遠田潤子のレビュー一覧

  • ミナミの春

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    旅立ちの春にピッタリのお話。遠田さんの小説は大河ドラマのように重厚でいて、ホロリとくる。「花開く万国の春や」1日でも早く世界中にめでたい春が来てほしい。心底願う。「閑古錐・先が丸くなって使えなくなった錐。つまり役に立たないポンコツ。でもポンコツにはポンコツにしか出せへん丸みがある。円熟。若いうちがすべてやない。歳をとってからできるようになる事もある」「じゃ俺もいずれ閑古錐になれるかな」関西独特の慣用句?「スーパーのかごにミカンを放り込んだような笑顔」うーむ。

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    2025年04月15日
  • ミナミの春

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    大阪・ミナミを舞台に人の「あたたかさ」を描いた家族小説。
    1995年から2025年の春までの連作短編集である。
    要所に『カサブランカ』のチョーコ・ハナコの姉妹漫才師が出てくる。

    ○松虫通のファミリア〜ひとり娘のハルミが、漫才師になると出て行ってから、阪神淡路大震災でその娘が亡くなり、五歳の孫の存在を知らずにいた吾郎はそのことを元相方から知らされる。

    ○道具屋筋の旅立ち〜優美の母親が家族のために作り続けた大量の食事の悲惨な結末に感じたことは。

    ○アモーレ愛合橋〜杉本が歌手・柿原登に作曲家として作った「アモーレ愛合橋」はヒットしたが、その後転落の人生で43歳で亡くなった柿原。
    唯一最後に愛す

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    2025年03月24日
  • ミナミの春

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    1995年から2025年までのミナミ(南大阪)を舞台にして、姉妹コンビの漫才師・カサブランカを軸に描いた連作短篇集。6篇の短篇で構成された群像劇だ。
    これまでの遠田さんの著作のイメージと漫才が噛み合わなくて最初は戸惑ったが、読み進めていくうちに違和感は消えた。一筋縄ではいかないしがらみ、様々な形の家族、愛が次々に現れる。登場人物の1人が言う“一笑すれば千山青し”という禅語が象徴していた。
    「黒門市場のタコ」と「ミナミの春、万国の春」が特によかった。

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    2025年03月22日
  • オブリヴィオン

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    ネタバレ

    ・「いつか」と「今さら」は似ている。どちらも辛い現実から逃避する呪文だ。「いつか」と唱えれば現実から眼を逸らすことができる。「今さら」と唱えれば現実を諦めることができる。

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    2025年03月04日
  • 雨の中の涙のように

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    遠田さん、相変わらずとても良い作品を書きます。今まで読んだことのないような視点から、それぞれの登場人物によって1人の男性にまつわるストーリーが語られていて興味深かった。最後の終わり方も考えさせられるものがありました。

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    2025年01月23日
  • 二周目の恋

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    二周目の恋ということで、ほろ苦い大人の恋物語を想像したけど、全ての短編がそういうわけではなかった。「海鳴り遠くに」の描写が綺麗だった。

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    2024年12月15日
  • 二周目の恋

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    小説のアンソロジーというものを初めて読んだけど、新鮮な感覚だった。当たり前だけど一作一作作者が違うから作風も文体も全然違っていて1冊のなかで色々なテイストを楽しめてよかった。
    特に一穂ミチさんと窪美澄さんの話が好き。

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    2024年12月08日
  • 冬雷

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    2017年第1回未来屋小説大賞受賞
    そして、初めての遠田潤子さん

    孤児であった主人公が、日本海側の小さな町の
    大きな力を持つ名家に引き取られることになる
    その家の跡継として優秀さを期待されて

    長編ミステリーです
    その町の立地、因習
    その家の血脈
    それらがミステリーに悲しく切なく許せない
    といった感情を加えます

    ミステリー以上に
    主人公が孤児であったことを認識して
    跡継として忠実な勤勉さで尽くしていく姿
    それが、弟の事件が起きるや
    親も町もあまりに冷たい仕打ちに苦悶する姿
    が、記憶に残ります

    本の紹介やあとがきに
    「嵐が丘」のような物語という依頼がきっかけだとあります
    私の嵐が丘知識は 

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    2024年11月30日
  • 紅蓮の雪

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    ふたごの姉が20歳の誕生日に実家の裏山にある城から飛び降りた。自殺だ。親に愛されず二人でけで生きてきたつもりだった。理由を教えず、なぜ姉は死んだのか。
    主人公の青年は大衆演劇に身を投じて原因を探していく。両親も親に愛されず育った、許されぬ血のつながった関係。新たな事実が浮かび上がる。
    最後に姉の自分への気持ちに気づいた主人公が切ない。
    自分探しと大衆演劇。知らない世界が見えてなおかつ上質なミステリー。面白い。

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    2024年11月16日
  • 雪の鉄樹

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    重い、けどそこが引き込まれる。
    中盤までなぜこんな状況なのかが全く分からず
    読むほどに謎が深まっていくけど
    後半読めば読むほど状況が明らかになって
    苦しいのに読む手が止まらない作品でした。

    雅雪への感じ方は人それぞれだろうなぁ〜

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    2024年11月03日
  • 月桃夜(新潮文庫)

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    好きな作家、遠田潤子のデビュー作。現代の海のはなしと江戸時代の奄美の鳥のはなしで構成されたファンタジー。「これがデビュー作か⁈」というくらい、素晴らしい秀作だ。
    奄美の暗く、希望のない生活。囲碁という希望。禁断の愛に山の神、悪神。不思議な空気感と蜃気楼のように進む話。絶望で終わることなく、最後に前に進む道標を示す。
    「この世の終わりで、また」

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    2024年10月21日
  • 緑陰深きところ

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    ネタバレ

    途中まではいらいらして読みました。主人公に全く共感できず、ひとりよがりの傲慢な老人の思考回路がめちゃめちゃ腹立たしかったです。暗くて重い人生を選んで、いつでも別の選択肢があったのにそれに気付かず、自分中心の道ばかり選んでいるのに、人の所為にしているし、浅はかにもほどがあると思いながら読みました。

    それに比べ、周りの人の善良なこと。兄の死を知ったところからは、ざまあみろと思いましたね。ただ、共感は全くできませんでしたが、それだけ没入しながら読めました。遠田さんの作品としては、他の作品の方が好きですが、これはこれで面白かったです。

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    2024年10月05日
  • カラヴィンカ

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    しがないミュージシャンが歌姫の自伝の執筆を受けるところから物語は始まる。
    古い田舎の権力者、藤屋と斧屋を巡る因縁。父と母、親と子の因縁と確執。ここまで描かないと純愛は表現できないのか。
    面白い。一気読み。

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    2024年09月28日
  • 邂逅(わくらば)の滝

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    くれ姫の呪いがどうしてかけられたか最終章でわかる。
    どの章でも望月はいい男。
    そして(昔の)どの章でも体のどこかが不自由な女が出てくる。
    肥やしにされた男。
    惚れた男のために他の男と死ぬ女。

    不条理。男と女の邂逅がそもそも不条理なのか。

    すべては滝が凍って赦される。

    あ〜私にも滝に打たれるくらいの出会いがなかったかなー。

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    2024年09月04日
  • 雪の鉄樹

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    祖父と暮らす庭師の男。恋人が犯した殺人事件を償うために不合理なまでの被害者の母の仕打ちに耐え子育てを手伝う。恋人が出所する日が近づく中、中学生になった子供が暴れ始める。
    複雑に絡んだ育ちと感情。
    面白い

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    2024年08月31日
  • アンチェルの蝶

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    親ガチャ
    どうしょうもない生活を強いられた子供たち。
    アルコール中毒、バクチ中毒、暴力中毒の下で暮らす子供たち3人の成人後の物語と子供時代の話が交互に語られる。
    大阪の下町で曲者相手に営業する汚い居酒屋に幼馴染の弁護士が現れて10歳の少女を置いていく。かつて3人のうちの1人の少女の娘だという。
    そこから3人の悲惨な過去が甦る。DV、育児放棄、借金のカタでの強要。その復讐。
    意外な過去が追いかけてきて悲惨な結末を迎える。
    人は強く生きられるけど脆い。純愛を信じる物語。
    面白く、凄い。

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    2024年08月25日
  • 緑陰深きところ

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    コンテッサ1300クーペに乗って兄を殺しに行く。
    物騒なロードノベルの始まりだ。そんな古い車で、70代の男がなぜいまさら兄を狙いに行くのか。しかも途中で追いかけて来た、金髪のひょろっとしたホームレスの兄ちゃんとともに。

    兄の征太郎が、幸せにすると誓った嫁が死んだからなのだが、復讐に出る弟の紘二郎にはそうするわけがあった。そして、追いかけて来たリュウは不良な中古車を売っただけの若者なのか。

    遠田潤子、やっぱり毎度のことながらその理由が気になって一気に読んでしまった。全員悪者ではないのに、どんどん人生の歯車が狂って行く様はすごい。

    先に逝くのは不幸だが、看取ってくれる人がいるのは幸せと言うの

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    2024年08月18日
  • オブリヴィオン

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    大阪の下町で極貧の中で育った男が兄妹と出会ってから人生をやり直す。大学を卒業し妹と結婚して幸せな生活を送る。ある日、娘が怪我をしたことから娘が自分の子でない事を知り、妻を詰る中で揉めて殺してしまう。
    その男が出所してから物語は始まる。
    競艇、予想、宗教、兄弟、血の繋がり、色々な要素が混じり合って物語は進む。
    面白い

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    2024年08月16日
  • 人でなしの櫻

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    どこまでが洗脳でどこからが愛なのか。どこまでが依存でどこからが執着でどこまでが愛なのか。出逢った形があまりにも特殊なせいで、どうしても、どこまでいっても疑ってしまう。蓮子にとって、ヤスノリを超えるキヨヒデがそこにいたのだろうか。それともそれは同一視にすぎなかったのだろうか。人は、出逢った人の中からしか愛する人を見つけ出せない。出逢わなかったら愛することができない。2人にとって、その形はどうあれ、出逢ってしまったことが運命だったとしか言いようがない。愛とは常にそういうものなのかもしれない。
    「誘拐」というファクターがなければもっと素直に受けとめられる純愛物語なのだと思うが、あえてそこに踏み込んで

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    2024年08月11日
  • ドライブインまほろば

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    しんどいのに読み進めてしまう。
    文量しっかりしているのにあっという間に終わってしまった。

    親子、兄弟、
    壊れた家族の描き方が天才ではないですか…?
    とても苦しくなったし考えさせられました。

    家族だから酷な言葉ってあるよね…

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    2024年07月30日