黒原敏行のレビュー一覧

  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    Xと云う患者 龍之介幻想

    膨大な芥川龍之介の作品を読み込み、交友関係を調べて書かれたのが本書です。
    龍之介を主人公にして、その作品を織り込みながら人間関係を物語るというちょっと離れ業的な本です。
    尚、驚くのが作者が英国人であること。
    翻訳も原著にあたったりしながらで大変だったろうなと思います。
    幻想譚としての出来は完ぺきではありませんが、龍之介が徐々に自殺という結末に近づいていく様子が良く描かれていると思います。
    大正と言う時代の雰囲気、関東大震災、文壇と今まで漠然としか知らなかったことを改めて知ることになりました。
    さて、デビット・ピース氏は次はどこにいくのでしょうか?ちょっと気になります。

    竹蔵

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    2026年09月05日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    コーマック・マッカーシー氏のクライムノベル。アカデミー賞受賞作品『ノーカントリー』の原作でもある。金を持ち逃げしたモスとそれを追うサイコパスのシガー。結末はノワール小説のようでもありながら終盤のベルの回想や選択は、マッカーシー作品全般に漂う理不尽な現実に対する人々の諦観と決心を感じさせる。
    全体を流れる不穏な雰囲気と暗澹たる圧、そしてアメリカ南部の乾いた空気の匂い。そうしたものを感じさせるマッカーシ氏の文章はさすが。

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    2026年08月21日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    クリスティのなかでは『そして誰もーー』と双璧をなすくらい面白かった。登場人物が多いけどみんな個性的で魅力に溢れていて自然と覚えられた。

    結局、遺産目当てのカップルがグルだというオチなんだけど、アル中の酒を捨てたり、盗癖の雇い主の尻拭いをしたり、その盗品が偽物だったり、別の人物がリネットを狙ったりと、曲者どもが好き勝手動くものだから非常に難解だった。
    ロザリーとティムがいい感じになったシーンにきゅん。
    コーネリアは医者の爺さんと結婚するし笑

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    2026年08月18日
  • ザ・ロード

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    コーマック・マッカーシー氏のピュリッツァー賞受賞作品。まさにマッドマックスの世界。
    おそらく核兵器が用いられたであろう終末戦争後の世界で、背景説明や情景描写のほぼない中、ただただ不条理な状況に置かれた父親と息子の旅路を描く。その道の先には絶望しかなく、しかし歩き続けるしかない矛盾。暗澹たる気持ちになる作品ではある。圧倒的暴力が描かれ、暴力や略奪や食人が暗に語られ、性悪説に基づくある種の残酷なリアリズムに達した描写はマッカーシー氏らしい。そうした過酷な環境下だからこそ父親が息子を守ろうとする気持ちや男として育てようとする生き様が際立つ。ラストは光明か暗闇かは定かではないが、少年から男にある巣立ちの決意といえよう。
    決して楽しい物語ではないが優れた文学作品。

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    2026年08月12日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    アガサクリスティの作品は11冊目。

    今回も面白かった!
    お盆休みに読むのに最高の作品だった。
    エジプトやナイル川の景色や豪華な客船。
    自分も見てきたみたいに世界観に入り込めて楽しかった。
    外はあまりに暑すぎるので、
    涼しい部屋に居ながら、国も時代も飛び越えて、
    旅行気分になれる小説ってやっぱり最高だ。
    それに加えて、ミステリーとロマンスも。

    長編だが、クリスティお得意の人間関係の描写が面白く、すらすらと読めた。
    今回は犯人の目星はついたが、
    それでも丁寧な心理描写やエジプトという、
    心踊る舞台に、退屈することなく読めた。

    ロザリーは報われて良かった。
    これまでの苦労分も、アラートン夫人に
    いっぱい甘えて可愛がってもらえるといいな。

    タイトルもかっこいいな、『ナイルに死す』か。
    結末まで読むと、なるほど。
    『ナイル殺人事件』より『ナイルに死す』がぐっとくるね。

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    2026年08月12日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    アガサクリスティー読んだことある!
    と言いたくて読みました笑

    カタカナの登場人物の名前を覚えるのは苦手ですがキャラクターの描写に時間をかけており、ありがたかった。
    人種、階級によるキャラクターイメージも違和感なく入ってきて覚えやすい。
    展開はゆっくりだが、キャラクターをじっくり描いてるため退屈感はなく、読み進められる。

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    2026年08月11日
  • すべての美しい馬

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    起こった出来事を淡々と描いて、心理描写的なものはほぼない。それなのに読後感の良い不思議な小説でした。主人公のジョン・グレイディはずっとクールだし、人との会話も余計なおしゃべりをしない。アメリカのカウボーイ的なものに対するイメージというのはわからないけど、異国に住む自分が読んでもなんだか男臭い渋さがあるなとは思う。ジョン・グレイディが恋した娘と別れる場面で「握った手から彼女の心中を推し量ろうとしたが何もわからなかった」という描写とか、わからないのが良い。わからないものはわからない。そういう描写が結構ある。

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    2026年07月14日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    無人島という環境におけるサヴァイヴァル譚ではあるが、衣食住の確保や健康の維持といったテクニカルな部分は気持ち良いぐらい無視され、そこで暮らす少年たちが織り成す人間模様、関係性の移ろいに焦点のすべてを当てた物語となっている。
    何かが起こりそうな不穏な予感を常にはらみつつ、辛うじて均衡を保ちながら日々は過ぎて往くが、徐々に高まる緊迫感がついに決壊の時に差し掛かる…古典の名作たるにふさわしい、かくも見事な悲劇的シークエンスが展開される。
    “寓話性が高い”という訳者による解説が巻末にあったが、何某かの構造を見立ててそのように読むこともできるし、字義通り人間の原罪的な残酷さを子供たちを演者にして語らせていると解釈する向きもあるだろう。
    結末の受け止め方すら一様でなく、この締め括りはポジティヴなのかネガティヴなのか? いずれにせよ、壊れたものはもう元通りには戻らない、ということだけは恐ろしいほどに理解できる、そんなラストシーン。

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    2026年06月24日
  • ザ・ロード

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    終末世界における巡礼として読み進めた。キリスト教信仰の宣伝?「たとえ明日、世界が滅びようとも、私は今日リンゴの木を植える」を想起した。神学を補助線にするのが有効と思われる。

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    2026年06月18日
  • 幻の女〔新訳版〕

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     私独自の人間分類器にかけると、この作品で嫌疑をかけられるスコット・ヘンダーソンって人も、『罪と罰』のラスコと同じタイプに入る。ほかには、『書写人バートルビー』の語り手「私」や、手塚治虫『ブッダ』のシッダールタもこの仲間。ヘンダーソンに関しては、善良さだけが取り柄で何の力もない人というか。囚われのお姫様のように、己の心の真実だけを握りしめて救出を待つのです。
     それはともかく、有名ミステリーをまたひとつ読めたので嬉しい。種明かしその一には素直にびっくりした。その二はどう受け止めていいのか考え中。

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    2026年05月30日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    やはり著者の人間の感情を手に取るような文章は鮮やかです。
    ストーリーも当然ながら、ミステリーの結末も「らしさ」が出てて面白かったです。

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    2026年05月28日
  • すばらしい新世界

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    ⚫︎感想
    快適、娯楽、薬、不満がなく設計された世界は、人間が生きる上で本当に幸福といえるのか。

    簡単に「快」が得られ、「不快」が回避される世界は、
    苦しみ、愛、嫉妬、孤独がない

    「不幸になる自由」は本当に不要なのか?
    人が生きる上で、「揺れ」は必須である。
    享受している幸福に気づくのは、
    対極の不幸の存在を知っているからだ。

    人間から “揺れ” を消し、
    幸福だけ残って、
    それは本当に人間なのか?

    現代の生活に浸透している
    ショート動画、快適アルゴリズム、消費、即時快楽…
    それらは「すばらしい新世界」の1ページになり得る。

    ⚫︎本概要より

    『一九八四年』と並ぶ、ディストピア小説の歴史的名作

    すべてを破壊した“九年戦争”の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた。あらゆる問題は消え、幸福が実現されたこの美しい世界で、孤独をかこっていた青年バーナードは、休暇で出かけた保護区で野人ジョンに出会う。

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    2026年05月26日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    こんなに全編を通して暗くて徹底的に一切の希望がない小説は初めて。ただ暗いという訳ではない。暗いけどジメジメとはしてなくて、同情を誘うような湿り気もない。
    父と子が荒廃した地球を歩いている、それだけなのにグッと引き込まれた。
    お父さん、息子に対して絶対に怒らず、何か問題が起きても必ず自分のせいだ自分の落ち度だと言い、息子のせいでも息子のせいにはせず、声を荒げてしまえばすぐに謝る。めちゃくちゃ大変な状況なのに、凄すぎる。息子がたとえ大切な銃をうっかり置いて来てしまっても、絶対に責めない。本当にすごい。

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    2026年05月24日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    長編だが、先が気になってすぐに読んでしまった。

    最後まで読んでから第一部を読み直すと、いろいろ興味深い。

    いかにもという人が犯人ではないとは思っていたが、こういう結末とは。

    映画も見てみたい。

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    2026年05月15日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    ポワロシリーズはスーシェの映画やドラマを映像で見たことはありますが、本で読むのは初めてでした!とても読みやすくて直ぐに読んでしまいました。
    私は今エジプト旅行中です。
    ナイル川をクルーズして過ごす最中に読む本はどれがいいだろうと考え、ナイルに死すを選びました。
    訪れる場所や船内、クルーズを共にする仲間は物語の中とはもちろん違うけれど、
    船内の揺れやナイル川を流れる川の音、朝と夜の涼しい風、真昼の天高い太陽、全てを感じながらの読書でした。
    とても良い読書であり、経験になりました。
    お話自体は最後がすこし、悲しくはありますが、無事に物語が完結したこと、幸せになれた人たちがいることに安心を覚えて、私のナイル川クルーズとエジプト旅行もカーテンを引こうと思います。
    一からポワロシリーズは読んでみようという気になりました!

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    2026年05月07日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    旧来の理念と秩序が暴力によって崩壊してゆく様が恐ろしい。まるで国際法が大国の軍事力で蹂躙されている現代のようだ。

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    2026年04月21日
  • ザ・ロード

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    「ぼくが死んだらどうする?
    パパも死にたくなるだろうな。
    一緒にいられるように?
    そう、一緒にいられるように。
    わかった。」
    心にズシンと響いた。
    読んでいると心に染み入るような感じを受けた。

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    2026年04月22日
  • 抱擁

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    書評記事をきっかけに読む。
    四世代にわたる物語が詩的な文章で描かれてる。
    はっきりとしたストーリーラインがあるわけではないが、読ませる文章。

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    2026年04月10日
  • 抱擁

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    神秘的な何かが立ち現れる稀有な瞬間、言葉にできないような福音を表現した詩的な文章。戦争などを背景にして4代に渡って続いていく物語。

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    2026年04月08日
  • 闇の奥

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    難解だという評判もあり、実際読みやすい小説ではない。
    しかし、未開のコンゴヘ出航する主人公を「闇の入り口を護」る「黒い毛糸を編む女たち」や、「警告の仕草で人差し指を立て」、「熱帯ではとにかく心を穏やかに保つこと」と言ってくる医者が見送る頃にはもう、「密林の闇」、「心臓の鼓動のように規則的でこもった響きの太鼓の音」、「頭に角をつけた男たち」に囲まれた魔境のジャングルクルーズに引き込まれてしまっている。
    これから何が起こるのか、ぞくぞくしながら読み進めるも、肝心のクルツと何があり、何を聞かされたかははっきりしない。解説を読むに、あえて「満たされることに慣れきった感性に冷水を浴びせ」る構成の作品のようだが、もう少し考察の手がかりをくれてもいいじゃん!と思ってしまう。「地獄だ!地獄だ!」という名言があると前情報があったものの、本書の訳は「恐ろしい!恐ろしい!」だったのも肩透かし感(原文のニュアンスには「恐ろしい」のが近そうだけど)。
    現代の刺激的なコンテンツにちょっと慣れすぎてしまってるのかもしれないな…。

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    2026年03月28日