【感想・ネタバレ】すばらしい新世界のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年03月10日

当時こんなことを考える人がいたことは驚きだ
本気でやっている苦悩をエンターテイメントとして受容されることのなんと耐え難いことか…
モンドの苦悩が大多数の幸福を支えている歪さがいい意味で気持ち悪かった

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Posted by ブクログ 2022年11月29日

来るかもしれないディストピアを描いた作品。フィクションを通じて、自由主義・資本主義の問題点を伝えている。どんなイデオロギーが妥当か、正直議論が抽象的すぎて、自分にはわからない。けどとにかく、今の社会を生きる人間として、読んでおいてよかった!

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Posted by ブクログ 2022年03月08日

登場人物の台詞に時折ぐさっとくることがあるはず。そのくらい現代にも示唆的な小説だった。
シェイクスピアの引用も面白い。そして切ない。

作者は1946年のあとがきで、われわれが権力を分散し、応用科学を人間を手段として使うためではなく、自由な諸個人からなる社会をつくるために利用する道を選ばないとすれば...続きを読む、取りうる選択肢は軍事優先主義もしくはそれがエスカレートした世界、もしくはここに書かれたようなユートピアの2つしかないだろうと言っている。偶然にも前者も未だ現実的であることを思い知らされている現状が世界で起きており、考え込んでしまった。

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Posted by ブクログ 2021年08月31日

文庫版の裏表紙に書かれている本書のあらすじは、下記の通りだ。

【引用】
西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、フリーセックスの奨励、快楽薬の配給によって、人類は不満と無縁の安定社会を築いていた。だが、時代の異端児たちと未開社会から来たジョンは、世界に疑問を抱き始め・・・・驚くべき洞察力で描...続きを読むかれた、ディストピア小説の決定版。
【引用終わり】

本書の初版の発行は、1932年であり、なんと約90年前のことだ。ディストピアはユートピアの反対語であり、反理想郷とか、暗黒社会とかと訳されるようだ。
ディストピア小説と表現されているが、この物語に描かれている社会は、ある意味ではユートピア社会だ。人類は、階級化され、その階級内で不満を持たないように、生まれる前から条件付けをされる。それはおおよそ成功しており、この社会で暮らす人々は、全く不満を持たない。
一方で、「不満を持たない」ということと「幸福である」ということは異なる。この世界で人々が不満を持たないのは、実際の生活条件に対して不満を持たないように条件付けられている、プログラミングされているからであり、そこには、主体性というものはない。与えられた条件の中でのみ不満がないのであって、そこから外れようとすることは想定されていない。すなわち、人間に自主性を期待しないし、実際にこの世界で暮らす人は自主性・主体性を持たない。ただ難しいのは、「自主性・主体性を持たない」ということに、この世界の人間は気がつかないということである。そもそも自主性とか主体性という概念を持たないように生まれ、育てられる訳であり、そのような考えを持ちようがないのだ。
そういう意味で、この世界は、「現在の我々の目から見れば」ディストピアなのであるが、では、我々自身の世界は全く違う目で見るとどうなのか、ということを考えさせる内容の小説になっている。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年03月25日

p.317
社会的不安なしに悲劇はつくれないんだ。

幸せってなんだろう、感情ってなんだろう、生きる意味ってなんだろう、、、いろいろ考えちゃう作品でした。
幸せなら娯楽もこうやって本を読むことも不要になるのかな?

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Posted by ブクログ 2020年12月27日

ようやく読めましたBrave New World/すばらしい新世界。著者による新版への前書きは良い補完だった。「幸福度ランキング」なるものが国家間、都道府県間で発表される世の中において、ハクスリーの「“幸福の問題”とは、言い換えれば、どうやって人々に隷属を愛させるかという問題だ」という一節は現実的な...続きを読む問題として立ち現れてくる。1932年より、よりこの“ユートピア”は私たちに近い。

この世界に描かれる世界は滑稽でグロテスクだ。だが自分がそのような世界に住みたいと思っていることを発見した時(なお、世の中の労働者はそれを発見するようにできていると思う)、その気持ち悪さは自身の思考、思考の枠組みに向けられるのだ。なんともおぞましい、すばらしい新世界!

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Posted by ブクログ 2018年12月22日

「すばらしき新世界」
ジョン
 野蛮人氏。
 青年になるまで、非文明地区で暮らしていたが、レーニナとバーナードの訪れを機会にロンドンへ向かうこととなった。
 文明人である母、リンダの影響で「すばらしき新世界」としての憧れを抱いていたが、実際には科学技術は発達しているものの、宗教も、文学も、科学も完全...続きを読むに統制され、停滞したディストピアたる世界に愕然とし、自殺する。

リンダ
 ジョンの母親。
 不妊個体(フリーマーチン)だったが、手違いで妊娠し、捨てられ、非文明地区に置き去りにされる。
 ジョンを産み育て、後年ロンドンに戻るが、「ソーマ」の飲み過ぎで早く死去する。
 
バーナード
 「代替血液にアルコールが入った」と揶揄される、アナーキストな傾向を持った青年だった。その傾向を避難され、左遷(島流し)の危機に見舞われる。
 が、レーニナとともに非文明地区からリンダ・ジョン親子を連れ帰ったことにより、一変、一躍、時の人となった。
 だが、それも長く続かず、結局は島流しとなる。
 
ヘルツホルム
 バーナード、ジョンの友人。自身が創作した詩を生徒たちの前で発表し、嘲笑された。
 彼も最終的にはバーナードとともに島流しとなった。
 
レーニナ
 「弾みのいい」魅力的な若い不妊個体(フリーマーチン)。
 バーナードとともに訪れた、非文明地区でジョンとであい惹かれるが、結局はその好意は拒絶される。
 
ムスタファ・モンド
 世界統制官。
 世界を統制するために、宗教も、文学も、科学も完全に統制している。
 「禁書」を多く持っている。
 
世界観
 アルファ、ベータ、イプシロン、デルタに分かれた階級社会。
 既に発生段階から統制され、睡眠学習によって、それぞれの等級に満足し、社会が安定するように仕向けられている。
 不都合や忘れたいことがあれば、副作用のない薬剤、ソーマがあり、労働の対価はソーマである。
 発生も完全に統制され、特定の相手を持たない「フリーセックス」が奨励されている。
 そこでは関係の私有(特定の相手を持ち、家庭を作り、父親、母親になること)は野蛮で恥ずべきこととされている。
 一方、非文明地区では昔ながらの状態が保たれている。

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Posted by ブクログ 2023年07月27日

作中では時々、詳細な科学用語・物質名が引き合いに出され科学的にかなり発展していることが伝わり、その世界で宗教、文学、歴史が禁忌、禁書となっていることで「現在の我々読者の常識は非効率的な世界である」という雰囲気が出ている。

しかし、性については野蛮人そのもので、誰とでも性交をするのが良しとされ、1人...続きを読むの人を愛する感覚がない彼らは果たして文明人と言えるのだろうか。

また、異様なまでにシェイクスピアが引用されており、SFを描くにしては過剰な著者の文学的趣向が滲み出てしまっているように思えた。

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Posted by ブクログ 2023年07月02日

明るいディストピアな未来を舞台とした小説。ファスト消費、経済性、快楽主義を第一とする全体主義世界。1930年代に書かれたにも関わらず、ある意味現代社会を描いている様にも思える。著者による新版前書、解説なども必読。

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Posted by ブクログ 2023年04月22日

瓶詰めの科学的に調整を施す人間培養、その調整によって格付けされた人間社会、あらゆる快楽を叶えることで欲望や不満、絶望を排除したユートピア。人間の最大の欲求は信頼関係のある人付き合い、と定義する人がいるが、それさえ叶えることのできるユートピアは果たしてディストピアなのか。かなり極端な世界ではあるが、今...続きを読む自分が置かれている自由はとても幸福なことであると実感する。もし自分に苦難が降り掛かったとき、本当に「ソーマ」を拒絶出来るかは怪しいとは思います。16章、17章のジョンと世界統制官との論戦は興味深いが、個人的にはやや宗教的思想に偏るジョンにも賛同できないところがある。
そして衝撃のラスト。自分への鞭打ちさえなければ穏やかな生活を営むことができそうだが。

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Posted by ブクログ 2022年11月29日

ディストピア小説の古典とも言われる本著。しかし、1932年に書かれたとは思えない位、新感覚にも読めるし、あるいは既に社会に浸透した一種のSF的仮説の基礎とも読める。最近の作品では、貴志祐介の『新世界より』が影響を受けてるのかなと感じたがどうなのだろうか。

階級を容認し、寧ろ階級がある事を前提に構築...続きを読むされる社会。そして、その階級意識を遺伝子操作というよりも、主には、オペラント条件付けにより、無意識下に学習させて統制させていく。一見、共産主義の思考実験による皮肉にも見えるが、恐らく、この仮定に主義は選ばない。資本主義であれ、その報酬は金銭の多寡をKPIとして、条件付け、刷り込まれたものであり、階級は偏差値や年収を指向する事で成立されている。右も左も、人間社会の本質を究極的にデフォルメ化して皮肉っているのではないか。

社会とは、洗脳により与えられた報酬から役割を規定され、条件付けにより繰り返す事が労働である。成果物の搾取や交換、分配の手法が、主義の相違を生んでいるだけである。

変な読み方をしてしまったかも知れないが、面白いな、素直に読んでもそう感じた。

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Posted by ブクログ 2022年11月03日

近未来ディストピア小説
人間は工場生産されるようになり、家族という概念はなくなり、フリーセックスと快楽薬で不快や欲求不満を解消した、非常に安定した世界が描かれている。

ディストピアだけど、きっとこの世界が本当にあったらここに生きる人は、結構幸せじゃないかと思う。
徹底的に管理された階級社会、でもそ...続きを読むれぞれの階級はその階級を不満に思うことのないように小さい頃から睡眠教育を受けている。なので、上の階級にも下の階級にも行きたいと思わない。
動物園のライオンとサバンナのライオン、どちらがより幸せかがわからないのと同じ。

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Posted by ブクログ 2022年07月31日

ディストピアを題材にした小説は初めて読んだ。未来の描写を読むのは単純にわくわくする。こんな未来は確かに来そうだとか、嫌だなとか、中途半端に機械化されてないな、みたいな考えが去来する。
ところでこの小説の社会では、安定や幸福が何より優先されている。そのために人間を生産する技術が高められ、健康的害の少な...続きを読むい薬物が生活必需品となり、フリーセックスが奨励されている。社会は階級分けされ、低層階級の者は単純な肉体労働をこなしている。
こんな未来がやってきそうかというと、やってこないだろう。この本が書かれた当時には想像もできなかったであろうインターネットの進化は、別のディストピアを用意していると思う。

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Posted by ブクログ 2021年07月30日

人間が工場で企画生産され、条件付けと快楽薬物の多用によって一律に幸せを感じる世界に『野蛮人』としてやってきたジョンは違和感を覚えるが………。
『1984』で描かれるディストピアより、幸せで快適だけれどもやはりディストピアには違いないし、何だかより現代に近い感じもある。

終わり近く、世界統制官と野蛮...続きを読む人の問答は『カラマーゾフの兄弟』の大審問官パートを意識している。

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Posted by ブクログ 2020年04月26日

幸せな人生、生活とは一体なんなのか?

全ての苦痛が極力排除され、
快楽のみを感じることを良しとした社会。
真理よりも幸せを。

だが、
それは幸せなのか?
全ての人は試験管で生まれ、あらかじめ遺伝的に優れたものを少数、劣ったものを多数生み出させる。
フリーセックスが横行し、試験管で生まれたものたち...続きを読むにとっては、妊娠や母や父という概念は卑猥なものとなる。
ソーマという、薬を定期摂取することで、気分はいつもハイ。睡眠学習という名で、生まれてから今までひたすらに、服従する事をよしとする音声を聴き教育される。
そして、死は悲しむものでも何でもないもの。

そして、
そこに異端者が現れる。
自由意志を尊重し、ソーマを拒否し、若返り薬を飲まず、母を愛する。

そこでの大勢の大衆は、
異端者扱いする。

常識とはなんなのか。
何が良いか何が悪いのか。
多数だからといってそれが正しいということなのか。多数の暴力ではないか。

現代を生きる私たちが
実は頭おかしい可能性がないとも
言い切れない。

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Posted by ブクログ 2020年04月14日

ディストピアものの名作の一つと聞いて読んでみたが、翻訳が新しいこともあってか古さを感じなかった。この本が書かれてからおよそ90年たつが、今の世の中はこの小説をフィクションだと一蹴することができるだろうかと考えると空恐ろしいものさえあった。
世界観以外に読んでいて印象に残ったのは、社会の構成員が幸せに...続きを読む暮らしている中孤独を感じているバーナードという人物の描写だった。彼は上司に脅されたのを本気ととらないで高を括っていたのを後で所長が本気だったのを知って後悔したり、自分の非礼を許してくれた友人の寛大なところに感謝しつつ恨んだり、彼が自分の連れてきた未開人と仲良くなったのを見て嫉妬したりするといった行動をとる。そこに非常に人間味を覚え、自分はこういうふるまいとは無縁であるといえるだろうかと自省した。
解説や年表も充実しており、特に訳者のあとがきで作中に何度も出てくる"pneumatic"という単語の訳出に苦労したという話が載っていた。読んでいてこれはどんな英単語をどのような意図で訳したのか気になっていた点を知ることができ、翻訳家はどんなことを考えながら仕事をしているのかを垣間見ることができて得した気分になった。

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Posted by ブクログ 2019年07月08日

程度の差はあれ、今の日本も同じような政策がなされてないか。
ファッションやアイドルやテレビやスポーツや賭け事などなど。
現実逃避と適度なストレス。
回す側と回される側。
本人が良ければそれでいいのか。
とても考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2019年06月13日

ディストピアものでは1984年に並ぶような作品であるが聞いたことなかった。ちなみに1984年もまだ読んでないけど。
これが1931年に書かれたというのもすごい。あとがきでは核について記述がなかったことについて触れているけど、それにしてもフリーセックスやソーマという麻薬のようなものだったり、当時の社会...続きを読むの規範ではびっくりされるような内容だったろう。アルファだけの社会を実験してみたのも面白い。結局はうまく立ち行かなくなってしまったと。階級とそれを受け入れる気持ちというのは、例えば江戸時代とかもそうなのかもだが、社会の安定に必要なのかもしれない。現実に人間の能力差があって社会的な地位といった意味でも格差がある、でも人間は平等だという神話が逆に人間を苦しめてたりして。野蛮人ジョンも正常な人間の代表というわけではなく、ここでおれが言った正常もそれぞれの社会背景という文脈の中でのもので、正常なんてものがそもそも存在しないのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2019年08月27日

 ちょっとあきれたり身につまされたりしつつ、苦笑しながら読めるディストピア小説です。壜詰めで育てられる赤ん坊、ボカノフスキー法で生み出される同じ顔をした労働者たち…… “ああ、すばらしい新世界!”

 ドタバタとパロディー満載のおちゃらけ小説のようでいて、実はしっかりと哲学している作品でした。幸福と...続きを読むは何か、人間らしさとは何か? 人間らしくあることと幸福とは相容れないものなのか? 人間らしさを犠牲にしてまで守らなければならない社会の秩序とは何なのか?

 膨大なシェイクスピア作品を諳んじる野蛮人ジョンと、本当は科学者になりたかった世界統制官閣下との言葉の応酬(第17章)には思わず唸らされました。話題は芸術、科学から神の存在にまで至り、著者の教養と思索の深さを感じます(これはドストエフスキーの大作“カラマーゾフの兄弟”の「大審問官」のパロディーであるとの由)。

 結末はちょっと残念でした。こういう結末にしなくちゃいけなかったのかなあ……

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Posted by ブクログ 2018年11月18日

不安のない理想?の社会を極限まで進めたらの「もしも」をありありと描いている。

随所で妙な気持ちになるのは、私が作中でいうところの古い世界の人間だからか。

また、解説に詳しくあるが、著者が生物学者の家系なのも物語の設定に深みのあることに関係していると思う。

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Posted by ブクログ 2018年11月12日

この本が1932年に書かれた本とは信じられない。今、新作としても通用するような内容だ。幸せとは何かを改めて深く考えさせられる。しかし、悩みがない世界というのはなかなか難しいようだ。この理想社会でも、ソーマという麻薬を使うことがストレスから逃れるために必要なのだから。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月16日

社会の上層部が利益のほぼ全てを享受するユートピアを支えるためには奴隷の労働力が必要である。
とはいえ、奴隷にも幸せはある。労働後のささやかな報酬という形で。

そのような光景を描く本書はディストピア小説として今に知られている。労働力を自前で生産している点で、オフショア、グローバル化という言葉で奴隷の...続きを読む労働力のアウトソーシングを正当化した現代の筆頭資本者らよりも自助的であり、責任の所在を明確にしているといえる。非人道的な社会を描きあげた作家であっても、資本主義が要求する過酷なコスト意識を甘く見ていたか、見逃していた観がある。
つまり、現代はすでにハクスリーのディストピアを実現している。一部ではそれを超えてすらいる。

ボス敵と語る。
このシチュエーションはどこからやってきたのか考えたことがある。回答は得ていない。本書には相当するシーンがあり、考え抜かれた著者の思想を与えられたボス敵は揺るぎない。これも、よく見かけるものだ。主役は言い返せないが、勝たなくてはいけないので殴って勝つ。これもよく見かける。
本書の主役サイドの言葉はすべて理性的な反論を受ける。主役サイドはついに自らの言葉を失い、過去の権威にすがるが、それに対するこたえも考え抜かれている。ボス敵もまた過去に深く悩み考えた末に、現実を受け入れたのだと強く理解させられる。『ミストボーン』シリーズは最終的には好みではなくなってしまったが、この構造を持っていたことは好ましく覚えている。
主役サイドは言葉を失うが、殴りかかることはない。少年漫画ではないからだ。否、相手は絶対的な悪ではないからだ。その社会においては秩序善ですらある。

本書はまた、夢想家や革命家()に辛辣な言葉を投げかけているようにも見える。ある秩序の中で、その恩恵を受けながら、その秩序を否定する活動を行う。「働いてる感を出してるヒモ」という印象が、わかちがたくその印象に重なる。主役サイドはそちら側に属している。
人生は生まれにおいてすでに公平ではないと悟らせる以上の役割を果たせぬまま、主役の一人は去る。
宗教が信者に施す道徳教育は、ディストピア社会が社会を維持するために施した道徳教育と相似形である。いずれも他者を傷つけることもあるという点でもまた類似している。それを背負わされた主役サイドの一人は苦悩のあまり死ぬという物語の結末を担う。物語としての出来はよくないが、教訓としてはまあわかる。

本書解説には「学問のふりをする科学」について語られている。学問のふりをしたなにかが旗を振った結果が奴隷労働のグローバル化であるのなら、そこを改めない限り、いかに手を尽くしても虚しかろう。

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読中、超人ロックの初期のエピソードが想起されてきて、その名の通り『新世界戦隊』で発火したのかなと読み返してみたら『ジュナンの子』と『ロンウォールの嵐』だった。
『ジュナンの子』には、出生時点で身体的に不利な特徴が出現しないようコントロールするようになった社会で不利な特徴が出現してしまった人々の苦難が語られていた。この構図に相似形を見たのであろう。
『ロンウォールの嵐』には、ナディアという女性が登場する。やりなおしがうまくいかず記憶を失ったロックの恋人だが、体制側のいうなりにロックを売る。ありように類似性を感じてしまったのだろうが、よくある人物像ではある。
本書には多幸感を与え多用すると死に至ることもあるソーマという薬物が登場する。『聖者の涙』には、そんな偶然の一致ではなさそうな影響が見受けられるような気がする。

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Posted by ブクログ 2023年02月08日

階級社会を作るために、受精卵から操作され、条件付けされた人間を作る社会。
ディストピアなんだけど、その階級の人はその階級で幸せになるようにされているためなのか、そんなに不幸せそうには思えなかった。
居留地から来たジョンが、ほんとに辛いと思ってしまった。自分の気持ちとこの社会が全くあってなさすぎる、ジ...続きを読むョンどうなってしまうんだろう。。。

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Posted by ブクログ 2022年10月06日

昭和初期の発表されたディストピア小説。現代でも全く違和感を感じさせない。
「一九八四年」(途中で挫折)と対比されるが、こちらは読みやすかった。
いろいろな風刺やオマージュが詰まっていることが解説を補足することでさらに見えてくる。

いろいろな翻訳本がでているので、また機会があれば読み比べてみたい。
...続きを読むそして、「一九八四年」をもう一度挑戦してみる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月24日

生まれる前からの英才教育によって、それぞれの階級に適した教育を施し、
幸せな世界を作り出している。
健康的でかつ幸せな世界だから、ある意味理想的なのだと思う。
ただ、なんだかもう人ではないかのように見えてしまう。
ある意味人造人間ばかりの世界。

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Posted by ブクログ 2020年12月30日

途中すこし難しかった表現はさらっと読み飛ばしてしまったけど今までに読んだ事がないジャンルの小説だなと思った。

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Posted by ブクログ 2020年12月23日

1984の後に読んだが、全体主義的でかなり似ている所がある。階級の保存というところが肝。ただシェイクスピアの引用が多いので、個人的には1984の方が好き。人物のフォーカスがよく変わるので読むのが大変。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年08月31日

優生思想による産み分け、思想教育、フリーセックスと麻薬(ソーマ)による快楽。人間の行きつく未来がここにはある?
ディストピアというテーマ自体は分かりやすいが、シェークスピアを始め様々な文学に精通していないと完全には楽しめない難解な小説。

科学技術により労働は必要無いものの、余暇を与えすぎると人間は...続きを読む不幸になるため無駄に7時間働かさせる。優れた知能を持つアルファ型人間だけにすると戦争を起こし大半が殺し合い不幸な結末になった。

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Posted by ブクログ 2018年12月29日

ブンガク
かかった時間 こまぎれなのでわからない。2時間ぐらい?

ホモ・デウスの冒頭を読んでいると、その筆者のとらえた現代の姿とともに、SF?のディストピア小説について言及がある。ちょっとそのあたりが気になって読んでみた。

受精〜出産(試験管で育てられるのでこの言い方が適切かどうかはともかく)...続きを読むの過程ですでに、遺伝子によって選別され、肉体や能力をコントロールされて生まれた、それぞれの階級の一卵性多生児たち。彼らは、その階級に見合った教育を受け、社会を動かすための仕事と、健康で老いのない肉体と、いつでも快楽に浸ることができる薬物とを与えられている。
また、この世界においては、1人が1人をずっと愛することや、孤独に浸ること、家族のつながり、自我を持つこと、等々は不必要なものとして、というか、むしろ忌むべきものとして位置づけられる。

その中で、上位の階級に生れながらも、出産までの過程からか、階級にそぐわない貧弱な肉体をもつ男。彼は、自分が生きる「現代の生活」とは異なる生活を送る「野蛮人」の生息区域へ赴き、そこで、「現代の生活」からはぐれた女性と出会う…

みたいな話。

この1932年に書かれた小説は、なんていうか、いろんなところで言われているように、まさに人間の行く先の予言であるなぁ。というか、人間は想像できないことはできない。逆に、想像できることにはなりうるので、ブンガクはやっぱり必要だと思った。想像できたなら、推進も抑制もそれぞれの価値観でやってゆける。こういった世界が見えていない人に、あるかもしれない姿を物語として見せる、という、なんというか、小説というカタチのもつ価値を再認識した。

というか、オルダスハクスリーすごすぎ。

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Posted by ブクログ 2022年09月10日

人間社会の本質を描こうとした作品と、私は読んだ。ありていに言えば、人間なんてこんなものとも読める。育つ環境により常識も変わってしまい、人のありようも当然変わる。

問題意思を持たないと、とんでもない世の中になってもそのことに気づきもしない。お気楽といえばお気楽で、それもまた是なりか。

作者の新版へ...続きを読むのへの前書きにもあるが、ラストに関しては、違った書き方もあると思う。個人的には違った結末のものを読んでみたい。

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