にあっては異質に感じられましたが、特異な才能のせいで虐待を受ける子どもはいるかもしれません。

    最初と最後では実兄を見る目が180度変わる。泣いた。

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    2021年05月04日
  • カラヴィンカ

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    遠田潤子さんは、登場人物を絶望の淵に陥れるのが絶妙に上手い作家さんですが、この作品はその中でも最も強烈なインパクトのある物語でした。

    主人公の売れないギタリスト、青鹿多聞のところへ歌詞のない旋律を歌う容貌のすばらしく美しい歌手の実菓子から自伝のインタビューの相手になって欲しいと指名の電話がかかってきます。
    多聞と兄の不動は丹羽谷村の「藤屋」と呼ばれる旧家の息子で、不動は一年三カ月前に亡くなっています。
    実菓子は同じ村の旧家「斧屋」の娘で不動の妻であり、その前は多聞と不動の父の青鹿馨の妻でした。

    インタビューの内容は実菓子と不動と多聞の兄弟が実菓子の母の鏡子が父の馨の妾となって一緒に暮らし始

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    2021年03月22日
  • オブリヴィオン

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    ネタバレ

    森二が唯を殺めた理由、圭介と唯の関係、冬香の本当の父親は誰なのか。

    そうした過去の謎に加え、森二に絡んでくる沙羅、光一などとの絡みがどうなっていくのかなど、気になる要素が満載でページをめくる指を止められずに一気読み。更に、森二たちの過去が明らかになるに従い、自分が森二にどんどん感情移入していきました。

    そのため、森二がふいに幸せだったころを思い出すたびに、現状の辛い状況とのギャップの激しさにこっちまで辛い気持ちになってしまったりも…… 森二や圭介、唯たちだけでなく、最初は嫌なヤツという印象だった光一にも、その過去を知った後は同情する気持ちが芽生えたりもしました。

    ここまで人物たちに感情移

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    2020年11月24日
  • オブリヴィオン

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    始めはすごく冷たい印象の小説だったが、読み終わったときは温かい気持ちになった。
    全部がハッピーエンドではなかったが、それが心地よかった。
    遠田さんの本を読むのは初めてだったが、迫力のある文章だと思った。
    森ニの一人称で話が進んでいくため、彼の過去や現在の感情の動きにとても引き込まれた。

    登場人物が皆、自分の過去と戦うとてもよい小説だと思った。

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    2020年11月13日
  • 蓮の数式

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    ネタバレ

    これは完成度の高い大人の小説だと思いました。

    主人公は結婚して13年間、高圧的な夫の安西真一から、義母を殺して逃げようとした千穂35歳と、一緒に逃げた高山透27歳。

    千穂は、夫と義母から異常なまでに子供を望まれ、不妊治療を何年もしていましたが、4度の流産を繰り返しています。
    真一は結婚してから、性格も性癖も歪んだ倒錯的な人物だったことがわかります。

    高山透は数字認識に障害があり、そろばん塾の講師であった千穂と知り合います。
    透には子供の頃の殺人事件の犯人として、追いかけてくる新藤賢治という男がいます。
    そしてまた透は人との交流を持つ手段をセックス以外に待っていない女性との関係の絶えない人

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    2020年10月29日
  • 冬雷

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    古風な本格ミステリー。
    横溝正史のような古風なシキタリに縛られた街の中で繰り広げられる愛憎劇だが、青春要素もありミステリ要素もあり非常に面白い。
    登場人物は少ないので犯人は検討がつくが、辿り着くまでがロジカルに展開され楽しかった。

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    2020年10月22日