【感想・ネタバレ】チャイルド・オブ・ゴッドのレビュー

あらすじ

1960年代のテネシー。孤独で暴力的な若者レスター・バラードは、凄惨な連続殺人に手を染める。ピュリッツァー賞受賞作家が1973年に著した、死と暴力と性に彩られた問題作がついに邦訳!

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Posted by ブクログ

残酷な事件の裏に漂う哀感。コーマック・マッカーシーの世界を読む。
「チャイルド・オブ・ゴッド」は初期作品(1973年)だか、映画化によって2013年に邦訳された。

アメリカ、アパラチア山脈にある貧困部落で、母は男と逃げ、父は自殺した。身寄りがなくなったレスター・バラードが育った小屋を含め周りの土地まで、税金滞納で競売にかけられるところから始まる。

住処をなくした彼は、破れ小屋を見つけ、孤独な自給自走の生活が始まる。それが7~10歳のころ。

粗野で粗暴で村人にも馴染まなかったが、車で森に入ってきた若者のカップルを見つけて殺し、それから連続殺人が始まる。

妹に対する近親相姦から、殺した女を屋根裏に隠して死姦を繰り返し、ついには放火。

家がなくなった後は複雑な地形にある洞窟にすみ。まれな大洪水にみまわれ、犯行が現れて逮捕状が出る。弱りきった体で逃げ迷い、病院に来て自供し、死ぬ。

多くの人種が混在している、広いアメリカの社会では、こういった山間部には貧困部落があり多くの小説の題材になっている。この犯人レスター・バラードもそうした社会で、人と交わらず教育を受けないで育つ。ライフルの腕を頼りに銃をいつも持ち歩いて狩りで食べ物を得ている。無知と、生きるために食べなくてはならないその日暮らし。しかしそういった生活は、危険から身を守ることを(独白で)言葉にすることが出来ても、自分自身を振り返ってみることなどまったく思いつかない。見方によれば動物的に、本能だけで動く主人公を残酷なまでに描き出している。

陰惨な、犯人に関して言えば社会に見捨てられた悲惨な人生ではあるが、コーマック・マッカーシーが書く文章は、四季の風のそよぎであれ、吹きすさぶ吹雪に揺れる木であれ、レスターが徘徊する足の下で砕ける霜柱や、落ち葉が映つる無数の不透明なガラスのような霜柱を透る光など、澄み切った自然の風物が、テーマを浮き彫りにさせるような透明感を持って書き表す。

青く青い高い空、澄み切った流れ、野草に吹く風の音。鳥や獣の鳴き声や鳥の羽根が風を切る音。雪の上に残っている獣の足跡。作者の筆致は独特の情感を持っている。
またこの作品は、ショートストーリーを積み上げることで、シーンが違っても実に気の効いた形で、回りの雰囲気や、中でもレスターの生い立ちが徐々に判明するように話が進んでいく。

会話は括弧で囲まず詩のような箇条書きで雰囲気がいい、それも大きな特徴で、こうした構成が酷薄な事件を和らげているようにも思える。

現実に起きた事件を基にしているとも言われるが、前面の露悪的な生々しい事件の周りが,まるで別世界に思えるような爽やかで透明で、殺されて無残な姿を晒す遺体の姿まで、大きな自然の中では、最後は静かに土に返るのが自然に思える。

多くは非情な世界を書いているが、そうであっても読んでいると、こういった境遇に生まれた主人公の性のようなものから深い悲しみが伝わってくる。
マッカーシーは作品が映画化され作家として安定した。今ではノーベ文学賞候補ともささやかれているという。

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2026年03月05日

Posted by ブクログ

まさに私が感じたことを、黒原敏行さんが訳者あとがきで簡潔に述べてくれている。⇒バラードの内面描写などはいっさいなく、まるで動物か昆虫の生態を観察するかのように行動を追っていくうちに、殺人、屍姦というおぞましい所業も含めて、これが人間なのだと深く納得させられてしまう。これはそんな恐ろしい、しかし不思議な高揚感と生命肯定感を与えてくれる稀有な小説だ。

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2013年11月25日

Posted by ブクログ

とんでもない作品に出逢ったもんだ。この作品を読み進めていくうちに、ある映画の雰囲気にとても似ていると感じた。それは数年前に観たアメリカ映画『ノーカントリー』であった。この映画を観た時も鮮烈な印象を持ったのだが、この作品も文体にキレがあるし、途轍もなく理不尽な暴力性が表現されていてしかも、それが詩的に感じられてしまう程だ。主人公の性格や殺人の動機がほどんど描かれていないので、カポーティの『冷血』よりも凄味がある。映画とおなじくこれからも読み直すであろうし、マッカーシーのほかの作品も読むことになるであろう。

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2013年08月31日

Posted by ブクログ

『チャイルド・オブ・ゴッド』。素晴らしかったわ。貧困層キチガイの日常。暴力、屍姦、女装、連続殺人…生まれ育った「土地」(自然)が己の世界そのもので、私たちが生きる「社会」という概念が端から無い。動物だけど、もっと心が(欲望に)弱い動物。

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2013年07月12日

Posted by ブクログ

国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑

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2017年08月02日

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とある連続殺人犯のお話。内面は描かず、動機は問わず、ただたんたんと田舎のうらさみしい土地にたったひとり小屋に住み着き(無断)、狩をし、まきを割って暖をとる、そして気ままに暴力を振るい、動揺やためらいもなく人を殺す。彼は結局彼自身が送った人生に相応するような無機質な最後を迎える。読み終わって後を引くのは疑問や同情じゃなく、単純な淋しさ。

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2015年01月10日

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数年前から読みかけの『ブラッド・メリディアン』を一旦置いて手に取った。連続殺人犯の物語である。起伏も抑揚もない会話にまっすぐに胸を突かれる。絶対的な孤独のうちに世界のなかを彷徨うとき、世界はどのように立ち現れ、人間はどのような本性をあらわにするのか。 
凄惨さをきっちりと描き出しつつ、文章の美しさと立ち上がってくる情景、におい、湿度にはただただ驚かされる。それがどこか痛快な読み応えというのも、とてもいいと思った。小説として、素敵なことだと。どこか人間の素晴らしさというか、人間を肯定している印象を受けることも また。

巻末のカポーティ『冷血』との比較がなされているけれど、個人的にはこちらのほうがより胸に迫るものがあった。
鋭利な“生”という芯が現れるまで削られて、ひりひりした世界に一時つかり、その世界から戻ってきたときのなんとも言えない透明感。

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2014年02月08日

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内容はおどろおどろしい暴力だが、薄物一枚かぶせた現実感のない世界の、解剖を眺めているような感覚がした。感情表現のないたんたんとした描写の中に、ときどきはっとするような景色が広がって、不思議な世界観だった。彼も人間だったのだろうか?理解しあえるのだろうか?

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2014年01月18日

Posted by ブクログ

正直言えば最高傑作であろうブラッドメリディアンや三部作の水準にまでは及んでいないが、それらの作品につながる圧倒的な暴力性と表現力は40年前のこの作品にして、すでにして完成されている

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2013年11月06日

Posted by ブクログ

怖い人のはずなんだけど、寂しさと哀しさが伝わってくる。
何かとても純粋で綺麗な気もする。
グロテスクなはずなんだが。

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2013年09月07日

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コーマック・マッカーシーの作品ではいつも、この世界では失われてしまったものがまだ存在するかもしれない世界への郷愁みたいなものが描かれているように思える。
この小説の主人公も近代化に必死に抵抗しているようにも見えるが、瞬間、殆ど天災のように人に襲いかかったりもする。

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2013年08月27日

Posted by ブクログ

コーマック・マッカーシーの邦訳新作、なのだけれども実際にはマッカーシーの第三長編で、なんと40年前の作品。だが古典作品ではなく、今読んでも衝撃的な作品。つまり普遍的なんだろう。この頃から相変わらず人間の陰惨な暴力性と徹底的な孤独を描いている。これがやがて「血と暴力の国」という、一分の無駄もない透徹されたハードコアな作品に繋がっていく、という原型も見られる。

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2013年08月24日

Posted by ブクログ

なんとも恐ろしい小説を書くものです。凄惨な事件の内容ではありません。タイトルが示すように主人公が神の子であれば私もまた神の子だということ。高みから見れば個々の差など無いに等しく、それを納得させられてしまうことが恐ろしい。

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2026年02月22日

Posted by ブクログ

どちらかといえば初期のころの作品だが、
独特の文体、表現はすでにこの時点で固まっていたのだと思う。
猟奇殺人ではなく、
それを取り巻く世界を描いたという訳者の解説はなるほどと思った。

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2015年09月30日

Posted by ブクログ

感情をそぎ落とした文体、訳の分からない異常な殺人行為。
Cマッカーシーらしい作品なのだが、
「血と暴力の国」のようなストーリー性は皆無なので
かなり理解できなかった部分もありました。

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2013年10月17日

Posted by ブクログ

コーマック・マッカーシーは国境三部作がよかったしその力量を否定するつもりは全くないけれど、最近このテの小説はしんどい。”このテ”というのは暴力や犯罪、性描写がストレートに出てくる小説のことである。
だいたい、孤独→犯罪を引き起こす、という図式はステレオタイプ過ぎないか。

孤独が犯罪を生むわけではないはずだと思う。

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2013年10月12日

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