小川高義のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ幽霊の存在の有無が明かされないだけでなく、「私」の兄妹への愛情や「私が守らなければならない」という責任感は異常とも言え、客観的に見ると思い込みが激しく奇怪な言動が多い人物に"あえて"描いているように思える。
原作者自身が意図的にぼかしたり婉曲表現を多用しているため、とにかく文章や言い回しに不自然な部分が多く、翻訳に相当苦労したのがすぐに伺える。
翻訳者もあとがきで触れており、この点も評価を落としているポイントか。
だが、『「私」の友人のダグラスの妹のかつての家庭教師だった女性の手記を怪談話の集まりの中でダグラスが読み上げ、そのダグラスの死後に「私」が改めて書き写した』と -
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本日2度目の『モルグ街の殺人』であるが(^^;)、これは素晴らしい!
翻訳は小川高義という方。『黒猫』『モル殺』はおそらく翻訳違いのをそれぞれ3つ以上は読みましたが、先ほど読んだ新潮文庫のポー短編集Ⅱの巽孝之の翻訳などに比べても圧倒的な読みやすさです。同時読み比べをすると、ワンセンテンスが短く、平易な語彙が用いられていることが明らかです。ポオの晦渋で格調高い文章を楽しみたい方にはおすすめできませんが、物語を全力で楽しみたい方にはこれがぴったりでしょう。
『本能vs理性 黒い猫について』
ポーの飼っていた黒猫を例にとって本能と理性の境界の曖昧性について説くエッセイ。知的生命体という驕りによっ -
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ネタバレポーに振り落とされずに余裕を持って楽しめる小川高義さんの翻訳はなかなか良い。愛する女性との死別を描いた『アナベル・リー』『ライジーア』『大鴉』が3作並んでいて比較しやすい所も超ナイス。
『アナベル・リー』と『ライジーア』は愛する女性の名がそのままタイトルになっているだけでなく、語り手の思慕の情も似通っています。例えば引用すると↓
「夜空に星が出るたびに
美しきアナベル・リーの輝く星が見えている」
「ライジーアの美しさが私の精神に染み込んで美神が居を定めたようになってからは、現実界に存在するさまざまなものを見るにつけ、あの大きな明るい双眸が私の内部にもたらす感覚と似たものを呼び起こされていたの -
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Posted by ブクログ
「悪魔の辞典」で有名なビアスの短編集。
小説は初めてと思いながら読み始めたが、冒頭の表題作「アウルクリーク橋の出来事」は出色の出来だけあって、何かの短篇集で読んだことがあった。いわゆる「走馬灯オチ」だが、(再読なのに)最後の一文を読むまでそれと気付かせない(思い出させない)自然な筆致だった。
もうひとつの表題作「豹の眼」と、「良心の問題」も印象深い作品だ。
後者は、見張り中に居眠りした兵を、捕虜が脱走せずに見張り交代時に起こしてあげた逸話の後日談。軍律と良心の両方に忠実であろうとするとこの結末がしかないのかもしれないが、何とも後味が悪い。かといって処刑だけで終わるともっと後味が悪い。う〜ん -
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