小川高義のレビュー一覧

  • 私の名前はルーシー・バートン

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    エリザベス・ストラウトにやられてしまって(笑)、中毒状態になっている。
    なんですか、この魅力!

    時を経て書かれた続編なのに、「ああ、ウィリアム」との整合性が見事。ストラウトの小説はどれも断片の組み合わせで全体が描かれているのだが、一冊だけでなく、続編も含めて一つの世界の小さなパズルを埋めていくような描き方。
    こんな書き方ができる人は他には思い当たらない。
    続編を描くことで、世界が広がる描き方をする作家はいると思う。
    けれど、ストラウトの小説は、隙間が埋められていく感じだ。そんなに計算して書いてないようにみえるのだが、なぜこの人がこの時こんなことをしたのか、続編でなるほどと膝を打つような瞬間が

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    2024年04月21日
  • ねじの回転(新潮文庫)

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    果たして幽霊は居るのか?居ないのか?
    126年前に描かれた怖い話。純真無垢な子供が
    不気味。見えてるの?見えてないの?謎は深まっていく。
    両親と死別し、イギリス郊外の古い屋敷に暮らす聡明な兄妹。離れて暮らす伯父に雇われ、赴任してきた家庭教師である「私」。
    可愛く従順な子供達と屋敷を仕切る事となった「私」はある日、高い塔に見知らぬ男の影を見てしまう。それは以前勤めていた使用人に似ていた。しかし、その男はすでに死んでいた。

    YouTubeで知った本作。ホラー苦手な私はこれなら読めるかもと手に取った。ほど良い怖さで一気読み。いろんな解釈ができる。元祖、信頼できない語り手かも。人が一番恐ろしい。

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    2024年03月10日
  • 魔が差したパン―O・ヘンリー傑作選III―

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    大好きな作家のO・ヘンリー
    特にこの人の恋愛の物語が好きだ。
    一話が短いながらも、確かにストーリーが詰まっていて甘酸っぱい気持ちになる。ドラマや映画など映像のストーリーとはまた異なり、文字の物語を楽しめる。この本を気に入った人には『恋人たちがいる風景』も是非お勧めしたい。

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    2024年02月12日
  • 私の名前はルーシー・バートン

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    淡々と語られる、ある家族の長〜いストーリー。
    家族だからこそいろいろ複雑な感情が入り乱れる。
    詩情を感じるような終盤が良い。

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    2023年12月27日
  • グレート・ギャッツビー

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    読めば読むほど味がする最高の小説。好きすぎて英語版も買った。難解な文章が多くて、翻訳者のセンスが試される。
    ギャッツビーの「ッ」が気になって仕方ない。
    ぶつ切りな文章が多いが全体的に良かった。

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    2023年12月15日
  • 黒猫/モルグ街の殺人

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    1841年(日本は当時江戸時代)に発表された「モルグ街の殺人」。
    世界最初の探偵と呼ばれるデュパンの推理が光ります。
    奇々怪々の殺人事件、戦慄の光景、衝撃の真相が心に焼きつきました。
    巻末にあるエドガー・アラン・ポー年譜もじっくり眺めさせていただき、ポーの生涯にしばし想いを馳せました。
    古典は読んだことがなかったのですが、思い切って挑戦してみて良かったです。

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    2023年10月30日
  • グレート・ギャッツビー

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    初読。村上春樹訳も読んでみたいがこちらもすごく良かった。文章が独特かつ非常に美しい。(原文読めないけど)これはフィッツジェラルドの技術でもあるし、訳者の小川高義氏の手腕でもあるのだと思う。語り手からギャッツビーへの目線は淡々として中立的なようで、彼なりにギャッツビーに寄り添っているのがわかる。父親に関係を問われてすぐ「親友でした」と答えるくだりがよい。ギャッツビーがただ一人愛した存在であるデイジーが、後書きで触れられているような「頼りない、不安定な夢」であることが奇妙な誤読感に繋がっているように思う。

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    2023年06月11日
  • 緋文字

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    みなさんは海外の作品を読むときに翻訳家というものをどの程度意識されているでしょうか

    え?★5付けといてまた関係ない話し始めるの?と思ったみなさん
    安心してください
    この素晴らしい名作は光文社の他に多彩な出版社から刊行されていて
    それぞれに素晴らしいレビューが存在しています
    そっち読めばいーじゃん!(清々しい開き直り)

    というわけで話し進めますね
    翻訳家さんです
    翻訳家さんにもっと注目して読書生活を送ってみませんか?という新生活の提案です

    かくいうワタクシも、そこまで翻訳家さんを気にしていたわけではないんですが
    今回のように気が付くと小川高義さん祭りになっていたりしてあれこれはどういうこと

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    2023年05月27日
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)

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    カポーティのキャリアの中でも超初期の、習作ともいえる短編集。訳者のあとがきにもあるように、きちんと校正が入ったらもっと修正がかかりそうな部分も多々あるが、それを補って余りある瑞々しい感性や表現力に圧倒される。状況としては2人の人間が会話している場面を切り取っただけのような話でも、それぞれの台詞や仕草、周りの光景の描写から、あまりにも多くのことが読み取れる。
    ひとつひとつの作品は本当に短いけれど、読み応えはすごい。それぞれの作品を読み終えるたびにしばらくその余韻に浸ってしまう。

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    2023年03月05日
  • 魔が差したパン―O・ヘンリー傑作選III―

    購入済み

    オーヘンリー傑作集3

    オーヘンリーの洗練された美しい文章にはため息がでるほどに感動します。そして最後に来るどんでん返しの楽しい結末にワクワクします。何度も読み返したくなるオーヘンリーの作品集です。

    #笑える #感動する

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    2023年02月02日
  • この道の先に、いつもの赤毛

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    『マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない。……』
    という最初のセンテンスだけを思いついてこの話を書きはじめたそうだ。

    一言で言えば、まあ堅物の人付き合いの上手くできない人マイカ。
    アパートの管理と、パソコンなどの技術サービスをしている。

    運転しているときは、『交通監視システム』に、制限速度を守り、ウィンカーを出し、静かなブレーキ操作をすることをしっかり評価されていると空想しながら。
    彼女とはなにかチグハグでうまくいかず、そこに大学時代のガールフレンドの息子がやってくる…
    そこから色々なことが起き、そのガールフレンドにも何か言われ…
    少しずつ人の心がわかってくる

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    2023年01月12日
  • この道の先に、いつもの赤毛

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    石に刻んだように決まりきった毎日を過ごす43歳のマイカ・モーティマー。
    なんだか…わりといそうだよね、こういう人、っていう感じ。「完璧」な暮らしをしていて、自分は何も悪くないと思っていて、なのになぜかうまくいかないことが多くて、人生なんてこんなものって思い込んで、暴れるでもなくヤケになるでもなく静かに暮らす中年男性。まるで自分の父親を見ているかのような気持ちにもなる。

    主人公マイカの人生はよくあるごく普通の話だし、しかもこんな地味な中年男性。だけど、物語には彩りがある。なんてことはないのに、目が離せなくてどんどん読み進めたくなってしまう。
    ちょっと眉をひそめてしまいそうなマイカの家族の話も、

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    2022年10月11日
  • グレート・ギャッツビー

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    何回目かわからないぐらい読んでいるけれど、今回は津村さんの世界文学の紹介をきっかけに再読。
    フィッツジェラルド節満載で相変わらず文体がカッコいい。そして前回読んだ村上春樹訳とはまた違った味わいがある。こちらの方が読みやすい。
    全員がどこかしら一癖ある西部出身の登場人物達が東部ニューヨークの風に馴染めず、それでもしたたかに生きるトム、デイジー、ベイカーに対し、やはり馴染めずに帰郷する語り手のニック、そして過去よもう一度とばかりに不器用ながら純粋に生きるギャッツビー。誰かに感情移入するということはなく、1920年頃の時代の雰囲気を感じることができる。
    難しいといえばそんなことはないのだけれど、決し

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    2022年10月10日
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)

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    取るに足らない場面の過不足ない情景描写や、華麗とも言える人物造形、物語のプロットの完成度、ところどころに点在する星のように燦然と輝く一節が、のちの鮮烈で煌びやかな才能の開花を予見させる。

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    2022年10月06日
  • 私の名前はルーシー・バートン

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    読みながら自分と母親との関係、姉たちとの思惑の違い等後から後からわいてきて手を止めることもままあった。ほんの些細なことでも今思うと予想以上に心に残っていたり。そして子との関係のあやうさのエピソード。
    全てが人生のいろんな瞬間を際立たせ懐かしくも染みてくる。手元に置きたい一編。

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    2022年09月16日
  • バージェス家の出来事

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    「三分の二は逃げそこなった、と思っている。彼とスーザンは――スーザンには息子のザックも合算して――一家の父親が死んだ日から運命にとらわれた。どうにかしようとは思った。母親も子供のために頑張ってくれた。だが、うまく逃げおおせたのはジムだけだ」

    あの日、四歳のボブと双子の妹スーザン、それに長男のジムは車に乗っていた。玄関前の坂道の上に父が車を停め、郵便受けの不具合を直そうと坂道を下りていったあと、車が動き出して父は圧死した。ボブには何の覚えもないが、前の座席にいたので、学校で「お父さんを殺した」と言われ、精神科に通ったこともからかわれた。いつもぼんやりとした不安が心に潜み、弁護士になった今でも法

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    2022年08月17日
  • 老人と海

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    とてもよかった。昔読んだけれど、年齢を重ねたことでわかる良さのある小説の一つ。

    訳者解説、あとがきもとてもよく、老人は常に一定のトーンで話しているというこの訳がとても私にはしっくりきた。
    若い頃読んだ時は「…で、なんなの」とか思ってしまったものだけど、今読むと老人の、海や魚や鮫を通した自己との対話がとても示唆に富んでいるというか…。じっくりと読む価値のある小説だった。

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    2022年08月03日
  • 老人と海

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    ひたすらに老人の心境を記している。
    全く飽きないで一気読み。

    テーマはシンプルで深い気がする。

    老人の命
    大きな魚の命
    敵の命
    太陽の命

    毎日、太陽を殺そうとすることになったらどうなるか。いやはや、人間は幸せに生まれついてる、と老人は思った。

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    2022年07月09日
  • 黒猫/モルグ街の殺人

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    コレは面白い。読み終わった後に、思わず『おもしれー』と、声が漏れました。いまから190年近く前の作品たちですが、どれもコレも内容は秀逸で、暗くて、怪奇的です。アメリカで発表された時、日本に初めて入ってきた当時の読者の感想や驚きが、今からでは全く想像できません。中でも黒猫、ウィリアム・ウィルソンは素晴らしいですね。モルグ街の殺人はとても有名なので一読したかった作品です。当時のヨーロッパの空気感を感じる素晴らしい内容でした。

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    2022年07月05日
  • 緋文字

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    ネタバレ

    数年前にも違う訳者さんの本を読んだのですが再読。やはり良いです。
    清教徒の多い、宗教と法律がほぼ等しい土地で不義の子を産んだヘスター。ヘスターが名を明かさなかった、相手の牧師、ディムズデール。そしてヘスターの本来の夫であるチリングワース医師。三人を中心に描く、罪と贖罪の物語。
    罪を犯し、それを悔やみ、苦しみ、許し、自己を追い詰め、人を憎む、それぞれの心の動きが丁寧に書かれています。

    罪を犯し、恥辱の印を身にまといながらも、愛情深く高潔に生きるヘスターも、罪を犯した妻のヘスターではなく罪を隠し生きるディムズデールを追い詰めんとするチリングワースも良いですが、ディムズデール牧師と、彼の罪に押しつ

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    2022年06月18日