黒原敏行のレビュー一覧

  • 幻の女〔新訳版〕

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    『夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。』

    一文目にくる文章に惹き込まれました。
    古典ミステリーの随所に見られる詩的な表現や幻の女の手掛かりに手が届きそうで届かない緊張感に一気に読み終えました。

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    2023年05月08日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    喪服のランデヴーが面白かったので、二作目。喪服〜が犯人が初めからわかってる系の作品であるのに対して、こちらはそれとは真逆のタイプ。どちらもそれぞれ面白い。喪服〜は主人公の復讐を軸にして、一人また一人と殺されていく序盤から終盤までの流れはある意味読者には予想がつく範囲で、終わらせ方こそが要だったが、こちらは犯人は誰なのか?女は誰なのか?そもそも存在するのか??と複数の謎を同時進行で解き明かしていくスリリングな展開が面白い。

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    2023年05月04日
  • ザ・ロード

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    「森の夜の闇と寒さの中で目を覚ますと彼はいつも手を伸ばして傍らで眠る子供に触れた」最初の一行が始まる。

    おはよう、パパ
    パパはここにいるぞ。
    うん。

    繰り返し描写される周りの情景、それは「寒さ」と「飢え」と「怯え」。
    理由の見えない状況のなか、南へ向かう父と子の会話は、まるで詩の一遍のような響き。

    本当であれば「暖かい家と家族」に囲まれながら将来を夢見るはずの子供が、人を食らう人に怯え、生きるために人を殺めることを恐れ、死を身近に感じたまま、父と話す。

    もう死ぬと思っているだろう
    わかんない
    死にはしないよ
    わかった
    なぜもう死ぬと思うんだ?
    わかんない
    そのわかんないというのはよせ

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    2023年04月26日
  • すばらしい新世界

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    瓶詰めの科学的に調整を施す人間培養、その調整によって格付けされた人間社会、あらゆる快楽を叶えることで欲望や不満、絶望を排除したユートピア。人間の最大の欲求は信頼関係のある人付き合い、と定義する人がいるが、それさえ叶えることのできるユートピアは果たしてディストピアなのか。かなり極端な世界ではあるが、今自分が置かれている自由はとても幸福なことであると実感する。もし自分に苦難が降り掛かったとき、本当に「ソーマ」を拒絶出来るかは怪しいとは思います。16章、17章のジョンと世界統制官との論戦は興味深いが、個人的にはやや宗教的思想に偏るジョンにも賛同できないところがある。
    そして衝撃のラスト。自分への鞭打

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    2023年04月22日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    死んでいく世界の中、必死にお互いを支え合う父と子。読み終わり、涙が溢れてきた。二人の会話から伝わる状況や心境の変化。虚しさも痛みもひしひしと伝わってくる。生きる上でどこかで割り切らないといけないという父が下す正しさと、本当にそれで良かったのかと疑問を抱く少年の優しさ。お互いがそれぞれの学びとなり支えになる。父と同じように読んでいる自分も少年に暖かさを感じた。彼から優しさを分けてもらった気がした。

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    2023年04月16日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    個人的に現代アメリカを代表する最も重要な作家の1人と考えているコーマック・マッカーシーの長編第9作。既に単行本時として翻訳されていたが、当時の『血と暴力の国』から改題され、原題と同じ『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』として今回、文庫化で復刊されたのが喜ばしい。

    コーマック・マッカーシーという作家の魅力を説明しようとしたとき、「血と暴力の国」というワードは極めてシンプルにその魅力を表している。単行本時にこのタイトルが選ばれたのもよくわかる。本作を10ページほど読むだけで、5名が無惨な暴力で殺され、血に塗れることになるのだから。

    マッカーシーの作品は一般的には犯罪小説などの意味合いを

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    2023年04月16日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    だいぶ前に電子書籍で購入。良い意味での昔のミステリー色が強く、でも話の展開も飽きさせないし面白かった。原文がかっこ良いんだろうな、という言い回しがいろいろある。

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    2023年04月03日
  • 幻の女〔新訳版〕

    購入済み

    幻の女

    最後までどうなるのか想像がつかない作品でした。
    大抵この手の作品はなんとなくオチが想像できてしまうのですが、これは私には想像外でした。
    後半は飽きない展開で読み進めたくなりました。

    「冤罪」という’もし自分だったら‥’という、なんとも心落ち開かない気持ちが同居していました。
    絶体絶命な状況からどう展開されるのか…先が気になり止まらなかったです。

    この作品を読んで、作家とは四六時中構想で頭がいっぱいなんだろう、やはり特殊な職業だと再確認した作品でした。

    #怖い #ドキドキハラハラ #深い

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    2023年05月17日
  • 闇の奥

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    素晴らしい翻訳で熱帯のジャングルの人を寄せ付けない世界の出来事とそんな世界が生み出した人物の難解な物語を一気に読ませる。物語は夜更けのテムズ川に浮かぶ船の上で船乗り仲間にコンゴ川での経験を振り返って語るという語りの形式で、マーロウの語りを聞いている人物が小説の中にも存在していて、語りを聞いている人物が主体となっている入れ子的な構造。ほとんどの部分はマーロウが主人公の視点となっているが、あえてそれを客観的に聞く人物を設けることでアフリカでの出来事が幻のように遠い世界の話に聞こえる効果もある。
    クルツがどのような存在なのか。これはほとんど暗示的に示されるばかりで善か悪かも判然とはしない。かつて優秀

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    2023年03月04日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    臨場感たっぷりの物語で読んでいてドキドキしました。ただ、わたし的にはちょっと読みにくく、読み進むのに時間がかかりました。
    でも最後は色々ななぞも無事に解決し、全てスッキリ!ウィリアム・アイリッシュさんすごいです。

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    2023年02月16日
  • 八月の光

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    戦間期のアメリカ南部。黒人や女性を抑圧する社会の空気に縛られつつ抗う。そのあり様は登場人物によって様々で、彼らが織りなす物語に福音書のイメージが重ねられもする。訳者は後書きで読者に再読を勧めているが、確かにそうすることによって汲み出すことができるものは多いように思う。ただ結構長い作品なので、実際再読するかと言われると考えてしまう。

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    2023年01月01日
  • ザ・ロード

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    たぶん近未来のアメリカ。たぶん核戦争後の世界。数多くの動植物が滅んだ終末の世界。僅かな食糧を奪いあう残された人類

    ただひたすらに南を目指して歩き続ける、ひと組の父子の物語。暴力が支配する世界で、人は善き存在であり続けることは出来るのか

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    2022年12月31日
  • すばらしい新世界

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    ディストピア小説の古典とも言われる本著。しかし、1932年に書かれたとは思えない位、新感覚にも読めるし、あるいは既に社会に浸透した一種のSF的仮説の基礎とも読める。最近の作品では、貴志祐介の『新世界より』が影響を受けてるのかなと感じたがどうなのだろうか。

    階級を容認し、寧ろ階級がある事を前提に構築される社会。そして、その階級意識を遺伝子操作というよりも、主には、オペラント条件付けにより、無意識下に学習させて統制させていく。一見、共産主義の思考実験による皮肉にも見えるが、恐らく、この仮定に主義は選ばない。資本主義であれ、その報酬は金銭の多寡をKPIとして、条件付け、刷り込まれたものであり、階級

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    2022年11月29日
  • すばらしい新世界

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    近未来ディストピア小説
    人間は工場生産されるようになり、家族という概念はなくなり、フリーセックスと快楽薬で不快や欲求不満を解消した、非常に安定した世界が描かれている。

    ディストピアだけど、きっとこの世界が本当にあったらここに生きる人は、結構幸せじゃないかと思う。
    徹底的に管理された階級社会、でもそれぞれの階級はその階級を不満に思うことのないように小さい頃から睡眠教育を受けている。なので、上の階級にも下の階級にも行きたいと思わない。
    動物園のライオンとサバンナのライオン、どちらがより幸せかがわからないのと同じ。

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    2022年11月03日
  • シャギー・ベイン

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    イギリス・グラスゴー。日本人の私からしたら、全く知らない土地なのに、読み進めるうちに懐かしいような気がしてくる。家の中のことが近所に筒抜けで、格好なんてつけない。ただ自分のままで生きている。必死で生にしがみついている。そういう階層の人間たちが集まっている。裸で人生を進んでいる人たち。
    貧しいということの、泣きたくなるような悲しさ。お金がないということが心を貧しくし、しかしそれと反比例するように生が色濃くなっていく。

    作者の自伝的小説というのは、ある種の性格を持ち合わせている。強烈なメッセージを主張したいがために書いたわけではないのに溢れ出てしまう感情の大波。こういうものは、津波のあとの町のよ

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    2022年10月02日
  • 八月の光

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    「普通」の人生などないと改めて感じさせる。なかでもクリスマスのアイデンティティの拠ってたつもののなさに一滴混じった悪意の果たすものの大きさ、それがもたらした複雑な生き様、そして悲劇には深く考えさせられるものがあった。人生において繰り返し読むに値する一冊。それにしても米国南部の歴史が抱える深い深い業よ。

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    2022年09月23日
  • アメリカン・ブラッド

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    元ニューヨーク市警のマーシャルは、犯罪組織への潜入捜査を終えた後、政府の保護下で暮らしていた。だが失踪した地元の若い女性の行方を調べ始めたばかりに、凶悪な麻薬の売人たちと対峙することに。さらには、かつて潜入していた組織が差し向けた殺し屋〈ダラスの男〉の魔手が迫るのだった。

    ニュージーランドの作家の作品。シリーズ化されているらしいが、翻訳が途絶えているのが惜しい。

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    2022年09月21日
  • ザ・フォックス

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    久々のフォーサイス作品を堪能。一時、脱筆宣言してから復活…80歳を過ぎてもなお、精力的に執筆活動をして読者を楽しませてくれてます。最新作の本書は実在事件を基に現代のサイバー戦争を背景に英米露…各国の緊迫した攻防戦が繰り広げられていきます。流石、稀代の作家フォーサイス…楽しく一気読みできました。

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    2022年09月07日
  • シャギー・ベイン

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    ネタバレ

    サンサーラが頭の中でなる小説。
    ザ・ノンフィクションを観てるみたい。

    読んでいて辛くなる時間が多かった。
    一方でアグネスがシャギーを取り返しにシャグのもとに訪れ、ゴミ箱を投げつけるシーンは痛快ですらあった。

    アグネスが亡くなるシーンがとても印象的。 
    絶望の果ては静寂と愛が残った。
    自分はこんな人生送りたくないし、自分の娘にもこんな目には合わせたくないが、小説の中では絶望の人生も必死に命の輝きを放っていたように思う。

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    2022年08月23日
  • ザ・フォックス

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    暗号名フォックス。スターリンやら金正恩やら文在寅やら、、、いろいろ出てきたが、ロシアの頭領の名前は出てこない、、、ラスト衝撃。あり得るかなあ?

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    2022年08月08日