真野森作のレビュー一覧
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本書は、題名で直ぐに判るとは思うが、2022年2月24日以降の「侵攻」を巡る内容である。
本書の著者は大手新聞社で国外に設けた取材拠点に出て取材活動を行う経験を重ねている記者である。本書の内容に在る取材当時(2022年)、更に現在もエジプトのカイロで主に活動している。
ウクライナとロシアとの紛争は2022年2月に突発的に発生したのではない。少なくとも2014年頃から摩擦が続いていた。そして2022年に入って緊張が高まり、2月には「侵攻が起こってしまう」という話しになった。
そうした中、カイロに在った著者は「緊迫する情勢の取材」に従事することとなり、ウクライナに入る。著者はモスクワに在った時期も -
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ウクライナ戦争関係で読んだ本のなかでベスト。
と言っても、これがでたのは、2018年で5年前。つまり、クリミアの併合から、ウクライナ東部での戦争、親露派の国際的に承認されない独立の流れをいろいろな立場の人のインタビューを中心としたルポ。
現在、進行形のウクライナ戦争は、本が執筆されてから、世に出るまでに状況が変わっていって、微妙な読後感があるのだが、今、このウクライナ戦争前のルポを読むことで、この戦争のもとになるロシアとウクライナの対立、そしてウクライナ国内の分裂の構造が見えてくる気がした。
とくに、親露派の人たちがどうと考えているのかがリアリティをもって伝わってくる。かれらにはかれらの -
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2回の取材旅行をベースとしたウクライナ戦争のルポ。
戦争の情況の変化を簡単に復習しながら、ウクライナの「識者」だけではなく、たまたま出会った人々のインタビューを中心として構成されている。
当然、インタビューする人によっての偏りはあると思われるものの、多様な意見があることもカバーしてつつ、やはりウクライナ戦争の悲惨さ、ロシア軍の暴力性、苛烈さがあらためてリアルに伝わってくる。
とくに印象的だったのは、ロシア侵攻の前日まで、ウクライナの人たちはそんなことはないだろうと日常の生活を続けていたという情景。
そんな平和な日常が1日でまったく変わってしまうという恐ろしさ。
そして、「平和」ななか -
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本書が扱うのは、首都キーウへのミサイル攻撃を含む2022年からのウクライナ侵攻ではない。2014年からのクリミア併合とドンバス戦争についてだ。しかし、当然ながらこれらは関連する話だ。著者の立場は、本書の言葉を借りるなら、270度の角度、つまり、西欧史観と真逆に位置するロシア史観でもなく、その中間にポジション取りをしたらしい。その心掛けは素晴らしく、本書の白眉は現地ルポとインタビュー数の多さにあるが、取材先が満遍なく、公平だ。
ー エリツィンによって後継者に指名されたプーチンは、チェチェン紛争を武力で封じ込めることによって国内で名声を高め、オリガルヒも抑え込んで、自らを中心とする中央集権的な政 -
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著者の真野森作さんは、毎日新聞記者。2013年10月から3年半モスクワ特派員として旧ソ連諸国を担当され、本書は丁度その頃から表面化されたウクライナ内での政治的不安定(ヤヌコビッチ大統領のロシアへの接近、反政権デモの拡大、大統領の逃亡、親欧米派の政権樹立)、親ロ派と政権側との衝突、クリミアでの武装集団による庁舎等の占拠、プーチンによるクリミア編入宣言、親ロ派勢力による東部ドネツク,ルガンスク州の主要都市での行政庁舎占拠と独立宣言、ドネツク州上空でのマレーシア航空機爆撃による墜落事件(ロシアは否定しているが、調査結果では親ロ派がロシア製地対空ミサイルで撃ち落としたとされる)、戦闘の拡大を、実際に現
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クリミア半島侵略前後の数年に渡り、ウクライナやロシアなど現地を回った貴重な記録。
東部地域はロシア系住民が多いとはいえ、過半数はない。それでも侵略を許してしまったのは、ウクライナ政府の失政が積み重なり、人民の信頼が失われていたことが大きい。
逆にウクライナ政府がまっとうな政治を行い、信頼を得ていたのなら、こうも簡単に侵略を許さなかったのではないかと思う。
世代間の意識の違い、「為政者が変わればバラ色の生活に変わる」というような妄想、情報戦、結局被害を受けるのは現地の一般市民、など、2022年のロシアの蛮行における状況と同じ状況や、現在につながることが多い。
各地の一般市民、兵士、政治家な -
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長期にわたり危険な紛争現場に滞在し、現地の多くの人々の生の声を取材した労作。以下、自分用のメモとしてカンタンに情報をまとめてみた(誤りがあるかも)。
・親露派ヤヌコヴィッチ政権がEU連合協定拒否
・反政府デモにより政権崩壊、大統領亡命
・政府はオリガルヒと通じた汚職が蔓延
・中央集権主義と汚職が東部の反発を招く
・新政権で進出した極右の存在に東部が恐怖を抱く
・国籍を隠したロシア正規兵が大きな役割を果たす
・クリミア紛争ではウクライナ軍の対応が遅く稚拙
・クリミア分離で少数派タタール人迫害の危機
・クリミアでの分離独立の住民投票は、親露派覆面兵士の管理の下実施された。反対者はボイコット。
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ネタバレ2012~2015年の3年間、モスクワに暮らした身としては、懐かしさと共に、欠けていたパズルのピースがひとつひとつハマっていくような快感すら覚える好著。冒頭から最後までワクワクしながら読み進むことができた(かなりの文量、情報量だけど)。
ソチ冬季五輪が終わってから急転したロシア=ウクライナ関係。干渉から内戦へ、あっという間(という気がした)クリミア併合、マレーシア機撃墜、次々に強化される西側の制裁。国民生活にも直結する事態でもありながら、最終的には、それなりの安定を取り戻していく大国の度量に畏れ入ったと感服していたが、そうとうに用意周到にコトが運ばれたことを、時系列で推移を追ってみて改めて -
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2022年2月、ロシアがウクライナを侵攻したニュースを見て、現代のヨーロッパでこんなことが起こるのかと不思議に思い、ロシア(プーチン)について知りたいと思った。2022年以前から、ロシアはウクライナを侵攻していた。クリミア侵攻、ドンバス侵攻・・・他にもウクライナではないがジョージアの南オセチア、日本の千島列島もしかり。ウクライナの中でも温度感は様々だった。ウクライナの人口構成もこの問題を複雑にしている。西側は親欧米寄りの住民が、東側に親ロシア寄りの住民が多い。プーチンはウクライナからの解放だと声高に言って、東部地方やクリミアを侵攻・支配している。ロシアの侵攻を喜ぶウクライナ人も居れば、侵略だと