黒原敏行のレビュー一覧
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コーマック・マッカーシーの代表作である。
国境での麻薬取引が襲撃され麻薬と金(かね)の奪い合いが始まる。金を横取りするベトナム帰還兵、追いかけ回す密売集団、スタンガンのような特殊な武器を使う殺し屋の執拗で冷酷な追跡、それを捜査し追走する保安官・・・。
独特の表現で、今のことなのか過去のことなのか、状況なのか会話なのか、話ことばに鍵かっこを使わず、凄惨な場面が次々と起こる。めまぐるしい展開に説明がない、何がどうなっているのかわからず読者も振り落とされそうになる。
各章冒頭の随想のような文章で一息入れる。
欲望と殺戮と僅かの日常が混在し、全編を貫くスピード感と虚無感に満ちたテイストの風変わりな小説 -
Posted by ブクログ
破壊され尽くした世界を父と息子の二人が「火を伝える」という目的を持って南に向かって歩き続ける。
廃墟の中、辛うじて残った食糧や必需品を漁る緊張感、掠奪者や老人・子供に遭遇することが孤独を紛らわし物語の現実感を醸し出す。ボロボロの地図を頼りに雨や雪、疲労と飢え、病気と怪我に抗して南に向かう。海に辿り着いても状況は何も変わらない。
二人にとっては「防水シート」がいろいろな場面で何度も出てくる万能資材であり、「カート」が必要品を運んでくれる頼り甲斐のある同行者だ。
大状況がわからないということはこれ程不安を感じさせるものなのか。読者は一瞬も気を抜けず漠然とした期待を求めて読み続け、南にこそ可能性があ -
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ネタバレ社会の上層部が利益のほぼ全てを享受するユートピアを支えるためには奴隷の労働力が必要である。
とはいえ、奴隷にも幸せはある。労働後のささやかな報酬という形で。
そのような光景を描く本書はディストピア小説として今に知られている。労働力を自前で生産している点で、オフショア、グローバル化という言葉で奴隷の労働力のアウトソーシングを正当化した現代の筆頭資本者らよりも自助的であり、責任の所在を明確にしているといえる。非人道的な社会を描きあげた作家であっても、資本主義が要求する過酷なコスト意識を甘く見ていたか、見逃していた観がある。
つまり、現代はすでにハクスリーのディストピアを実現している。一部ではそれ -
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ゲームの分類で言えば「ロールプレイング」ではなく「シミュレーション」のような小説。
イギリス情報機関は、首相公認で特殊な能力を持ったアスペルガー症候群の若者を使い、本人に罪の意識のないまま、難攻不落のセキュリティにハッキングして、敵対する勢力を攻撃することを計画し、実行する。
敵対するのは“ロシア”の「頭領」(名前はでないが、今の大統領)、実名で北朝鮮のあの人、イランのあの人、名は伏せられているがアメリカ元大統領のあの人も登場する。
「民主主義国家は勝利し、正義は守られた!」
その為にこの子は一生損害を被った相手から怨まれることになるのでは……。
これは“拍手喝采”していいことなのか? -
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追悼。なので評価はプラス☆1つ。ってことは実際の評点は…。ちなみに積読状態にあったものをこの機会に、ということで。”ザ・ロード”がとても面白かったから、きっと本作もと思ってたけど、なんともかんとも。一風変わった道程を、ただひたすらに描くという点では、両作は似ているとも言えるんだけど、なぜかこちらは辛かった。ひたすらandで繋がれる地の文、著者の特徴として評価されているみたいだけど、個人的にはこの手法、好きじゃないです。読みにくさしか覚えないし、結果、読み流しになってしまう。ストーリーが面白ければまだしも、展開もいまひとつ。本作は三部作の第一部みたいだけど、続きは読まないです。
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Posted by ブクログ
灰が降る終末世界で父と息子が旅をする。略奪者の目を逃れながら、少しでも暖かい南を目指して。その道は悲惨というほかない。森の中に潜んで防水シートで雨を避けながら焚き火をする。臭い服と毛布にくるまって眠る。次の日にはボロ布を巻きつけた足でまた先へ進む。行く先々で転がっている死体。こんな救いのない場所で生きていくことに何の意味があるのか。銃があるならそれで自分と息子を撃てば終わりじゃないのか。読みながらそう思わずにはいられなかった。生きたいというのは親のエゴなのではないか、とも。それでも生きようとする気持ちの強度に圧倒される。他人を助けたいと思う息子の純粋さや、お互いと一緒にいたいと思う二人の気持ち