黒原敏行のレビュー一覧

  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    とんでもない作品に出逢ったもんだ。この作品を読み進めていくうちに、ある映画の雰囲気にとても似ていると感じた。それは数年前に観たアメリカ映画『ノーカントリー』であった。この映画を観た時も鮮烈な印象を持ったのだが、この作品も文体にキレがあるし、途轍もなく理不尽な暴力性が表現されていてしかも、それが詩的に感じられてしまう程だ。主人公の性格や殺人の動機がほどんど描かれていないので、カポーティの『冷血』よりも凄味がある。映画とおなじくこれからも読み直すであろうし、マッカーシーのほかの作品も読むことになるであろう。

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    2013年08月31日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    『チャイルド・オブ・ゴッド』。素晴らしかったわ。貧困層キチガイの日常。暴力、屍姦、女装、連続殺人…生まれ育った「土地」(自然)が己の世界そのもので、私たちが生きる「社会」という概念が端から無い。動物だけど、もっと心が(欲望に)弱い動物。

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    2013年07月12日
  • すべての美しい馬

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    「…世界の美しさに秘密が隠されていると思った。世界の心臓は恐ろしい犠牲を払って脈打っているのであり世界の苦悩と美は互いにさまざまな形で平衡を保ちながら関連し合っているのであって、このようなすさまじい欠陥のなかでさまざまな生き物の血が究極的には一輪の花の幻影を得るために流されるのかもしれなかった。」(459頁)


    マッカーシーの名を知ったのは映画『ノーカントリー(No Country for Old men)』を観てから。マシーンのように冷徹に人を殺していくシガー(ハビエル・バルデム)が印象的な映画だった。
    これ、原題をちゃんと見ないとタイトルの意味するところが全然伝わらない。原題は「古い

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    2012年07月26日
  • 越境

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    コーマック・マッカーシー著作初読。

    感情をほとんど排除した、乾いた、粛々と綴られる文体は、
    アメリカ南部、メキシコの荒涼とした風景の写像そのものだ。
    文体が光景を生み、光景が文体を生み出す。

    そこには広大で荒涼とした光景がある。
    馬の蹄の音、風、雨等の自然音のみが反響する。
    17歳の青年は馬に跨り、冷然と過酷な旅路を行く。
    大人への階段、運命の旅。

    まるでアッバス・キアロスタミの映画を観ているようだ。
    素晴らしい作品。

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    2012年07月05日
  • すべての美しい馬

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    野生馬を乗りこなしていく調教シーンの臨場感といったらもう。。メキシコの話でトルティーヤがやたらと出てくるのでこないだ食べてきました。

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    2011年06月16日
  • 越境

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    読後しばらくしてから、じわじわと話が心に沁みてきた。
    細部を咀嚼し切れていないので、あくまで感覚的なものだけれど、無性に胸が詰まる。
    この作品(「すべての美しい馬」もそうだけれど)における「メキシコ」とは、“どこか別の場所”ってことなんだろう。自分が生まれ育った世界(=アメリカ)ではない、異世界。
    希望も絶望も、夢も血も暴力も、何もかもが混沌とした場所。
    ビリーは運命に流されて三回の越境をしているように見えるけど、ただ流されているのではなくて、そこには彼の意思があっての選択だったのだと思う。

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    2011年01月04日
  • すべての美しい馬

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    少年二人が馬にのってメキシコへ行く、その旅の小説。

    俺の勝手な先入観もあると思うが、いかにも「アメリカ」な小説だと思った。解説にもあったがウエスタンの雰囲気を色濃く漂わせているのと、少年たちの旅が、旅を通しての成長が「スタンドバイミー」を思い出させたからかもしれない。
    この小説に盛り込まれている要素に、あまり目新しいものはないかもしれない。旅、旅の途上でのトラブル、新天地での生活、恋、挫折、急転直下の苦難、そして故郷への帰還。どれをとっても意外な展開などない。
    にもかかわらず、この小説が与えてくれる感動は一体何なのか。これほど多くのシーンが目に心に焼きついた小説も珍しい。

    現在の生活から飛

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    2010年04月28日
  • 黒い天使

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    ウールリッチ作品(ウィリアム・アイリッシュ名義含む)の中で、一番好きかも!!『幻の女』もいいですが・・・
    ひとつひとつのエピソードが、短編色を帯びていて、おもしろかったです。




    !!注!!以下ネタバレ

    最後はショッキングでした。
    ラッドとのやりとりがすごく好きだったので・・・

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    2009年10月04日
  • すべての美しい馬

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    1949年。祖父が死に、愛する牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは、自分の人生を選びとるために親友ロリンズと愛馬とともにメキシコへ越境した。この荒々しい土地でなら、牧場で馬とともに生きていくことができると考えたのだ。途中で年下の少年を一人、道連れに加え、三人は予想だにしない運命の渦中へと踏みこんでいく。至高の恋と苛烈な暴力を鮮烈に描き出す永遠のアメリカ青春小説の傑作。

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    2010年04月24日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    ネタバレ

    おすすめされた一冊。あまりにも文章がおしゃれすぎてびっくりした。もともとの文章もおしゃれだったんだろうか。内容は妻殺しの罪を被せられた男と、その親友たちが死刑執行までに、アリバイを証明してくれる唯一の女性を探し出すこと。まさか真犯人が親友で、しかも証明してくれるはずの女性が入院してたというオチが凄かった。証言はできないから自白に持って行かせようとした刑事さんの頭の良さも素晴らしい。ネタばらしした状態で読み返すと、確かに女を見つけた、の意味が大きく変わってくるのも上手いなあと思った。ただラストまでの溜めが結構長いので、ちょっと中盤を読み進めるのが大変だった。

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    2026年02月20日
  • 平原の町

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    国境三部作の完結編。『すべての美しい馬』のジョン・グレイディがふたたび登場し、『越境』のビリー・パーハムとともに物語を織り成す。前二作と比べると前半部分は退屈な感が否めないが、後半からぐっと物語は面白みを増す。
    本作品は純愛物語であり、マグダレーナに対するジョンの破滅的な愛の物語であり、エドゥアルドの歪んだ愛の物語でもある。理不尽かつ原初的な情感が漂うメキシコで過酷ながらも美しい情景を紡ぐ。エピローグのビリーの物語はやや意外(唐突感?)なものだが、アウトローの終わりを告げる物語として相応しいものかもしれない。荒々しくもロマンティックな時代の終焉に浸れる傑作の三部作であった。

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    2026年02月20日
  • ザ・フォックス

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    5に近い4。比較的薄い文庫本だったが、内容ぎっしりで読み応えがあったし、イギリスの作家だけあって、欧米の特殊部隊なんかの描写が詳しくて面白かった。

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    2026年02月17日
  • 越境

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    コーマック・マッカーシー氏の国境三部作の第二作目。
    アメリカ南西部とメキシコを舞台に大自然と人々との関係を描く。雄大な自然と過酷な運命。出来事全てを等価に扱い、残酷さも慈愛も綯い交ぜにしてある意味で無関心かつ突き放す文体はとても哲学的。
    主人公である16歳のビリー・パーハムは内的な衝動で行動し、ビリーを襲う不条理な運命はまるで聖書のヨブのよう。それなのにビリーの心理描写や感情変化はほぼ描かれる、メキシコで出会う人々の剥き出しの人間性との繋がりのなかで読者に伝えられる。
    16歳にしてハードボイルドでタフガイ。しかし美しい情景が目に浮かぶ文章は詩的。魅力的な作品。

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    2026年02月13日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    とても美しい小説だと聞いて、手に取った。
    ここのところ、アメリカ文学を読んでいる。
    「ジェームズ」「ハックルベリー・フィンの冒険」は南西部ミシシッピ河流域の小説、「エデンの東」は、カルフォルニアの小説、そしてこの小説はテキサスから国境を超えてメキシコへ渡る小説だった。アメリカは広いなあ。小説によって舞台になる土地の雰囲気が全然違うから脳内旅行が楽しい。
    テキサスでカウボーイをしていた十六歳の少年ジョン・グレイディがお祖父さんの遺産の牧場が売られてしまうことを知り、アメリカに自分の居場所がないと思い、愛馬に乗って、親友ロリンズと途中で出会った十四才くらいの少年プレヴィンスと共に国境を超え、メキシ

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    2026年02月01日
  • 八月の光

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    20世紀初頭のアメリカ南部を舞台にした小説。

    黒人奴隷などの社会的慣習と、キリスト教中心主義の否定など、強制的な近代化の波の中で翻弄されながら、価値観の転換と喪失感が漂う作品でした。

    正直いきなり物語から入ってしまったので、解説を先に読めば良かったと後悔。
    たぶん6割くらいしか理解出来ていないと思う。

    そもそも独特な独り言のような、イマジネーションが言語化されたような不思議な文章で、感覚的に読むような小説だったので、より舞台背景を先に頭に入れておく事をおすすめします。

    解説や訳者あとがきか素晴らしく、ネタバレが少しあるが、先に読んでも良かったかなと思いました。

    でもやっぱりドストエフ

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    2026年01月30日
  • すばらしい新世界

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     ジョージ・オーウェルの「1984年」と同じくらいの怖い世界での話でした。自然出産が禁じられて人工子宮により「人間を製造する」という表現だけで怖くなりました。さらに、胚の段階で知能別に5段階に階級を分けて、「ソーマ」という快楽物質を飲むことで不安から解放されると言われています。   
     「幸福が管理されると、人間の尊厳を失うんだよ」と作者はこのディストピア世界の危険性を伝えたかったのかもしれません。
     面白い小説でしたが、自分はこのような世界では生きられないと思っています。

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    2026年01月26日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    子供の情念と性悪説
    楽園のように食料に困らず外敵もいない無人島に子供だけが不時着する。最初は集会を定期的に開き家を作り火を炊き豚をかっていた。しかし小さな子から中くらいの子へと伝わり話が肥大化している"獣"の存在がみんなの恐怖心を煽る。ジャックとラルフはどちらが隊長になれるか競争している。その一環で、獣の正体を突き止めて群衆に勇気を見せつけようとする。
    夜闇の中冒険に出たせいで、人間の死体が正体であるのに気が付かず、化け物だと思い込んでしまう。
    そこでラルフが「獣の前では狩猟隊は槍を持った子供だ」というと、ジャックが決定的に腹を立てて決別してしまう。
    ここから狩猟隊VS文明

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    2026年01月25日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    オリエント急行殺人事件(2017映画版)、ABC殺人事件、アクロイド殺しに次ぐ、自分にとって4作目のポアロシリーズ作品として読破。張り巡らされた伏線、個性的なキャラクター造形、繊細な人間描写、驚きのトリック等々、安定の読み応えを感じられる作品だった。物語中盤までなかなか殺人が起きない点でミステリー小説らしくない展開だったが、その部分もしっかり面白く読むことができた。改めて、クリスティーの単なるミステリー小説家以上の文才、凄さを感じた。

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    2026年01月07日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    アメリカ教科書において『ごんぎつね』的定番教材ポジションと聞いて読み始めました。子供が凄惨な目にあうので、苦手な人は注意!

    ・これで…何を学べと!?
    ・海外文学故か、よく理解できない描写が頻出した
    ・年下の子達の存在がぞんざいになっていくのが驚き
    ・子ども特有の楽観性や考えのブレが良い
    ・後半の息つく暇もないスピード感、緊迫感が凄まじい

    主人公は喜んだり昂ぶったりすると逆立ちしたり前転したり殴る真似したりする変な癖があるんだけど、後半は特にやらなくなった。子どもらしさを失ったというコトなのかな…?
    最初は幼い子達の人数や名前を把握しようとするも、中盤は「おチビたち」とひとまとめに、後半はほ

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    2026年01月04日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    無人島に不時着した少年たちが、始めはそこでの開放的かつ楽園的な生活を楽しむが、次第に理性を失っていき、平和な暮らしが崩壊していくという物語。本書の最も興味深い点はやはり、子供の内なる悪が徐々に現れてくる中でのリアルな人間描写にある。少年たちは最初こそ文明的な生活を営もうとするが、与えられた仕事の不履行や、のろしグループと狩りグループの間の意見の相違により、島内に分断と対立が生まれる。未熟な子供たちによる無人島での社会運営の、残酷ながらも現実味のある表現に加え、ガキ大将的なジャックやいじめられっ子的なピギーをはじめとした、現実世界にいそうな登場人物の造形は、読者に深い納得と共感を与えるように思わ

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    2026年02月02日