黒原敏行のレビュー一覧
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下山事件は中学生の時、松本清張の「日本の黒い霧」になぜかハマってしまい、戦後日本のドロドロの原形質に触れた気がして、ずっと心の底に沈殿している謎でした。時々、この事件、出版物として目の前に現れるのですが、なぜか積読のままに放置してしまっています。例えば柴田哲孝「下山事件」もその一冊。「日本の黒い霧」のインパクトが凄かったからかな…そんな中、あるTV番組でで直木賞を取った佐藤究が超おススメしていたので、「テスカポリトカ」よりも先に読んでしまいました。たぶん、真相解明の本ではなく、フィクションだったので気易かったのかもしれません。でも、1949年、1964年、1989年、つまり事件発生、一回目の東
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国鉄三大事件のひとつ、初代国鉄総裁の下山定則の轢断死体が発見されたが他殺説、自殺説まみえて解決に至らなかった下山事件を扱った小説。
なのだが、昭和の東京で起きた事件を扱った三部作の最後ということは知らず、最後から読むことになってしまった。
三章構成になっている。
第一章の語り手はGHQの情報将校により、事件前、事件発生、そして事件後が語られる。
そして第二章の語り手は元刑事の探偵、下山事件を追っていた作家の行方を追い、事件から20年後の東京が語られる。
第三章は下山事件発生当時に対日工作のため来日し、現在は翻訳家のアメリカ人が、昭和天皇崩御の昭和の終わりとともに下山事件の真相にた -
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GHQ占領下の1949年に国鉄総裁であった下山定則が失踪し、礫死体で見つかり未だに未解決の下山事件。数万人規模のリストラを目前に控えて労組などから脅迫されていたことから、そうした心労が苦になっての自殺説、共産党などによる他殺説、ひいては”反共主義”を日本でも広げるためにGHQが起こした陰謀論的な他殺説まで、この事件は昭和史に残るミステリーの1つとなっている。
そんな下山事件を題材に、日本に在住する英国人作家が英語で描いた犯罪ノワールとも呼ぶべき小説が本作である。事件が起こった1949年から、昭和天皇が崩御する1989年まで、幾つかの時代を舞台としながら、その死は自殺だったのか、他殺だったのす -
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リーナ・グローヴ、ジョー・クリスマス、ゲイル・ハイタワーの3名を中心に物語が展開してゆく。物語は全体としては当時の黒人差別問題も相俟って、暗く陰気な感じで覆われているが、リーナにはどこか明るい雰囲気も漂う。ルーカス・バーチを追い求めて歩き続けてきたという導入部も、行動じたいはけっしてポジティヴなものとはいえないが、いっぽうで心の片隅に希望を抱いているからこそ、あてどのない旅を続けることができるのである。また、リーナは最終的に出産し、「人間ってほんとにあちこち行けるものなのね。」というセリフで締められる。さしづめ「希望」の物語である――というのは早計で、じつは希望なんてないような気もする。いっぽ
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著者がイラク戦争から復員後、PTSDとなり、銀行その他の強盗による服役中に書いたという本書。冒頭、主人公はクスリを買うお金欲しさに強盗を働いている。話は遡り、主人公がクスリのせいで大学を中退し陸軍に入隊、数ヶ月の訓練後イラクへ派遣、一年後復員するも、次第に薬物中毒となり、やがて銀行強盗に手を染めていく…これ、私小説やん!と思うのだが、著者によると『フィクションであり、実際に起こった事は1つもない』のだそう。主人公のクズっぷりは相当だが、死が日常にある戦場で見たものや、クスリに依存していく様子は、とんでもなく惹きつけられた。
著者は今月、仮出所するとのこと。 -
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芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって -
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面白そうと勧められ、なんとなく、これは読んだ方が良さそうだな、と思って購入。
「蜘蛛の糸」が芥川自身と重なって、下を見下ろすと、自分が関わってきた人々、モチーフ、登場人物の蠢きを知る。
このままでは、追いつかれてしまうな。
そう分かって、手を離す時の芥川が、なぜか鮮やかに思い浮かべられて、切なくなる。
明治天皇の崩御や、関東大震災、夏目漱石や文豪たちとの交流、自殺。
彼を形作った、様々な出来事。
「蜘蛛の糸」で見下ろした光景の一つ一つを、芥川の作品とコラージュさせながら、紡いでゆく。
作者と作品の関係性とは、何か。
人としての儚い時間を終えた彼だが、もう一度、他者の手によって、作品の中で -
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ネタバレ【245冊目】19世紀末から1910年代にかけて、ニューヨーク市を中心に誘拐や爆破で米国を震撼させた「ブラック・ハンド」という犯罪結社と、それと戦うニューヨーク市警のペトロシーノ刑事の話。
色んな角度から興味深く読んだ。まずは、移民の話。ブラック・ハンドは主にイタリア系移民のならず者たちの集まりで、その餌食になるのもイタリア系移民。それと戦うペトロシーノは、イタリア系初のニューヨーク市警刑事。この頃のアメリカ社会のマジョリティは、イギリス系やオランダ系。そして、警察官や消防士といった下級公務員のマジョリティはアイルランド系であった。そうした社会状況の中、ブラック・ハンドの存在は、元々差別