2回の取材旅行をベースとしたウクライナ戦争のルポ。
戦争の情況の変化を簡単に復習しながら、ウクライナの「識者」だけではなく、たまたま出会った人々のインタビューを中心として構成されている。
当然、インタビューする人によっての偏りはあると思われるものの、多様な意見があることもカバーしてつつ、やはりウ
...続きを読むクライナ戦争の悲惨さ、ロシア軍の暴力性、苛烈さがあらためてリアルに伝わってくる。
とくに印象的だったのは、ロシア侵攻の前日まで、ウクライナの人たちはそんなことはないだろうと日常の生活を続けていたという情景。
そんな平和な日常が1日でまったく変わってしまうという恐ろしさ。
そして、「平和」ななかでも、もし本当にロシアが攻めてくるのなら、銃をとって戦うということを躊躇うことなく発言する普通の人々。
戦争というものに、完全にどちらが正しいとか、間違っているということはない、というのはその通りであるが、そういう言説をもって、相対化することのできない圧倒的な不条理さがこの戦争にはある。
ここで起きていることは、20世紀の前半の2つの世界大戦と革命のなかで生じた大量虐殺の情況をすぐに思い起こさせる。そして、それがエスカレーションのプロセスを経ずにすぐさま戦争開始とともに始まることに恐ろしさを感じる。
第2次世界大戦での学びからうまれた戦後の努力の積み上げを瞬時に否定するような戦争。あらためて、こうしたことが現在起きていることに恐れ、慄くほかはない。