黒原敏行のレビュー一覧

  • 闇の奥

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    今月の猫町課題図書。恥ずかしながら、これが映画「地獄の黙示録」の原作とは知らず、途中から「なんかイメージが重なるなぁ」と思いながら読んでいた。

    風景、人物、感情から小道具の一つ一つに至るまですべてのものが、未開(当時)のアフリカ奥地の魔境的なイメージを構成しており、一人称話者のマーロウとともに圧倒的な迫力とおどろおどろしい恐怖感を存分に堪能できる。社会派小説としての観点からは、人種差別、収奪に関する批判が徹底していないという評価もあるそうだが、これは純粋に小説として読んで、その凄さを味わいたい。

    翻訳は光文社古典新訳の精神にのっとって、非常に読み易く、違和感のある箇所も少ない。しかし、訳者

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    2015年11月23日
  • 闇の奥

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    闇について書くというのは「書かない」ことと同義である。それはぽっかりとした真空地帯を作り出すことで、誰もが語らずにはいられない求心力のことを指すのだから。歴史はそんな闇の巣窟だ。「みんなが知らない真実」という媚薬は心の闇を誑かし、惑わし、盲目さへ導くことで一層闇のなかへと溶けていく。アフリカの奥地でクルツが観たもの、という深淵さをまとう空虚は小説全体を覆う闇を包み隠し、彼の狂気はそれ以外の者を正気のように惑わせる。ぼくたち、みんなちょっとずつくるってる。どこか少しずつまちがってる。これからも、きっとそう。

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    2015年03月19日
  • 黒い天使

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    「幻の女」のコーネル・ウールリッチです。
    この著者、女嫌いだったはず…でも、かわいいキャラのヒロインに好感持てました。
    Mの頭文字を持つ男性に次々挑んで行く~
    かなり古い内容なのに、「幻の女」同様読みにくくは無かったでした。
    読み終えて初めて気が付いたけれど、なんて素敵な表紙!
    (カバー付きのままのお借りしました)
    本屋さんで見つけたらジャケ買いのレベルですね。

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    2015年01月21日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    とある連続殺人犯のお話。内面は描かず、動機は問わず、ただたんたんと田舎のうらさみしい土地にたったひとり小屋に住み着き(無断)、狩をし、まきを割って暖をとる、そして気ままに暴力を振るい、動揺やためらいもなく人を殺す。彼は結局彼自身が送った人生に相応するような無機質な最後を迎える。読み終わって後を引くのは疑問や同情じゃなく、単純な淋しさ。

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    2015年01月10日
  • 世界が終わってしまったあとの世界で(下)

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    上巻を読み終えてから少しずつ読み進めていましたが、とうとう越年してしまいました。下巻で最初の状況(パイプの火事が起きて出動するところ)へ戻り、そこからまた色々なことが起こります。読みながら、そうだったんだ、と驚いたり、オメラスの地下牢の話を思い出したり(たった一人の少年の犠牲によって世界の秩序が保たれているという話)、現在の世界がどう成り立っているかを考えたり、この物語はやはりサイエンティフィックファンタジーだなあと思ったりしました。知的刺激に富んだ、主人公とゴンゾーの青春の物語です。

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    2015年01月09日
  • 世界が終わってしまったあとの世界で(上)

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    分類はSF、といってもサイエンスフィクション(science fiction)ではなくサイエンティフィックファンタジー(scientific fantasy)だと思いました。戦争で最終兵器が登場し、そのせいで世界が終わりますが、終わったのは昔の古い秩序であって、世界は間違いなく続いています。戦争は最悪の選択だとみんなが分かっていて、でも戦争になってしまう辺り、いまの世界が行きつく先を示しているようで興味深いです。下巻でどういう展開になるのか楽しみです。

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    2014年11月28日
  • 闇の奥

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     1902年発表、ジョゼフ コンラッド著。船乗りマーロウが語る、アフリカ奥地への旅の記憶。象牙交易によって権力を得た人物クルツを救出するという目的の元、マーロウは遂にクルツに対面するが、彼は息絶えようとしていた。
     まさに闇のようにぼんやりとした小説だった。
     中盤あたりからマーロウの語りが崩れ始め、物語の確信にあえて触れずに、外側から怪しげに焙っていく印象を受ける。特に、普通であればスポットライトを当てるべきであろうクルツに関して、それを顕著に感じた。そもそもマーロウが到着した時には既にクルツは相当弱っているのだ。これでは全くお話にならない。
     だが、それこそが本小説の中心主題なのだろう。西

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    2014年09月20日
  • 越境

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     1994年発表 、コーマック・ マッカーシー著。少年ビリーは家畜を襲っていた狼を捕らえた。狼を故郷の山に帰すためにメキシコへ一度目の越境するが次々に悲劇に見舞われる。そして弟のボイドとともに二度目の越境、更に三度目の越境と連なり、ビリーは全てを失ってしまう。読点を極力省いた息の長い文章、鉤括弧を使わない独特な文体。
     マッカシーらしい荒野を馬で旅するロードノベルといった小説だったが、かなり哲学描写に振り切っているため全体的に神話を読んでいるような印象があった。純粋に話として面白く美しいのは前半の狼を帰す一度目の越境だろう。狼の存在が気高くて生々しく、読んでいると泣きそうになってくる。しかし中

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    2014年02月25日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    数年前から読みかけの『ブラッド・メリディアン』を一旦置いて手に取った。連続殺人犯の物語である。起伏も抑揚もない会話にまっすぐに胸を突かれる。絶対的な孤独のうちに世界のなかを彷徨うとき、世界はどのように立ち現れ、人間はどのような本性をあらわにするのか。 
    凄惨さをきっちりと描き出しつつ、文章の美しさと立ち上がってくる情景、におい、湿度にはただただ驚かされる。それがどこか痛快な読み応えというのも、とてもいいと思った。小説として、素敵なことだと。どこか人間の素晴らしさというか、人間を肯定している印象を受けることも また。

    巻末のカポーティ『冷血』との比較がなされているけれど、個人的にはこちらのほ

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    2014年02月08日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    内容はおどろおどろしい暴力だが、薄物一枚かぶせた現実感のない世界の、解剖を眺めているような感覚がした。感情表現のないたんたんとした描写の中に、ときどきはっとするような景色が広がって、不思議な世界観だった。彼も人間だったのだろうか?理解しあえるのだろうか?

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    2014年01月18日
  • すべての美しい馬

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     1992年発表 、コーマック・ マッカーシー著。1949年のアメリカ。愛する牧場が売られてしまうことを知った主人公が親友ロリンズとともに馬でメキシコに越境。二人は辿り着いた牧場で馬達と幸せな時間を過ごすが、越境中に出会った少年の起こした事件がきっかけで刑務所にぶち込まれるはめになる。そこからの脱出は主人公にとって恋人とのつらい別れを意味していた。そして訪れる物語のクライマックス、主人公の暴力。読点を極力省いた息の長い文章、鉤括弧を使わない独特な文体。
     とにかく馬達の描写が美しい。彼らの息遣いが聞こえてくるかのようだ。この小説は主人公と彼の選ぶ運命の象徴としての馬(メキシコへの越境もその象徴

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    2013年12月25日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    正直言えば最高傑作であろうブラッドメリディアンや三部作の水準にまでは及んでいないが、それらの作品につながる圧倒的な暴力性と表現力は40年前のこの作品にして、すでにして完成されている

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    2013年11月06日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    怖い人のはずなんだけど、寂しさと哀しさが伝わってくる。
    何かとても純粋で綺麗な気もする。
    グロテスクなはずなんだが。

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    2013年09月07日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    コーマック・マッカーシーの作品ではいつも、この世界では失われてしまったものがまだ存在するかもしれない世界への郷愁みたいなものが描かれているように思える。
    この小説の主人公も近代化に必死に抵抗しているようにも見えるが、瞬間、殆ど天災のように人に襲いかかったりもする。

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    2013年08月27日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    コーマック・マッカーシーの邦訳新作、なのだけれども実際にはマッカーシーの第三長編で、なんと40年前の作品。だが古典作品ではなく、今読んでも衝撃的な作品。つまり普遍的なんだろう。この頃から相変わらず人間の陰惨な暴力性と徹底的な孤独を描いている。これがやがて「血と暴力の国」という、一分の無駄もない透徹されたハードコアな作品に繋がっていく、という原型も見られる。

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    2013年08月24日
  • 平原の町

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    ボーダー・トリロジー最終章。時代からはみ出た荒ぶる魂たちが、ピカレスクロマンの先に己の終着点を見つけて行く。大胆な省略法を活かした冒険の描出がとにかく格好いい。

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    2012年09月16日
  • 越境

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    【ガンバとカワウソの冒険】みたいな話かと思いきや、中盤手前でえええええという展開に。黙して語らない巨大な暗黒の世界に問いを投げ続ける、ハードな哲学小説になっていく。

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    2012年09月11日
  • すべての美しい馬

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    苛烈極まる暴力と不条理渦巻く世界で、ただひたすらに己の生きる道を貫くジョン・グレイディの生き方が眩しい。人生の暗部を厳しく見つめるマッカーシーならではの文学だ。

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    2012年08月31日
  • 平原の町

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    ジョン・グレイディの恋は一途で情熱的で、だからこそ破滅のにおいしかしない。「すべての美しい馬」の時もそうだった。
    でも、それ故に悲しいほどに光り輝いて見えるのだろう。
    見守る立場のビリーは、彼にかつて亡くした弟の影を見ている。
    そんなビリーが、彷徨い続けた先に、落ち着く場所を見つけられたことに小さく安堵した。

    同じ国境三部作の、前二冊よりは会話文が多く、読みやすく感じた。
    そして二人の主人公の、それぞれの結末(それがどんな結末であれ)を確認できてよかったとも思う。

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    2010年11月03日
  • すべての美しい馬

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    自分達の理想の世界を求めて、旅に出て、恋をして、騒動に巻き込まれて、生き残って、また理想の場所を求めて旅立つ。全体的に寂しさが漂うのは、幸せになれる場所がまだ見つかる気配が無いからだろうか。

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    2010年08月25日