あらすじ
月旅行を目指す高校からの四人組。西部戦線帰還兵のクリスマス。変わり者の億万長者とその忠実な秘書。男と別れたばかりの女がつい買ったタイプライター。ボウリングでセレブに上り詰めた男――。「良きアメリカの優しさとユーモアにあふれる短篇集」と各紙で賞賛された、人生のひとコマをオムニバス映画のように紡ぐ17の物語。
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トム・ハンクスらしいさりげなくも味わいのある短編集。間に入るコラムっぽいのもまた良い。俳優としての経験がいいように熟成されたような感じで、次作も期待したい。
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面白かったです。
SFチックなお話もあったりバラエティーに富んでいましたが、古き良きアメリカを感じました。
お話は「アラン・ビーン、ほか四名」と「心の中で思うこと」が好きでした。
地球の出のBGMが生命の輪とか笑いました。想像出来ました。
「心の中で思うこと」はしみじみと良かったです。生活の中で使う…こういう考え方好きです。
どのお話も映像的だったのは、著者が俳優さんだからかな。シビアな描写にも柔らかいお人柄が感じられる気がして、読んで良かったです。
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「変わったタイプ」
初の小説集。
トム・ハンクスという名前を見た時、同姓同名だと思ったら、調べてみたら本当にあのトム・ハンクスだった。とひと驚き。日本でもよくある作家デビューなのかと期待半分疑い半分でいたら、ちゃんと小説を保った文章と表現、人物描写やストーリー性を感じる。と言うか、アメリカらしさ、そう、カントリーを感じる。ふた驚き。じゃあカントリーさって何?て考えた時、うまい表現が出来ない。完全にアメリカ文学における知識不足である。
しかし、初の小説「アラン・ビーン、他四名」が掲載されたのは、「ニューヨーカー」(2014年10月27日号)は、アリス・マンロー、J・D・サリンジャーのような錚々たる作家が名を連ねていたいわば文芸の聖地たるスペースであり、であれば、初小説に続いて書き上げられたその他16篇の完成度が高くても不思議はない。どれもナイス。
個人的には「へとへとの三週間」が一番読みやすく、映像も浮かびやすく、アンナにぴったりの男でなければよい、とのフリからの終わりもユーモラス。
タイトルは「変わったタイプ」でUncommon Type。これに関しては、堀江敏幸の言葉がぴったし。「正しい意味でUncommonなのは、登場人物を迎え入れる世界ではなく、この短篇集の書き手のほうだろう」。タイプライターマニアだからこんなに上手く書けるのか(な訳ない)。
ちなみに、これら16篇は編集者に何篇は書いてみれば?と言われて書いてしまったらしい。え、貴方は天才ですか?
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かの名優トム・ハンクスの小説家デビュー作短編集。
各所で絶賛されているとのことだが、確かに古き良きアメリカの伝統を受け継いだ、ハートウォーミングでどこか切ない作風が清々しい余韻を残してくれる。
13篇が収められているが、うち3編(「へとへとの三週間」「アラン・ビーン、ほか四名」「スティーヴ・ウォンは、パーフェクト」)は四人組の登場人物が共通している。
また、作集タイトル『変わったタイプ』はタイプライターとも掛けられている。
13篇すべてのお話で、影に日向にタイプライターが印象的なキーファクターとして登場するのだ。
このあたりの巧みさには本当に驚いてしまう。
以下、各話の紹介。
へとへとの三週間
主人公が高校の同級生アンナと付き合うことになった三週間。スティーヴ・ウォン、Mダッシュとの四人組もの。
クリスマス・イヴ、一九五三年
大戦で片脚を失った父親がクリスマスイヴに戦友と電話で語る。
光の街のジャンケット
有名女優の相手役に抜擢された俳優がヨーロッパへの宣伝旅行に回り、途中で急にキャンセルされるお話。
ようこそ、マーズへ
大学生が父親とサーフィンに出かける。母姉二人との家族は崩壊しているが…
グリーン通りの一ヶ月
母子家庭が新居に引っ越す。母は、隣人の中年男を警戒するのだが、望遠鏡での天体観測を通じて接近していく。
アラン・ビーン、ほか四名
四人組がロケットで月まで行って帰ってくるというSFファンタジー(?)
配役は誰だ
アリゾナからニューヨークに出てきた女優の卵が路頭に迷う。旧知の演出家に再会し履歴書の書き方から指導を受ける。
特別な週末
1970年、両親が離婚した少年の10歳の誕生日。別れた母と出かけ母の恋人の自家用飛行機で帰宅するまで。
心の中で思うこと
古いタイプライターを衝動買いした女性。タイプ屋で修理を断られるが、別の中古タイプライターを紹介されて買う。
過去は大事なもの
大金持ちの男が、タイムマシンで1939年の万博を訪れ、そこで惚れた女性との時間を過ごそうとする。
どうぞお泊まりを
シナリオ風の形式。富豪が美人秘書とともに買収候補の土地を訪れ、モーテルを経営する老夫婦と出会う。
コスタスに会え
大戦後の時代。密航でニューヨークに来たギリシア系ブルガリア人の男が職を探す。
スティーヴ・ウォンは、パーフェクト
四人組もの。ボーリングでパーフェクトを出し続け世間から大注目を浴びる男。
時代背景も設定も作劇展開もバラエティに富んでいる。
さすが映画俳優と言うべきか、どのお話も映像化して観てみたくなるような生き生きとした魅力がある。
実際、俳優・女優が主人公になっているお話も含まれているが。
「へとへとの三週間」での大人になってからの恋愛のあり方が生み出す可笑しみだとか、「配役は誰だ」「コスタスに会え」での人生におけるチャレンジと苦境、そしてそこに救いをもたらす人との縁だとか、そのへんの肌触りの温かさがとても心地よく感じられる。
そして、一番気に入ったのは「ようこそ、マーズへ」。
ラストの切なさが堪らない。
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トム・ハンクスによって書かれた短編集。どんな世界が待っているのか、興味津々で読んだ。
今も昔も良きアメリカ、時にユニークで、時に温かく、時に破天荒な。。。あらゆるアメリカが描かれている。映画俳優としてこれまで様々な人物を演じてきたトムだからこそ描けたんだろうなぁ。
特に、新作映画のキャンペーンで世界各国に連れて行かれて振り回される駆け出しの役者の話「光の街ジャンケット」などはトムの実際の経験が基になっているに違いない!
一番のお気に入りは、ラストの短編「スティーブ・ウォンは、パーフェクト」かな。
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正統派のアメリカの短編集。
正統派の、というのは大学の創作科出身的でない、ということ。
そんな言い方したら失礼かな。
出版のきっかけになったという、「アラン・ビーン、ほか4名」が特に好き。
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タイプライターをキーワードにした短編集。ノスタルジックな雰囲気を持つ。
時代も背景も様々だけれど、ちょっとほっこりする。
トム・ハンクスの名に恥じない(??)なあ。
期待以上でした。
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もう各方面で絶賛されていて、わたしの感想も同じだからいまさら書くことないなあ、って思うんだけど、とにかくよかった!
今の話もあり、昔の話もあり、タイムマシンが出てくるSFあり、脚本あり、新聞記事の体裁もあり、映画業界の話あり、戦争の話あり、移民の話あり、ロマコメ映画にできそうな話あり、本当にバラエティに富んだ短編が17編。なにがすばらしいって、テーマとしては重かったり悲しかったりするものもあるんだけど、それでも全部が全部、ユーモアがあってファニーで温かい、ってこと。ぜんぜん嫌な気持ちにならない。いかにも「よきアメリカ」って感じがする。
……でも、トム・ハンクスのいい人そうな人柄(っていうか、実際に接したことがあるわけじゃないから、こういう人っぽいって勝手に思っているってことだけど)がすけて見えるような気がしながら読んでるからいっそうそう感じるのかもしれないけど。(個人的にファンだし……小説読んでさらに好きになったわ!)。
俳優としても小説家としてもすばらしいっていったいどういう人間よ、と。俳優として優れているから、いろいろな人物の心を「声」として表現できるってことなのかも。
Posted by ブクログ
意外にも(失礼!)、ちゃんと小説だった。それも小気味のよい短編小説。タイプライター繋がりという趣向も趣味がよい。
『アポロ13』『プライベート・ライアン』『ターミナル』などのトム・ハンクス出演映画を彷彿とさせられるような作品も何点かあって、それもうまく味付けされ生かされている。
中でも『過去は大事なもの』はジャック・フィニイ風かなあと思いながら読み進めると、ああ『ビッグ』なのかなと思い、しかし幕切れには全く別の後味が用意されていて、その手際に感心してしまった。
Posted by ブクログ
「小説家 トム・ハンクス」のデビュー作は短編集。各所で彼の俳優経験も活きており、全体的に優しい風合い。普段はハッピーエンドより考えさせられる話を選びがちだが、たまには甘いものも食べたくなる。まぁその中にはほろ苦さもあったのだが。。
全17篇をレビューするのは自分にとって至難の業なので、幾つか気に入ったのをピックアップしていきたい。うち数作品には内容が連関しているふしがあるけど、どの話も単品(⁉︎)として満喫できる。おまけにビターとスイートの調和もよく取れている。
『クリスマス・イヴ、一九五三年』
出だしは古き良きアメリカのクリスマスといった風。そこから10年前に遡り、冒頭の幸せは奇跡的に掴み取れたものだと読者は痛感することになる。ベトナム戦争の2年前でもあるからそれは益々貴重なものだということも。
『心の中で思うこと』
著者がタイプライター蒐集家であることから、ほとんどの章でタイプライターの描写や写真が登場する。(少々くどかった笑)
中でも本作はタイプライター自体がメインテーマとなっており、尚且つ一番落ち着けた話だった。タイプライターは今でいうラップトップの筈なのに、主人公の女性みたいに妙な憧れを抱いてしまう。店主と女性の談義に自分ものめり込み、人生を変えるであろう一台に出会えた彼女のこれからに想いを馳せた。
『過去は大事なもの』
ジャンルとしてはSFにあたり、恐らく読者の多くが好きになった作品だと思う。何故なら普段はSFに疎い自分でも夢中になれたから。
過去へのタイムトラベルが可能となった現代で、主人公バートが1939年6月8日へと時間旅行する話。「過去の写真に当時の服装にそぐわない人物が写っている」という都市伝説チックな話を耳にするが、本作では時間旅行会社なるものが当時の服装を手配してくれる。(他にも処置が盛りだくさんで全部が面白い!)
何度同じ年月日(+時分秒)に遡ってもみんな合わせ鏡のように同じ言動をしている。当たり前のことだが、いざその現象を目の当たりにすると不思議な気持ちで頭がボーっとしてしまう。無論、ラストにも。
『ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」』
17篇のうち4篇は地方紙コラムニストによる「わが町自慢」のコラム。書き手の風貌が分からない分、どんな表情で記事を書いているのか等想像が膨らんでいく。内容はどうってこともないのだが、4篇を経てイメージが出来上がっていくのが何となく愉快だった。全篇にわたりタイプライターへの郷愁の念が強いことから、ひょっとしたらハンクさんはハンクス……何でもありません。
途中まで著者特有の柔和ボイスで再生されていたが、以降は何度も著者のことを忘れるくらい読みふけった。筆のパフォーマンスもお上手だったとは…!
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面白くないわけがない。
俳優としてあれだけの役をこなした上、監督や制作でも才能を見せつけて、足りないのは「時間」だけ。
有名であるが為、最初から高いハードルがある。何もしなくても既に名声を得ており、その分やや損しているにもかかわらず…。
とにかく、読み進めていくと登場人物がどんどん映像化されていく。
『ようこそマーズへ』や『特別な週末』は、そのままで「少年の成長」ドラマのエピソードとなり、『ヘトヘトの三週間』『アランビーン、ほか四名』『スティーヴ・ウォンは、パーフェクト』は「おかしな四人のオシャレな生活」となる。
『クリスマスイヴ・一九五三年』は映画『プライベートライアン』のようなドラマに膨らみ、『コスタスに会え』はそれだけで社会性の強い映画が一本できそう。
才能がうらやましい…。
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こういう短編すごく好き。Oヘンリーと似てるという紹介文を見かけたけど、私はそうとは思わなかったな。audibleは本人の声みたいなので、音声でも読んでみたい。
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あのトム・ハンクスが書いた小説、という事で読んでみた。450ページの中に17篇のショートストーリーが盛り込まれている。読み始めは、ごくごくありきたりな日常の風景に退屈に思ったが、読み進めるうち、いつの間にか夢中になっていた。恋愛、SF、ノスタルジックなものまで、作風も様々。登場人物も生き生きと描かれていた。映画の世界での活躍がここに見えた気がした。
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あの名優トム・ハンクスの小説デビュー作。トム・ハンクスが小説を書いたというだけで、ファンとしては「ワオ!」なのだけど、17の短編がそれぞれ中々に味わいのある仕上がりになっている。心のどこかに残り続けて、何かの折に「そういえばあんな小説読んだな」と思い出されるたぐいの小説だと思う。
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あのトムハンクスの小説だと思って、興味があったが、外国の小説に多い情景描写は今ひとつ。トムハンクスだからこそのものとは何だったのかはよくわからなかった。
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ひと癖ある主人公はどれもトム・ハンクスが演じる役のように感じられ、頭に浮かぶのはユーモアたっぷりのセリフとニヤッとした笑顔ばかり。時にはしんみりとさせる場面もあり飽きさせません。
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トム・ハンクスが書いた小説。脚本形式や新聞コラム形式を交えた短編集。青春もの家族ものSFなど内容も様々。面白い作品もあるが、今後好んで読むタイプの作品ではないかな。タイプライターが随所に出てくるので、そういえば彼はコレクターだったな、と思いながら読んだ。
Posted by ブクログ
小説家トム・ハンクスのデヴュー作は、17篇の作品を收めた450ページもの作品集となった。
初めての作品集というわりにはずいぶんと書きためたものだ。どれもおもしろい。これぞ短編小説の醍醐味。筋を追いながら、先へ先へと気持ちを走らせながら読んだ。
「クリスマス・イヴ、1953年」「過去は大事なもの」「コスタスに会え」あたりが好み。
Posted by ブクログ
トム・ハンクスが小説を書いたと聞いて驚いた。読んでもう一度驚いた。
知名度に寄りかかって奇をてらうではない、正統派の短編小説である。
しかし、驚くことではないのかもしれない。
脚本も手掛け、監督もこなしたことがある。その才は演じることだけに留まってはいないのだ。
真面目で温かく、ユーモアもあり、ちょっぴりシニカル。
作品の手触りはどこか、俳優としての著者の佇まいにも似ているようにも思われる。
ハンクスは相当な読書家であり、タイプライター蒐集家としても知られているという。
本書中の短編にはタイプライターが渋い脇役・重要な小道具としてそこここに顔を出す。
作品の冒頭にタイプライターの写真が出てくるのも楽しいところだ。
エネルギッシュすぎる恋人に振り回される男、第二次大戦の帰還兵、大女優の相手役を射止めた若き俳優、ぎくしゃくした家庭のティーンエージャー、スターになるのを夢見て田舎からニューヨークに出てきた女優の卵、アメリカに渡ったギリシャ移民。
さまざまな人のさまざまな人生の1シーン。
どんなに平平凡凡と思われる人の人生も、どこかしら何かしら変わったところはあるだろう。波瀾万丈か、と言われればそうとは言えないが、それでも、どこかドラマチックな部分というのはあるものだ。
そんな味わいの短編集である。
どの作品の登場人物もキャラクターがよく描き出されており、シーンは鮮烈に映像的である。同時に、どことなくあれこれと映画を思い出させる。著者自身が出演した「プライベート・ライアン」であったり、「アポロ13」であったり、あるいはそうではない「アメリカ・アメリカ」であったり、「ある日どこかで」であったり。
著者自身がそうした映画を念頭に置いていたのかどうかは別として、エピソードの際立ち方が映画に似ているように感じられる。
ストーリーはひねり過ぎず、どちらかというとシンプルだ。古き佳き「アメリカ」をそこここに感じさせる。
すべての作品を非常に堪能したとは言い切れないのだが、個人的によかったのは、「光の街のジャンケット」、「ようこそ、マーズへ」、「配役は誰だ」あたりだろうか。
実のところ、このうち1編はバスで読んでいて、久しぶりに停留所を1つ乗り過ごした。意外な展開というわけではないが、なかなか楽しかった。