遠田潤子のレビュー一覧
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この著者の紡ぐ物語がたまらなく好きです。たいていは暗い話で、めげそうになるぐらい重いときもあるけれど、最後に必ずひと筋の光が見えます。だから、著者が「救いはあろうがなかろうが気にならない」と言っていると知ってちょっと驚きました。
「救いがないならないできっちり書くべき」というのは確かにそう。安易なハッピーエンドに走らず、でも主人公たちのことを放り出したりはしないから、この人生に惹きつけられます。
こんな子どもに「生きていてひとつもいいことなんかなかった」なんて言わせちゃいけない。生きるのに理由は要らないとしても、生きたいと思ってほしい。 -
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本の雑誌「おすすめ文庫2017」第1位
庭師の雅雪は、20歳の時から
両親を失った小年、遼平の面倒を見続けていた
初めて、預かった時にはまだオムツをしていた
男の子は中学生になっていた
庭師の男は、なぜここまで献身的なのか
何を償おうとしているのか
遼平には、未だ真実を言えないでいた
読みながら、少年と共に苦しむ
庭師はなぜそれほど自己犠牲を続けるのか
許されない罪、終わりのない贖罪
憎しみに隠れた愛情
贖罪に伴った悦び
報われる事はないのかと思われた庭師の献身が
真実の告白と共に受け入れられていく
とても素敵な作品でした
庭師が最後まで過酷すぎるけれど
人間の渇望、羨望が苦しいほどに描かれます -
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(2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。
この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。
面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く、より瑞々しく、そしてより甘く仕上がってきていて面白いと思う。
桜木紫乃「無事に、行きなさい」も印象的だった。
別れを告げる言葉を持たない民族のさよなら、無事に、行きなさい。別れる人の無事を願うことができるなんて懐が深いと思った。私は馬鹿みたいに重たいから、倫彦の無事なんて絶対願わない。私の預かり知らぬところで不幸になってくれと思う。
意外だなって思ったのは窪美澄「海鳴り遠くに」
この人こんなキャラクターも描けるのね、という点で意外だった。絹香のような子、珍しい気がする。最初に読んだのが『やめるときも、すこやかなるときも』だったから、多分その影響を引きずっているのだろうけど。年が明けたら『さよなら、ニルヴァーナ』読もうかなって計画中。 -
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初めての遠田潤子さん、こんなに面白いなんて!
北上次郎氏がこの人の本は〜ってよく話題に出していたのでずっと気になっていた。
今作は連作短編集で、中心にいるのは堀尾葉介という芸能人。
過去に取り返しのつかないことや何かに囚われている人たちが彼との邂逅で人生を前に進めるだけの力をもらうみたいな話。
ぜんぶで8話あるけど全てがとんでもなく面白い。
2話目の時点でこのまま読み終わりたくないなって感じるくらいストライクすぎた。
探偵の話もいいし、炭焼きの話も好きだし、たまご屋さんの話もいいなあ。
遠田さんの持ち味はもっと人が苦しむ話が多いみたい(笑)今作は明確に救いが待ってるので安心できた。 -
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遠田潤子『緑陰深きところ』小学館文庫。
74歳の老人と25歳の若者の不思議なコンビの旅路を描いたロードノベル。遠田潤子がロードノベルとは非常に珍しいと思ったが、物語の重さはやはり遠田潤子だった。
苦しいくらいに重い全く救いの無いと思われた物語は意外な方向に向かい、予想を覆す結末で完結する。恐るべし遠田潤子。
大阪ミナミでカレー屋の『河童亭』を営み、廃病院に独り暮らす74歳の三宅紘二郎の元に、ある日、1枚の絵葉書が届く。古い絵葉書には達筆で描かれた漢詩が書かれており、その字は紘二郎の兄の征太郎の手によるものだった。
漢詩を一読した紘二郎は過去の忌まわしい記憶を思い出し、兄を殺すために大分の日田に向かうことを決意する。50年前、兄の征太郎は紘二郎が唯一愛した女性、睦子とその娘の桃子、さらには寝たきりの睦子の父親を斬殺していたのだ。紘二郎は中古車屋から思い出のある旧車コンテッサを購入し、旅に出ようとする。
しかし、その前に現れたのは紘二郎にコンテッサを売った中古車屋の元店長、蓬莱リュウだった。リュウの話によれば、そのコンテッサはニコイチの不良車で安全の保証は出来ないとのことだった。リュウが必死に止める様子にほだされ、紘二郎は交代運転手としてリュウを雇うことになり、孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まる。
かつて紘二郎が愛した睦子と僅か2年暮らした町、リュウの中古車屋の元従業員との邂逅、コンテッサの故障と様々な出来事を通じて明らかになる2人の過去……
本体価格820円
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読後、映画を1本見終わったような迫力のある小説だ。
半分以上読み進めても、雅雪はなぜ他人の子供の遼平の面倒をせっせとみているのか、その祖母はなぜに雅雪に徹底的に冷たいのか。あと数日で会えるという女は誰なのか…全くわからずもどかしく先に先にと読み進める。
雅雪に遼平、親方に俊夫、文枝、原田、細木老、舞子と郁也、全ての登場人物の描き方が深い。
情をかけてもらえず育った雅雪と俊夫、舞子。
才能を見限られ苦しむ俊夫と郁也。
それらに巻き込まれ波乱万丈の人生を背負い込む雅雪。
だが、原田や細木老、そして舞子の存在が彼を救う。
子供を愛せなかった親がいて、そのためにご飯を人と食べられなくなったことも、楽しい思い出がないことも、お皿を灰皿にしてしまうことも普通のこととして育った雅雪。だが自分を削ってでも貫くその信念は間違ってなかった。ラストのシーンでそれがわかる。
蘇鉄、割箸鉄砲、竹垣結い、庭師の仕事、会食恐怖症、たらし、釣忍、自分の育て直し…。
なぜか全て心に残った言葉だ。
最後に。永井さん、クロマツと蘇鉄のある扇の家を潰さんといて下さい、お願いします。
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遠田潤子『人でなしの櫻』講談社文庫。
きっと遠田潤子でなければ書けないであろう人間の醜い心の内側を赤裸々に描いた衝撃の小説。
巻末には浅田檀と竹井清秀の邂逅を描いた特別収録掌編『ギャラリスト浅田檀の邂逅』を収録。
8歳から精神的な成長を止めた純粋無垢な蓮子に関わる登場人物はまさに皆『人でなし』であり、思い半ばで非業の死を迎える。人間は生きて行く過程でその心を汚してしまうのだろうか。
天才は紙一重同時言うが、余りにもぶっ飛んでいて、烈しく火傷するような迫力を感じる小説だった。
ギャラリストの浅井檀に見込まれて、そこそこ絵が売れている日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人間を描けず、人間の死に執着する絵ばかりを描いていたことから『死体画家』と揶揄されていた。
ある晩、清秀は幼い頃から知る間宮という人物から急な電話でとあるマンションに呼び出され、そこに駆け付けると、長らく絶縁したままの料亭『たけ井』で腕を振るう天才料理人の父親、康則が冷たくなっており、その傍らには全裸で震える少女、蓮子の姿があった。
長年、父親の運転手を務めていた間宮から事情を聞くと、父親が11年前に8歳の蓮子を誘拐し、それ以来、マンションの一室に監禁していたのだという。清秀は自分を認めずに、さらには母親を死に追いやった父親のあり得ない犯罪に激しい嫌悪を抱くと同時に8歳から精神的な成長を止めた純粋無垢な蓮子に惹かれていく。
定価902円
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ネタバレ一章が終わるまでは、蓮子の回復と、それと並行して清秀が父親などの呪縛から解放されていく話かと思いました。
それがまさか、清秀が自身の創作意欲のために蓮子を攫ってしまうとは……
以降、どんどん壊れていく清秀と、壊れたくないといいつつも清秀から離れられず、絵のモデルであり続けようとする蓮子。極端に破滅的になっていく展開に、戦慄すら感じます。
清秀の病は悪化の一途をたどり、最終的にはこの世を去っていきます。しかし、その時の表情から察するに満足のいく絵を、久蔵の「櫻図」を超えるものを描き切れたと解釈してよいのでしょうか。
作者の過去作「蓮の数式」の解説に「蓮という花は、綺麗な水では小さな話か咲かせられず、泥水でこそ大きく花開く」とありました。「蓮」が清秀の生きざまを象徴しているのであれば、最後は「大きく花開いた」と思いたいところです。
また、艶めかしさが魅力だけど臭う絵具「腐れ胡紛」の存在や、康則が治親に言い放った「体裁だけ整えた上っ面の美がどれだけ愚かで卑しいか」というところに、蓮に共通する象徴的なものを感じました。
過去作を連想させる要素が多かったのですが、そうした象徴的なところによるのか、焼き直しという印象はなく、どの作品とも違う強いインパクトのある作品でした。 -
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遠田潤子『紅蓮の雪』集英社文庫。
相変わらず遠田潤子は読者を物語の中に引き摺り込むのが巧い。双子の姉の自殺の真相を追う弟、姉が自殺する1週間前に観劇した大衆演劇、何故か大衆演劇の鉢木座に女形として入団してしまう弟。序盤からの怒涛の展開に気付けば物語の中に佇んでいる自分が居た。
そして、いつの間にか物語の世界に浸る自分に忌まわしき血脈の呪縛と禁断の真実が鬼気迫るかの如く烈しく襲い掛かって来る。もう何度も駄目だと思いながら、救いの無い物語として嫌な気持ちのままに結末を迎えるのかと思ったのだが……
読み終えて、これ程ホッとしたことは無い。
双子の姉、牧原朱里が20歳という若さで自殺する。大学の先輩で伊豆の老舗旅館の跡取りとの婚約を破棄して、自殺したのだ。彼女が自殺する1週間前の足取りを追い、遺された双子の片割れ、牧原伊吹は大衆演劇・鉢木座を訪れる。
伊吹は初めての大衆演劇に魅入られるかのように昼と夜の2回の公演を観劇し、公演が終了した後で座長に自分の姉のことを尋ねるが、何も知らないと言われる。
途方に暮れる伊吹の前に座長の息子の若座長・慈丹が現れ、伊吹を鉢木座の女形としてスカウトする。初めは伊吹の加入に難色を示した座長だったが、慈丹と伊吹の熱意に押され、加入を許される。
少しずつ鉢木座に馴染む伊吹は、幼い頃から自分は汚れているのだという思いから他人と触れ合うことが苦手だった。そんな訳で伊吹は座員や客との距離が縮まれば縮まる程、苦痛を感じていたのだ。
やがて明らかになる己の血脈の呪縛と禁断の真実。鉢木座と姉の自殺との関係とは……
本体価格880円
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恋愛小説のアンソロジー。
著者ラインナップが『一穂ミチ・窪美澄・桜木紫乃・島本理生・遠田潤子・波木銅・綿矢りさ』こんなの全員海老の天ぷらじゃん。海老天しかない天丼じゃん…。
私はれんこんの天ぷらが一番好きだけど。文芸誌の恋愛特集のために書き下ろされた作品をまとめたもの。
どれもほんとーーーによかった。全部好き。
なんか恋愛ってどうしても自分の生きてきた環境から受け取った価値観がインストールされて、それがよくも悪くも作用してるよなあと読んでいて思うのだった。
あとけっきょく他人と深く向き合うことは自分と深く向き合うことでもあって、そらつらいわあ…。
ヒリヒリしてて苦しくて、でも文字からそれを体感できるところが小説のおもしろさだよなあ…!名手たちの恋愛アンソロジー超おもしろかった -
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読んでみたいけど、なかなか手が伸びなかった作家さんばかりのアンソロジー。思わず買ってしまった。
『最悪よりは平凡』 島本理生
主人公の和田魔美ってどんな女性なんだろうか?会ってみたいと思った。とても魅力的らしい。読んでて、真面目でしっかりとした女性だと思うんだけど、なぜか下心がある男ばかり寄ってくる。本人はそんなつもりは全くないのに。身体が魔性の女みたいに言われてるし。最後はいい感じに終わって良かった。
『深夜のスパチュラ』 綿谷りさ
バレンタインデーは恋する女子にとっては戦いだねって改めて思った。主人公の可耶ちゃんがチョコを買いに行くところから渡すまでの奮闘が読んでて面白かった。ガトーショコラが出来た時、良かったね、よく頑張ったと声を掛けたくなった。読んでて自分の事を思い出した。チョコレートケーキを作って大失敗した事がある。お菓子作りって材料の計量をちゃんとやらないといけないのに、私はとても適当に計量して大失敗。ものすごく言い訳をしてから食べてもらった覚えがある。
『フェイクファー』 波木銅
波木銅さんはこの本で初めて知った作家さん。着ぐるみに魅せられた人たちの話。自分で作ったり、着ぐるみの写真を撮るのが好き、など好きな理由は人それぞれ。なんとなく現実逃避をしたい人達が集まっている気がした。読んでて二つほど謎があったんだけど、分からないまま終わってそこがモヤっとする。でも面白いと思った。「裁縫は暴力の逆」、「裁縫は、誰かを傷つけたりしない」、「誰にだって秘密はある」という言葉が印象に残った。
『カーマインライン』 一穂ミチ
5歳で家庭の事情で離ればなれになった双子の話。14年ぶりに再開し、2ヶ月一緒に過ごす。14年という時間は関係なく、すぐ馴染むんだけど…。一穂ミチさんの作品はこれで二つ目なんだけど、"人の想い"に何か隠されてる、そんな印象を持ちました。2人の子供の頃の思い出に、天井に星のシールを貼るっていうのがあるんだけど、このシーンが作品で重要かな。
『道具屋筋の旅立ち』 遠田潤子
ずっとイライラ、ムカムカしながら読んでた。真相が分かって同情もするけど、それにしても主人公の優美に対する態度はダメだよね。美味しいものを食べて幸せになると思ってたけど、この作品は食べ物で苦しめられる。読んでて苦しくなってしまった。でも最後は食べる事で吹っ切れたみたい。「自分の身体は自分のもの」と気付けて良かった。
『無事に、行きなさい』 桜木紫乃
大人な恋愛小説。ミワと倫彦の関係をミワが自分の作品で表現したというのが、さすがアーティストだなと思った。その作品でお互いの道を決めたって事だと思うんだけど、う〜ん大人だね。
『海鳴り遠くに』 窪美澄
主人公の中野恵美が気持ちを佐伯絹香に伝えることが出来て良かった。こんなの本当の自分ではない、でもその事は言えない。これは辛い事だと思う。
題名の『二周目の恋』って人によって捉え方が違うんだなと思いました。