黒原敏行のレビュー一覧
-
-
-
-
-
Posted by ブクログ
国境三部作の完結編。
1作目『すべての美しい馬』の主人公ジョン・グレイディと2作目『越境』の主人公ビリーとが共演する。
物語は、二人が同じ牧場に勤めているところから始まる。気のいいオーナーの元、多くのカウボーイ仲間に囲まれて、ジョン・グレイディもビリーも平穏な生活を手に入れたかと思わせる。
しかし、彼らも仲間もどこか落ち着かない。本作でも三部作を通して描かれてきたテーマ、失われつつある西部がモチーフだからだ。彼ら自身、自分たちの生活はもう時代遅れになりつつあり長くは続かないだろうことを知っている。そこから生まれる何とも言えない悲哀が全体に漂っている。
話の本筋は、ジョン・グレイディが惚れた -
Posted by ブクログ
国境三部作の2作目。
本作もアメリカ西部に住む少年が、メキシコへと越境し、数々の苦難の冒険を経験するという粗筋である。
が、こちらは『すべての美しい馬』以上に強烈な喪失の物語である。
主人公ビリーの3度にわたる越境が描かれるが、そのたびに近しいものを失っていく。失われていくものを何とか取り戻そうとしても、全ては逆効果、予めそう決まっていたかのように失っていく。
主人公の喪失の物語の合間に3つの挿話があるが、それも全て主人公の運命を示唆し、主人公の孤独を強調するかために配置されているのは明白である。
しかし、何故か陰鬱な雰囲気、悲しげな雰囲気はない。全ては淡々と進んでいく。
西部のカウボ -
Posted by ブクログ
冒頭、主人公ジョン・グレイディ・コールの見る、馬に乗るインディアンたちの幻影の美しさに、まず心をつかまれた。とにかく全篇の自然描写が鋭く、美しい。ことに馬に関しては、なまめかしいくらい。ハイウェイを走るトラックの描写で、ああ、これは現代の物語であったと思い出す程、主人公の立ち位置が西部開拓時代を思わせる。いっさいの心理描写を廃しているせいか、16歳という年齢を感じさせないジョンの独立不羈ぶりが際立つが、時折挿まれるメキシコの子どもたちとのやりとりからは、彼のナイーブさが感じられる。特に、物語後半、牧場主の娘に会いに行く時に出会った貧しい子どもたちの一団に、メキシコに来てから自分の身に起こったこ
-
Posted by ブクログ
ネタバレ大厄災の後、ほとんどの動植物種・文明は絶滅し、灰色の厚い雲に覆われ、生き残る人類の大部分は人食い部族として存続している地獄の世界。
そんな地獄の中を、主人公の親子は、飢餓や凍死の危機をはじめとする様々な恐怖を経験しながら、倫理や理想を捨てずに進み続けようとする。
極限状態に追い込まれていく描写がとてもリアルで、読みながら何度も何度も「頑張れ!まだ死ぬな!」と応援してしまった。食糧にありつくたびに、自分がとても安堵した。
信仰を捨てず、こどもに無償の愛を注ぎ続ける父親が死んでしまうシーンはとても悲しかった。
少年が新たな夫婦に出会う、救いのあるラストでまだよかったが…いや、この世界には救いなどな