黒原敏行のレビュー一覧

  • チェリー

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    獄中作家だというから、極悪なやつかなー極悪苦手だなーとちょっと及び腰であったが、犯罪版サリンジャー『ライ麦』のようであった。作中にも『シーモア』が出てきたからもしやサリンジャー好きなのかな。ズブズブ加減はブコウスキーのようでもあった。ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』やトレスポなども思い出した。堕ちていくピュア。これをどう映画にするんだろうか。

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    2020年03月16日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    乾ききった大地を進み
    汚れに汚れ、殺す、虐殺する
    原住民であろうがなかろうが
    まるで、それが当然の自然の行為であるかのように
    語られるほどの神も法もなく、
    なんの感情も必要以上の情報も加えず描き切る。
    凄惨なはずの津を死も不合理な死も
    あさましい生と同等に当然、自然の存在、行為として
    なにもまじえず描かれる。
    自分たちが倫理の名のもとに飾っている世界が
    乾いた風に吹き飛ばされ、腐敗した肉と乾いた風に
    吹きさらされた骨と皮、朽ち果てるであろう人工物
    その葬列の中を生き延びた先に待つのは悪のダンス

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    2019年12月04日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
    これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
    さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって

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    2019年08月17日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    ネタバレ

    芥川龍之介の世界観を積み重ねて、
    独自の世界を築くという
    小説でしかなしえない離れ業を成し遂げている。

    最後にあげられた日本文学の英訳の
    列挙をみて、日本人、もっと
    日本文学読もうよ、と思った。

    脇を固める、斎藤茂吉などの作品も
    改めて読み返したいと思った。

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    2019年05月01日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    とても厚い本でした。途中、2つの時間軸で構成される。現代と、イーディの若かりし頃と、話が進む。またイーディがかっこいい。痛快な活躍ぶり。現代でもだけど語りっぷりが面白いのです。命は永遠ではないのはわかってるけど無くなったのはショックでした。
    あとジョーの父親と祖父との関係が泣かせる。影で支えるって美徳だ。自分なんていいことをしたら認めてもらわずには言われないような気がする。マシューは息子として、父親として偉大だった!

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    2019年04月23日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    日本在住のイギリス人著者が芥川作品の英訳を多数引用して作品を構成しているわけだが、その部分も含んで日本語に訳す、という単純ならざる訳業。
    「戻し訳」ではなく芥川の文章そのものを使ったことや、当時の表記(エドガア・アラン・ポオ、レエン・コオト、ジョオンズ、洋燈と書いてランプとルビをふるなど)にも細やかに配慮されたこと、更に引用や出典も無理なく収められていることなど、訳者の力量に恐れ入る。文壇の人名や明治から大正の時代の雰囲気もよく盛り込まれ、誰が書いたのか戸惑うほど。
    こうなると半分は訳者の作品だよね。うん。

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    2019年04月16日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    アメリカ西部の歴史はある意味虐殺の歴史。

    荒野の焚き火の中で浮かび上がるような血みどろの判事の神々しさに、畏れを感じると同時に惹かれざるえない。

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    2019年04月15日
  • ブラック・ハンド

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    ネタバレ

    【245冊目】19世紀末から1910年代にかけて、ニューヨーク市を中心に誘拐や爆破で米国を震撼させた「ブラック・ハンド」という犯罪結社と、それと戦うニューヨーク市警のペトロシーノ刑事の話。

    色んな角度から興味深く読んだ。まずは、移民の話。ブラック・ハンドは主にイタリア系移民のならず者たちの集まりで、その餌食になるのもイタリア系移民。それと戦うペトロシーノは、イタリア系初のニューヨーク市警刑事。この頃のアメリカ社会のマジョリティは、イギリス系やオランダ系。そして、警察官や消防士といった下級公務員のマジョリティはアイルランド系であった。そうした社会状況の中、ブラック・ハンドの存在は、元々差別

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    2019年03月17日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
    本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を

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    2018年11月25日
  • 八月の光

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    ノーベル文学賞受賞のフォークナーの代表作。アメリカ南部の田舎町ジェファスンを舞台に、外見は白人でありながら黒人の血を引くクリスマスと天真爛漫な生粋の南部娘であるリーナの物語を主軸に(しかし交わらずに)アメリカが抱える澱みを描く。

    本作品を理解するにはそもそもの時代背景を知る必要がある。北東部では新たな跳躍の希望を抱き、対する南部では依然として閉塞感と黒人差別が残り禁酒法下の鬱憤とした時代、相反する感情を伴いアメリカとして自信が揺らぎいいしれぬ怒りが漂う時代。それらを端的なメタファーを用いるでもなくカタルシスを生み出すでもなく、直接的描写をしつつも明確にはせず重奏的に物語を紡ぎ出す。

    正直一

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    2018年10月28日
  • 闇の奥

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    "「地獄の黙示録」という映画を見たことがあるだろうか?何度も見ている映画の一つ。より、その深淵を理解するにはこの本を読むべきだという使命感?から購入したもののなかなか読み始められなかった。コンゴ河をさかのぼっていく物語。読み応えのある一冊。モラル、価値、人間そのものを見つめ直す。岩波文庫の翻訳も読んでみたい。
    この本も上記の映画同様、何度も読み返したくなる魅力がある。"

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    2018年10月20日
  • 八月の光

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    訳注も親切で読み易さバツグンの黒原訳にも関わらず、難儀した。読むのに難儀したというよりも、む?どう受け止めよう?と。
    昔読んだのにすっかり忘れていて、こんな話だっけ?というのと、誰の立ち位置に立てばいいんだ?という戸惑いで、終始頭の中がグチャグチャだった。

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    2018年07月09日
  • 闇の奥

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    辺鄙な場所に赴任したら、
    空き家をタダで貸してもらえるとて、
    一人暮らしには広すぎる田舎の一軒家で、
    夜は虫の声を聞いて過ごす羽目になった人が言うには、
    数日も経つと誰もいないはずの奥の部屋が
    ざわめくことに気づいた、とか……。

    もし、放り出されたのが電気も月明りもない、
    真の闇の中だったら、どんな気分になっただろう。
    そこにないはずのものが見えるような錯覚に陥ったり、
    幻聴に怯えたりしなかったろうか。

    これは19世紀末、ヨーロッパ帝国主義時代のアフリカで、
    収奪に邁進した企業の
    有能な社員が呑み込まれた暗黒についての話。

    大変有名な映画(恥ずかしながらこれも未見)の
    原案に採用された小

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    2018年01月25日
  • 闇の奥

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    ネタバレ

    本国イギリスの影響が及ばない植民地時代のコンゴにおいて独自の権力を築き上げたクルツという男がいた。マーロウは彼を救出に向かう。クルツは最後に死にかけた状態で物語に現れるのみで、それまでの周囲の人間から彼を噂を聞くのみである。それでもこのクルツという人物の特異性やカリスマをうかがい知ることができるが、それをマーロウの目を通して見ることはできない。文明社会から隔絶された未開のジャングルで独自の地位を築き上げたクルツの人生を間接的に外側から描写する。

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    2017年12月30日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑

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    2017年08月02日
  • アメリカン・ブラッド

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     世界は広い。そう感じさせる作家がまた一人登場。何と、ミステリにのめり込むあまり、高校生時代に習作なのだろうが長編小説を二作ほど書き上げた挙句、大学時代に、シリーズもののミステリを三作も出版させたというのがベン・サンダース。しかも聞いたことも読んだこともないけれど、この人はニュージーランドの作家だ。

     なのに『アメリカン・ブラッド』という、アメリカの小説で世界デビュー。こうして日本でも翻訳されているのだが、作者の生年月日を考えると26歳で書き上げた作品ということになる。驚きの才能としか言いようがない。

     荒削りというのが日本の二十代作家の印象なのだが、世界戦を挑む作家だけあって、むしろ緻密

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    2016年12月31日
  • 闇の奥

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    難解な小説(英文学)として認識していた
    この本ですが、新訳で非常に読みやすく、わかりやすかった
    です。でも一部難解な部分が残っている感じです。
    うまく書くことができないですが、落語にもにた
    一人語りの部分で、物事のたとえが高度になっていて
    その部分がわかりずらい部分を残したのではないかと思います。
    内容的には、聖人であったと思われるやり手の英国紳士が
    アフリカの奥地で暴虐・残忍な略奪を繰り返していく様が、
    植民地支配や人種差別の奥を描き出しているような
    内容です。
    誰にでもある残虐性とそれに対して、人生の最後に
    恐怖を感じてしまう人間性がよく出ていると思います。

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    2016年11月25日
  • エンジェルメイカー

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    時計職人が修理した機械は、世界を破壊しかねない物だった!
    国際的陰謀に巻き込まれた青年の、波乱の冒険物語☆

    時計が専門の機械職人ジョーは、祖父の店をついで地道に暮らしていました。
    父親は、じつは名の知れたギャング。
    ある日ジョーは、何だかわからない機械を修理したことから、謎の男達に追われる羽目に。

    機械を持ち込んだ奇妙な老婦人イーディは、じつは往年のスパイ。
    彼女の回想がやたら濃厚で、インドの藩王や、陰謀をたくらむ秘密組織が入り乱れます。
    ジョーの祖母に当たる美女フランキーも深く絡んできます。

    前半は方向性がわからない状態で細かい描写が繰り広げられ、主人公は危機に陥るばかり。
    後半は俄然

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    2016年10月21日
  • エンジェルメイカー

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    時計職人の孫,ギャングの孫のジョーの成長譚.祖父母の時代からの因縁の「エンジェルメイカー」をめぐっての攻防.神になろうとするシェム・シェム・ツィエンの半端でない存在感,「夜の市場」「ラスキン主義者連盟」機関車,潜水艦,象部隊などシッチャカメッチャカなんでもありの面白さ.
    前半は⭐︎3,だけど後半は⭐︎4,後半への説明的展開で,前半が少しモタつくのは仕方ないかな.ちょっと盛り込みすぎで,長かったけど,まあ良しとしよう.

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    2016年03月13日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    最初は読みづらかった。場面転換について行けんとこもあって。あと翻訳に?っていう部分も...
    けど、中盤以降、ぐいぐいと引き込まれてく。おもしろかったね。急激に主人公が強くなりすぎる気もするけど。
    3代にわたる家族の物語はジョジョっぽいとこもあって、主人公を助けてくれるのはお父さんの知合いやったりする。
    そのあたりに、じーんとしたりも。
    中盤以降は長さも苦にならんかったけど、分厚くてポケミスのサイズでは読みにくい。上下にして欲しいかな。

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    2016年02月28日