【感想・ネタバレ】ザ・ロードのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ゾンビやターミネーターのいない未来社会と思われる世界を父と子が歩いていく。途中の出来事に徐々に吸い込まれる涙なくして読めない傑作。

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2024年04月05日

Posted by ブクログ

灰色の世界を生きる父と子の物語。
作者の「息子に捧げる」という何とも心にズシンとくる計らい。
父の子を守ろうとする強さと、子の父や(こんな状況でも)他人を思いやる純粋無垢さが、世界の荒廃、人間性の崩壊に対して、どう立ち向かい、導かれていくのか。
星の光以外見えないような暗闇、静寂の中で読んだこともあり、世界、人間の行く末を、この本から見てしまったのか…?と深慮を巡らす。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終末を迎えつつある世界でなんとしてでも息子を守ろうとする男が、最後まで父親として存在していたのが良かった。信じられるのはお互いだけ、という点が揺るがなかった。だから孤独で危険な旅も続けられたし読者としても安心できた。
父親のサバイバルスキルが高くて、色んな工夫を読んでいるだけで面白かった。読点がほとんどない、流れるような思考と会話の中に、記憶が混じってくるのも物語に没入できる理由なのかなと思う。
人が人を食うほど食べ物がない事態で、自分も痩せ細ってしまったのに少年の心は清らかで、他者を殺してまでは生きたくないという意志が強かった。その彼が無惨に殺されるようなことがなく保護者が現れ、いくらか救われた思いだ。

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2023年08月18日

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ネタバレ

戦争か事故か天災か何かが起こった後の、人類の終末期を生きる父子の物語。
解説には近未来と書かれているが、未来的な道具立てがほとんどみられなかったので、例えば冷静時代に核のスイッチが押されたとか、そういう状況もありうるのではないかとか思いながら読んでいた。何であったとしても話にはあまり関係ない。
父子のひたすら南へと進む旅が、とにかく削ぎ落とされた文体によって淡々と表現される。
最後の父の死以外には起承転結に関わるできごとは起こらないが、ものすごい緊張感の中、まったく飽きずに読み進めることができた。
わずかに生き残った人間は、もはや人間としては生きていない。人類どころか、動物も植物もだめになっているので、備蓄食料や他の人間を食べ尽くしてしまえば最後の一人はもう生きる望みはないはずなのに、皆必死で生にしがみつこうとしている。
息子に偽りの希望を与え生き続けさせようとするのは父親の最後のわがままにすぎないので読んでいてつらい。

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2023年07月02日

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空想世界ではなく現実に起きそうな未来がリアルで怖い。
食、性別、人が余裕がなくなった時がより1番怖い。
描写が想像出来てしまう。
その中で親子の絆や純真な少年がこの本の面白さ

命は平等であって平等でない
生き方、命を考えさせられる作品

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2022年02月25日

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全てが美しかった。
文を噛み締めるようにじっくり読み進めた。
希望も絶望もないんだろう。ただ生きるというストーリーがここまで楽しいとは。

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2022年01月19日

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ネタバレ

男はまだ幼い少年をショッピングカートに乗せて灰に覆われた世界で南を目指し歩いた。少年が生まれる少し前に何らかの人災あるいは天災により世界は死に絶え、太陽は分厚いスモッグの向こうに姿を潜め木々は枯れ果て、生き残った人びとはお互いから奪い合い貪るほかなくなった。それでも父の語る〈善い者〉〈火を運ぶ者〉の物語を信じ、道で行きあう人びとに手を差し伸べようとする少年と、かつてあった世界の幻影に悩まされながら息子と共に〈明日〉に辿り着こうとする父の姿を描いたポストアポカリプスSF。


翻訳もので文体の話をするのって原文を見たわけじゃないから気が引けるんだけど、この小説はまずこの文体抜きにして語れない。句点がほとんどなく、会話文はカギカッコなし。一文が何行にも渡ることもあるが、日本語として意味が取りづらいと感じる箇所はひとつもなかった。この訳は偉業だと思う。
とにかくこの文体がすこぶるかっこいい。すぐに真似したくなる。ハードボイルド調の硬質な文体だが深層にはキリスト教神秘主義的世界観が息づいていて、闇のなかに微かな光を放って白く浮かびあがるバロック彫刻めいた美しさがある。凋落し腐乱したものが崩壊の一歩手前で奇跡的にまだ形をとどめているかのような頽廃的な美の表現は、文章自体が灰に覆われた世界のメタファーのようだ。アンナ・カヴァンの『氷』の世界を白黒反転したようなヴィジョン。物語終盤に描かれる被曝したような人びとの阿鼻叫喚図はロダンの「地獄の門」を連想させる。
SFなのだが主としてキャンプ小説というかサバイバル小説でもあって、このお父さんは防水シートと毛布を使って雪用のブーツを作ったり、エンジンオイルとガソリンでランプを作ったりできる。家捜しや悪漢と行きあったときにも頼りになるし、捨て置かれた船から使える資源のサルベージもしてくれる。固く締まった瓶の蓋をドアに挟んで開ける方法は覚えておこうと思った、壁の塗装めっちゃ剥がれるらしいけど(笑)。
それから、飢餓状態を散々描写されてからでてくる食べ物の美味しそうなこと。墓から掘り出されたかのように干からびて見えながら、切ってみるとなかに肉の豊かな風味を残していたハム。焚き火で温めた缶詰のポーク&ビーンズ、生のアミガサタケ(調べたら生食厳禁らしい)。そして白昼夢のような地下シェルターでの豪勢な食事。父がコーヒーミルで豆を挽く音で息子が目を覚ますところなど、それまでとの激しいギャップで泣き出しそうになる。
技術を操り子に伝える父性といざとなれば子のために死をも恐れぬヒロイズムの結びつきは、本書にうっすらと危険な匂いを纏わせている。母親はこの世界で子どもを育てることに絶望し姿を消した、という設定にはじめは〈男の世界〉を書くため?と少し警戒したが、物語が進むにつれこの世界では真っ先に子どもと女が襲われ、あるいは武器を持った男に捨て置かれるのだということが描かれたので納得できた。男が女を蹂躙し尽くしたあとで、相対的に弱い男たちに矛先が向いた世界なのだ。秩序が崩壊したら男が女を狩り尽くすだろうというヴィジョンにはリアリティがある。単なるマチズモではない。
一方でこの父親のヒロイズムは息子を神格化することで成り立っている。それがまたもうひとつの危うさなのだが、彼が自死も掠奪も選ばなかったのは子がいたからなのは事実だ。はじめは純粋に庇護対象だった息子に「善き者であれ」と諭され、少しずつ親子の立場が反転していく。何もない世界でも子は育ち、父が教えていないはずの言葉を話し出す。だんだんと父を包む死の影が濃くなると、「いろんな心配をしなくちゃいけないのはお前じゃないからな」「ぼくだよ、それはぼくなんだよ」という印象深い言葉が交わされる。灰色の世界に生まれ落ち、父亡き後もここで生き続けなければならない子どものどうしようもない不安。父が子を守ろうとするのと同じかそれ以上の気持ちで、子が父の死を思い案じていたことに気がつく。そして父の力強さと対比になるような彼の優しさが、ずっと父を守ってきたことも。
父の死後、子は知らない神の代わりに父に祈る。私はここに至ってやっとこの物語が徹頭徹尾宗教の話をしていたことに思いあたった。元々ポストアポカリプスSFは世界の存在意義と倫理を問い直すものであるために宗教色が強くなりやすいと思うが、『ザ・ロード』はおそらく世界崩壊前から宗教的に暮らしていた人間が、神を信じられなくなった世界で息子をキリストのように崇めながらなんとか再び信仰へコミットしようと巡礼する物語を意図的に書いている。解説で66歳のときに生まれた息子との体験から書き出されたことを知ると、父と子で完結する信仰の描き方は少しナルシスティックにも思えるけれど、読んでいるあいだはとにかく夢中で文章にのめりこんでしまう、終末SFの傑作だった。

余談。私がこの小説を知ったのは東山彰良が『ブラックライダー』のインスパイア元として挙げていたからなんだけど、本書を読むと悪い意味じゃなく『ブラックライダー』は二次創作だったんだなと腑に落ちた。『ザ・ロード』では描かれない人肉を食べる側の視点、そして少年が辿り着くカルト教団側の視点に想像力を注いで書いたのだと思う。文体はウェットな『ブラックライダー』より、ルポルタージュ設定でドライな印象の『罪の終わり』のほうが近いかな。
アメリカの未来絵図という意味ではジョン・クロウリーの『エンジン・サマー』も思い出す。そういえば本書にかち割った自販機からコカコーラを取り出して飲むシーンがあるけど、『エンジン・サマー』にもたしかゴミの山でコーラ缶を見つけるシーンがあったような。『ブラックライダー』では人名になってるし。アメリカにとってのコカコーラって何なんだろう。

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2020年07月08日

Posted by ブクログ

素晴らしい小説
父と子の物語、sfの皮を被っていますが継承の物語、人生の物語だと感じました
読みにくいですが読んで良かったと思える小説

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2020年03月05日

Posted by ブクログ

凄い言葉を生むための物語。

胸に押し当てたいほど美しいものは全て苦悩に起源を持つ。それは悲しみと灰から生まれる。
- 63ページ

かたちを喚び起こせ。ほかになにもないところでは無から儀式を創り出しそれに息を吹きかけよ。
- 86ページ

善意が見つけてくれるんだ。いつだってそうだった。これからもそうだよ。
- 326ページ

全て凄い言葉。言葉に、“凄さ”を付与するための話。

「火を運ぶ」という言葉が多義的に解釈されている。解釈に一側面を付け加えるならば、これは“律”だ。そして律は、人間の主観なしには作り得ない。人間が作るものには全てが信仰が含まれる。それは律であっても例外ではない。
世界をあるべき姿に正すためには、律を作り出す時に用いた信仰を実践するしかない。つまるところ、“善い者”でなければならない。これはもちろん、自分にとっての善さに他ならない。
火を運ぶ中で少年は原初の火を灯し続けるが、彼は彼らの作り出したのとは違った律が世界に混ざり込み、たびたび少年と衝突する。その結果、大抵悲惨な事態を引き起こすが、父の世界を取り込み、少年の律も変容する。
しかし、どれだけ律が変わろうと、火を運ぶという目的が変わることはない。なぜなら、火を運ぶことは、律の内容とは全く無関係に行うことができるからだ。

コーマック・マッカーシーは、彼自身が火を運ぶために、我々に「言葉」という手段を用いて語りかけているように思う。それは、キャラクターと、物語による、「凄い言葉」という形をとって成される。

リストを作れ。連禱を唱えよ。憶い出せ。
- 38ページ

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2024年05月06日

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荒廃した世界をひたすら南に進む父と子の話。
父として、息子としての考え方や心情態度の変化がおもろい。

火を運ぶ者たちである。

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2024年02月16日

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ただ歩くだけでどんだけ引っ張るんだ?という前半だけど、徐々にこの世界のありようが明らかになってきたりそれなりの物語の起伏もあってまあまあ楽しめる。

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2023年10月15日

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動植物は死に絶え、人が人を喰らう終末世界で続けられる父子の「火を運ぶ」旅。善とは何か、生きるとはどういうことか…。全く光の見えない絶望的な情況の中で「破滅後」しか知らない少年の純粋さが胸を打った。

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2023年08月23日

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直視できない現実の辛さを見せないように肩代わりする父親。しかし、泣くしかできなかった子供が現実をしっかり受け止め出し、ついには父親を支えるようになり、父親の遺した言葉を胸に、この終末世界の中を生き抜いていく──。

あまりにも辛い、けれど詩的な表現の美しさに魅了されるSF小説の傑作。子育てをしている今だからこそ響く言葉が多く、最後は辛過ぎて泣きそうになってしまいました。

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2023年07月20日

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涙ちょちょぎれるぜ…親父
俺の親父といったら俺の最低でも6倍以上金貰ってるくせに青カビ生えたレモンサワーを出すような安い焼肉屋(飲み放題60分500円)に連れていきその後俺は知り合いのとこ行くからと二軒目の代金出したくなかったのか俺を置いてどこかに行っちまいやがった

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2023年07月18日

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『信号弾はしゅーっと長く音を立てながら暗黒の中へ弧を描き海面よりも上のどこかで煙混じりの光にはじけてしばらく宙に懸かった。マグネシウムの熱い巻きひげが数条ゆっくりと闇の中をくだり渚の波が仄白く光って徐々に消えた。彼は少年のあおむいた顔を見おろした。
 あまり遠くからだと見えないよね、パパ。
 誰に?
 誰でもいいけど。
 そうだな。遠くからは無理だ。
 こっちの居場所を教えたくてもね。
 善い者の人たちにかい?
 うん。ていうかとにかく居場所を教えたい人に。
 たとえば誰?
 わかんないけど。
 神さまとか?
 うん。そういうような人かな。』

目の前の本を読みながらどうしても他の本のことが頭の中を過ってゆく。読み始める前に想像していたのは、書名からの連想で、空想科学小説風の「オン・ザ・ロード」(ジャック・ケルアック)のような話だったのだけれども、実際に連想されたのはデイヴィッド・マークソンの「ウィントゲンシュタインの愛人」とジョゼ・サマラーゴの「白い闇」。翻訳者の解説にもある通り、確かに本書コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」もロードノベルではあるのだろうけれど、本書はそれら二冊同様にいわゆる反理想郷を描いた小説と分類されるのが適切なように思う。ここで描かれているのはいわゆる「核の冬」の時代のようであり、自然も徹底的に破壊され人類以外の生物の痕跡もほぼ無い。

「ウィトゲンシュタインの愛人」は本書と同じように何らかの理由で人類がほぼ滅亡してしまった近未来的な世界に残された女性が主人公の小説(そう呼んでよければ)だが、一人残されていく過程の描写はなく、世界はどこか形而上学的(ウィトゲンシュタインの名が付く位なので当然だが)で、滅んでゆく人類たちの修羅場のような状況は描かれることがない。かつ、自然そのものは何も汚染されていないかのような雰囲気が漂う。一方の「白い闇」はある日突然人類が盲目になるという伝染病が蔓延し社会が機能しなくなっていく世界の中、一人目が見えるまま「取り残された」女性が主人公の小説で、こちらは「目が見えること」を前提として成り立っていた社会通念が倫理観も含めて覆されていく様が、少々糞尿愛好過多気味に描かれている。何らかの理由で人間社会が機能しなくなりやがてほぼ滅亡した状態になるというのがこの類型の空想科学小説の一つの時間の流れだとすると、本書は「白い闇」(未読ながら、続編では疫病は自然と克服されるらしいのだが)と「ウィトゲンシュタインの愛人」の中間の時代を描いており、ひとり取り残されてしまった状況より、その前にこういう時代が来ることの方がもっと過酷だということを改めて認識させる。言わずもがなだが一番凶暴なのは人類なのだ。だから映画「マッドマックス」が描くように、そこに「正義の味方」的な主人公を置きたがる聴衆や読者が多いだろうとも容易に想像できるのだけれど、本書の主人公たちはメル・ギブソンとは違ってタフでもなければ特別な才能に恵まれている訳でもない。ただ温暖な土地、そして残された食料を求めて彷徨い歩くだけだ。道々出会う困難を何とか紙一重でかわしながら進む親子の物語を描くこの小説の終着点は一体どこなのだろうと訝しく思うほどに、終盤に至るまで救いらしい救いの光明は見えてこない。旅を続けながら父親はじわじわと弱っていく。ロードノベルの定番である成長譚という視点から見ても、破壊され尽くした世界に生まれてきて「前の時代」を知らない息子が成長しているようでもない。悲惨さだけがずんずんと降り積もっていく。

しかし、やはり最後はそうなるしかないというエピローグが待っている。ご都合主義的と言ってもいいその終結はハリウッド映画的な世界観と相性がいい。それがいいとも悪いとも思わないのだけれど、ドン・デリーロと並び称されるという作家の作品に何を読めばいいのかを判らなくもさせるように思えてならない。自分の中での置き所が上手く見つからない小説である。

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2023年07月01日

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世紀末、自然災害か核戦争か、草木さえ死に絶えた希望のない世界で、生きるために南の海を目指して歩く親子。
読み切るにはなかなかの精神力を要します。
いま自分が住んでいる世界と真逆すぎて、ファンタジーのように見える物語ですが、もしかしたら、人はみんなあんなふうにただ生きるために生きているのかもしれません
生きるとはどういうことか、当たり前にあるこの世界は何と素敵なものか、色々と考えさせられる作品でした。
散文的で静謐な文体も読みやすく、美しかったです。
ぜひ。

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2023年06月02日

Posted by ブクログ

どこまでも続く灰色の世界。
常に死を近くに感じながらも、南は向かう。明確な目的地はなく、ただ暖かいからという理由で。
坦々とした文体で描かれる、容赦ない自然、無惨な光景。
希望とをもつとか未来を見るとかいった言葉がただ上滑りするだけのような状況下、短く交わされる父と子の会話が、読み進めるほどに心に染みてきた。
純粋でまっすぐな視線をもつ少年の、存在そのものが希望か。

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2023年05月22日

Posted by ブクログ

「森の夜の闇と寒さの中で目を覚ますと彼はいつも手を伸ばして傍らで眠る子供に触れた」最初の一行が始まる。

おはよう、パパ
パパはここにいるぞ。
うん。

繰り返し描写される周りの情景、それは「寒さ」と「飢え」と「怯え」。
理由の見えない状況のなか、南へ向かう父と子の会話は、まるで詩の一遍のような響き

本当であれば「暖かい家と家族」に囲まれながら将来を夢見るはずの子供が、人を食らう人に怯え、生きるために人を殺めることを恐れ、死を身近に感じたまま、父と話す。

もう死ぬと思っているだろう
わかんない
死にはしないよ
わかった
なぜもう死ぬと思うんだ?
わかんない
そのわかんないというのはよせ
わかった

どこまでも続く南への道、結末がいいはずはないのになぜ生き続けるのか……。

ピュリッツァー賞受賞で映画化もされた。
過去でも現在でも未来でもない、父と子の、あるいはいつでも起こる可能性のある地球の姿。

一度は、読んでおく価値のある物語です。

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2023年04月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死んでいく世界の中、必死にお互いを支え合う父と子。読み終わり、涙が溢れてきた。二人の会話から伝わる状況や心境の変化。虚しさも痛みもひしひしと伝わってくる。生きる上でどこかで割り切らないといけないという父が下す正しさと、本当にそれで良かったのかと疑問を抱く少年の優しさ。お互いがそれぞれの学びとなり支えになる。父と同じように読んでいる自分も少年に暖かさを感じた。彼から優しさを分けてもらった気がした。

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2023年04月16日

Posted by ブクログ

たぶん近未来のアメリカ。たぶん核戦争後の世界。数多くの動植物が滅んだ終末の世界。僅かな食糧を奪いあう残された人類

ただひたすらに南を目指して歩き続ける、ひと組の父子の物語。暴力が支配する世界で、人は善き存在であり続けることは出来るのか

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

はっきりと明示はされていないがおそらく核戦争後のアメリカだった国が舞台。植物は枯れ動物は生き絶え、死が全てを覆った世界。空は灰色の厚い雲に覆われ、どんどん寒冷化が進んでいる。そんな世界で生き残った父子が南を目指して彷徨い歩く。

「北斗の拳」や「ウォーキングデッド」のような終末後の世界を描いた作品だけど、動植物がほぼ完全に生き絶えてて食物生産ができない状況な分こっちの方がずっと条件がキツい。今ある保存食が無くなったら人間は何を食べるのか?読み進めると地獄のような答えがそこに待ち受けている。淡々とした冷静でリアリズムに徹した描写が、その地獄を現実味を帯びた説得力のあるものにしている。

地の文は主観を排した写実的な情景描写がほとんどで、「老人と海」を思い出した。乾いた質感の文体が世界観にマッチしてる。
ただし読点がほぼなく一文が長いため、ちょっと集中力が途切れると状況の把握がしにくい。映画で言うとずっとワンカットで回し撮りしているような文章。会話文もカギカッコが無くわかりづらい。また急に(世界崩壊前の)過去の話が出てきたり夢の話が出てきたりして少し混乱する。章立ても無いので、区切りがつきづらい。
総じて散文のような小説。この父子の旅を実際にワンカットのカメラで追い回しているような感覚になる。

子どもがいる身としては尚更読んでいて辛い、ページをめくる指を止めたくなることが多々ある作品だったけど、この本に出会えて良かったと思う。今後ディストピア小説を読む中でこれを超えるような衝撃作は、ちょっとなかなか出会えないんじゃないか。

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2022年06月25日

Posted by ブクログ

終末世界を旅する父子の過酷な旅路を静かに描く。

詩的で難解な表現、読点や鍵括弧がほとんどない独特の文体で集中して読まないと目が滑るが、没入感と圧倒的な世界観に引き込まれる。

作中何回か登場する火を運ぶという表現。火は様々なものを象徴する。文化、戦争、希望、情熱…
ここでは何だったのだろうか。それは恐らく、人類さえ絶えかけている世界で、前に進み続ける執念であり、ある意味場違いな崇高な精神なのかもしれない。

どこか諦念を感じる父と息子の対話に胸が痛い。
親子の愛や絆というより、様々な来るべき「終わり」を見据えた上で人間存在や善を根本的に問う作品だと思う。

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2022年04月20日

Posted by ブクログ

災害か戦乱かわからないが、人間も動物も植物もほぼ死に絶えた世界で、南を目指して歩き続ける父と息子。道々出会う人々は簒奪者ばかりであり、過酷な旅となる。父は絶望を感じつつも息子を生かすことを最優先し、人殺しも厭わない。息子は倒れた人々に対し優しくあろうとし、食糧や衣服を与えようとする。ハッピーエンドは期待できないし、その通りに終わったが、父性を強く感じる手応えのあるストーリー。でも最後には母性に救われるんだよなあ。

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2022年03月16日

Posted by ブクログ

都合よく生き残ることができるわけだけれど、ラストで都合よく生き残れなかった数多善き人に思いが至って都合の良さに合点が行った。

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2021年09月20日

Posted by ブクログ

ポスト・アポカリプスものSFの一冊として読んだ。すごく重く、灰色な気持ちになった。ただひたすら南を目指す父と子は淡々と食料を探し、少しでも安全な場所を探し旅をしているが、彼らが通り過ぎる風景は酷いものだし、最後についても希望があると大手を振れないエンディングのような気がして、ズーンとなった...貯蓄された食物を探すだけでは安定的でないし、人間がそんなに疑心暗鬼になって少人数に分かれたままなんていうことがあるのだろうか?とかいろいろ考えていた(描かれていないだけで台頭しているグループとかはあるんだろうなあ)。世界どうなったの?って思っていたけれど、作中でそれを老人に尋ねるように、知らないまま放浪の旅に放り込まれる未来が、人類に訪れるあり得る未来なのかもしれない。読んでいて、縫合くらいは最低限サバイバル知識として頭に入れておこうかと思った..

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2021年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

核戦争(推測)後の荒廃しきった地球。生き残ったわずかな人間が略奪と食人を繰り返す中、人間の尊厳を守ろうとする父子のあてどない旅路。

「絶望」の描写が手を変え品を変えこれでもか、というくらい出てきて、ただただ怖い。だがページをめくる手を止められない。どうかこれ以上悪くならないで、と祈るよ
うな気持ちで先を急いでしまう。重厚な内容にしてはかつてないくらいのスピードで読み終えた。小説の世界にどっぷりはまり込んでしまい、その夜はしばらく寝付けなかっ
たほど。

病に冒された父は、幼い息子を一人この世界に残すことを憂う。息子は彼にとって神の言葉そのものだ。手にした拳銃には銃弾が一発。自分にできるのか?つらく苦しい旅
路の最中、幾度となく自問自答する。

結局、彼は息子を置いて一人で旅立つことを選ぶ。どうしようもなく絶望的な極限状態にあって、彼は息子の生に希望と未来を見出す。何の根拠もないか細い祈りのような
ものかもしれないけど、愚かかもしれないけど、これはきっと人間の性なのだろう。

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2020年02月13日

Posted by ブクログ

廃墟を親子で彷徨い、父親が死に、また子どもが彷徨うという話である。映画化されたとあるが、日本で上映されたであろうか?
 再度読んだが前に読んだことを全く覚えていなかったのはそれだけ印象が薄かったからなのだろうか。
6月にマッカーシーが死亡して、その追悼文が新聞に掲載されたので、再度読んだ。
 本棚の検索ではザ・ロードやロードの検索ではヒットせずに、マッカーシーでヒットした。カタカナの本の名前では検索できないというアルゴリズムのバグがあるのかもしれないし、・が入る検索はできないのなのかもしれない。

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

破壊され尽くした世界を父と息子の二人が「火を伝える」という目的を持って南に向かって歩き続ける。
廃墟の中、辛うじて残った食糧や必需品を漁る緊張感、掠奪者や老人・子供に遭遇することが孤独を紛らわし物語の現実感を醸し出す。ボロボロの地図を頼りに雨や雪、疲労と飢え、病気と怪我に抗して南に向かう。海に辿り着いても状況は何も変わらない。
二人にとっては「防水シート」がいろいろな場面で何度も出てくる万能資材であり、「カート」が必要品を運んでくれる頼り甲斐のある同行者だ。
大状況がわからないということはこれ程不安を感じさせるものなのか。読者は一瞬も気を抜けず漠然とした期待を求めて読み続け、南にこそ可能性があると思い込むしかない。作者は多くを語らず読者の想像力に委ねる。温暖化による破綻なのか核戦争による破滅か、破壊された世界で二人の親子愛が辛うじて希望の火を灯す。いつまでどこまで続くのかわからない恐怖と諦観そして絶望が異空間を味あわせる。
コーマック・マッカーシーのピューリッツアー賞受賞作である。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

灰が降る終末世界で父と息子が旅をする。略奪者の目を逃れながら、少しでも暖かい南を目指して。その道は悲惨というほかない。森の中に潜んで防水シートで雨を避けながら焚き火をする。臭い服と毛布にくるまって眠る。次の日にはボロ布を巻きつけた足でまた先へ進む。行く先々で転がっている死体。こんな救いのない場所で生きていくことに何の意味があるのか。銃があるならそれで自分と息子を撃てば終わりじゃないのか。読みながらそう思わずにはいられなかった。生きたいというのは親のエゴなのではないか、とも。それでも生きようとする気持ちの強度に圧倒される。他人を助けたいと思う息子の純粋さや、お互いと一緒にいたいと思う二人の気持ちの真剣さが極限の状況だからこそ照らし出されているように思う。光のない陰鬱な世界でも火をおこすことはできる。

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2023年07月16日

Posted by ブクログ

おもしろかったけど、大騒ぎするほどじゃないかなあ。
うろうろしないでじっとしておけよと思うが、それではこの小説が成り立たないものなぁ。

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2022年05月24日

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