黒原敏行のレビュー一覧
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「…世界の美しさに秘密が隠されていると思った。世界の心臓は恐ろしい犠牲を払って脈打っているのであり世界の苦悩と美は互いにさまざまな形で平衡を保ちながら関連し合っているのであって、このようなすさまじい欠陥のなかでさまざまな生き物の血が究極的には一輪の花の幻影を得るために流されるのかもしれなかった。」(459頁)
マッカーシーの名を知ったのは映画『ノーカントリー(No Country for Old men)』を観てから。マシーンのように冷徹に人を殺していくシガー(ハビエル・バルデム)が印象的な映画だった。
これ、原題をちゃんと見ないとタイトルの意味するところが全然伝わらない。原題は「古い -
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少年二人が馬にのってメキシコへ行く、その旅の小説。
俺の勝手な先入観もあると思うが、いかにも「アメリカ」な小説だと思った。解説にもあったがウエスタンの雰囲気を色濃く漂わせているのと、少年たちの旅が、旅を通しての成長が「スタンドバイミー」を思い出させたからかもしれない。
この小説に盛り込まれている要素に、あまり目新しいものはないかもしれない。旅、旅の途上でのトラブル、新天地での生活、恋、挫折、急転直下の苦難、そして故郷への帰還。どれをとっても意外な展開などない。
にもかかわらず、この小説が与えてくれる感動は一体何なのか。これほど多くのシーンが目に心に焼きついた小説も珍しい。
現在の生活から飛 -
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⚫︎感想
快適、娯楽、薬、不満がなく設計された世界は、人間が生きる上で本当に幸福といえるのか。
簡単に「快」が得られ、「不快」が回避される世界は、
苦しみ、愛、嫉妬、孤独がない
「不幸になる自由」は本当に不要なのか?
人が生きる上で、「揺れ」は必須である。
享受している幸福に気づくのは、
対極の不幸の存在を知っているからだ。
人間から “揺れ” を消し、
幸福だけ残って、
それは本当に人間なのか?
現代の生活に浸透している
ショート動画、快適アルゴリズム、消費、即時快楽…
それらは「すばらしい新世界」の1ページになり得る。
⚫︎本概要より
『一九八四年』と並ぶ、ディストピア小説の歴 -
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ポワロシリーズはスーシェの映画やドラマを映像で見たことはありますが、本で読むのは初めてでした!とても読みやすくて直ぐに読んでしまいました。
私は今エジプト旅行中です。
ナイル川をクルーズして過ごす最中に読む本はどれがいいだろうと考え、ナイルに死すを選びました。
訪れる場所や船内、クルーズを共にする仲間は物語の中とはもちろん違うけれど、
船内の揺れやナイル川を流れる川の音、朝と夜の涼しい風、真昼の天高い太陽、全てを感じながらの読書でした。
とても良い読書であり、経験になりました。
お話自体は最後がすこし、悲しくはありますが、無事に物語が完結したこと、幸せになれた人たちがいることに安心を覚えて、私 -
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難解だという評判もあり、実際読みやすい小説ではない。
しかし、未開のコンゴヘ出航する主人公を「闇の入り口を護」る「黒い毛糸を編む女たち」や、「警告の仕草で人差し指を立て」、「熱帯ではとにかく心を穏やかに保つこと」と言ってくる医者が見送る頃にはもう、「密林の闇」、「心臓の鼓動のように規則的でこもった響きの太鼓の音」、「頭に角をつけた男たち」に囲まれた魔境のジャングルクルーズに引き込まれてしまっている。
これから何が起こるのか、ぞくぞくしながら読み進めるも、肝心のクルツと何があり、何を聞かされたかははっきりしない。解説を読むに、あえて「満たされることに慣れきった感性に冷水を浴びせ」る構成の作品のよ -
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ネタバレ原題はThe Crossing。
横切ること。交わること。交差点。
これを「越境」としたことで、イメージが果てしなく広がる。
マッカーシーの描く世界はとても冷徹だ。
神の視点に近いかもしれない。
この世に物語はない。陽は昇り、大地を照らし、沈む。または陽は昇る。
その中をビリーは生きる。
なぜ、生きているのかはわからない。
でも生きる。
ビリーは3度、メキシコへ渡る。
1度目は狼を送り届けるため。
2度目は親を殺され盗まれた馬を取り戻すために。
3度目は唯一の肉親である弟を救うために。
1度目は心の赴くままに、
2度目は自ら課した義務のために、
3度目は孤独に押し出されて旅をする。