小川高義のレビュー一覧
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読みたかった古典純文学のうちの一つ、
やっと読めて良かった。
内容は老人が海でカジキと3日間死闘を繰り広げるお話。
びっくりなのが、刻一刻と流れる三日という時間を、驚く程鮮明で細緻に書いているという事。小説というよりも緊迫したドキュメンタリー見てる様な。手に汗握るとかは正直無かったけど、老人が取る一挙手一投足がよく見える。
3日間も船に乗ってる描写が永遠と続くからもっと老人の心理描写があるのかと思いきや、そんな事はない。ここでは余計な心理描写は必要無いんだろう。彼が思い出す少年の事、野球、ラジオ、そして独り言、老人を語るにはそれらで全て足りている。
この本が現代までこれほど長く読み継がれてる -
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「小説家 トム・ハンクス」のデビュー作は短編集。各所で彼の俳優経験も活きており、全体的に優しい風合い。普段はハッピーエンドより考えさせられる話を選びがちだが、たまには甘いものも食べたくなる。まぁその中にはほろ苦さもあったのだが。。
全17篇をレビューするのは自分にとって至難の業なので、幾つか気に入ったのをピックアップしていきたい。うち数作品には内容が連関しているふしがあるけど、どの話も単品(⁉︎)として満喫できる。おまけにビターとスイートの調和もよく取れている。
『クリスマス・イヴ、一九五三年』
出だしは古き良きアメリカのクリスマスといった風。そこから10年前に遡り、冒頭の幸せは奇跡的に掴 -
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スーとジョンジーが絵のスタジオを持っていた。……八番街の「デルモニコズ」で定食の出る時間に知り合い、芸術、チコリサラダ、ビショップ袖の趣味がピタリと一致していたので、共同のスタジオを構えることになった。
スーが肺炎になり、医者が何でもいいから心残りになってくれるものは?たとえば男とか
の問いに
「男?」スーは口琴をくわえて弾いたような声を出した。「男なんてものはーあ、いえ、
先生、そういうことはありません」
(小川高義 訳)
「恋人ですか?」スーがあいまいな口調で答えた。「恋人なんて、そんなばかばかし……
あ、いえ、いません」
(金原瑞人 訳)
「恋人?」スーの声には軽蔑するよう -
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ネタバレひたすら「老人VS魚」で何度も飽きたけど、最終的には読んでよかったと思う。
考えすぎそうになりながら、心が折れそうになりながらも、何度も頭をスッキリさせ直しては戦いに挑んでいく老人。かっこいい。
しっかり自信があって前向きなところもいい。馬鹿の前向きさではなく、思慮深くかつ経験を積み重ねてきたからこその前向きさ。
少年がいればなあ、と何度も思うのも、人間らしいし自分を過大評価していなくてかっこいい。
海や魚に敬意を持って、自分の信念を持って向き合っているところも素敵だ。
最終的にはぼろぼろで帰宅して結局何も得られなかったかのようだけど、「そんなことはない、大きな出来事だった」と感じられて気持 -
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CL 2021.12.10-2021.12.18
新訳でとても読みやすくなっている。
7年も自分だけ罪を隠して、隠しておけなくなったら死んでしまうディムズデール牧師は情けない男ではないか。
ヘスター・プリンはその間もずっと幼い子どもを抱えて世間から拒絶され、差別され、たったひとりで敢然と生きてきたというのに。
我が子パールへの責任もかけらも果たさず、ただただ己の都合、思いだけで、ひとり逝ってしまうとは。
たとえこれが1600年頃のアメリカの話だとしても、男の情けなさに怒れてくる。
現代的な基準では語れないのは承知の上で、それでも素直な感想は上記のとうり。 -
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ネタバレ謎解きミステリーにどんでん返しは私の大好物。
本作におさめられている「モルグ街の殺人」から始まった推理小説の歴史。
まさに原点となる作品をようやく手にしました。
本書は「モルグ街の殺人」以外にも「黒猫」「本能vs.理性ーー黒い猫について」「アンモティリャードの樽」「告げ口心臓」「邪鬼」「ウィリアム・ウィルソン」「早すぎた埋葬」の計8作からなる短編集。
「モルグ街の殺人」も60p弱の作品なので、サクッと読み終えました。
まるで詰将棋。
作者が決めた答えに導いていく思考は、今の時代の何気ない日常の中でも使える思考法で、作品の舞台裏を覗き見たような感覚を味わいました。
本作で謎解きをす -
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ちょっと不思議な感覚な物語だった。
世間知らずの主人公青年がぶっ飛び美女に気があり追いかけ回すものの、そのぶっ飛び美女にはその気がないという、特にどうということがない展開であり(笑)、登場人物たちの心情のうつろいや性格描写が限定的でいまひとつ物語に入り込めなかったことが大きいかもしれない。
また、物語の終息が唐突であり、ちょっと意外だったこともあるかもしれない。
物語はスイスのヴェーヴェーが舞台の出会い編とイタリアのローマが舞台の袖にされる編の大きく2つに分けられる。
スイスのヴェーヴェーでは雄大な自然と古城が開放的な気分の舞台装置としてはぴったりで、イタリアのローマの街並みと古代遺跡の重み -