小川高義のレビュー一覧
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面白くないわけがない。
俳優としてあれだけの役をこなした上、監督や制作でも才能を見せつけて、足りないのは「時間」だけ。
有名であるが為、最初から高いハードルがある。何もしなくても既に名声を得ており、その分やや損しているにもかかわらず…。
とにかく、読み進めていくと登場人物がどんどん映像化されていく。
『ようこそマーズへ』や『特別な週末』は、そのままで「少年の成長」ドラマのエピソードとなり、『ヘトヘトの三週間』『アランビーン、ほか四名』『スティーヴ・ウォンは、パーフェクト』は「おかしな四人のオシャレな生活」となる。
『クリスマスイヴ・一九五三年』は映画『プライベートライアン』のようなドラマに膨らみ、『コスタスに会え』はそれだけで社会性の強い映画が一本できそう。
才能がうらやましい…。 -
Posted by ブクログ
作品は1850年に発表されたものだが、舞台はさらに200年も遡ったアメリカのニューイングランド。
そこはピューリタンの町で、当然ながら厳格な信仰が守られているコミュニティだ。
タイトルの緋文字とは、そこで姦通の罪を犯した女性への罰として、その衣服の胸のところに常に着けるように定められた緋色のAの文字のこと。
その女性は、町で尊敬を集めている牧師と関係を持ち子をなしてしまうが、彼女には夫がいたため、罪とされた。一方牧師の方はその関係がバレずにいた。
後から町にやってきた夫は、医師に身をやつし町の中で一定の位置に居座るようになるが、二人に執拗に復讐をしようとしていく。
キリスト教をベースにしているため、罪とか罰という観念が、現代から見ると大きく異なっている気もする。正直、そこまで苦しまなくとも、とさえ。
しかしそれが当時の空気感であり、それがいわゆる「世間」であったということを思えば、一概に昔話にしてしまうこともできない。
よくも悪くも、一定の規律やルールを定めずにはおれない、そしてそれに縛られることを自ら望むのが人間ということか。
また、物語の後半でも描かれるのだが、罰を受けるがゆえに聖性を帯びてくるという展開も、キリスト教的なものと言えまいか。
しかしこの論理は極めて危険なものであるということは、歴史が示しているとおり。それをあえて19世紀半ばに描くという点は、もう少し深掘りできることかもしれない。 -
Posted by ブクログ
トム・ハンクスが小説を書いたと聞いて驚いた。読んでもう一度驚いた。
知名度に寄りかかって奇をてらうではない、正統派の短編小説である。
しかし、驚くことではないのかもしれない。
脚本も手掛け、監督もこなしたことがある。その才は演じることだけに留まってはいないのだ。
真面目で温かく、ユーモアもあり、ちょっぴりシニカル。
作品の手触りはどこか、俳優としての著者の佇まいにも似ているようにも思われる。
ハンクスは相当な読書家であり、タイプライター蒐集家としても知られているという。
本書中の短編にはタイプライターが渋い脇役・重要な小道具としてそこここに顔を出す。
作品の冒頭にタイプライターの写真が出てくるのも楽しいところだ。
エネルギッシュすぎる恋人に振り回される男、第二次大戦の帰還兵、大女優の相手役を射止めた若き俳優、ぎくしゃくした家庭のティーンエージャー、スターになるのを夢見て田舎からニューヨークに出てきた女優の卵、アメリカに渡ったギリシャ移民。
さまざまな人のさまざまな人生の1シーン。
どんなに平平凡凡と思われる人の人生も、どこかしら何かしら変わったところはあるだろう。波瀾万丈か、と言われればそうとは言えないが、それでも、どこかドラマチックな部分というのはあるものだ。
そんな味わいの短編集である。
どの作品の登場人物もキャラクターがよく描き出されており、シーンは鮮烈に映像的である。同時に、どことなくあれこれと映画を思い出させる。著者自身が出演した「プライベート・ライアン」であったり、「アポロ13」であったり、あるいはそうではない「アメリカ・アメリカ」であったり、「ある日どこかで」であったり。
著者自身がそうした映画を念頭に置いていたのかどうかは別として、エピソードの際立ち方が映画に似ているように感じられる。
ストーリーはひねり過ぎず、どちらかというとシンプルだ。古き佳き「アメリカ」をそこここに感じさせる。
すべての作品を非常に堪能したとは言い切れないのだが、個人的によかったのは、「光の街のジャンケット」、「ようこそ、マーズへ」、「配役は誰だ」あたりだろうか。
実のところ、このうち1編はバスで読んでいて、久しぶりに停留所を1つ乗り過ごした。意外な展開というわけではないが、なかなか楽しかった。