黒原敏行のレビュー一覧

  • 幻の女〔新訳版〕

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     私独自の人間分類器にかけると、この作品で嫌疑をかけられるスコット・ヘンダーソンって人も、『罪と罰』のラスコと同じタイプに入る。ほかには、『書写人バートルビー』の語り手「私」や、手塚治虫『ブッダ』のシッダールタもこの仲間。ヘンダーソンに関しては、善良さだけが取り柄で何の力もない人というか。囚われのお姫様のように、己の心の真実だけを握りしめて救出を待つのです。
     それはともかく、有名ミステリーをまたひとつ読めたので嬉しい。種明かしその一には素直にびっくりした。その二はどう受け止めていいのか考え中。

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    2026年05月30日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    やはり著者の人間の感情を手に取るような文章は鮮やかです。
    ストーリーも当然ながら、ミステリーの結末も「らしさ」が出てて面白かったです。

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    2026年05月28日
  • すばらしい新世界

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    ⚫︎感想
    快適、娯楽、薬、不満がなく設計された世界は、人間が生きる上で本当に幸福といえるのか。

    簡単に「快」が得られ、「不快」が回避される世界は、
    苦しみ、愛、嫉妬、孤独がない

    「不幸になる自由」は本当に不要なのか?
    人が生きる上で、「揺れ」は必須である。
    享受している幸福に気づくのは、
    対極の不幸の存在を知っているからだ。

    人間から “揺れ” を消し、
    幸福だけ残って、
    それは本当に人間なのか?

    現代の生活に浸透している
    ショート動画、快適アルゴリズム、消費、即時快楽…
    それらは「すばらしい新世界」の1ページになり得る。

    ⚫︎本概要より

    『一九八四年』と並ぶ、ディストピア小説の歴

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    2026年05月26日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    こんなに全編を通して暗くて徹底的に一切の希望がない小説は初めて。ただ暗いという訳ではない。暗いけどジメジメとはしてなくて、同情を誘うような湿り気もない。
    父と子が荒廃した地球を歩いている、それだけなのにグッと引き込まれた。
    お父さん、息子に対して絶対に怒らず、何か問題が起きても必ず自分のせいだ自分の落ち度だと言い、息子のせいでも息子のせいにはせず、声を荒げてしまえばすぐに謝る。めちゃくちゃ大変な状況なのに、凄すぎる。息子がたとえ大切な銃をうっかり置いて来てしまっても、絶対に責めない。本当にすごい。

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    2026年05月24日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    長編だが、先が気になってすぐに読んでしまった。

    最後まで読んでから第一部を読み直すと、いろいろ興味深い。

    いかにもという人が犯人ではないとは思っていたが、こういう結末とは。

    映画も見てみたい。

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    2026年05月15日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    ポワロシリーズはスーシェの映画やドラマを映像で見たことはありますが、本で読むのは初めてでした!とても読みやすくて直ぐに読んでしまいました。
    私は今エジプト旅行中です。
    ナイル川をクルーズして過ごす最中に読む本はどれがいいだろうと考え、ナイルに死すを選びました。
    訪れる場所や船内、クルーズを共にする仲間は物語の中とはもちろん違うけれど、
    船内の揺れやナイル川を流れる川の音、朝と夜の涼しい風、真昼の天高い太陽、全てを感じながらの読書でした。
    とても良い読書であり、経験になりました。
    お話自体は最後がすこし、悲しくはありますが、無事に物語が完結したこと、幸せになれた人たちがいることに安心を覚えて、私

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    2026年05月07日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    旧来の理念と秩序が暴力によって崩壊してゆく様が恐ろしい。まるで国際法が大国の軍事力で蹂躙されている現代のようだ。

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    2026年04月21日
  • ザ・ロード

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    「ぼくが死んだらどうする?
    パパも死にたくなるだろうな。
    一緒にいられるように?
    そう、一緒にいられるように。
    わかった。」
    心にズシンと響いた。
    読んでいると心に染み入るような感じを受けた。

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    2026年04月22日
  • 抱擁

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    書評記事をきっかけに読む。
    四世代にわたる物語が詩的な文章で描かれてる。
    はっきりとしたストーリーラインがあるわけではないが、読ませる文章。

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    2026年04月10日
  • 抱擁

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    神秘的な何かが立ち現れる稀有な瞬間、言葉にできないような福音を表現した詩的な文章。戦争などを背景にして4代に渡って続いていく物語。

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    2026年04月08日
  • 闇の奥

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    難解だという評判もあり、実際読みやすい小説ではない。
    しかし、未開のコンゴヘ出航する主人公を「闇の入り口を護」る「黒い毛糸を編む女たち」や、「警告の仕草で人差し指を立て」、「熱帯ではとにかく心を穏やかに保つこと」と言ってくる医者が見送る頃にはもう、「密林の闇」、「心臓の鼓動のように規則的でこもった響きの太鼓の音」、「頭に角をつけた男たち」に囲まれた魔境のジャングルクルーズに引き込まれてしまっている。
    これから何が起こるのか、ぞくぞくしながら読み進めるも、肝心のクルツと何があり、何を聞かされたかははっきりしない。解説を読むに、あえて「満たされることに慣れきった感性に冷水を浴びせ」る構成の作品のよ

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    2026年03月28日
  • 越境

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    ネタバレ

    原題はThe Crossing。
    横切ること。交わること。交差点。

    これを「越境」としたことで、イメージが果てしなく広がる。

    マッカーシーの描く世界はとても冷徹だ。
    神の視点に近いかもしれない。
    この世に物語はない。陽は昇り、大地を照らし、沈む。または陽は昇る。
    その中をビリーは生きる。
    なぜ、生きているのかはわからない。
    でも生きる。

    ビリーは3度、メキシコへ渡る。
    1度目は狼を送り届けるため。
    2度目は親を殺され盗まれた馬を取り戻すために。
    3度目は唯一の肉親である弟を救うために。

    1度目は心の赴くままに、
    2度目は自ら課した義務のために、
    3度目は孤独に押し出されて旅をする。

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    2026年03月21日
  • GB84 下

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    ネタバレ

    行き過ぎた福祉政策で赤字国家に陥ったイギリスは、強い大英帝国復活のため、鉄の宰相マーガレットサッチャー擁する国家陣営で、対外的にはフォークランド紛争に勝利し、国内ではエネルギー政策転換の阻害要因となっていた炭鉱閉鎖を進める。炭鉱の労働者組合は当然反発し、30週間にも及ぶストを敢行するが、国家の弾圧は激しく資産凍結や警察部隊の大量導入、スト潰し労働者の投入などで、次第にそのストと無効化していく。

    国家が強いことが国民の幸せに直結するのか?政府のやり口が正義で歯向かうことが悪なのか?
    時あたかも、複数の軍事大国家の無謀な行動でいつ世界大戦が起こってもおかしくないような様相を呈しており、わが国でも

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    2026年03月20日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    ネタバレ

    おすすめされた一冊。あまりにも文章がおしゃれすぎてびっくりした。もともとの文章もおしゃれだったんだろうか。内容は妻殺しの罪を被せられた男と、その親友たちが死刑執行までに、アリバイを証明してくれる唯一の女性を探し出すこと。まさか真犯人が親友で、しかも証明してくれるはずの女性が入院してたというオチが凄かった。証言はできないから自白に持って行かせようとした刑事さんの頭の良さも素晴らしい。ネタばらしした状態で読み返すと、確かに女を見つけた、の意味が大きく変わってくるのも上手いなあと思った。ただラストまでの溜めが結構長いので、ちょっと中盤を読み進めるのが大変だった。

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    2026年02月20日
  • 平原の町

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    国境三部作の完結編。『すべての美しい馬』のジョン・グレイディがふたたび登場し、『越境』のビリー・パーハムとともに物語を織り成す。前二作と比べると前半部分は退屈な感が否めないが、後半からぐっと物語は面白みを増す。
    本作品は純愛物語であり、マグダレーナに対するジョンの破滅的な愛の物語であり、エドゥアルドの歪んだ愛の物語でもある。理不尽かつ原初的な情感が漂うメキシコで過酷ながらも美しい情景を紡ぐ。エピローグのビリーの物語はやや意外(唐突感?)なものだが、アウトローの終わりを告げる物語として相応しいものかもしれない。荒々しくもロマンティックな時代の終焉に浸れる傑作の三部作であった。

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    2026年02月20日
  • ザ・フォックス

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    5に近い4。比較的薄い文庫本だったが、内容ぎっしりで読み応えがあったし、イギリスの作家だけあって、欧米の特殊部隊なんかの描写が詳しくて面白かった。

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    2026年02月17日
  • 越境

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    コーマック・マッカーシー氏の国境三部作の第二作目。
    アメリカ南西部とメキシコを舞台に大自然と人々との関係を描く。雄大な自然と過酷な運命。出来事全てを等価に扱い、残酷さも慈愛も綯い交ぜにしてある意味で無関心かつ突き放す文体はとても哲学的。
    主人公である16歳のビリー・パーハムは内的な衝動で行動し、ビリーを襲う不条理な運命はまるで聖書のヨブのよう。それなのにビリーの心理描写や感情変化はほぼ描かれる、メキシコで出会う人々の剥き出しの人間性との繋がりのなかで読者に伝えられる。
    16歳にしてハードボイルドでタフガイ。しかし美しい情景が目に浮かぶ文章は詩的。魅力的な作品。

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    2026年02月13日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    とても美しい小説だと聞いて、手に取った。
    ここのところ、アメリカ文学を読んでいる。
    「ジェームズ」「ハックルベリー・フィンの冒険」は南西部ミシシッピ河流域の小説、「エデンの東」は、カルフォルニアの小説、そしてこの小説はテキサスから国境を超えてメキシコへ渡る小説だった。アメリカは広いなあ。小説によって舞台になる土地の雰囲気が全然違うから脳内旅行が楽しい。
    テキサスでカウボーイをしていた十六歳の少年ジョン・グレイディがお祖父さんの遺産の牧場が売られてしまうことを知り、アメリカに自分の居場所がないと思い、愛馬に乗って、親友ロリンズと途中で出会った十四才くらいの少年プレヴィンスと共に国境を超え、メキシ

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    2026年02月01日
  • 八月の光

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    20世紀初頭のアメリカ南部を舞台にした小説。

    黒人奴隷などの社会的慣習と、キリスト教中心主義の否定など、強制的な近代化の波の中で翻弄されながら、価値観の転換と喪失感が漂う作品でした。

    正直いきなり物語から入ってしまったので、解説を先に読めば良かったと後悔。
    たぶん6割くらいしか理解出来ていないと思う。

    そもそも独特な独り言のような、イマジネーションが言語化されたような不思議な文章で、感覚的に読むような小説だったので、より舞台背景を先に頭に入れておく事をおすすめします。

    解説や訳者あとがきか素晴らしく、ネタバレが少しあるが、先に読んでも良かったかなと思いました。

    でもやっぱりドストエフ

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    2026年01月30日
  • すばらしい新世界

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     ジョージ・オーウェルの「1984年」と同じくらいの怖い世界での話でした。自然出産が禁じられて人工子宮により「人間を製造する」という表現だけで怖くなりました。さらに、胚の段階で知能別に5段階に階級を分けて、「ソーマ」という快楽物質を飲むことで不安から解放されると言われています。   
     「幸福が管理されると、人間の尊厳を失うんだよ」と作者はこのディストピア世界の危険性を伝えたかったのかもしれません。
     面白い小説でしたが、自分はこのような世界では生きられないと思っています。

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    2026年01月26日