小川高義のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
人間の内面に宿る狂気を浮き彫りにするような、共感をぎりぎりもてるような際どい作品群。
特に印象に残るのはやはり表題の2作品。モルグ街の殺人でもデュパンはまんまシャーロック・ホームズです。デュパンものは他に2作品しかないのが残念です。黒猫は、妻を殺したところが淡々と書かれかえって恐怖度が増し、物語に引き込まれます。
早すぎた埋葬は、もし自分が生きたまま埋葬されたとしたら…と考えずにはいられません。
ウィリアム・ウィルソンは壮大な前振りが面倒ですが読み終えた後に新しさを感じます。
江戸川乱歩やコナン・ドイルをはじめ後の小説家に影響を与えたことに納得です。
江戸時代後期に書かれた作品とは思えないほど -
Posted by ブクログ
『賢者の贈りもの』
貧しい夫妻が相手にクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。
夫のジムは、祖父と父から受け継いだ金の懐中時計を大切にしていた。
妻のデラは、その金時計を吊るすプラチナの鎖を贈り物として買うかわりに、夫妻が誇るデラの美しい髪を、髪の毛を買い取る商人マダム・ソフロニーの元でバッサリ切り落とし、売ってしまう。
一方、夫のジムはデラが欲しがっていた鼈甲の櫛を買うために、自慢の懐中時計を質に入れてしまっていた。
物語の結末で、この一見愚かな行き違いは、しかし、最も賢明な行為であったと結ばれている。
私はとにかく図書カードがほしい。
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Posted by ブクログ
「変わったタイプ」
初の小説集。
トム・ハンクスという名前を見た時、同姓同名だと思ったら、調べてみたら本当にあのトム・ハンクスだった。とひと驚き。日本でもよくある作家デビューなのかと期待半分疑い半分でいたら、ちゃんと小説を保った文章と表現、人物描写やストーリー性を感じる。と言うか、アメリカらしさ、そう、カントリーを感じる。ふた驚き。じゃあカントリーさって何?て考えた時、うまい表現が出来ない。完全にアメリカ文学における知識不足である。
しかし、初の小説「アラン・ビーン、他四名」が掲載されたのは、「ニューヨーカー」(2014年10月27日号)は、アリス・マンロー、J・D・サリンジャーのよ -
Posted by ブクログ
かの名優トム・ハンクスの小説家デビュー作短編集。
各所で絶賛されているとのことだが、確かに古き良きアメリカの伝統を受け継いだ、ハートウォーミングでどこか切ない作風が清々しい余韻を残してくれる。
13篇が収められているが、うち3編(「へとへとの三週間」「アラン・ビーン、ほか四名」「スティーヴ・ウォンは、パーフェクト」)は四人組の登場人物が共通している。
また、作集タイトル『変わったタイプ』はタイプライターとも掛けられている。
13篇すべてのお話で、影に日向にタイプライターが印象的なキーファクターとして登場するのだ。
このあたりの巧みさには本当に驚いてしまう。
以下、各話の紹介。
へとへとの -
Posted by ブクログ
しっかり二度読み返した。とはいえ難しい話ではない。各篇に一人の話者がいて、ほとんどモノローグで、自分とそのすぐ近くにいる人々について語る、ただそれだけの話だ。特に何があるというわけでもない。貧しい暮らしを送ってきた中西部、イリノイの田舎町の人々の話である。田舎町の常として、人々はほとんどが知り合いで、一族の昔のことまでよく知っている。中には、人に知られたくないこともあるが、田舎人の楽しみというのは、他人に噂話をすることだ。それもひとかけらの遠慮もなく。
全九話。ひとつひとつが互いにどこかでつながっている。ひとつの話の中で話題に上る人物が、次の話の語り手を務めている。そうやって、多くの視点で多 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新訳ということで、読みやすくなった(わかるようになった)と期待していたんですけど……
しょっぱなから延々4行にわたって続く一つの文に(しかも続けて2文章)、思わずうめいちゃいました(笑)
いや、その後はそれほど長い文章はなかったんですけど、まあ、それでも読みづらい、読みづらい。
ただ、それは訳のせいでなくて、作者の地の文章がそうだから仕方ないんでしょう(たぶん)。
(ただ、訳はかなりこなれた日本語になっているように感じます)
訳者のあとがきを見ると、ヘンリー・ジェイムスという人の文章はわかりづらいということですが、この『ねじの回転』については、わざとわかりづらく書いている面もあるのかなーと