黒原敏行のレビュー一覧
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芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって -
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ネタバレ【245冊目】19世紀末から1910年代にかけて、ニューヨーク市を中心に誘拐や爆破で米国を震撼させた「ブラック・ハンド」という犯罪結社と、それと戦うニューヨーク市警のペトロシーノ刑事の話。
色んな角度から興味深く読んだ。まずは、移民の話。ブラック・ハンドは主にイタリア系移民のならず者たちの集まりで、その餌食になるのもイタリア系移民。それと戦うペトロシーノは、イタリア系初のニューヨーク市警刑事。この頃のアメリカ社会のマジョリティは、イギリス系やオランダ系。そして、警察官や消防士といった下級公務員のマジョリティはアイルランド系であった。そうした社会状況の中、ブラック・ハンドの存在は、元々差別 -
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この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を -
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ノーベル文学賞受賞のフォークナーの代表作。アメリカ南部の田舎町ジェファスンを舞台に、外見は白人でありながら黒人の血を引くクリスマスと天真爛漫な生粋の南部娘であるリーナの物語を主軸に(しかし交わらずに)アメリカが抱える澱みを描く。
本作品を理解するにはそもそもの時代背景を知る必要がある。北東部では新たな跳躍の希望を抱き、対する南部では依然として閉塞感と黒人差別が残り禁酒法下の鬱憤とした時代、相反する感情を伴いアメリカとして自信が揺らぎいいしれぬ怒りが漂う時代。それらを端的なメタファーを用いるでもなくカタルシスを生み出すでもなく、直接的描写をしつつも明確にはせず重奏的に物語を紡ぎ出す。
正直一 -
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辺鄙な場所に赴任したら、
空き家をタダで貸してもらえるとて、
一人暮らしには広すぎる田舎の一軒家で、
夜は虫の声を聞いて過ごす羽目になった人が言うには、
数日も経つと誰もいないはずの奥の部屋が
ざわめくことに気づいた、とか……。
もし、放り出されたのが電気も月明りもない、
真の闇の中だったら、どんな気分になっただろう。
そこにないはずのものが見えるような錯覚に陥ったり、
幻聴に怯えたりしなかったろうか。
これは19世紀末、ヨーロッパ帝国主義時代のアフリカで、
収奪に邁進した企業の
有能な社員が呑み込まれた暗黒についての話。
大変有名な映画(恥ずかしながらこれも未見)の
原案に採用された小 -
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国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑
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世界は広い。そう感じさせる作家がまた一人登場。何と、ミステリにのめり込むあまり、高校生時代に習作なのだろうが長編小説を二作ほど書き上げた挙句、大学時代に、シリーズもののミステリを三作も出版させたというのがベン・サンダース。しかも聞いたことも読んだこともないけれど、この人はニュージーランドの作家だ。
なのに『アメリカン・ブラッド』という、アメリカの小説で世界デビュー。こうして日本でも翻訳されているのだが、作者の生年月日を考えると26歳で書き上げた作品ということになる。驚きの才能としか言いようがない。
荒削りというのが日本の二十代作家の印象なのだが、世界戦を挑む作家だけあって、むしろ緻密 -
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難解な小説(英文学)として認識していた
この本ですが、新訳で非常に読みやすく、わかりやすかった
です。でも一部難解な部分が残っている感じです。
うまく書くことができないですが、落語にもにた
一人語りの部分で、物事のたとえが高度になっていて
その部分がわかりずらい部分を残したのではないかと思います。
内容的には、聖人であったと思われるやり手の英国紳士が
アフリカの奥地で暴虐・残忍な略奪を繰り返していく様が、
植民地支配や人種差別の奥を描き出しているような
内容です。
誰にでもある残虐性とそれに対して、人生の最後に
恐怖を感じてしまう人間性がよく出ていると思います。 -
Posted by ブクログ
時計職人が修理した機械は、世界を破壊しかねない物だった!
国際的陰謀に巻き込まれた青年の、波乱の冒険物語☆
時計が専門の機械職人ジョーは、祖父の店をついで地道に暮らしていました。
父親は、じつは名の知れたギャング。
ある日ジョーは、何だかわからない機械を修理したことから、謎の男達に追われる羽目に。
機械を持ち込んだ奇妙な老婦人イーディは、じつは往年のスパイ。
彼女の回想がやたら濃厚で、インドの藩王や、陰謀をたくらむ秘密組織が入り乱れます。
ジョーの祖母に当たる美女フランキーも深く絡んできます。
前半は方向性がわからない状態で細かい描写が繰り広げられ、主人公は危機に陥るばかり。
後半は俄然