黒原敏行のレビュー一覧

  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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     荒野に放置された弾痕の残る車輛と複数の死体、多額の現金と麻薬を見つけたら、そのまま放置して警察に連絡するに限る。現金を持ち帰り、再度現場を訪れるようなことをすると、地の果てまで追われることになる。

     冒頭から物語に引き込まれ、ストーリーや登場人物の行動、セリフに引っ張られ、終盤まで連れていかれる。章立て冒頭の保安官のモノローグの印象が残っているうちに、主人公と追手が繰り広げる逃走劇が脳内に入り込んでくる。ストーリーが脳内に入ってくるのは、著者の作品『ロード』でも同じだ。その文体がそうさせるのだと思う。

     主要な登場人物はすべて戦争経験者だ。オールド・メンの条件が戦争経験のように思うが、ア

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    2023年10月31日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    一言で、血なまぐさい。
    しかし、人間の本性というか、根っこというか、生物の一種としての存在としてというか、そういう部分では、もしかしたらこういう感覚や行為はあるのかもしれない。
    読み進むのに楽ではないところもあるし、この本を読んでいる間はずっと鼻の奥に血の匂いがあるような感じまでしたが、人間とはどんな生き物なのかということをマザマザと見せつけてくるような感じという点では、すごい存在感がある一作。
    読む人は選ぶのかもしれないけれど。

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    2023年10月28日
  • ザ・ロード

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    ただ歩くだけでどんだけ引っ張るんだ?という前半だけど、徐々にこの世界のありようが明らかになってきたりそれなりの物語の起伏もあってまあまあ楽しめる。

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    2023年10月15日
  • 越境

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    舞台は1940年代のアメリカ・メキシコ国境地帯。主人公の少年は、三度び国境を越え、馬に乗ってメキシコの地を延々と放浪する。
    一度目は捉えた雌狼を生まれた地に送り届けに、二度目は盗まれた馬を取り戻すために、三度目は生き別れた弟を探しに。
    主人公は孤独な旅を逞しく続けるが、その過程であらゆるものを抗いがたい暴力によって喪失していく。
    壮大で厳格な喪失の物語である。

    文庫本で600ページを超える大作だが、最初の1、2ページを読んだところで、あまりの読みにくさに挫折しそうになった。
    独特な言葉遣いと長いセンテンス、詩的な情景描写、短い言葉を交わすだけのダイアログ、場面の切り替わりのわかりづらさ。

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    2023年09月23日
  • ザ・ロード

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    動植物は死に絶え、人が人を喰らう終末世界で続けられる父子の「火を運ぶ」旅。善とは何か、生きるとはどういうことか…。全く光の見えない絶望的な情況の中で「破滅後」しか知らない少年の純粋さが胸を打った。

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    2023年08月23日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    血と暴力の国含めて3回目。やっぱり面白い。けど、これに関しては映画が素晴らしすぎる(映画も3回見てる)。

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    2023年08月09日
  • すばらしい新世界

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    作中では時々、詳細な科学用語・物質名が引き合いに出され科学的にかなり発展していることが伝わり、その世界で宗教、文学、歴史が禁忌、禁書となっていることで「現在の我々読者の常識は非効率的な世界である」という雰囲気が出ている。

    しかし、性については野蛮人そのもので、誰とでも性交をするのが良しとされ、1人の人を愛する感覚がない彼らは果たして文明人と言えるのだろうか。

    また、異様なまでにシェイクスピアが引用されており、SFを描くにしては過剰な著者の文学的趣向が滲み出てしまっているように思えた。

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    2023年07月27日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    ネタバレ

    物語の大半の舞台となっている、生きものを寄せつけず死体をすぐにからからに干からびさせてしまうアメリカ西部の岩だらけの原野のようにゴツゴツとした文体は、最初は読者を拒絶するようでもあるが、読み進めるうちになぜかペースに乗せられてしまう。何しろ長いので、読んでいるうちに慣れてしまう。むしろハマってしまう。
    当たり前のように虐殺シーンが続くが、それが当然の時代だったというわけでもなく、この時代にあっても特に荒くれ者の(実在した)頭皮剥ぎ集団に身を置くことになった少年の物語。物語の終わりには少年ではなくなるので、ある意味ではビルドゥングスロマンに相当するのかなと思った。
    感想を書くのは難しいが、何とな

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    2023年07月26日
  • ザ・ロード

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    直視できない現実の辛さを見せないように肩代わりする父親。しかし、泣くしかできなかった子供が現実をしっかり受け止め出し、ついには父親を支えるようになり、父親の遺した言葉を胸に、この終末世界の中を生き抜いていく──。

    あまりにも辛い、けれど詩的な表現の美しさに魅了されるSF小説の傑作。子育てをしている今だからこそ響く言葉が多く、最後は辛過ぎて泣きそうになってしまいました。

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    2023年07月20日
  • ザ・ロード

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    涙ちょちょぎれるぜ…親父
    俺の親父といったら俺の最低でも6倍以上金貰ってるくせに青カビ生えたレモンサワーを出すような安い焼肉屋(飲み放題60分500円)に連れていきその後俺は知り合いのとこ行くからと二軒目の代金出したくなかったのか俺を置いてどこかに行っちまいやがった

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    2023年07月18日
  • すばらしい新世界

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    明るいディストピアな未来を舞台とした小説。ファスト消費、経済性、快楽主義を第一とする全体主義世界。1930年代に書かれたにも関わらず、ある意味現代社会を描いている様にも思える。著者による新版前書、解説なども必読。

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    2023年07月02日
  • ザ・ロード

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    『信号弾はしゅーっと長く音を立てながら暗黒の中へ弧を描き海面よりも上のどこかで煙混じりの光にはじけてしばらく宙に懸かった。マグネシウムの熱い巻きひげが数条ゆっくりと闇の中をくだり渚の波が仄白く光って徐々に消えた。彼は少年のあおむいた顔を見おろした。
     あまり遠くからだと見えないよね、パパ。
     誰に?
     誰でもいいけど。
     そうだな。遠くからは無理だ。
     こっちの居場所を教えたくてもね。
     善い者の人たちにかい?
     うん。ていうかとにかく居場所を教えたい人に。
     たとえば誰?
     わかんないけど。
     神さまとか?
     うん。そういうような人かな。』

    目の前の本を読みながらどうしても他の本のことが頭

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    2023年07月01日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

    購入済み

    ミスなの?

    おもしろいけど、改行だらけかと思えば、最後の方は、改行もなければ「、」も一切ない。読みづらいったらありゃしない。わたしだけ?

    #アツい

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    2023年06月11日
  • ザ・ロード

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    世紀末、自然災害か核戦争か、草木さえ死に絶えた希望のない世界で、生きるために南の海を目指して歩く親子。
    読み切るにはなかなかの精神力を要します。
    いま自分が住んでいる世界と真逆すぎて、ファンタジーのように見える物語ですが、もしかしたら、人はみんなあんなふうにただ生きるために生きているのかもしれません。
    生きるとはどういうことか、当たり前にあるこの世界は何と素敵なものか、色々と考えさせられる作品でした。
    散文的で静謐な文体も読みやすく、美しかったです。
    ぜひ。

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    2023年06月02日
  • ザ・ロード

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    どこまでも続く灰色の世界。
    常に死を近くに感じながらも、南は向かう。明確な目的地はなく、ただ暖かいからという理由で。
    坦々とした文体で描かれる、容赦ない自然、無惨な光景。
    希望とをもつとか未来を見るとかいった言葉がただ上滑りするだけのような状況下、短く交わされる父と子の会話が、読み進めるほどに心に染みてきた。
    純粋でまっすぐな視線をもつ少年の、存在そのものが希望か。

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    2023年05月22日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    『夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。』

    一文目にくる文章に惹き込まれました。
    古典ミステリーの随所に見られる詩的な表現や幻の女の手掛かりに手が届きそうで届かない緊張感に一気に読み終えました。

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    2023年05月08日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    喪服のランデヴーが面白かったので、二作目。喪服〜が犯人が初めからわかってる系の作品であるのに対して、こちらはそれとは真逆のタイプ。どちらもそれぞれ面白い。喪服〜は主人公の復讐を軸にして、一人また一人と殺されていく序盤から終盤までの流れはある意味読者には予想がつく範囲で、終わらせ方こそが要だったが、こちらは犯人は誰なのか?女は誰なのか?そもそも存在するのか??と複数の謎を同時進行で解き明かしていくスリリングな展開が面白い。

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    2023年05月04日
  • ザ・ロード

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    「森の夜の闇と寒さの中で目を覚ますと彼はいつも手を伸ばして傍らで眠る子供に触れた」最初の一行が始まる。

    おはよう、パパ
    パパはここにいるぞ。
    うん。

    繰り返し描写される周りの情景、それは「寒さ」と「飢え」と「怯え」。
    理由の見えない状況のなか、南へ向かう父と子の会話は、まるで詩の一遍のような響き。

    本当であれば「暖かい家と家族」に囲まれながら将来を夢見るはずの子供が、人を食らう人に怯え、生きるために人を殺めることを恐れ、死を身近に感じたまま、父と話す。

    もう死ぬと思っているだろう
    わかんない
    死にはしないよ
    わかった
    なぜもう死ぬと思うんだ?
    わかんない
    そのわかんないというのはよせ

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    2023年04月26日
  • すばらしい新世界

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    瓶詰めの科学的に調整を施す人間培養、その調整によって格付けされた人間社会、あらゆる快楽を叶えることで欲望や不満、絶望を排除したユートピア。人間の最大の欲求は信頼関係のある人付き合い、と定義する人がいるが、それさえ叶えることのできるユートピアは果たしてディストピアなのか。かなり極端な世界ではあるが、今自分が置かれている自由はとても幸福なことであると実感する。もし自分に苦難が降り掛かったとき、本当に「ソーマ」を拒絶出来るかは怪しいとは思います。16章、17章のジョンと世界統制官との論戦は興味深いが、個人的にはやや宗教的思想に偏るジョンにも賛同できないところがある。
    そして衝撃のラスト。自分への鞭打

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    2023年04月22日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    死んでいく世界の中、必死にお互いを支え合う父と子。読み終わり、涙が溢れてきた。二人の会話から伝わる状況や心境の変化。虚しさも痛みもひしひしと伝わってくる。生きる上でどこかで割り切らないといけないという父が下す正しさと、本当にそれで良かったのかと疑問を抱く少年の優しさ。お互いがそれぞれの学びとなり支えになる。父と同じように読んでいる自分も少年に暖かさを感じた。彼から優しさを分けてもらった気がした。

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    2023年04月16日