黒原敏行のレビュー一覧
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コーマック・マッカーシー氏のピュリッツァー賞受賞作品。まさにマッドマックスの世界。
おそらく核兵器が用いられたであろう終末戦争後の世界で、背景説明や情景描写のほぼない中、ただただ不条理な状況に置かれた父親と息子の旅路を描く。その道の先には絶望しかなく、しかし歩き続けるしかない矛盾。暗澹たる気持ちになる作品ではある。圧倒的暴力が描かれ、暴力や略奪や食人が暗に語られ、性悪説に基づくある種の残酷なリアリズムに達した描写はマッカーシー氏らしい。そうした過酷な環境下だからこそ父親が息子を守ろうとする気持ちや男として育てようとする生き様が際立つ。ラストは光明か暗闇かは定かではないが、少年から男にある巣立ちの決意といえよう。
決して楽しい物語ではないが優れた文学作品。 -
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ネタバレアガサクリスティの作品は11冊目。
今回も面白かった!
お盆休みに読むのに最高の作品だった。
エジプトやナイル川の景色や豪華な客船。
自分も見てきたみたいに世界観に入り込めて楽しかった。
外はあまりに暑すぎるので、
涼しい部屋に居ながら、国も時代も飛び越えて、
旅行気分になれる小説ってやっぱり最高だ。
それに加えて、ミステリーとロマンスも。
長編だが、クリスティお得意の人間関係の描写が面白く、すらすらと読めた。
今回は犯人の目星はついたが、
それでも丁寧な心理描写やエジプトという、
心踊る舞台に、退屈することなく読めた。
ロザリーは報われて良かった。
これまでの苦労分も、アラートン夫人に
いっぱい甘えて可愛がってもらえるといいな。
タイトルもかっこいいな、『ナイルに死す』か。
結末まで読むと、なるほど。
『ナイル殺人事件』より『ナイルに死す』がぐっとくるね。 -
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ネタバレ無人島という環境におけるサヴァイヴァル譚ではあるが、衣食住の確保や健康の維持といったテクニカルな部分は気持ち良いぐらい無視され、そこで暮らす少年たちが織り成す人間模様、関係性の移ろいに焦点のすべてを当てた物語となっている。
何かが起こりそうな不穏な予感を常にはらみつつ、辛うじて均衡を保ちながら日々は過ぎて往くが、徐々に高まる緊迫感がついに決壊の時に差し掛かる…古典の名作たるにふさわしい、かくも見事な悲劇的シークエンスが展開される。
“寓話性が高い”という訳者による解説が巻末にあったが、何某かの構造を見立ててそのように読むこともできるし、字義通り人間の原罪的な残酷さを子供たちを演者にして語らせていると解釈する向きもあるだろう。
結末の受け止め方すら一様でなく、この締め括りはポジティヴなのかネガティヴなのか? いずれにせよ、壊れたものはもう元通りには戻らない、ということだけは恐ろしいほどに理解できる、そんなラストシーン。 -
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⚫︎感想
快適、娯楽、薬、不満がなく設計された世界は、人間が生きる上で本当に幸福といえるのか。
簡単に「快」が得られ、「不快」が回避される世界は、
苦しみ、愛、嫉妬、孤独がない
「不幸になる自由」は本当に不要なのか?
人が生きる上で、「揺れ」は必須である。
享受している幸福に気づくのは、
対極の不幸の存在を知っているからだ。
人間から “揺れ” を消し、
幸福だけ残って、
それは本当に人間なのか?
現代の生活に浸透している
ショート動画、快適アルゴリズム、消費、即時快楽…
それらは「すばらしい新世界」の1ページになり得る。
⚫︎本概要より
『一九八四年』と並ぶ、ディストピア小説の歴史的名作
すべてを破壊した“九年戦争”の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた。あらゆる問題は消え、幸福が実現されたこの美しい世界で、孤独をかこっていた青年バーナードは、休暇で出かけた保護区で野人ジョンに出会う。 -
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ポワロシリーズはスーシェの映画やドラマを映像で見たことはありますが、本で読むのは初めてでした!とても読みやすくて直ぐに読んでしまいました。
私は今エジプト旅行中です。
ナイル川をクルーズして過ごす最中に読む本はどれがいいだろうと考え、ナイルに死すを選びました。
訪れる場所や船内、クルーズを共にする仲間は物語の中とはもちろん違うけれど、
船内の揺れやナイル川を流れる川の音、朝と夜の涼しい風、真昼の天高い太陽、全てを感じながらの読書でした。
とても良い読書であり、経験になりました。
お話自体は最後がすこし、悲しくはありますが、無事に物語が完結したこと、幸せになれた人たちがいることに安心を覚えて、私のナイル川クルーズとエジプト旅行もカーテンを引こうと思います。
一からポワロシリーズは読んでみようという気になりました! -
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難解だという評判もあり、実際読みやすい小説ではない。
しかし、未開のコンゴヘ出航する主人公を「闇の入り口を護」る「黒い毛糸を編む女たち」や、「警告の仕草で人差し指を立て」、「熱帯ではとにかく心を穏やかに保つこと」と言ってくる医者が見送る頃にはもう、「密林の闇」、「心臓の鼓動のように規則的でこもった響きの太鼓の音」、「頭に角をつけた男たち」に囲まれた魔境のジャングルクルーズに引き込まれてしまっている。
これから何が起こるのか、ぞくぞくしながら読み進めるも、肝心のクルツと何があり、何を聞かされたかははっきりしない。解説を読むに、あえて「満たされることに慣れきった感性に冷水を浴びせ」る構成の作品のようだが、もう少し考察の手がかりをくれてもいいじゃん!と思ってしまう。「地獄だ!地獄だ!」という名言があると前情報があったものの、本書の訳は「恐ろしい!恐ろしい!」だったのも肩透かし感(原文のニュアンスには「恐ろしい」のが近そうだけど)。
現代の刺激的なコンテンツにちょっと慣れすぎてしまってるのかもしれないな…。 -
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ネタバレ原題はThe Crossing。
横切ること。交わること。交差点。
これを「越境」としたことで、イメージが果てしなく広がる。
マッカーシーの描く世界はとても冷徹だ。
神の視点に近いかもしれない。
この世に物語はない。陽は昇り、大地を照らし、沈む。または陽は昇る。
その中をビリーは生きる。
なぜ、生きているのかはわからない。
でも生きる。
ビリーは3度、メキシコへ渡る。
1度目は狼を送り届けるため。
2度目は親を殺され盗まれた馬を取り戻すために。
3度目は唯一の肉親である弟を救うために。
1度目は心の赴くままに、
2度目は自ら課した義務のために、
3度目は孤独に押し出されて旅をする。
ビリーがメキシコへ渡るとおとぎ話のような雰囲気になる。
アメリカに戻ってくると、現実に戻り、小説自体も筋道を立て直す。
現実(アメリカ)と夢(メキシコ)を交錯させ、ビリーをその交わるところに置き、あとは傍観者のごとく描写する。
著者は決してビリーを導かない。
生きることの意味や希望はそこにはない。
でも、生きなければいけない世界がそこにはある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ行き過ぎた福祉政策で赤字国家に陥ったイギリスは、強い大英帝国復活のため、鉄の宰相マーガレットサッチャー擁する国家陣営で、対外的にはフォークランド紛争に勝利し、国内ではエネルギー政策転換の阻害要因となっていた炭鉱閉鎖を進める。炭鉱の労働者組合は当然反発し、30週間にも及ぶストを敢行するが、国家の弾圧は激しく資産凍結や警察部隊の大量導入、スト潰し労働者の投入などで、次第にそのストと無効化していく。
国家が強いことが国民の幸せに直結するのか?政府のやり口が正義で歯向かうことが悪なのか?
時あたかも、複数の軍事大国家の無謀な行動でいつ世界大戦が起こってもおかしくないような様相を呈しており、わが国でも鉄の女もどきが宰相となり高支持率を維持している。
さて俺たちは、体制を支持してはしごを外されたユダヤ人のような不幸を味わうのか、抑圧の果てに崩壊していった労働組合員たちのような先細りの絶望を味わうのか?
どっちにしても明るい未来はちょっと読めないかぁ