黒原敏行のレビュー一覧
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はっきりと明示はされていないがおそらく核戦争後のアメリカだった国が舞台。植物は枯れ動物は生き絶え、死が全てを覆った世界。空は灰色の厚い雲に覆われ、どんどん寒冷化が進んでいる。そんな世界で生き残った父子が南を目指して彷徨い歩く。
「北斗の拳」や「ウォーキングデッド」のような終末後の世界を描いた作品だけど、動植物がほぼ完全に生き絶えてて食物生産ができない状況な分こっちの方がずっと条件がキツい。今ある保存食が無くなったら人間は何を食べるのか?読み進めると地獄のような答えがそこに待ち受けている。淡々とした冷静でリアリズムに徹した描写が、その地獄を現実味を帯びた説得力のあるものにしている。
地の文は -
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1980年代の英国グラスゴー。
アグネスは新しく生まれ変わるため
家族と共に炭鉱町へ移り住む。
しかし、元夫に見捨てられアルコールが手放せなくなる。
息子・シャギーには愛情を注ぐが生活は困窮していく。
(あー、アグネス、また失敗をしちゃうのかな?
どうか、アルコールではなく子供たちに目を向けて)
そう思わずにはいられない。
読んでいて辛いことばかりなのに
なぜか、この親子を応援したくなる。
訳者・黒原敏行さんあとがきより
P607
〈作者のスチュアートは、この作品は労働者階級の声、スコットランド人の声、女性と子供の声、同性愛者の声という、少数派の人々の”多様な声”を響かせることができているの -
購入済み
面白かった
クリスティこそ人間心理のプロフェッショナルだな、
というのが感想です。
フィクションのはずなのに
登場人物がみな現実に存在する人物のように感じます。
人間は怖い。 -
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ネタバレミステリーの古典でどんでん返しの結末、それだけでも興味津々ですが、 J・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズの面白さを知った私が本作を手にするのはもはや必然だったように思います。
エドガー・アラン・ポーのモルグ街の殺人から始まった推理小説の歴史。
本作も不朽の名作であることは読めばわかります。
主人公は株式ブローカーのスコット(職業は本作では全く重要ではありません)。
妻となんとか離婚をしようとしていたスコット、それまでとは手法を変え食事と劇場に妻を誘う。
直前になって行かないと言い出す妻と激しい言い合いの末に家を飛び出したスコットは何気に立ち寄ったバーで不思議な帽子をかぶった女 -
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下山事件は中学生の時、松本清張の「日本の黒い霧」になぜかハマってしまい、戦後日本のドロドロの原形質に触れた気がして、ずっと心の底に沈殿している謎でした。時々、この事件、出版物として目の前に現れるのですが、なぜか積読のままに放置してしまっています。例えば柴田哲孝「下山事件」もその一冊。「日本の黒い霧」のインパクトが凄かったからかな…そんな中、あるTV番組でで直木賞を取った佐藤究が超おススメしていたので、「テスカポリトカ」よりも先に読んでしまいました。たぶん、真相解明の本ではなく、フィクションだったので気易かったのかもしれません。でも、1949年、1964年、1989年、つまり事件発生、一回目の東
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国鉄三大事件のひとつ、初代国鉄総裁の下山定則の轢断死体が発見されたが他殺説、自殺説まみえて解決に至らなかった下山事件を扱った小説。
なのだが、昭和の東京で起きた事件を扱った三部作の最後ということは知らず、最後から読むことになってしまった。
三章構成になっている。
第一章の語り手はGHQの情報将校により、事件前、事件発生、そして事件後が語られる。
そして第二章の語り手は元刑事の探偵、下山事件を追っていた作家の行方を追い、事件から20年後の東京が語られる。
第三章は下山事件発生当時に対日工作のため来日し、現在は翻訳家のアメリカ人が、昭和天皇崩御の昭和の終わりとともに下山事件の真相にた -
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GHQ占領下の1949年に国鉄総裁であった下山定則が失踪し、礫死体で見つかり未だに未解決の下山事件。数万人規模のリストラを目前に控えて労組などから脅迫されていたことから、そうした心労が苦になっての自殺説、共産党などによる他殺説、ひいては”反共主義”を日本でも広げるためにGHQが起こした陰謀論的な他殺説まで、この事件は昭和史に残るミステリーの1つとなっている。
そんな下山事件を題材に、日本に在住する英国人作家が英語で描いた犯罪ノワールとも呼ぶべき小説が本作である。事件が起こった1949年から、昭和天皇が崩御する1989年まで、幾つかの時代を舞台としながら、その死は自殺だったのか、他殺だったのす -
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リーナ・グローヴ、ジョー・クリスマス、ゲイル・ハイタワーの3名を中心に物語が展開してゆく。物語は全体としては当時の黒人差別問題も相俟って、暗く陰気な感じで覆われているが、リーナにはどこか明るい雰囲気も漂う。ルーカス・バーチを追い求めて歩き続けてきたという導入部も、行動じたいはけっしてポジティヴなものとはいえないが、いっぽうで心の片隅に希望を抱いているからこそ、あてどのない旅を続けることができるのである。また、リーナは最終的に出産し、「人間ってほんとにあちこち行けるものなのね。」というセリフで締められる。さしづめ「希望」の物語である――というのは早計で、じつは希望なんてないような気もする。いっぽ
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著者がイラク戦争から復員後、PTSDとなり、銀行その他の強盗による服役中に書いたという本書。冒頭、主人公はクスリを買うお金欲しさに強盗を働いている。話は遡り、主人公がクスリのせいで大学を中退し陸軍に入隊、数ヶ月の訓練後イラクへ派遣、一年後復員するも、次第に薬物中毒となり、やがて銀行強盗に手を染めていく…これ、私小説やん!と思うのだが、著者によると『フィクションであり、実際に起こった事は1つもない』のだそう。主人公のクズっぷりは相当だが、死が日常にある戦場で見たものや、クスリに依存していく様子は、とんでもなく惹きつけられた。
著者は今月、仮出所するとのこと。