黒原敏行のレビュー一覧

  • 蠅の王〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    紙から溢れる少年達の生命力がすごい! 飛行機が墜落し、無人島に取り残される少年たち。最初は冒険気分でも「食べる・寝る・排泄・助けを求める」という現実からは逃れられない。義務を説くリーダーは嫌われる、遊と勇を説くリーダーは好かれるのは人間世界そのもの。自分を心得ていたピギーとサイモン。思考停止せず自分に従う二人が悲しみと共に心に残る。デスゲームの様相と残り少ないページ数にハラハラしながら一気読みした。作者が教師をしながら書いたこの小説。経験を生かすとはこういうことなのかと。いい作品に出会えてとてもうれしい。

    0
    2025年03月22日
  • 越境

    Posted by ブクログ

    著者の作品は、映画の脚本としては触れてきたが、小説は初めて読んだ。
    暗喩や挿話が多く、読み進めるのに体力が必要な文章。
    3度にわたる越境がビリーに大きな喪失をもたらすことになるが、成長や教訓のようなポジティブな要素を安易に提供してはくれない。
    アメリカと異なり、野生的な世界を感じさせるビリーから見たメキシコは観念的で、神話の世界のようでもある。

    3部作の1作目を読まずに本作を手に取ったが、全く問題なし。ただ、3作目は1作目の主人公とビリーが共演するようなので、1作目から読んでみたくなった。

    0
    2025年03月16日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    クリスティーの本で一番ページ数が多く、その厚さに二の足を踏んでいましたが、読んで良かったです。名作ですね。

    構成は、第一部「登場人物の紹介」と第二部「エジプト」の二部構成。第一部の丁寧な人物造形による前振りが、第二部での愛憎入り乱れたロマンスあり旅情ありの紀行ミステリとして、次第に人物像が明らかになっていくにつれて引き込まれました。

    取り立てて巧妙なトリックがある訳でもなく、犯人の見当も付きやすいですが、「あの件とあの件は、どうしたのかな?」と疑問に思っていたことが、最後にポアロの言葉での解説と犯人の語る動機を読んで、うなってしまいました。

    また、丁寧に描写された人間関係も相まって、エン

    0
    2025年02月09日
  • 蠅の王〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    最初に読んだ時衝撃を受けた。自分の大好きな小説ランキングTOP10に入る

    漂流文学で1番的を得ていて現実的で、生々しくて、うまく説明出来ないけどゾクゾクして、意味わからんくらい面白い(語彙力)

    「豚殺せ。喉を切れ。ぶちのめせ!」がずっと心に残ってる

    0
    2025年02月07日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    長編の小説でしたが、後半になると展開が早いのはアガサクリスティーの素晴らしさであると感じました。
    まさかポアロが睡眠薬を飲まされていたとは思わなかったです。犯人は最後自死を選びましたが、愛が2人を狂わせたと思いました。

    0
    2025年01月31日
  • すべての美しい馬

    Posted by ブクログ

    一家の営む牧場の売却を知った少年が自分らしく生きられる地を求め愛馬と共に越境して経験する喪失と再生の物語。単なる青春小説の枠に収まらぬ深遠で非情な世界は著者ならでは。中盤からの激しくも哀しい展開が心を揺さぶる

    我々は兎角人生の分岐点を運命と云う言葉で表現しがちだが本作のなかでアレハンドラの大叔母が語るようにそれはコインの裏表で未来を占う以前の鋳造段階からすでに結果が決められているものなのかもしれない

    0
    2025年01月26日
  • 八月の光

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ディープサウスの田舎町を舞台に繰り広げられる、壮絶な物語。一つの事件を様々な登場人物の視点から語ることで、当時のアメリカ南部の宗教的価値観や人種問題を克明に描き出している。
    内的独白や葛藤が究極の密度で描写されるため、多少読みにくい部分はあるものの、翻訳がとてもよかった。
    この物語のテーマをあえて一言で表すならば、「孤独」。登場人物の誰しもが何らかの孤独・内面的葛藤を抱えており、それら「社会のはぐれ者」の視点から当時の南部の因習を語ることで、作品の深度を高めている。
    リーナとバイロンがテネシー州に一緒に行くラストは、希望的に描かれていると感じた。バイロンの内的独白『人間ってたいていのことには耐

    0
    2025年01月16日
  • すばらしい新世界

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    この物語のなかで起きていることに困惑したり嫌悪したりするのは、わたしはわたしで現実世界で条件づけ教育を受けているからだろうかと悩まされた。こうするのが正しくて道徳的だと信じ込まされているだけであって、違った理想が掲げられていればそちらを不思議に思ったりはしないはずだ。
    終盤のムスタファ・モンドとジョンの会話が面白くて素晴らしかった。ジョンはジョンでいくらか偏った考えを持っていて、それ故にふたりのどちらにも共感できないのだけれど、どんな意図での言動なのかがわかりスッキリした。
    麻薬がなければ新世界でもやっていけないのならまったく安定していないし、生まれる前から遺伝子を捜査されて階級が決められてい

    0
    2025年01月08日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    11月に、エジプト旅行に行きました。
    帰国してから、夫が「ナイル殺人事件」という映画があるよ、見る?と。2020年の映画を見ました。ついでに「オリエント急行殺人事件」も。

    映画では、最初の方に出てきた「アブシンベル神殿」が、もう、正に見てきたので、懐かしい〜!
    それを見ただけで、この映画を見た価値がありました。エジプト旅行をする前に、見ても良かったかな。実物を見る感動が!

    昔、ローマに行く前に、「ローマの休日」を見て行ったので、色々楽しかったですよ。


    映画「ナイル殺人事件」を見ると、ポワロがかなり、登場人物を厳しく詰問する形をとっていました。全ての人を殺人犯として疑っているような…。

    0
    2024年12月06日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    個人的ポアロシリーズ最高傑作です!

    人物が多く、関係も複雑でページ数も多い、と慣れないと読むのに苦労するかもしれませんね。
    物語はナイル川を遡る豪華客船で悲劇が...と言うもので舞台はエジプトになるのですが、物語が緩やかで、エジプトの描写で旅行している気分になりワクワクします。
    ミステリにおいても、様々な事件に様々な証言。嘘をついているのは誰だ?矛盾しているのは誰だ?と読み進めていてとても楽しいです。(意外と犯人とか動機は自然とわかるかも?)
    ヒューマンドラマとしても完成度が高く、1本の壮大な映画を見終えたような満足感がありました(映画化されてますが)。

    物語のバランスに優れた傑作なので、

    0
    2024年11月30日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    船上でのクローズドサークルの中、愛憎を絡ませた人間模様と複数のミスリーディングを交えながら、ミステリーとしての完成度を高めた作品であり、面白かった。休暇中であってもポワロの賞賛欲は健在。

    0
    2024年11月17日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

    Posted by ブクログ

    〈眼は魂の窓だとよく言うだろう。すると魂のない人間の眼はなんの窓なのかおれは知らないしどちらかというと知りたくない気がする。しかしこの世には普通とは違う世界の眺め方がありそんな眺め方をする普通とは違う眼があってこの話はそういうところへ行く。〉

     訳者あとがきで知ったのですが、タイトルの『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』はアイルランドの詩人イェイツの詩の一節で、「老人の住む国にあらず」が直訳になるそうです。理解できないものと対峙することになる非情な現実が、言葉という表現で強烈に迫ってくる、ちょっと他では代替できないような読書体験が味わえる一冊です。

     メキシコの国境地帯で麻薬密売の

    0
    2024年11月14日
  • 蠅の王〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    「『蝿の王』のようだった」というレビューを何度か見たことがあって、『蝿の王』のような感じってどんなの?とわからず(@_@;)
    気になって小説を読んでみたくなった。

    少年たちを乗せた飛行機が無人島に不時着した。少年たちはリーダーを決め、大人のいない島での暮らしは、当初は気ままで楽しく感じられたが…。

    作者のゴールディングのコメント。
    「大事なことはただひとつ、まずは物事の中に入って、そこで動きまわるという体験をすることだ。そのあとで、自分の好きな解釈、正しいと思う解釈をすればいい。」

    私も物語に入り込んで少年たちと一緒になってすごい体験をしてしまった…。
    服も髪も顔もボロボロになり、森や山

    0
    2024年10月30日
  • 越境

    Posted by ブクログ

    過日亡くなった米国文壇の巨星による深遠で荘厳な放浪青春譚。手負いの牝狼を故郷に帰すべく主人公が国境を越える第一章の話は動物文学としても秀逸。何かと軽薄が持て囃される時代に抗う哲学的重厚さが心を揺さぶる。格調高き訳文も良い

    0
    2024年10月25日
  • 幻の女〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    アイリッシュは短編集を中学生の時に読んで好きになり、これもその時に読んだ。
    何十年ぶりかで読んで、ニューヨークのバー、レストラン、劇場などのシーンや、服装、小物のセンスがとてもおしゃれで、アイリッシュは都会派の粋な作家だな、と改めて思った。
    ちょっとサリンジャーに通じる所がある。
    残酷なシーンもあるけど、昔のミステリーって温かみや倫理観がある。
    刑事のバージェスが頭が切れる人で良かったな、って感じ。

    0
    2024年10月17日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    この作品は何回か読んで、映画も何回か観たけど毎回新鮮に楽しい。ポアロシリーズの中で一番鮮やかで景色が美しくてドラマチックで大好き。

    0
    2024年10月03日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    アガサクリスティーは恋愛メインのミステリが本当に面白い!今回は他作品より分厚くて登場人物も多かったけど、夢中になって読めた。謎も入り組んでいて誰が犯人か分からないし、みんな怪しく見えた…真相にびっくり!そして、若者たちに寄り添い導こうとするポアロが優しかった。

    0
    2024年08月22日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    クリスティー作品3冊目。
    途中まで事件は起こらず、船で観光を楽しんだり会話の描写があり穏やかな旅行を感じさせる。リネット周りだけは不穏な空気が漂っていた。一度事件が起こると怒涛の展開でページを捲る手が止まらなかった。
    そして、全然思ってもいない犯人だったから驚いた。


    ↓めちゃネタバレ



    ジャッキーは悲劇のヒロインかと思っていたら頭の切れる狡猾な殺人犯だったとは…。

    手荷物を調べた時ロザリーのハンドバッグから見つかったピストルがモヤモヤしてたけれど、最後に回収してくれて全てスッキリした。

    ただ、リネットの死を本気で悲しむ人がいないことがすごく寂しく感じた。
    『大事なのは過去ではなく未

    0
    2024年07月15日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

    Posted by ブクログ

    「そして誰も」のように真祖にして無敵というわけでもなく、
    「オリエント」「アクロイド」のようにアイディア一発というわけでもなく、
    きっとこれが「最もクリスティらしい」作品なんだろうなと想像します。

    古い作品であまり技巧を凝らされていないこともあり、
    ごく自然に犯人がわかりました。
    当たったのではなくwhy how who全て論理的にわかりました。

    旅情を誘う作品は大好きです。この船のりたーい

    0
    2024年06月28日
  • ザ・ロード

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ずっとドキドキしながら読んでいる
    読むのを止められない、少年が生きているか?死なないでと思いながら読む
    子持ちは読むのが辛い、ハッピーエンドを期待して読む
    ハッピーエンドなんてありえるのか?全く想像もできないけど少年が死ぬのだけは耐えられない

    今後存在しないものは今まで一度も存在しなかったものとどう違うのか

    男に刺されそうになる少年をなんとか守り抜いた彼、大事にしているのは少年の生なのか、それとも自分の希望なのかどちらだろうかと思った
    しかし最後まで読んでみて、そんなエゴの存在はわからなくなってしまった、自分より先にこどもが死ぬ、それが何よりも耐え難いのは分かりきったことだったなと思う

    0
    2024年06月13日