黒原敏行のレビュー一覧

  • 越境

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    読後しばらくしてから、じわじわと話が心に沁みてきた。
    細部を咀嚼し切れていないので、あくまで感覚的なものだけれど、無性に胸が詰まる。
    この作品(「すべての美しい馬」もそうだけれど)における「メキシコ」とは、“どこか別の場所”ってことなんだろう。自分が生まれ育った世界(=アメリカ)ではない、異世界。
    希望も絶望も、夢も血も暴力も、何もかもが混沌とした場所。
    ビリーは運命に流されて三回の越境をしているように見えるけど、ただ流されているのではなくて、そこには彼の意思があっての選択だったのだと思う。

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    2011年01月04日
  • すべての美しい馬

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    少年二人が馬にのってメキシコへ行く、その旅の小説。

    俺の勝手な先入観もあると思うが、いかにも「アメリカ」な小説だと思った。解説にもあったがウエスタンの雰囲気を色濃く漂わせているのと、少年たちの旅が、旅を通しての成長が「スタンドバイミー」を思い出させたからかもしれない。
    この小説に盛り込まれている要素に、あまり目新しいものはないかもしれない。旅、旅の途上でのトラブル、新天地での生活、恋、挫折、急転直下の苦難、そして故郷への帰還。どれをとっても意外な展開などない。
    にもかかわらず、この小説が与えてくれる感動は一体何なのか。これほど多くのシーンが目に心に焼きついた小説も珍しい。

    現在の生活から飛

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    2010年04月28日
  • 黒い天使

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    ウールリッチ作品(ウィリアム・アイリッシュ名義含む)の中で、一番好きかも!!『幻の女』もいいですが・・・
    ひとつひとつのエピソードが、短編色を帯びていて、おもしろかったです。




    !!注!!以下ネタバレ

    最後はショッキングでした。
    ラッドとのやりとりがすごく好きだったので・・・

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    2009年10月04日
  • すべての美しい馬

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    1949年。祖父が死に、愛する牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは、自分の人生を選びとるために親友ロリンズと愛馬とともにメキシコへ越境した。この荒々しい土地でなら、牧場で馬とともに生きていくことができると考えたのだ。途中で年下の少年を一人、道連れに加え、三人は予想だにしない運命の渦中へと踏みこんでいく。至高の恋と苛烈な暴力を鮮烈に描き出す永遠のアメリカ青春小説の傑作。

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    2010年04月24日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    とても美しい小説だと聞いて、手に取った。
    ここのところ、アメリカ文学を読んでいる。
    「ジェームズ」「ハックルベリー・フィンの冒険」は南西部ミシシッピ河流域の小説、「エデンの東」は、カルフォルニアの小説、そしてこの小説はテキサスから国境を超えてメキシコへ渡る小説だった。アメリカは広いなあ。小説によって舞台になる土地の雰囲気が全然違うから脳内旅行が楽しい。
    テキサスでカウボーイをしていた十六歳の少年ジョン・グレイディがお祖父さんの遺産の牧場が売られてしまうことを知り、アメリカに自分の居場所がないと思い、愛馬に乗って、親友ロリンズと途中で出会った十四才くらいの少年プレヴィンスと共に国境を超え、メキシ

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    2026年02月01日
  • 八月の光

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    20世紀初頭のアメリカ南部を舞台にした小説。

    黒人奴隷などの社会的慣習と、キリスト教中心主義の否定など、強制的な近代化の波の中で翻弄されながら、価値観の転換と喪失感が漂う作品でした。

    正直いきなり物語から入ってしまったので、解説を先に読めば良かったと後悔。
    たぶん6割くらいしか理解出来ていないと思う。

    そもそも独特な独り言のような、イマジネーションが言語化されたような不思議な文章で、感覚的に読むような小説だったので、より舞台背景を先に頭に入れておく事をおすすめします。

    解説や訳者あとがきか素晴らしく、ネタバレが少しあるが、先に読んでも良かったかなと思いました。

    でもやっぱりドストエフ

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    2026年01月30日
  • すばらしい新世界

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     ジョージ・オーウェルの「1984年」と同じくらいの怖い世界での話でした。自然出産が禁じられて人工子宮により「人間を製造する」という表現だけで怖くなりました。さらに、胚の段階で知能別に5段階に階級を分けて、「ソーマ」という快楽物質を飲むことで不安から解放されると言われています。   
     「幸福が管理されると、人間の尊厳を失うんだよ」と作者はこのディストピア世界の危険性を伝えたかったのかもしれません。
     面白い小説でしたが、自分はこのような世界では生きられないと思っています。

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    2026年01月26日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    子供の情念と性悪説
    楽園のように食料に困らず外敵もいない無人島に子供だけが不時着する。最初は集会を定期的に開き家を作り火を炊き豚をかっていた。しかし小さな子から中くらいの子へと伝わり話が肥大化している"獣"の存在がみんなの恐怖心を煽る。ジャックとラルフはどちらが隊長になれるか競争している。その一環で、獣の正体を突き止めて群衆に勇気を見せつけようとする。
    夜闇の中冒険に出たせいで、人間の死体が正体であるのに気が付かず、化け物だと思い込んでしまう。
    そこでラルフが「獣の前では狩猟隊は槍を持った子供だ」というと、ジャックが決定的に腹を立てて決別してしまう。
    ここから狩猟隊VS文明

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    2026年01月25日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    オリエント急行殺人事件(2017映画版)、ABC殺人事件、アクロイド殺しに次ぐ、自分にとって4作目のポアロシリーズ作品として読破。張り巡らされた伏線、個性的なキャラクター造形、繊細な人間描写、驚きのトリック等々、安定の読み応えを感じられる作品だった。物語中盤までなかなか殺人が起きない点でミステリー小説らしくない展開だったが、その部分もしっかり面白く読むことができた。改めて、クリスティーの単なるミステリー小説家以上の文才、凄さを感じた。

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    2026年01月07日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    アメリカ教科書において『ごんぎつね』的定番教材ポジションと聞いて読み始めました。子供が凄惨な目にあうので、苦手な人は注意!

    ・これで…何を学べと!?
    ・海外文学故か、よく理解できない描写が頻出した
    ・年下の子達の存在がぞんざいになっていくのが驚き
    ・子ども特有の楽観性や考えのブレが良い
    ・後半の息つく暇もないスピード感、緊迫感が凄まじい

    主人公は喜んだり昂ぶったりすると逆立ちしたり前転したり殴る真似したりする変な癖があるんだけど、後半は特にやらなくなった。子どもらしさを失ったというコトなのかな…?
    最初は幼い子達の人数や名前を把握しようとするも、中盤は「おチビたち」とひとまとめに、後半はほ

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    2026年01月04日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    無人島に不時着した少年たちが、始めはそこでの開放的かつ楽園的な生活を楽しむが、次第に理性を失っていき、平和な暮らしが崩壊していくという物語。本書の最も興味深い点はやはり、子供の内なる悪が徐々に現れてくる中でのリアルな人間描写にある。少年たちは最初こそ文明的な生活を営もうとするが、与えられた仕事の不履行や、のろしグループと狩りグループの間の意見の相違により、島内に分断と対立が生まれる。未熟な子供たちによる無人島での社会運営の、残酷ながらも現実味のある表現に加え、ガキ大将的なジャックやいじめられっ子的なピギーをはじめとした、現実世界にいそうな登場人物の造形は、読者に深い納得と共感を与えるように思わ

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    2025年12月22日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    不時着してすぐの頃は理性的な「人間」だったのに、段々と本能のまま生きる野生的な姿に退化していく様が恐ろしかったです。無人島でどれぐらいの時間が経過していっているのかが文章から全然分からなかったのですが、少年達の時間感覚が無いことを表しているのかなと思いました。
    敵と見なしたものを確認することなく一斉に襲いかかる様は、人間が本質的に持つ凶暴さの表れだと思いました。

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    2025年12月21日
  • ザ・ロード

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    なんだろう。
    物語としての抑揚は全くなく、ずっと1本の線をみているかのようで一気読み。
    特別な事も起こらないけど、ただ1日1日の生活を美しい言葉で表現していたり。
    何故か読み進めていた。
    家で読書をする時は、いつもYouTubeで雨と雷の音を流しながら読書をしていて、この本にはそれもぴったり。少年の名前も知らないけど、物語が続くならどうか、その考える力・想像力を無くさないで、無事に平穏な暮らしができていますように。他の作品の3部作と血と暴力も積読してあるので、読むのが楽しみ。

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    2025年11月29日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    ネタバレ

    主人公スコット・ヘンダースンは自宅に帰宅すると、妻の殺人容疑で逮捕されてしまい、死刑判決を受ける。彼は無実を証明するために、親友ジョン・ロンバードや恋人キャロル・リッチマンを頼りに、スコットが事件当時に会った女性の行方を、そして妻殺害の真犯人を探していく。刑事たちはスコットが当日に出会った人々や場所に赴くが、それらしき女性が一向に見当たらないうえに、話が進むにつれて彼の死刑執行が刻々と迫ることもあって、緊張感が増していく。最後の最後で、実は犯人が身近なところにいたという衝撃的な事実が判明する。

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    2025年11月29日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    クリスティの名作として名高い本作、人物描写の面白さと前半の人物紹介かなぁ〜と思わせながら伏線が張り巡らされていた感じ、とても良かった。途中、誰が誰だか追い付かなくなることもあったが、後半の方がそれぞれキャラが立って分かりやすくなった感もある。

    もしや?と思って裏切られて…の繰り返し、とても楽しめました

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    2025年11月25日
  • すばらしい新世界

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    すべてが「良い」とされ、誰もが「幸福」である状態を維持するために社会全体が作り込まれた世界の異常さを描いた小説。人々は階級ごとに分けられ、生まれた瞬間からその階級を幸福だと感じるよう教育される。家族という概念は下品なものとされ、人は人工的に生み出される。どの階級になるかも操作され、人口比率は厳密に保たれる。死はあっても老いはなく、性行為は恥じらいなく行う習慣とされる。悩みがあれば「ソーマ」という錠剤を飲めばよく、それで精神は安定する。だから表面的には誰も悩まず、社会は安定している。

    悩みや不安が排除された世界では、宗教や神話、芸術は必要ないものと扱われる。科学も統制の範囲から外れないよう制限

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    2025年11月25日
  • 通り過ぎゆく者

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    マッカーシーの遺作となった2作。翻訳作はほとんど読んだけれど、私は良い読者ではなかった。全ての現実は喪失の運命にあり、世界は非常さに満ちている。今のところ、これがマッカーシー作品を通じて私が得た理解の全てです。理解が及ばないながら、マッカーシーと同時代に生きてその作品を読むことができたのは幸運だった。

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    2025年11月23日
  • TOKYO REDUX 下山迷宮

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    ネタバレ

    下山事件,および,それに翻弄される人々を描く.
    下山事件をリアルタイムで描く第一部,その約20年後を描く第二部,そして昭和天皇の崩御が近い1988年を描く第三部.全く関係のない出来事を描くようで,実は少しずつ登場人物が共通しており,ドロドロとしたTokyoの暗部が40年の時を超えてつながる.

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    2025年11月20日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    序盤は抽象的で冗長な印象を受けるが、ラストは文字通り、駆け抜けるスピード感がすごい。性悪説という言葉から生まれたイメージが全速で追いかけてきているような感覚になった。

    「ぼくはあいつが怖い」「だからあいつのことがよくわかる。ある人間が怖いと、その人間が憎くなるけど、その人間のことを考えるのをやめられなくなるんだ。」
    という一文が印象的。
    聖書的な意味があると知れる訳者あとがきが大変ためになり、思った以上に様々な見方のできる本だった。

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    2025年10月13日
  • すばらしい新世界

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    常識や価値観にギャップがある者同士の関わりを俯瞰して見ると、ここまで狂気的に映るのだなと思った。その上で、バーナードやレーニナたちの住む世界は全てが非常に効率化されている一方、心のつながりがかなり希薄になっているのが興味深かった。読者である僕たちの住む世界もどんどん効率化されていっていて、その行く末を見ているかのようだった。どちらが正しいのか僕にはわからないけれど、心のつながりを無くした世界は少し寂しい気もする。

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    2025年09月29日