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デビュー作にして、英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞。英語圏で100万部突破の話題作。
1980年代、英国グラスゴー。“男らしさ"を求める時代に馴染めない少年シャギーにとって、自分を認めてくれる母アグネスの存在は彼の全てだった。アグネスは、エリザベス・テイラー似の美女。誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった。しかし、浮気性の夫がアグネスを捨ててから、彼女は酒に溺れていき、唯一の収入である給付金さえも酒代に費やしてしまう。共に住む姉兄は、母を見限って家を離れていくが、まだ幼いシャギーはひとり必死にアグネスに寄り添い──。
けっして生きる誇りを忘れなかった母子の絆を描く、
デビュー作にして、英米の文学界を席巻したブッカー賞受賞作。
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Posted by ブクログ
人間はみんな愚かで弱くて小さな存在で
人生なんか勝手に転がり落ち続けるもので
自分で選べるようなことなんかほとんどない。
そんな毎日がただただ積み重なっていく。
でも、そんなクソの中でも、一歩踏み出せる日もあったりして、愚かで弱い人間は愛おしい。
という、私の大好きなテーマの本。
今のわたしが生きている社会は、豊かで平等で、なんでも望むことができるし、SNSを開けば他人のキラキラの上澄みや成功体験ばかりが目に入るけれど、生きるということは、本来苦しくて思い通りにはならないものだ。
グラスゴー、サッチャーと炭鉱労働者、カトリックとプロテスタント、アルコール依存症、ヤングケアラー、性的少数者、親子の愛、政府からの給付金のみで生活する貧しい人たち、好色なおやじども、我慢するだけの女達、愛し合いながら憎み合う家族、いろんな切り口で読めるけど、ちゃんとした人間なんて1人もいないのがとてもよかった。
Posted by ブクログ
イギリス・グラスゴー。日本人の私からしたら、全く知らない土地なのに、読み進めるうちに懐かしいような気がしてくる。家の中のことが近所に筒抜けで、格好なんてつけない。ただ自分のままで生きている。必死で生にしがみついている。そういう階層の人間たちが集まっている。裸で人生を進んでいる人たち。
貧しいということの、泣きたくなるような悲しさ。お金がないということが心を貧しくし、しかしそれと反比例するように生が色濃くなっていく。
作者の自伝的小説というのは、ある種の性格を持ち合わせている。強烈なメッセージを主張したいがために書いたわけではないのに溢れ出てしまう感情の大波。こういうものは、津波のあとの町のように、読者の心を塗り替えてしまう。訳者あとがきで書かれていたが、作者は"どうしてもこの物語を自分の中から取り出す必要があった"と語っている。この物語を体から取り出さなければ、一人の人間として形を保っていられなかったのだろうと思う。
600p超えの大作の、一文一文に薄く暮らしが編み込まれているような文章で、読みにくくはないのに進むごとに物語が染み込んでいくのを感じた。
訳者あとがきを読むことで一層物語が愛おしく思えると思う。最後のページまでぜひ読んでほしい。
Posted by ブクログ
タイトルはシャギー・ベインだけど、本当の主人公はシャギーの母アグネス。
貧しい肉体労働者の一人娘として生まれたアグネスは、歯並びは悪かったが、エリザベス・テーラー似の美人でスタイルも良く、言葉遣いもきれいで、ファッションセンスもあった。ハンサムではないが誠実で真面目な男と結婚。二児をもうける。
ここまでなら、まあ普通の良い人生。
だけど人間は愚か。そんな平凡で退屈な毎日に嫌気が差し、性的な匂いをプンプンさせるタクシー運転手シャグと子連れで駆け落ちしてしまう。
が、こいつが浮気、DVをするろくでなし。ここから彼女の転落が始まってしまう。この運転手との間に生まれたのがシャギー。
シャグに捨てられアルコール依存症が悪化、どこまでも落ちていき、第一子の娘は結婚することでこの家庭を出ていくが、残された長男リークと次男シャギーはこの母と運命を共にせざるを得ない。
ここが本当に辛い。頼るべき親が男と酒のことしか考えられないため、いつもお腹をすかせ、学校にも行かず、進学もできず、母が飲んで死ぬんじゃないかと不安でいっぱい。
しかもマッチョな価値観が支配する寂れた炭鉱町でシャギーは「普通の男の子」ではない。「オカマ」「おねえ」と呼ばれるような、なよなよした男の子だ。本人も自覚しており、何とか「普通の男の子」になれないかと努力を続ける。サッカーに興味は全くないのにサッカー選手や試合の記録を暗記したり、「普通の男の子」の歩き方を練習したり。
多様性を認められるって豊かさの証なんだな、と。貧しくて、肉体的強さが男の価値である社会は、そうでない男に存在価値を認めない。(女も男に魅力のある女が価値ある女である。)障害があったり、肉体は丈夫でもホモセクシャルだったりする者も同様に排除されるだろう。
だからアグネスがもてるのも、ある意味「女である」ことの価値だけしか認められていないから。そして、その価値がすごく高かったから、価値が下がったと感じてアルコールに救いを求めたのである。
ただ、この母を、息子たちはあきれ、諦めながらも、見捨てない。
それは母が本当は子ども達を愛していることがちゃんと伝わっているから。そしておしゃれで美人で本来は朗らかな母が大好きだから。
祖父ウリーが死ぬとき、べろんべろんに酔っ払って登場するシーン、初めて断酒に成功していたのに、禁を破ってしまうシーンは忘れられない。
読んでいて、これは映画になるなと思った。シャギー役は演技力が必要。アグネス役は美貌と演技力を兼ね備えた40代の女優ならやりたい役だと思う。
荒れ果てたグラスゴーの貧民街の団地も目に浮かぶ。
映像化可能という点で、小説として満点とは個人的にはいかないが、しかし、いい小説だと思う。
アグネスへの哀惜、狂おしいほどの母への愛が伝わってくる。
巻末の解説にはアグネスはギリギリ毒親ではないと書いてあったが、毒親だと思う。
しかし、完璧な人間も完璧な親も存在しない。
毒親ではあったが、子どもへの愛情を疑わせなかったという点で立派だった。
リークもシャギーもたとえどんなに成功しても社会の底辺で生きる人々を他人とは思えないだろう。たとえアルコールや薬物の依存症であっても、体を売って生きているとしても、それには相応の理由があるのだと、理解できる。
毒親だし、客観的に見ればろくでもない女だった。
しかし、彼女の命はこの小説で輝いている。それだけでも素晴らしいと思える。
Posted by ブクログ
1980年代の英国グラスゴー。
アグネスは新しく生まれ変わるため
家族と共に炭鉱町へ移り住む。
しかし、元夫に見捨てられアルコールが手放せなくなる。
息子・シャギーには愛情を注ぐが生活は困窮していく。
(あー、アグネス、また失敗をしちゃうのかな?
どうか、アルコールではなく子供たちに目を向けて)
そう思わずにはいられない。
読んでいて辛いことばかりなのに
なぜか、この親子を応援したくなる。
訳者・黒原敏行さんあとがきより
P607
〈作者のスチュアートは、この作品は労働者階級の声、スコットランド人の声、女性と子供の声、同性愛者の声という、少数派の人々の”多様な声”を響かせることができているのではないかとの自負を語っている〉
なんだか、涙が出てくる。
すごい作品を読ませてもらい幸せな時間だった。
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