黒原敏行のレビュー一覧

  • シャギー・ベイン

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    長編の時代小説を思わせる重量感(616ページ)、勢いよくめくるとシワになりそうな薄っぺらいページの紙。聖書みたいと思ったのも束の間、中身は数々の背信行為で溢れかえっていた。

    「誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった」
    あらすじは、主人公シャギー・ベインの母親アグネスのことを健気な風に記している。だが本書は、こちらの予想を遥かに超えるアグネス像を突きつけてきた。

    誇り高く?貧困をものともしないフリをして着飾り見栄を張っているようにしか見えない。「誇り高い」はさすがに誇張している。
    家族をまとめようとする?自分の思い描く理想の家庭

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    2022年07月04日
  • シャギー・ベイン

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    ネタバレ

    いやー、つらくってつらくって。

    『ケス』+『タクシー・ドライバー』?というような幕開け。
    やっぱり子どもには、幸福な子ども時代を送ってほしい。いくらお母さんが好きでも、アグネスも子どもが好きでも、でもなあこの状況なんとかならないの、と思ってしまう。貧困、アルコール依存、DV夫、その他の暴力…いやちょっと私には救いが見えず、つらかった。

    愛がなくちゃあだめなんだけど、愛だけでもだめなんだねえ、と

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    2022年06月13日
  • TOKYO REDUX 下山迷宮

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    下山事件といえば日本史の教科書にも載っているような有名な事件。不謹慎だが、あまりにドラマチックな謎のため、フィクション、ノンフィクション問わず、たくさんの作品が発表されてきた。ご多分に洩れず、私もそれらの数冊を手にし、ああでもない、こうでもないと、いろいろ想像を巡らせたクチである。

    本書はその下山事件をテーマに、戦後日本の、東京の闇に潜っていく。3部構成となっていて、おもしろいのは第一部がGHQの捜査官ハリーの視点で語られること。外国人を主人公に下山事件を扱った作品を私は寡聞にして知らない。

    第二部には江戸川乱歩がモデルと思われる探偵作家も登場する。実際、事件後、乱歩はじめ当時の探偵作家た

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    2022年03月24日
  • 闇の奥

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    映画「地獄の黙示録」の元ネタとなった小説です。映画はあのカーツ大佐が水の中からヌーっと顔を出すシーンが印象的でしたが、よくわからなくて退屈だった思い出があり原作を読んでみました。こちらは普通に楽しめましたので、映画もまた見てみようかなと思います。?

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    2021年11月18日
  • すべての美しい馬

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    テキサスからメキシコへ、美しい景色を親友と美しい馬で行く。親友、仲間、恋人、別れと、殺伐とした世の中を淡々と描き、引き込まれた。

    読み応えありました。

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    2021年10月17日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    本書を読んで思い出したのは、1960年代のアメリカで出版された偽書、アイアンマウンテン報告であった。平和というのは異常なのであり現代社会は戦争があるのが平常である、というテーゼから戦争を賛美するこの偽書は未だにカルト的な賛美を集めている。

    本書、『ブラッド・メリディアン』は1850年頃のアメリカを舞台として血が血を洗う暴力こそが社会にとって必要だということを描き出す暴力小説である。アメリカ先住民を撲滅するために暴走した私兵軍団は、先住民のみならずメキシコの人民も含めて旅路で出会う人間を皆殺しにしていく。そして、殺害の証拠として彼らが集めるのは殺した人間の頭皮である。死骸から頭皮を剥ぎ取るシー

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    2020年12月12日
  • 闇の奥

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    映画「地獄の黙示録」の原作だったので読んでみた。輪郭がはっきりしない曖昧な不安感が読後も続く。警察も肉屋もいない原初の大地に向き合い続けるうちに、普通の感覚が失われて物事の意味が希薄になっていき、綻びのように発生した狂気を押し留めることができなくなる…。マーロウがクルツを冷静に批判している一方でクルツの虜になっているのは何故なのか?これがマーロウ自身が引きずり込まれた闇、なのだろうか。

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    2020年11月23日
  • チェリー

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    最初に「著者告知」として、
    「これはフィクションです。
    ほんとに起きたことは一つもないです。
    人物は一人もほんとにはいないです。」
    とある。
    別に特別なことを書いてあるわけじゃないのに、なんだかそこはかとなくおかしみがある文章。人柄がにじみ出ている感じ? 原文を読んでないけど、きっと名訳!
    で、本文に入るわけだけど、新兵(=チェリー)としてイラクに派遣された部分を読んで、告知は真逆で、「きっと大部分が本当のことなんだろうな」と思った。

    読んでいて、虚しさが伝わってきた。
    「何か意味のあることをしに来てるんじゃなくて、爆弾で怪我するか殺されるかするのが目的で、毎日時間をむだにするのが目的で、こ

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    2020年11月07日
  • 闇の奥

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    解説を読むと、この光文社古典新訳版で、なんと四人目の訳者になるらしい。それだけ、魅力のある作品だということなのでしょうが、読者それぞれに想像させる描写が多く、物語の筋は分かるけど、そこから何を問いかけているのかが、難しく感じた。

    初読で私が感じたことは、単純だけど、改めて植民地の概念って何だろう? ということです。

    いきなり、知らない国の人たちがやって来て、特産品をいただくので、ただ働きしてくださいみたいな、現地の人にしてみたら、何言ってんの、ってなるであろうこの感覚は、私の理解の範疇を超えている。それなのに、見た感じでは、当然に受け入れたかのように働いている現地人の姿の描写が痛々しく感じ

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    2020年10月20日
  • キル・リスト 下

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    フォーサイスの作品で、良く登場するイスラムと欧米国家との争い。海外の作品にありがちな長々しい描写は好みが分かれるのでは。テンポという点では弾まない気がするものの、イスラムと欧米キリスト教国家との対立を少なからず、今回の作品からも学べた。(上下巻通しての感想)

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    2020年04月14日
  • チェリー

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    銀行で「アッティカ!アッティカ!アッティカ!」と言う場面。つい最近観たアルパチーノの「狼たちの午後」を思い出した。

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    2020年04月08日
  • 闇の奥

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    1ページ読んで、3ページ戻る。
    どうなってんのか分からず、戻って読み直す、を繰り返し。気づけば、結局何がなんだかわからないまま読破。
    コッポラ監督の『地獄の黙示録』の原作ということですが、映画よりも淡々と静けさが目立ち、かつ難解です。
    しばらく本棚に寝かせて、5年後くらいにまた読んでみようかな。

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    2019年09月18日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    テクノ/ハウスなどの音楽で一般的なリミックスという手法は、その後、”シミュレーショニズム”の文脈で現代美術にも派生するが、文学においてはそこまで一般的な手法ではない。本書はそうしたリミックスの手法を用いて、芥川龍之介の作品を英国人作家デイヴィッド・ピースが新たな文学作品に仕立てた一冊である。

    芥川本人、芥川の作品の登場人物など、主人公が章ごとに移ろいながら、明治の世相が美しく、しかしどこか仄暗さを持って描かれる。どこまでが史実の話で、どこからが芥川の作作品のリミックスなのか、その垣根は極めてぼやかされており、幻惑的な時間が流れる、不思議な書物。

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    2019年06月01日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    芥川龍之介の作品にインスパイアされた短編集。
    著者は英国生まれだが、日本文学に精通し現在は日本在住、東大で教鞭もとる。

    ああ、もう一度芥川作品を読まなくては…。

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    2019年05月24日
  • すべての美しい馬

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    情景描写やキャラクター描写からアメリカとメキシコの対比が見られた。
    保守的なロリンズと自分の感情の赴くままに行動するジョン・グレイディの2人の性格も対比的に描写され、先進的なアメリカへの批判という、コーマック・マッカーシーの脱中心主義に基づいているのではないかと思われる。
    目を背けたくなるような暴力的なシーンが多かったため、読み進めるのに時間がかかった。

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    2018年06月16日
  • エンジェルメイカー

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    ロンドン。時計職人の祖父と、ギャングのボスの父を持つ時計職人のジョーは、奇妙な二人組の訪問を受ける。どうやら二人は、ジョーが祖父や父から大事な秘密を引き継いでいると思い込んでるらしい。しかし、自分には思い当たるものがない…
    大きくは時代の異なる二つの物語が進行して、それが途中から交わって新たな展開を見せる。この作品はハヤカワポケットミステリーで700ページ越えしているので、とても長い。しかも、二つの物語の二つ目について語り始められるまでが、また長く、読むのを挫折しそうになる。でも、100ページあたりまで来れると、グッと早く読めるようになる。

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    2017年10月23日
  • 闇の奥

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    マーロウという老船乗りが若いときに体験したコンゴでのできごとを語る。
    すごくオブラートに包んだ語り口で、そこに意味があるようなのだが、やはりよくわからなかった。
    肝心のクルツが何をしてどのように変化したのか分かりにくい。
    魔境の不気味さや迫力は感じられる。

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    2018年10月19日
  • 悪の法則

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    ネタバレ

    陰惨。
    ハードボイルドで詩的なマッカーシー節もあるけれど、むしろ主人公を憐れんだり、展開に恐怖したりすることに忙しかった。
    映画脚本で、会話が主であるため読みやすかったけれど、その読みやすさがむしろ、物語の暗さを後押ししているのかもしれない。
    主人公に対しても読者に対しても、憎むべき相手や怖がるべき対象がほとんど姿を見せないまま物語が進む。それもまたリアルで、その分読んでいて辛かった。

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    2017年04月05日
  • エンジェルメイカー

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    まー詰め込みすぎやわな、面白いけどのめり込めない。この世界観で半分かせめて2/3の長さやと印象も違うと思う。

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    2016年09月26日
  • すばらしい新世界

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    人間社会の本質を描こうとした作品と、私は読んだ。ありていに言えば、人間なんてこんなものとも読める。育つ環境により常識も変わってしまい、人のありようも当然変わる。

    問題意思を持たないと、とんでもない世の中になってもそのことに気づきもしない。お気楽といえばお気楽で、それもまた是なりか。

    作者の新版へのへの前書きにもあるが、ラストに関しては、違った書き方もあると思う。個人的には違った結末のものを読んでみたい。

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    2022年09月10日