筑摩選書作品一覧

  • 「窓」の思想史 ──日本とヨーロッパの建築表象論
    4.0
    建築物に欠かせない「窓」。この身近な建築表象を歴史的にふりかえってみたとき、どのような相貌があらわれてくるのだろうか。日本とヨーロッパの様々な文物を織り交ぜながら、その土地に住まう人々が窓の造形に込めた感情と思想の来歴、文化構造の相違と影響関係、そして文明的意味を探る。
  • 丸山眞男と加藤周一 ──知識人の自己形成
    3.0
    戦後を代表する知識人である丸山眞男と加藤周一は、いかにしてその思想を育んだのか? ともに青少年期に戦争を体験し、その時代の空気の中で「日本人のものの考え方とはいかなるものか」という問題意識を深めてきた。当時の政治や文化の動向を丹念に追い、その思索や行動の跡を示すノートやメモ等の豊富な資料とともに、出生から敗戦まで二人の自己形成過程を比較対照し、20世紀の日本に生まれた知的風土の根源に迫る。
  • 漫画家が見た 百年前の西洋 ――近藤浩一路『異国膝栗毛』の洋行
    3.0
    近藤浩一路は藤田嗣治・岡本一平と東京美術学校の同級生。油彩、水墨画を描く一方、漫画記者として活躍した。そんな彼が画家友達とともに1920年代の西洋を初めて訪れる。欧州航路をマルセイユへ、そして芸術の都パリへ。マルク暴落のドイツ、闘牛のスペイン、イタリアでは最先端の未来派の酒場を訪れ、婦人参政権運動が盛んなイギリスにも足を延ばす。異国を訪れる旅が「海外旅行」ではなく「洋行」と呼ばれた時代の異文化体験はどのようなものだったのか? 百年後の私たちの旅と何が違って何が同じなのだろう? 【目次】プロローグ 戦争・パンデミックの終焉と、笑いの紀行文学/第1章 洋服洋食嫌いの、洋行下稽古/第2章 富士屋ホテルで「外遊予習」、東京漫画会の『東海道漫画紀行』/第3章 ツーリズム時代の幕開けと、帝国の郵船の寄港地/第4章 パリで藤田嗣治に、一〇年振りに再会する/第5章 ストラスブールから、敗戦で疲弊したドイツへ/第6章 闘牛に燃えるスペイン、ルネサンス美術のイタリア/第7章 大英帝国のロンドンからパリ、待ち遠しい日本へ/あとがき/『異国膝栗毛』関係年表(1908~1928年)/本書から始まる関連文献10冊の読書案内
  • 三越 誕生! ──帝国のデパートと近代化の夢
    -
    日露戦争勝利により東アジアの帝国としての地位を確立していく近代日本と軌を一にするように、三越呉服店はデパートメントストア宣言を掲げ、呉服店からの脱却をめざす。「学俗協同」を提唱し、欧米経験を持つ文化人で「流行会」を組織し、都市空間を彩るファッション、雑貨、サービスを生み出す快進撃は、当時の女性観や児童観を牽引することになった。一九〇四~一四年、帝国への道を歩む日本を映し出した「三越デパートメントストア」の草創期を、当時の文芸作品や新聞、雑誌などを通して実証的にたどる。貴重図版を多数掲載。
  • 民主主義のつくり方
    4.0
    民主主義は今、不信の目にさらされている。決定までに時間がかかり、「民意」は移ろいやすい……。だが、社会の問題を共同で解決する民主主義を手放してしまえば、私たちは無力な存在となる他ない。ならば、この理念を再生させるには何が必要か? 「習慣」と「信じようとする権利」を重視する“プラグマティズム型”の民主主義に可能性を見出す本書は、この思想の系譜を辿り直し、日本各地で進行中の多様な実践に焦点を当て、考察を加えてゆく。未来が見通しがたい今、「民主主義のつくり方」を原理的に探究した、希望の書である。
  • 明治史研究の最前線
    4.0
    明治時代はいまどこまで明らかになっているのか。明治史の実証研究の先端を行く研究者三一名の力を結集。研究の推移と現状、到達点を示し、新しい研究視点や課題を考える。幕末維新、内閣制度や皇室制度の創設、政治思想、帝国議会、外交史、経済史や地域に関する研究、宗教や社会に関する研究といった大きなテーマを論じ、関連諸問題についても二四の論点解説で網羅。重層的な明治史の魅力が詰まった歴史ファン必携の一冊。
  • メソポタミアとインダスのあいだ ──知られざる海洋の古代文明
    4.0
    1巻1,705円 (税込)
    大河の恵みを受け、メソポタミアには人類最古の文明が誕生した。そこは農産物こそ豊富だったが、木材、石材、金属などの必要物資はほとんどなく、すべて遠隔地からの輸入に頼っていた。輸送を担ったのはアラビア湾の海洋民たちである。彼らは湾内に拠点を構え、遠くメソポタミアからイラン、インダス河流域まで出張して取引し、巨富を得ていた。一大交易ネットワークを築き上げた湾岸文明の実態がいま明かされる。考古学の新しい成果に文献史学の知見を援用し、農耕文明を中心とする従来の古代文明論に挑戦する大胆な書。
  • 「もしもあの時」の社会学 ──歴史にifがあったなら
    4.0
    歴史にifはないと言われる。そうだろうか?「もしもあの時、~だったなら」というifの思考は、ある時代を生きた人々の、実現しなかった願望、失敗に終わった計画など、「ありえたかもしれない未来」の把握を可能にする。歴史に埋もれた「敗者」を救い出し、「未来」への視角を開く「歴史のif」。SFのP.K.ディック、歴史学のファーガソン、哲学のベンヤミン、社会学の大澤真幸らを取り上げその思考を検討し、「歴史のif」の可能性を指し示す。
  • 横浜中華街 ――世界に誇るチャイナタウンの地理・歴史
    4.2
    日本有数の観光地、横浜中華街。この街はどのようにしてでき、なぜ人びとに愛されるようになったのか。1859年の横浜開港、「南京町」の形成、関東大震災や横浜大空襲での壊滅、戦後のヤミ市や外国人バー街の時代、観光地としての成長、新華僑の到来……。世界中のチャイナタウンに足を運び研究してきた地理学者が、この街の地形や歴史を解説し、世界的にもユニークな特徴を明らかにする。
  • 弱いニーチェ ──ニヒリズムからアニマシーへ
    3.0
    ニーチェは一般のイメージとは異なり、「強い」価値や精神を否定していた。ニーチェの言う「超人」とは、「弱い」方向へと疾駆する、人間の生んだ「高い価値」とは無縁な総合的人間である。超人のなかでは、無数の他者やものやことが闘争しており、その過程で偶発的に生まれる〈あいだのいのち〉を感受して生きること(=アニマシー)こそニーチェが目指したものだった。世界哲学の視点からニーチェを読み直すことではじめて見えてくる生命力あふれる人間像に、混迷の時代を生き抜く新しい力を見出す。
  • ヨーロッパ思想史 ――理性と信仰のダイナミズム
    4.0
    アウグスティヌスからトマス・アクィナスに至って完成した知の体系は、ドゥンス・スコトゥスとオッカムのウィリアムにより解体される。すると、エラスムスやルターが人文主義やプロテスタンティズムを興隆させる。ロックらが近代哲学の基礎を築き、カントとヘーゲルが思想体系を完成させるも、やがてマルクスの社会思想やフォイエルバッハの人間学などで解体される――このように理性と霊性の総合から解体への転換期に新思想が創造されるというダイナミズムに注目し、ヨーロッパ思想史全体を描き出す野心的試み。
  • 乱歩とモダン東京 ――通俗長編の戦略と方法
    3.0
    江戸川乱歩の作品は、戦前の同時代においては「通俗長編」で圧倒的な人気を集めた。『蜘蛛男』に始まる『黒蜥蝪』『魔術師』『吸血鬼』『人間豹』『黄金仮面』のような怪人対名探偵明智小五郎の冒険活劇である。そこには乱歩の密かな戦略があった。大衆読者のあこがれをかきたてるような1930年代のモダン東京の華やかな部分を活写し、見事に作品展開に生かしたのである。これまで研究されてこなかった通俗長編の中に、大衆の心をつかむ仕掛けとしての大東京の描写を読みといていく。
  • 陸軍中野学校 ──「秘密工作員」養成機関の実像
    5.0
    インテリジェンス教育を行う日本初の専門機関、陸軍中野学校。一九四〇年に誕生し、敗戦とともに消滅する。二千三百余名を数える卒業生は、中国大陸や南方アジアの戦地へ送られ、諜報活動、ゲリラ工作などに従事し、命を落とす者も少なくなかった。秘密戦工作のこの壮大な実験は、いまだ全貌が明らかになっていない。公文書をはじめ、新たに発見された資料を用いてその実像に迫り、歴史的意義を検証する。陸軍中野学校に関する最良の研究書である。
  • 利他的な遺伝子 ──ヒトにモラルはあるか
    3.8
    現代社会は利己主義がはびこっているように見える。しかし人は、しばしば自分の身を危険にさらしても他人を助けようとし、困っている人を助けたいと願う。この利他的な感情はどこから生まれてきたのだろうか。ヒトを利他行動に駆り立てるものは、本能なのか学習なのか。共感、信頼、情愛はどうすれば育てられるのか――。脳科学、遺伝学、分子生物学の最新知見を交え、ヒトという生物、ヒト社会の本質に迫る。
  • 流出した日本美術の至宝 ──なぜ国宝級の作品が海を渡ったのか
    4.0
    明治維新の混乱のなか起きた日本美術の海外への大量流出。そのとき海を渡った作品の中には国内に留まっていたら国宝間違いなしと言われるものも多数含まれていた。フェノロサやビゲローといった著名コレクター、エドワード・モース、フランク・ロイド・ライトのような意外な人物、そして林忠正や松方幸次郎ら日本人まで、当時の記録を丹念に読み解くことで外国人による日本美術買い付けの実態を明らかにするとともに、いまも続く美術品流出の是非を問う。
  • 隣国の発見 ──日韓併合期に日本人は何を見たか
    3.0
    1巻1,705円 (税込)
    日韓併合期(1910~1945年)の日本人のなかには、朝鮮の人や自然や文化を体験し、観察し、優れたエッセイを残した者たちがいた。谷崎潤一郎はその風景を「純然たる日本画の絵の具の色」と描き、柳宗悦や河井寛次郎は人々の生活ぶりに理想郷を見出した。新渡戸稲造が「彼等は実に有史以前に属するものなり」と断じた一方、安倍能成はステレオタイプと格闘した。植民地支配の産物として顧みられなかったこれらの作品を読み直し、日本人が発見した隣国の姿を浮かび上がらせる。 【目次】第一章 朝鮮の山河/1 海峡を越えて/2 禿山と岩山/3 朝鮮の山河/第二章 隣国の発見/1 少年の日の思い出/2 大人たちの見たもの/3 白磁の美の発見/第三章 もう一つの眺め/1 非好感の眺め/2 朝鮮人とはだれか/第四章 京城の歩く人/1 安倍能成の朝鮮エッセイ/2 浅川巧への惜別の辞/第五章 旅する科学者/1 挟間文一と辺境の地への旅/2 挾間文一の日記/付録 挾間文一の日記/3 朝鮮に与えられ、また与えた人
  • ルポ プーチンの戦争 ──「皇帝」はなぜウクライナを狙ったのか
    4.2
    ハイブリッド戦争の内幕とは。毎日新聞モスクワ特派員が両国政府と親露派の要人を取材、砲撃と空爆で破壊された街に潜入して、戦闘員と市民の声を聞く。激動のロシア情勢を伝えるルポルタージュ。
  • 連帯論 ──分かち合いの論理と倫理
    -
    “連帯”という言葉はすでに有効性を失っているのだろうか――。人間一人ひとりは欠如を抱えているが、複数人が結合すると一人では不可能な過剰が生まれる。この欠如と過剰を往還するなかでわれわれの日々の生は形づくられる。本書は、連帯の定義・分類・歴史から始まり、経済や宗教との関わり、そして連帯それ自体が持つ困難について包括的に考察した初の論考。人間の存在構造として連帯を捉え、その可能性をいま一度問いなおす。
  • ろうと手話 ──やさしい日本語がひらく未来
    3.8
    1巻1,485円 (税込)
    「手話って、日本語を手で表現してるんですか?」「ろう者なら、みんな手話を使えるんですよね?」これらはどちらも誤解です。手話は日本語とは別の言語であり、ろう教育においては長く手話が禁止されていました。本書は、聴覚障害で生きづらさを感じている人たちの事情や歴史的背景を知ってもらい、手話にも対応する社会実現に向けた活動への協力を呼びかけるものです。「日本語教育」と「やさしい日本語」という新たな視点で、未来を切りひらきます。
  • ローティ ──連帯と自己超克の思想
    3.8
    プラグマティズムの最重要な思想家として、いま再び注目を集めるリチャード・ローティ。その政治的・社会的言説は、『哲学と自然の鏡』等の論著が提示する近現代哲学批判と通底している。彼の哲学は、絶対的真理にすがろうとする「客観性志向」を思考停止として疑問視し、自らを乗り越えていくための力として言語を捉え直した。ローティ個人と最も密接に交流のあった著者が、多面的な思想を平易明快に解説し、哲学史の系譜のなかで一つの筋へと繋げて見せる、決定版解説書。
  • 和平学入門 ――戦争を止める13の法則
    -
    戦争を止めるにはどうすればよいか。紛争を和平合意へと至らせる方法を科学的に研究してきた紛争解決学を、さらに「和平学」へと刷新。日本国内の法的な視点から紛争解決学を実践してきた弁護士と、NGOを通じた実務と研究の二刀流で国際紛争における紛争解決学を追究してきた国際政治学者が、数多くの実例から導き出した13の和平法則をもとに、和平合意までの交渉・仲介の道と和平合意後の平和構築の道を理論と実践を往復しつつ描き出す、和平への新たな知的挑戦。 【目次】はじめに 廣田尚久/序章 和平学とは何か――紛争解決学2.0/第一章 法律学からの紛争解決学(ミクロ起点)/第二章 国際関係論からの紛争解決学(マクロ起点)/第三章 和平法則――戦争を止める13の道標/第四章 和平合意――交渉と仲介の諸理論/第五章 和平合意後の和解/第六章 日本外交の羅針盤――和平法則を用いた仲介者/終章 平和実現へのパラダイムシフト/参考文献/あとがき 上杉勇司

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