黒原敏行のレビュー一覧

  • TOKYO REDUX 下山迷宮

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    GHQ占領下の1949年に国鉄総裁であった下山定則が失踪し、礫死体で見つかり未だに未解決の下山事件。数万人規模のリストラを目前に控えて労組などから脅迫されていたことから、そうした心労が苦になっての自殺説、共産党などによる他殺説、ひいては”反共主義”を日本でも広げるためにGHQが起こした陰謀論的な他殺説まで、この事件は昭和史に残るミステリーの1つとなっている。

    そんな下山事件を題材に、日本に在住する英国人作家が英語で描いた犯罪ノワールとも呼ぶべき小説が本作である。事件が起こった1949年から、昭和天皇が崩御する1989年まで、幾つかの時代を舞台としながら、その死は自殺だったのか、他殺だったのす

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    2021年09月20日
  • 闇の奥

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    一度読んだだけではどう解釈して良いのか、私には結論を出せなかったので、再読は必須。ただ、この主人公が人種差別反対主義者であるとは感じなかった。とにかくグレー味が凄い。
    終始、もやっとする。恥ずかしながらコンゴの大虐殺の件も知らなかった。これを機に関連書を読んでみたい。

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    2021年09月12日
  • すばらしい新世界

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    人間が工場で企画生産され、条件付けと快楽薬物の多用によって一律に幸せを感じる世界に『野蛮人』としてやってきたジョンは違和感を覚えるが………。
    『1984』で描かれるディストピアより、幸せで快適だけれどもやはりディストピアには違いないし、何だかより現代に近い感じもある。

    終わり近く、世界統制官と野蛮人の問答は『カラマーゾフの兄弟』の大審問官パートを意識している。

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    2021年07月30日
  • 八月の光

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    リーナ・グローヴ、ジョー・クリスマス、ゲイル・ハイタワーの3名を中心に物語が展開してゆく。物語は全体としては当時の黒人差別問題も相俟って、暗く陰気な感じで覆われているが、リーナにはどこか明るい雰囲気も漂う。ルーカス・バーチを追い求めて歩き続けてきたという導入部も、行動じたいはけっしてポジティヴなものとはいえないが、いっぽうで心の片隅に希望を抱いているからこそ、あてどのない旅を続けることができるのである。また、リーナは最終的に出産し、「人間ってほんとにあちこち行けるものなのね。」というセリフで締められる。さしづめ「希望」の物語である――というのは早計で、じつは希望なんてないような気もする。いっぽ

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    2021年01月11日
  • チェリー

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    著者がイラク戦争から復員後、PTSDとなり、銀行その他の強盗による服役中に書いたという本書。冒頭、主人公はクスリを買うお金欲しさに強盗を働いている。話は遡り、主人公がクスリのせいで大学を中退し陸軍に入隊、数ヶ月の訓練後イラクへ派遣、一年後復員するも、次第に薬物中毒となり、やがて銀行強盗に手を染めていく…これ、私小説やん!と思うのだが、著者によると『フィクションであり、実際に起こった事は1つもない』のだそう。主人公のクズっぷりは相当だが、死が日常にある戦場で見たものや、クスリに依存していく様子は、とんでもなく惹きつけられた。
    著者は今月、仮出所するとのこと。

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    2020年11月15日
  • 闇の奥

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    アフリカの奥地に象牙を狩猟するために送り込まれた男を追って「闇」の奥に足を踏み入れる男。
    そこに口を開けていたのは、想像を超える深々とした「闇」だった。
    人間の心の禍々しさに触れる。

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    2020年10月25日
  • キル・リスト 上

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    フォーサイスの作品で、良く登場するイスラムと欧米国家との争い。海外の作品にありがちな長々しい描写は好みが分かれるのでは。テンポという点では弾まない気がするものの、イスラムと欧米キリスト教国家との対立を少なからず、今回の作品からも学べた。

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    2020年04月14日
  • チェリー

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    獄中作家だというから、極悪なやつかなー極悪苦手だなーとちょっと及び腰であったが、犯罪版サリンジャー『ライ麦』のようであった。作中にも『シーモア』が出てきたからもしやサリンジャー好きなのかな。ズブズブ加減はブコウスキーのようでもあった。ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』やトレスポなども思い出した。堕ちていくピュア。これをどう映画にするんだろうか。

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    2020年03月16日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    乾ききった大地を進み
    汚れに汚れ、殺す、虐殺する
    原住民であろうがなかろうが
    まるで、それが当然の自然の行為であるかのように
    語られるほどの神も法もなく、
    なんの感情も必要以上の情報も加えず描き切る。
    凄惨なはずの津を死も不合理な死も
    あさましい生と同等に当然、自然の存在、行為として
    なにもまじえず描かれる。
    自分たちが倫理の名のもとに飾っている世界が
    乾いた風に吹き飛ばされ、腐敗した肉と乾いた風に
    吹きさらされた骨と皮、朽ち果てるであろう人工物
    その葬列の中を生き延びた先に待つのは悪のダンス

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    2019年12月04日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
    これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
    さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって

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    2019年08月17日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    ネタバレ

    芥川龍之介の世界観を積み重ねて、
    独自の世界を築くという
    小説でしかなしえない離れ業を成し遂げている。

    最後にあげられた日本文学の英訳の
    列挙をみて、日本人、もっと
    日本文学読もうよ、と思った。

    脇を固める、斎藤茂吉などの作品も
    改めて読み返したいと思った。

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    2019年05月01日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    とても厚い本でした。途中、2つの時間軸で構成される。現代と、イーディの若かりし頃と、話が進む。またイーディがかっこいい。痛快な活躍ぶり。現代でもだけど語りっぷりが面白いのです。命は永遠ではないのはわかってるけど無くなったのはショックでした。
    あとジョーの父親と祖父との関係が泣かせる。影で支えるって美徳だ。自分なんていいことをしたら認めてもらわずには言われないような気がする。マシューは息子として、父親として偉大だった!

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    2019年04月23日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    面白そうと勧められ、なんとなく、これは読んだ方が良さそうだな、と思って購入。

    「蜘蛛の糸」が芥川自身と重なって、下を見下ろすと、自分が関わってきた人々、モチーフ、登場人物の蠢きを知る。
    このままでは、追いつかれてしまうな。
    そう分かって、手を離す時の芥川が、なぜか鮮やかに思い浮かべられて、切なくなる。

    明治天皇の崩御や、関東大震災、夏目漱石や文豪たちとの交流、自殺。
    彼を形作った、様々な出来事。
    「蜘蛛の糸」で見下ろした光景の一つ一つを、芥川の作品とコラージュさせながら、紡いでゆく。

    作者と作品の関係性とは、何か。
    人としての儚い時間を終えた彼だが、もう一度、他者の手によって、作品の中で

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    2019年04月21日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    日本在住のイギリス人著者が芥川作品の英訳を多数引用して作品を構成しているわけだが、その部分も含んで日本語に訳す、という単純ならざる訳業。
    「戻し訳」ではなく芥川の文章そのものを使ったことや、当時の表記(エドガア・アラン・ポオ、レエン・コオト、ジョオンズ、洋燈と書いてランプとルビをふるなど)にも細やかに配慮されたこと、更に引用や出典も無理なく収められていることなど、訳者の力量に恐れ入る。文壇の人名や明治から大正の時代の雰囲気もよく盛り込まれ、誰が書いたのか戸惑うほど。
    こうなると半分は訳者の作品だよね。うん。

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    2019年04月16日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    アメリカ西部の歴史はある意味虐殺の歴史。

    荒野の焚き火の中で浮かび上がるような血みどろの判事の神々しさに、畏れを感じると同時に惹かれざるえない。

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    2019年04月15日
  • ブラック・ハンド

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    ネタバレ

    【245冊目】19世紀末から1910年代にかけて、ニューヨーク市を中心に誘拐や爆破で米国を震撼させた「ブラック・ハンド」という犯罪結社と、それと戦うニューヨーク市警のペトロシーノ刑事の話。

    色んな角度から興味深く読んだ。まずは、移民の話。ブラック・ハンドは主にイタリア系移民のならず者たちの集まりで、その餌食になるのもイタリア系移民。それと戦うペトロシーノは、イタリア系初のニューヨーク市警刑事。この頃のアメリカ社会のマジョリティは、イギリス系やオランダ系。そして、警察官や消防士といった下級公務員のマジョリティはアイルランド系であった。そうした社会状況の中、ブラック・ハンドの存在は、元々差別

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    2019年03月17日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
    本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を

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    2018年11月25日
  • 八月の光

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    ノーベル文学賞受賞のフォークナーの代表作。アメリカ南部の田舎町ジェファスンを舞台に、外見は白人でありながら黒人の血を引くクリスマスと天真爛漫な生粋の南部娘であるリーナの物語を主軸に(しかし交わらずに)アメリカが抱える澱みを描く。

    本作品を理解するにはそもそもの時代背景を知る必要がある。北東部では新たな跳躍の希望を抱き、対する南部では依然として閉塞感と黒人差別が残り禁酒法下の鬱憤とした時代、相反する感情を伴いアメリカとして自信が揺らぎいいしれぬ怒りが漂う時代。それらを端的なメタファーを用いるでもなくカタルシスを生み出すでもなく、直接的描写をしつつも明確にはせず重奏的に物語を紡ぎ出す。

    正直一

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    2018年10月28日
  • 闇の奥

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    "「地獄の黙示録」という映画を見たことがあるだろうか?何度も見ている映画の一つ。より、その深淵を理解するにはこの本を読むべきだという使命感?から購入したもののなかなか読み始められなかった。コンゴ河をさかのぼっていく物語。読み応えのある一冊。モラル、価値、人間そのものを見つめ直す。岩波文庫の翻訳も読んでみたい。
    この本も上記の映画同様、何度も読み返したくなる魅力がある。"

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    2018年10月20日
  • 八月の光

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    訳注も親切で読み易さバツグンの黒原訳にも関わらず、難儀した。読むのに難儀したというよりも、む?どう受け止めよう?と。
    昔読んだのにすっかり忘れていて、こんな話だっけ?というのと、誰の立ち位置に立てばいいんだ?という戸惑いで、終始頭の中がグチャグチャだった。

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    2018年07月09日