佐藤優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
生まれて初めて通読した聖書は、佐藤優氏による新書となりました。
現代語訳で書かれる、ここまでわかりやすくなるのか、と驚きます。
また、これまで忌避していたのは、その内容以上に
「版が古すぎて文字が小さ過ぎる」とか、
「かなの遣いが自分の感覚にしっくりこない」というような副次的な要因だったかもしれません。
何より、読む理由がなかった。
今回は参加する読書会のテーマ本ということで手にしましたが、そうでなければ手に取ることも無かったでしょう。周りでも、読まずに一生を終える人も多いに違いありません。
読んでみてどうだったのか、と問われたら。
一番は、「宗教を信じるか、信じないか」という究極的な対決を始めるのではなく、彼の言い回し、人間への洞察が鋭い点にうなりました。
宗教書としてではなく、ビジネス書としての観点です。私がいま仕事をしているという理由もあるでしょう。
例えば、福音書の中に、「なぜあなた(イエス)は、人に話す時に例え話ばかり使うのか?」と聞かれる一節があります。
彼はこたえて、
「神(私は「真理」と書き換えたほうがしっくりきます)に近い人間は、それを言葉通り理解できるが、神(真理)に遠い人間にはそのまま話してもちっともわからない。自分たちが普段触れているモノを用いた例え話でなければ伝わらないのだ。」と弟子たちを諭す。
自分が葡萄やパンや、らくだを真理を伝えるための道具として使っていることを認めるのです。
その中でも、私の中では「時が経った葡萄酒が全て酸っぱくなるわけではない。」というセリフが心に残りました。自分に「酸っぱい」中年としての自覚があるからでしょうか。
相手の理解のために例え話を使う。宗教を抜きにして、コミュニケーションに必要不可欠な要素です。
概して宗教意識が低い私や身の回りの人間からすると、宗教書を眉唾なフィクションとして軽視してしまいがちです。しかし、そういう観点ではない見方がありました。
一人の人間は「人の生き方はかくあるべき」と万人伝える時。自らインフルエンサーを名乗る時の思想や手練手管は、東西問わず、学ぶことがあるのです。
そして、もう1つ。私の誤解として読んでいただきたいのですが、
新約聖書は、
「いい生活を送るための100の小さな哲学」
(ナザレ出身のイエス著・●婦の友社刊)と受け取っています。
すでに述べたとおり、聖書は、一般の人にもわかるように、例え話や、誇張したエピソードをふんだんに盛り込んでいます。
ただ、そのフィクションがあまり秀逸で、人の心に刺激的であったため、虚構が、実際の話と同等の価値をもってしまった。
結果、「実用書コーナー」に並ぶはずだった本が、「宗教書」に格上げされてしまったのではないか、と受け止めました。
余談ですが、「クトゥルフ神話」という概念は、ラブクラフトという人が基礎を組み立てた近代フィクションなのですが、本屋によっては、「神話・宗教」カテゴリーに関連本が陳列されている時があります。あれは冗談のつもりなのか、本気なのか・・・気になります。
さて、アドラー心理学本のベストセラー、嫌われる勇気の著者、岸見 一郎さんがこんな言葉を使っています。
「宗教が、ある1つの真理を見極めたら、そこから先には進まない。先の見えない橋を降りるような生き方だとしたら、哲学は少し違う。哲学は、先が見えない橋から降りず、ずっと歩き続けることである。」
聖書の言葉にも同じ感覚を覚えました。
新約聖書にテキストとして残っていることは、イエスが哲学をする上で用いたレトリック(手段)の切り抜きであって、それが宗教化している。実はその先にもっともっと深いなにかがあるのではないかと思うのです。
そして、もっともっと先の「何か」最後まで突き詰めようとするのが、「哲学」。逆に人にはわかりようが無いものとして受け入れるのが「神」という考え方。
こう自分の中で注釈をつけながら読んでいくと、初めて手にした聖書が少し飲み下せる何かに変わっていく気がしました。
この初めての1冊を通じて、「神」「真理」といった、知っているけれど、使いこなせていない語彙の意味が深まった気がします。よい1冊でした。
ちなみに続刊は、友人からは「難解だからあまりすすめない」と言われています。
どうなんでしょうか・・・気になります。 -
Posted by ブクログ
ヒトラーやスターリン、毛沢東から始まって革マルリーダーの黒田寛一、カルロスゴーン、堀江貴文などが書いた本について、悪書の表題にも関わらず良書の面もきちんと評価しており、佐藤優らしい。
最後の方で何故かドストエフスキーのカラマゾフの兄弟が載っていた。最高の名著だが難しく5巻全てを読み切るのは難しいと。読み切った自分に少し嬉しくなった。読み切るのが難しいと理由に、相反する考えが並べられてることとの指摘があった。なるほどと思う。だが、同一人物に2つの全く違った呼び名、フルネームの記載。登場人物が皆んな過激な思想の持ち主であること、現実と夢想が入り混じって書かれていること、ロシア正教の神の姿が人それぞれ異なることなどがこの小説を難しくしていると自分は思っている。 -
Posted by ブクログ
前のめりな生き方は利用される→不安にあおられない。今あるものを大切にする。
自己責任と言う言葉に惑わされない→責任を取れると考えること自体が愚か。人間は不完全。人間にはどうすることもできないものがある。自分の限界を知る。
明日できる事は今日やらない→優先順位をつける。
やる気が起きない時→身の回りの整理整頓をする。
余計なエネルギーを使わない働き方をする→シンプルにする。習慣化する。周りの人と信頼関係を作る(アンガーコントロール→ 私を取り巻く環境・状況を客観的に把握する)
上品な人とのつながりを持つには「いき」になる→媚態(外)、意気地(内)、諦め(執着を捨てる、全体性)。
よく眠る。 -
ネタバレ 購入済み
普遍的な教養かも
SPI 試験に社会科と理科問題が入り、メモがないと解答もできない問題で悩みました。ソーダガラスの成分にナトリウムが無いと言う解説の間違いもありましたが、悩みつつも楽しめました。
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本書は、日本共産党を分析して批判しています。
しかもその原因が「民主集中制」と「前衛意識」にあると指摘しているのですから、共産党組織の根源的なものにあるというのです。
さすが佐藤優氏です。「公式資料や公式文献」に、その組織の内在的論理が埋め込まれているとは、着眼点がすごい。
通り一遍の歴史観を並べるだけでない切り口に、日本共産党創世記の赤裸々な姿が見える思いを持ちました。
しかも人物の息遣いが聞こえるような描写には、緊張感が漂っています。
それにしても、なんと凄まじい時代であったのか。
日本共産党の結党後の混迷は、後から見ると訳がわからないと思っていましたが、著者のわかりやすい視点には納得する思いを持ちました。
「福本イズム」などもは日本共産党創世記のエピソードとしては知られていますが、その中身は知りませんでしたが、本書で初めて理解できた思いがしました。
また戦後の「51年綱領から」「51年文書」の名称変更についても、初めて知りましたがこれも興味深い。
また著者は構成がうまい。
古い歴史を並べるだけでは、さすがに読者も飽き飽きしてしまう。
現在の日本共産党の政治行動を、1920年代30年代の綱領やテーゼからその「内在的論理」をさぐりだし分析するとは、客観的でわかりやすい。
なるほど、これならなかなか理解しにくい日本共産党の主張の背景がよくわかると思いました。
著者の得意とする手法であり、実に興味深かった。
しかし著者による「民主集中制が抱える宿痾」をついて読むと、究極の権力との緊張関係の下での組織原則の難しさを痛感します。
そもそも「民主集中制」とはみんなで討議はするが、結論にはみんなで従うという内容と理解していますが、日本共産党の民主集中制はあまりにも徹底しすぎているようにみえます。
著者は、その上部に下部は従うという組織原則のもつ功罪を冷静に、日本共産党の公式文献を時代を追って検討することから、厳しく評価していると感じました。
著者は最終章で「共産党の知的水準は低下している」と指摘しますが、これはひとり日本共産党のみではなく、日本全体の事ではないのかとも思いました。
最後に、本書での著者の記憶に残る言葉をあげておきたいと思います。
「批判と言うのは相手を否定することではなく、相手の内在的論理をとらえて、さらに評価を加えることだ。全面的に賛成する場合も批判となる」。
心に残る言葉でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレウクライナ戦争でにわかにロシアやクレムリンの論理が騒がれており、積読棚から本書を引っ張り出しました。
とても面白い作品だと思いました。
著者の外務省入省から始まり、イギリスでの研修時代を経てロシアに赴任、ソ連崩壊前後を濃密なタッチで描いています。
イギリス研修時代に出会った裏の顔を持つ亡命チェコ人、ロシア赴任後に出会った知的だが個性の強烈な人々との交流。そしてロシアはペレストロイカを経て崩壊に向けて激動の時代に突入していきます。著者はその当事者として、その出来事を克明に記します。
内容的にはドキュメンタリーの部類に入るのでしょうが、その筆致は多分に物語調。そして登場人物たちはクセが強い一方で非常に魅力的に描写されており、読んでいて感情移入します。
著者の外務官としての職務もまるでスパイのようで刺激的。おそらく活動内容や事件・出来事の表現は盛られていることでしょう。しかしそれを割り引いても国際政治の壮大な物語を語られているようで、かなり面白く読むことができました。
またなによりもロシアやその他ソ連圏諸国の制度、風習、文化(特に食文化)に触れている点も特徴的だと思います。
著者はこれら懐かしい過去を愛おしく振り返っているように感じます。ソ連圏の人間や習慣だけでなく(何となく謎めいているが、観念的でシンボリックな)政治状況も含めて、ソ連圏での生活のほとんどが彼にとってはしっくりくるものだったのでしょう。
ある本で、ハルピンや奉天の特務機関長を歴任した土肥原賢二の行動を指して「外務・軍官僚はしばしば任地を偏愛する」と評しました。個人的にこれは著者にも当てはまるのだろうと思います。
ただそれだけに彼のロシアでの生活描写については非常に読みごたえがありました。 -
Posted by ブクログ
なんと言っても、解説的立場を池上さんが務めるので、左翼思想、労働運動に疎い世代にも、わかりやすい。
また、佐藤さんの解釈・説明、博学さからの話題の広がりが、面白く、最後まで読み通せました。
左翼の将来像に薄暗くも灯りを照らして論じる最終章は好きです。
また、成田闘争の概説、土井元衆議院議長のエピソード、バブル前後でのマスコミ人の急速なエリート化など、興味深いエピソードが散りばめらており、飽きずに読み切ることができるのではないでしょうか。
組合活動の報告書などで目にしたことのある用語や活動。これらには何の意味があるのか全く理解できなかったのですが、労働運動の残滓であることも、本書で理解できました。 -
Posted by ブクログ
大変革者だと思っていたゴルバチョフは実は相当な愚物、が当書の基調。
見方を変えればそうなるだろうし、後から振り返った当書を読むと確かにそう思わざるを得ない。
あとがきで、ゴルバチョフと小泉元首相との類似点を指摘しているが、「ペレストロイカ」「聖域なき構造改革」とスローガンは繰り返すものの、なんのためのペレストロイカか、なんのための構造改革か、を国民にきちんと説明しようとしない点も似ている、との記述にはうなずかざるを得ない。
さらに言えば、エリツィンはロジア社会の底にあるものがわかっていて、同じようにわかっているプーチンに権力を委譲した、というところは、当書を読んだ2022年、非常に説得力があった。