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長期入院中の30代の作家の元へ、ずっと疎遠だった母が見舞いに訪れる。他愛ない会話から繊細な感情が描き出される。解説/江國香織
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Posted by ブクログ
夕日の描写が美しい。 旧ヤンキースタジアムから見た夕日。 実家で見た秋の夕日。 「あれは美しいものだった。この世に私もいるのだ、と思えた。」
エリザベス・ストラウトにやられてしまって(笑)、中毒状態になっている。 なんですか、この魅力! 時を経て書かれた続編なのに、「ああ、ウィリアム」との整合性が見事。ストラウトの小説はどれも断片の組み合わせで全体が描かれているのだが、一冊だけでなく、続編も含めて一つの世界の小さなパズルを埋めていくよう...続きを読むな描き方。 こんな書き方ができる人は他には思い当たらない。 続編を描くことで、世界が広がる描き方をする作家はいると思う。 けれど、ストラウトの小説は、隙間が埋められていく感じだ。そんなに計算して書いてないようにみえるのだが、なぜこの人がこの時こんなことをしたのか、続編でなるほどと膝を打つような瞬間が何度もある。 ストラウトのいい意味での「書き散らかし」!ものすごく記憶力のいい人なのか、それとも、作者そのものの人生の記憶が下敷きになっているのか。 ルーシーシリーズはまだ未読が一冊あるので、本当に楽しみ。それにもう一冊、出版が近いとも聞いてるし!
淡々と語られる、ある家族の長〜いストーリー。 家族だからこそいろいろ複雑な感情が入り乱れる。 詩情を感じるような終盤が良い。
読みながら自分と母親との関係、姉たちとの思惑の違い等後から後からわいてきて手を止めることもままあった。ほんの些細なことでも今思うと予想以上に心に残っていたり。そして子との関係のあやうさのエピソード。 全てが人生のいろんな瞬間を際立たせ懐かしくも染みてくる。手元に置きたい一編。
お医者さんとの関係がよかった。寂しくて仕方なかったときにそばに居てくれた、既婚者のお医者さん。 江國さんの解説もとってもよかった。断片、断片、断片。
不思議な書き方をする作家だ。 真っ白な画布のあちこちに、ちょこちょこっと描き込みをしていく。決して余白を埋め尽くしてはいかない。 更に細々としたエピソードは、動き出して大きなストーリーを物語る訳ではない。 それでも、こんなことがあった、あんな話をした、といったピースで埋められていくと何かが見えてくる...続きを読む。 いや、正解に言うと、何か書かないものがあることがわかってくる。 思わせぶりな要素はない。むしろ情報はたくさんあって、上手く読み手を空白の渦の中心へ誘ってゆく。 ここに時間の遠近法が加わるところがまた、心憎くて唸らされる。 “いまとなっては昔なのだが、私が入院して、ほぼ九週間に及んだということがある。これはニューヨーク市内での話で、夜にはクライスラー・ビルが光の点を並べた幾何学模様の夜景としてベッドから間近に見えていた。” この出だしの一文では、いまどこにいてどうしているかはわからない。 これもまた、不連続な点を行き来しているうちにおぼろに見えてくるものがある。 貧しかった子供時代。町で奇異の目で見られても背を向ける家族。母からの不完全な愛。 その中で家族の重苦しい関係性の原因となっているのはおそらく父親の暴力だ。ここが描かれない空白の渦の中心にあるものなのだろう。 第二次世界大戦での従軍によって精神に葛藤を抱える父親によってもたらされたとおぼしき、家族のいびつさ。 憎み切ることも、捨て去ることもできない。愛情は確かにあったと思うが、どこまでが確かな記憶なのかはわからない。 それでもルーシー・バートンはこう記す。 “だが、私はこう考える。この世界に無から生じる人間なんていやしない。” 結果として彼女が自分の新しい家族を手放すことになった経緯。これもまた詳しくは書かれないものの一つ。浮気もあったのだろうが、それだけではないだろう。 元夫の、戦後にドイツを去ってアメリカに渡ったドイツ人の父親についてーナチスの影と、スイス銀行に預けられた莫大な遺産。それらが僅かに原因として示唆されるが、それもまた、いまとなっては昔の話。 これが私だ。私の名前はルーシー・バートンだ。彼女がそう言って、“いま”、この物語を語り始めるに至るまで、どれだけの葛藤と痛み、そして長い時間が流れたのか。 家族について向き合い、自分について語ることは容易いことではない。読後にしみじみと想う。
断片的な会話や話。幼少期の頃、これまでのことがやはり断片的に分かってくる。戸惑いはしたけれど、嫌な感じではない。主人公と一体化したい気持ちになって読み進める。これまでにあまりない読書体験だったなぁ。
不思議な小説だ。 まるで日記のようで、「私」は作者自身のように思えるのだが、あくまでフィクション。 だから題名が「私の名前はルーシー・バートン」って念押ししているのか……。 物語は主に「私」が入院している時のこと。 あまり関係の良くなかった「母」が、5日間も病院で付き添っていた時のこと。 母が話す...続きを読むことと娘が感じることは、とても親子愛溢れた話し、とは到底遠い、でも、愛情がある。 短い段落で淡々とした文章に、ありありと情景を浮かび上がらせる……不思議な小説だ。
文字数など、1章の長さなど、気にならないのでしょうけどバラバラ。そらぞれには言いたいことは書かれていないのだけれど、連なる短い文章が折り重なり、言いたいことが伝わってくる感じ。上手だなって思う。
なかなか難しい親子関係。 現実の方も難しい事はたくさんあった。エリザベス ストラウトまた読んでみたい。
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私の名前はルーシー・バートン
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エリザベスストラウト
小川高義
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