小川高義のレビュー一覧
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もう各方面で絶賛されていて、わたしの感想も同じだからいまさら書くことないなあ、って思うんだけど、とにかくよかった!
今の話もあり、昔の話もあり、タイムマシンが出てくるSFあり、脚本あり、新聞記事の体裁もあり、映画業界の話あり、戦争の話あり、移民の話あり、ロマコメ映画にできそうな話あり、本当にバラエティに富んだ短編が17編。なにがすばらしいって、テーマとしては重かったり悲しかったりするものもあるんだけど、それでも全部が全部、ユーモアがあってファニーで温かい、ってこと。ぜんぜん嫌な気持ちにならない。いかにも「よきアメリカ」って感じがする。
……でも、トム・ハンクスのいい人そうな人柄(っていうか、実 -
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黒猫、アモンティリャードの樽、告げ口心臓、邪鬼、ウィリアム・ウィルソン、早すぎた埋葬、モルグ街の殺人を収録。
飜訳が素晴らしく、明晰で平明なポーを読むことができる。
明晰で平明である分、作品の意図が明確に伝わってくる。
「黒猫」のラストシーンがこんなに鮮烈だということははじめて知った。
ポーの作品は、ずっと昔、創元推理文庫の「ポオ小説全集」でいくつか読んだことがあって、ここに収められた作品もその時通過していたはずだ。
その全集は、錚々たる飜訳陣を揃えたものだったが、たぶん重厚すぎたのだろう。こちらは文章についていくのがやっとで、内容を味わう余裕までなかった。結果、怖くも何ともない、ちっと -
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題名だけは知ってるけど、実際にはどんなもんか全然知らん、みたいなやつ。ギャッツビーってどっかのムースかなんかであるくらいで、金持ちの鍛えたお兄ちゃんがぶいぶい言わせるような話なんかと勝手に思ってたけど、ちょっと違うような違わないような。ぶいぶい言わせてるけど、実はいろいろあるんやで・・っていう話だった。
しかしこの金を持って無双、しかし金を持っても愛は手に入れられないぜ、という流れは、100年前にはぐっとくるものがあったにせよ、今の時代にはやや微妙ではある。飽食の時代にはお金なんて!ってなって、その揺り返しがやって来て。
要するに馬鹿とお金は使いようって事やね。違うか。 -
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ネタバレ米文学史の授業で初めてその名を知った、ホーソーンの代表作。
授業でのあらすじの説明から、なんて暗い話を19世紀に書いたのか、疑問でならなかった。
その疑問は解けてはいないが、ヘスター・プリンの強さと、不倫相手の弱さと苦悩を描かずにいられなかったのだろうと推察した。
それにしても、授業であらすじを紹介されていなければ、あの牧師が不倫相手だということになかなか気づけなかったんじゃないかと思う。
授業では、牧師は苦しみ抜いて最後は死ぬが、その死にはまったく意味がないと先生が言っていた。その通りだとも思うし、そこまで言ってはかわいそうとも思ったが、結局は牧師という公職(?)についていながら、近くでへス -
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いやはや、ポーである。
普通の小説を「、」や「。」の句読点だとするならば、この短編集を読んだ読後の印象は「!」や「!!!」の感嘆符だ。
そんな印象を受けた僕が末尾の解説を読んで連想するに、ポーとは映画で言えばスピルバーグであり、漫画で言えば楳図かずおなのではなかったか!!と思うのだった。
「黒猫」~去らぬ黒猫の記憶=自虐の発露
「本能VS理性ー黒い猫について」~人間のみが理性的か?
「アモンティリャードの樽」~なぜ俺を罰しない!?
「告げ口心臓」~行き詰りの呵責
「邪気」~だめなことほどやってみたくなるだろう?
「ウィリアムウィルソン」~待っていたのは大鏡
「早すぎた埋葬」~マイナスベクトル -
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ネタバレ過去に縛られる男の話といえば、私の中ではやっぱり『秒速』だろうか。男は過去に、女は未来に。そんな二元論が嫌いなのは、それが幾分的を得ているのだという考えが自身の心の中にあるからなのかもしれない。
本作の主人公であろう「ジェイ・ギャッツビー」は、かつて愛した女性に再開したが、彼女にはすでに婚約者がいた。あとはもう当然起こるであろう出来事の連続で、当然起こるであろう結末を迎える。これはもう様式美なのではないだろうかと思うほどに。
主人公の名前だけのタイトル、冒頭の語り手の独白、物語序盤から始まるミステリアスな「ギャッツビー」像がだんだんとなくなってゆき、最後には実直な青年だった彼が現れる -
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代表作「グレート・ギャッツビー」で知られるフィッツジェラルドの自選短編集。
数多くの短編を書いたものの、中には良質と言い難い作品もあるようだ。
9編の掌編が収められているが、重々しい作品というよりは、読後に爽快感が感じられる作品が多かった。劇中で発生する出来事によって、主人公が成長するという内容がほとんどであった。
しかし、ヘミングウェイもそうだが、狂騒の20年代と呼ばれる1920年代のアメリカの都市が持つ時代感といったら。現代ではいずれの国も持ちえない空気感ではなかろうか。若干の退廃的な雰囲気を感じさせつつも、未来への明るい展望を感じさせる。 -
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ラスト2~3行の大どんでん返しがあったり、あっと言わせるようなオチが待っていたり。短編らしい短編がたくさん詰まった小説。
「賢者の贈りもの」は昔CMにも使われてた記憶がある。
クリスマスの夜、貧しい夫婦の物語。
妻は夫が大切にしている金時計につける鎖を買うために自分の美しい髪の毛を売り、夫は妻の髪の毛に使う櫛を買うために自分が大切にしていた金時計を売ってしまう。お互いの贈りものは無駄なものになってしまうけれど…というお話。
これを美しい夫婦愛と取るか、馬鹿げた皮肉的な物語と取るかは、読み手に委ねられてると思うけれど。
感動系、思わず笑ってしまうもの、そのオチにただ感心してしまうもの、シニカ