【あらすじ】
長野県北アルプス南部の蝶ヶ岳中腹にガラスの塔が建てられている。その館の主人であるミステリマニアの神津島太郎は有名な人物の未公開原稿を見つけ、それを発表しようと自分に関係のある人々、刑事の加々見剛、料理人の酒泉大樹、医師の一条遊馬、名探偵の碧月夜(いじめで不登校になってミステリ小説に出てくる名探偵にはまるが、両親を殺されどの名探偵も解決出来なかったことに失望し自らが名探偵になると決意)、メイドの巴円香、霊能力者の夢読水晶、小説家の九流間行進、編集者の左京公介、執事の老田真三を集める。
神津島はかつてドラッグデリバリーシステムという技術を製薬会社の協力を得て大学で研究しており、その後ナノテクノロジーを使用した新しいドラッグデリバリーシステム=トライデント(様々な細胞のレセプターに結合しDNAを細胞核まで送り込むことを可能にする)を発明し遺伝子治療を飛躍的に進歩させた。莫大な特許使用料を手に入れ硝子館を建てたのだった。
国内最大手の製薬会社・潮田製薬がALSの新しい遺伝子治療薬を開発したが、神津島がトライデントの特許を侵害しているとして承認の差止めを求めて提訴してきた。ALSの妹を救うため、神津島の担当医師の一条はフグ毒を利用して神津島を殺害する。
翌日、老田がダイニングで胸を刺されて殺害されるが、老田を殺してない一条は動揺し、名探偵の碧のワトソン役になることをかってでて犯人を探す(誰よりも早く見つけて毒を飲ませようとする)協力をする。
3日目には部屋でウエディングドレスを着た巴が刺さされて殺されていた。コルセットに『中村青司を殺せ』と書かれており(※綾辻行人の館シリーズに登場する館の建築家で、全焼した青屋敷で焼死体で発見される)、それをヒントに硝子の塔のスクリーンを燃やし地下牢と実験室を発見する。そこには13年前の蝶ヶ岳神隠し事件の失踪者摩周真珠というOLの遺体と、男性であろう遺体があり、神津島が老田や巴のサポートを得ながら人体実験をしていたと考えられた。蝶ヶ岳神隠し事件の犯人とされていた冬木大介(長野県出身で東京の工場に就職し30歳で会社がつぶれホームレスになり最後は凍死する。)は戸籍を売っており、それを買った真犯人が…。
巴を助けられず落ち込む碧を慰めていた一条の部屋の外から物音がし、追いかけた帰りに一条は誰かに階段から突き落とされ負傷する。翌日には警察が来るため再度神津島と老田、巴の遺体を確認しに入った際に、神津島の胸に用紙とナイフが突き立てられており、用紙には棒人間とアルファベットが書かれていて一条はさらに動揺する。
名探偵碧は神津島殺害の密室、老田殺害の密室(硝子塔と血文字で火災を発生させ角砂糖をスプリンクラーの水で溶かす)、巴殺害の密室(上の階で殺してから窓から下の部屋に入るよう落としドレスを着せることで血が広がるのを遅らせた)を解いて加々見が犯人だと言い当てる。加々見は摩周真珠の父親で、別れた妻から娘の失踪を聞き、神津島周辺を調査していたのだった。一条はすべての罪を着せるため加々見のポケットに毒を忍ばせ加々見は服薬自殺をする。その後名探偵碧は神津島と加々見を殺したのは一条だと推理し、一条は警察が来るまで展望室に隔離される。そこで一条は展望室には隠し扉がありそこから地下まで秘密の螺旋階段が伸びていることを突き止める。そして、展望室を脱出した一条は、神津島が考えた本格ミステリ小説の出演者になっていた自分達の話『硝子館の殺人』が今回の催しで神津島が発表しようとしていた未公開原稿だったと話す。加々見は警察官ではなく神津島の協力者で、巴も老田も生きていた、しかしその3人を本当に殺したのは『硝子館の殺人』を乗っ取った名探偵碧だと話す。真犯人だと認めた碧は、神津島の考えた本格ミステリに失望し神津島の駄作を本格ミステリの一冊として忍び込ませた愚行に怒りし4人を殺害していた。そして世間を震撼させた事件の犯人も、両親を殺した(いじめではなく両親からの虐待だった)のも碧であり、名犯人になることで名探偵に会おうとしていた。塔を爆発させた碧と一条は最後は左京達を逃がし2人で死ぬはずだったが、碧は名探偵に出会うことを諦めきれず一条を助けてその場を立ち去る。
半年後、一条の妹は承認された薬で回復しており一条も非常勤医師として総合病院に務め始める。警察から逃げおおせている碧から絵葉書が届くが一条は警察に届ける気はなかった。
【感想】
作中にミステリマニアにはたまらない本の紹介が沢山あったし、ページ数は多めだが会話文が多く知念先生の文章力で読みやすかった。話が二転三転して話が複雑で、リアリティーに欠ける所もあったけど、ミステリ小説によくあるベタな展開もあり面白かった。