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「初夏の青空を背景にしたオオムラサキの荘厳な飛翔があれば、それだけで世界は完全だった。イチジクの木の葉にキボシカミキリの銀河のような黄色の斑点模様を発見すれば、もうその日の幸福は約束された」。昆虫を追い求める至福の時間――。南米などで精力的に活動をつづける文化人類学者が書いた、自らの原体験ともいうべき昆虫との出会いから、未知なる生命の世界へといざなってくれた14人の師への架空の手紙。
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Posted by ブクログ
昆虫採集に無我夢中になったことのある世代といえば、おそらく地方に住んでいた団塊の世代までだろう。著者は団塊の世代の少し後だが、首都圏の外れでまだ自然が残っていた場所で少年時代を過ごしたという。 昆虫の面白さに目覚めるのは少年——といっても小学生——が限界だろう。無心で野山を駆け巡り、昆虫の楽しさに触...続きを読むれない限り、素直な気持ちで昆虫たちと向き合うことはできない。本書はそういった昆虫との付き合いの始まりを、少年時代から回想している。 ファーブルの『昆虫記』との出会いも重要だ。『昆虫記』は戦前に山田吉彦が翻訳してくれたおかげで日本中の少年たちが、昆虫の神秘に出会うきっかけを与えてくれた。 山田の著作には『ファーブル記』(岩波新書)もあり、自由人ファーブルの素晴らしい伝記となっている。 山田吉彦は本名だが、のちに「きだみのる」というペンネームで、ファーブルさながらの自由人として、いくつかの著作を残したことまで気がつく人は少ないかもしれない。 筆者の関心はいつしか『昆虫記』から翻訳者であるきだみのるの全著作を渉猟するようになってしまったが、どこかで「昆虫愛」とも通じるところがある。夏になると、桜の木に止まっている100匹を超えるニイニイゼミに捕虫網で挑みかかったり、最近の東京でクマゼミの鳴き声を発見して、かって聞いた長崎の坂道で耳をふさいだ凄まじい鳴き方とつい比べてしまったりしてしまうくらいだ。
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