小川高義のレビュー一覧
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胸が締め付けられる。
出てくる登場人物の誰もが、少しの悪と、沢山の苦しみと愛を持ち合わせていた。
それにしても、悔恨が心身にもたらす影響力の強さよ。
アメリカ(特に田舎)には、素朴さや真面目さが感じられるけれど、それはピューリタンの流れを汲む歴史が脈絡と受け継がれているのだろうと思った。
ヨーロッパの小説と違い、ヘスターが強い女として描かれているのが印象的だった。
時に牧師や医者に対し、強い意志やその壮絶で孤独、しかし思考が自由に解き放たれた女として、力強く、優しい言葉を発する。
ヨーロッパの小説だと、彼女はもっと弱々しい存在として描かれたんじゃないかな。
最後のラストは薄々感づくのに -
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「オリーブ・キタリッジの生活」の続編。主人公オリーブはさらに年老いて、前回の中高年小説からついには死や孤独という不安にとらわれる老人の小説になっている。だが、ここに書かれる人間関係の葛藤やオリーブの気持ちの変遷は、老人だろうが若者だろうが人間は同じだということを感じさせるもので、むしろ前作よりも普遍的な内容になっている。
夫の元愛人をこき下ろしたくなる。フレンチ系の住民に対するちょっとした偏見、でもそんな教え子が有名人になっていたらちょっと誇らしく、会ったことをみんなに言いたくなる。一方でソマリ人を差別しちゃいけないという正義感。老人ホームに入っても、一緒に食事する相手や仲良しがなかなか見つ -
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最後まで読み、「辛い」と声が出た。結局、牧師と神との間で交わされる神聖な対話や関係の前では、子供を産んだヘスターは無力だ。森での美しいヘスターも歯が立たない。牧師は、「ヘスターの苦しみを痛いほど知っていた(だからこそ辛かった!)、他人に罪人であることを隠して苦しんだ!、死ぬ前に罪について告白するのだ!(その直前に壮大な説教をして大衆を心酔させている)、ヘスターに自分達は永遠に結ばれないと彼女を戒める!」という論理を展開していく。牧師は、神の采配で、迷いから救われたという。宗教的には勝利したのだろう。でも、ヘスターは。。。神との誓いを優先して、美しい信仰心を讃えて先に死ぬ牧師。残されたヘスターは
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著者の前著「私の名前はルーシー・バートン」のスピンオフのような短編集で,ルーシー・バートンと何らかの繋がりがある人(あるいは,さらにそこから孫繋がりしている人)達9人それぞれが主人公の9つの短編からなる.
自分もそうなのだが「私の名前はルーシー・バートン」を読んでいなくても全く支障は無い.
この主人公達は,皆が心に何かを抱えている.それを丹念に,かつ,淡々と綴っているだけ,といえばそれだけなのだが,心を揺さぶられる.仕掛けの一つが,各短編の主人公達が必ず他の短編で少しだけ登場(といっても言及されるだけの場合が多いが)することで,二つの違った角度から「何か」を見ることによって,人物や出来事の造形 -
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恩田陸さんも以前『ねじの回転』というタイトルの長編小説を発表しており、タイムスリップSFモノだったので本作もそっち系なのかと思っていたのですが、全然違うお話でした。もっとも、本作の特徴である説明しすぎず解釈を読者に委ねる趣向は恩田さんも得意とするところなので、何かしらのオマージュは捧げているのかなあという気はします。
その趣向について少し述べます。主人公は語り手である「私」。両親と死別した兄妹の家庭教師として住み込みで雇われた「私」が、屋敷に出没する男女の幽霊から兄妹を守ろうとするのですが、実はこの幽霊は「私」以外の人間は見ることができません。そのため「幽霊は実際に登場した」という解釈や、「幽 -