遠田潤子のレビュー一覧
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遠田潤子『緑陰深きところ』小学館文庫。
74歳の老人と25歳の若者の不思議なコンビの旅路を描いたロードノベル。遠田潤子がロードノベルとは非常に珍しいと思ったが、物語の重さはやはり遠田潤子だった。
苦しいくらいに重い全く救いの無いと思われた物語は意外な方向に向かい、予想を覆す結末で完結する。恐るべし遠田潤子。
大阪ミナミでカレー屋の『河童亭』を営み、廃病院に独り暮らす74歳の三宅紘二郎の元に、ある日、1枚の絵葉書が届く。古い絵葉書には達筆で描かれた漢詩が書かれており、その字は紘二郎の兄の征太郎の手によるものだった。
漢詩を一読した紘二郎は過去の忌まわしい記憶を思い出し、兄を殺すために大 -
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読後、映画を1本見終わったような迫力のある小説だ。
半分以上読み進めても、雅雪はなぜ他人の子供の遼平の面倒をせっせとみているのか、その祖母はなぜに雅雪に徹底的に冷たいのか。あと数日で会えるという女は誰なのか…全くわからずもどかしく先に先にと読み進める。
雅雪に遼平、親方に俊夫、文枝、原田、細木老、舞子と郁也、全ての登場人物の描き方が深い。
情をかけてもらえず育った雅雪と俊夫、舞子。
才能を見限られ苦しむ俊夫と郁也。
それらに巻き込まれ波乱万丈の人生を背負い込む雅雪。
だが、原田や細木老、そして舞子の存在が彼を救う。
子供を愛せなかった親がいて、そのためにご飯を人と食べられなくなったことも、 -
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遠田潤子『人でなしの櫻』講談社文庫。
きっと遠田潤子でなければ書けないであろう人間の醜い心の内側を赤裸々に描いた衝撃の小説。
巻末には浅田檀と竹井清秀の邂逅を描いた特別収録掌編『ギャラリスト浅田檀の邂逅』を収録。
8歳から精神的な成長を止めた純粋無垢な蓮子に関わる登場人物はまさに皆『人でなし』であり、思い半ばで非業の死を迎える。人間は生きて行く過程でその心を汚してしまうのだろうか。
天才は紙一重同時言うが、余りにもぶっ飛んでいて、烈しく火傷するような迫力を感じる小説だった。
ギャラリストの浅井檀に見込まれて、そこそこ絵が売れている日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人 -
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ネタバレ一章が終わるまでは、蓮子の回復と、それと並行して清秀が父親などの呪縛から解放されていく話かと思いました。
それがまさか、清秀が自身の創作意欲のために蓮子を攫ってしまうとは……
以降、どんどん壊れていく清秀と、壊れたくないといいつつも清秀から離れられず、絵のモデルであり続けようとする蓮子。極端に破滅的になっていく展開に、戦慄すら感じます。
清秀の病は悪化の一途をたどり、最終的にはこの世を去っていきます。しかし、その時の表情から察するに満足のいく絵を、久蔵の「櫻図」を超えるものを描き切れたと解釈してよいのでしょうか。
作者の過去作「蓮の数式」の解説に「蓮という花は、綺麗な水では小さな話か咲 -
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遠田潤子『紅蓮の雪』集英社文庫。
相変わらず遠田潤子は読者を物語の中に引き摺り込むのが巧い。双子の姉の自殺の真相を追う弟、姉が自殺する1週間前に観劇した大衆演劇、何故か大衆演劇の鉢木座に女形として入団してしまう弟。序盤からの怒涛の展開に気付けば物語の中に佇んでいる自分が居た。
そして、いつの間にか物語の世界に浸る自分に忌まわしき血脈の呪縛と禁断の真実が鬼気迫るかの如く烈しく襲い掛かって来る。もう何度も駄目だと思いながら、救いの無い物語として嫌な気持ちのままに結末を迎えるのかと思ったのだが……
読み終えて、これ程ホッとしたことは無い。
双子の姉、牧原朱里が20歳という若さで自殺する。大 -
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恋愛小説のアンソロジー。
著者ラインナップが『一穂ミチ・窪美澄・桜木紫乃・島本理生・遠田潤子・波木銅・綿矢りさ』こんなの全員海老の天ぷらじゃん。海老天しかない天丼じゃん…。
私はれんこんの天ぷらが一番好きだけど。文芸誌の恋愛特集のために書き下ろされた作品をまとめたもの。
どれもほんとーーーによかった。全部好き。
なんか恋愛ってどうしても自分の生きてきた環境から受け取った価値観がインストールされて、それがよくも悪くも作用してるよなあと読んでいて思うのだった。
あとけっきょく他人と深く向き合うことは自分と深く向き合うことでもあって、そらつらいわあ…。
ヒリヒリしてて苦しくて、でも文字からそれを体感 -
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読んでみたいけど、なかなか手が伸びなかった作家さんばかりのアンソロジー。思わず買ってしまった。
『最悪よりは平凡』 島本理生
主人公の和田魔美ってどんな女性なんだろうか?会ってみたいと思った。とても魅力的らしい。読んでて、真面目でしっかりとした女性だと思うんだけど、なぜか下心がある男ばかり寄ってくる。本人はそんなつもりは全くないのに。身体が魔性の女みたいに言われてるし。最後はいい感じに終わって良かった。
『深夜のスパチュラ』 綿谷りさ
バレンタインデーは恋する女子にとっては戦いだねって改めて思った。主人公の可耶ちゃんがチョコを買いに行くところから渡すまでの奮闘が読んでて面白かった。ガトーシ -
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遠田潤子『雨の中の涙のように』光文社文庫。
先日、惜しくも亡くなった北上次郎が、本作の帯に『一編一編が実にうまく、たっぷり読ませることは最初に書いておく。問題は、心温まる話が多いことだ。なんだか遠田潤子らしくない。』という言葉を残している。確かにこれまでの重く、暗く、ハードな小説の多い遠田潤子とは味わいが異なる作品である。
人気アイドルから俳優に転身した堀尾葉介が関わった様々な人びとたちは、知らぬうちにその人生を大きく変えることになる。第三者の目を通して、堀尾葉介の人物像を浮き彫りにする連作短編かと思っていたが、第七章から事情が変わって来る。最終章で明らかになる堀尾葉介の人生の闇とその結末 -
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大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが……。第1回未来屋小説大賞を受賞した、長編ミステリ!
町人がよってたかって冤罪でっち上げはあかんだろう。