黒原敏行のレビュー一覧
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素晴らしい翻訳で熱帯のジャングルの人を寄せ付けない世界の出来事とそんな世界が生み出した人物の難解な物語を一気に読ませる。物語は夜更けのテムズ川に浮かぶ船の上で船乗り仲間にコンゴ川での経験を振り返って語るという語りの形式で、マーロウの語りを聞いている人物が小説の中にも存在していて、語りを聞いている人物が主体となっている入れ子的な構造。ほとんどの部分はマーロウが主人公の視点となっているが、あえてそれを客観的に聞く人物を設けることでアフリカでの出来事が幻のように遠い世界の話に聞こえる効果もある。
クルツがどのような存在なのか。これはほとんど暗示的に示されるばかりで善か悪かも判然とはしない。かつて優秀 -
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イギリス・グラスゴー。日本人の私からしたら、全く知らない土地なのに、読み進めるうちに懐かしいような気がしてくる。家の中のことが近所に筒抜けで、格好なんてつけない。ただ自分のままで生きている。必死で生にしがみついている。そういう階層の人間たちが集まっている。裸で人生を進んでいる人たち。
貧しいということの、泣きたくなるような悲しさ。お金がないということが心を貧しくし、しかしそれと反比例するように生が色濃くなっていく。
作者の自伝的小説というのは、ある種の性格を持ち合わせている。強烈なメッセージを主張したいがために書いたわけではないのに溢れ出てしまう感情の大波。こういうものは、津波のあとの町のよ -
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タイトルはシャギー・ベインだけど、本当の主人公はシャギーの母アグネス。
貧しい肉体労働者の一人娘として生まれたアグネスは、歯並びは悪かったが、エリザベス・テーラー似の美人でスタイルも良く、言葉遣いもきれいで、ファッションセンスもあった。ハンサムではないが誠実で真面目な男と結婚。二児をもうける。
ここまでなら、まあ普通の良い人生。
だけど人間は愚か。そんな平凡で退屈な毎日に嫌気が差し、性的な匂いをプンプンさせるタクシー運転手シャグと子連れで駆け落ちしてしまう。
が、こいつが浮気、DVをするろくでなし。ここから彼女の転落が始まってしまう。この運転手との間に生まれたのがシャギー。
シャグに捨てられア -
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ディストピアを題材にした小説は初めて読んだ。未来の描写を読むのは単純にわくわくする。こんな未来は確かに来そうだとか、嫌だなとか、中途半端に機械化されてないな、みたいな考えが去来する。
ところでこの小説の社会では、安定や幸福が何より優先されている。そのために人間を生産する技術が高められ、健康的害の少ない薬物が生活必需品となり、フリーセックスが奨励されている。社会は階級分けされ、低層階級の者は単純な肉体労働をこなしている。
こんな未来がやってきそうかというと、やってこないだろう。この本が書かれた当時には想像もできなかったであろうインターネットの進化は、別のディストピアを用意していると思う。 -
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Posted by ブクログ
1980年代の英国グラスゴー。
アグネスは新しく生まれ変わるため
家族と共に炭鉱町へ移り住む。
しかし、元夫に見捨てられアルコールが手放せなくなる。
息子・シャギーには愛情を注ぐが生活は困窮していく。
(あー、アグネス、また失敗をしちゃうのかな?
どうか、アルコールではなく子供たちに目を向けて)
そう思わずにはいられない。
読んでいて辛いことばかりなのに
なぜか、この親子を応援したくなる。
訳者・黒原敏行さんあとがきより
P607
〈作者のスチュアートは、この作品は労働者階級の声、スコットランド人の声、女性と子供の声、同性愛者の声という、少数派の人々の”多様な声”を響かせることができているの -
購入済み
面白かった
クリスティこそ人間心理のプロフェッショナルだな、
というのが感想です。
フィクションのはずなのに
登場人物がみな現実に存在する人物のように感じます。
人間は怖い。 -
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ネタバレミステリーの古典でどんでん返しの結末、それだけでも興味津々ですが、 J・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズの面白さを知った私が本作を手にするのはもはや必然だったように思います。
エドガー・アラン・ポーのモルグ街の殺人から始まった推理小説の歴史。
本作も不朽の名作であることは読めばわかります。
主人公は株式ブローカーのスコット(職業は本作では全く重要ではありません)。
妻となんとか離婚をしようとしていたスコット、それまでとは手法を変え食事と劇場に妻を誘う。
直前になって行かないと言い出す妻と激しい言い合いの末に家を飛び出したスコットは何気に立ち寄ったバーで不思議な帽子をかぶった女