黒原敏行のレビュー一覧

  • すばらしい新世界

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    ネタバレ

    p.317
    社会的不安なしに悲劇はつくれないんだ。

    幸せってなんだろう、感情ってなんだろう、生きる意味ってなんだろう、、、いろいろ考えちゃう作品でした。
    幸せなら娯楽もこうやって本を読むことも不要になるのかな?

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    2021年03月25日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    グラントン隊というインディアンの頭皮を狩ることで賞金を稼ぐならず者集団が、殺戮を繰り返しながらただひたすら旅を続ける話。

    アメリカ南部の広大な砂漠の自然描写、夜の焚火など、乾ききった風が物語全体から感じ殺戮描写がまるで自然現象のようにあっさりと描写され、殺戮巡礼の旅の合間に時折ホールデン判事が独自の哲学を語る。「人間は何かを懸ける遊戯が大好きであり戦争はその完成された作品だ。最高の作品が最高の語り手を待っていたのだ。」

    殺戮と侵略、これがアメリカの歴史であり人類の歴史であるかのようだ。著者は事象のみあるがまま記述し自身の思慕を語ることはない。自然の摂理からすれば生命の倫理なんて人類がでっち

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    2021年05月31日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    美しい風景描写に救われるが、そこに血の跡を残していくインディアン討伐隊。マッカーシーは汚れつつ生まれたアメリカ開拓期の一面にある、人と命を直視する。


    半分ちょっと読み残している「平原の町」が気になるが、これはYasuhiroさんがレビューされた素晴らしい労作に感謝して「Cities of the Plain」を読んで解決したつもりになってます。
    ビリーが繰り返す不幸そうな恋愛と、ジョン・グレイディの共演は面白そうですがなんだか気が乗らずおいてあったのですっきりしました。これも又機会があれば読みたいと思っています。

    そして取り掛かったのが「ブラッド・メリディアン」でこれは読んでおかないと一

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    2020年11月10日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    ネタバレ

    これは凄い。芥川を愛する著者の二次創作的な作品集かと思っていたけれど、それだけではない。さらに芥川の生涯を追い、死に至るまでを描いていく。
    この描き方が半端ではない。その時代、その場所で見てきたのではないかという位リアルでありながら美しく幻想的。
    「本当にこうだったのではないか」と思わされてしまう。
    彼が魂を擦り減らしながら小説を書いていくのを身をもって感じ、特に終盤、こころを病んでからは剥き出しになった神経を持て余して苦しむ感覚が身に迫ってきて、乾いた筆致でありながら辛くて堪らず、死によって解放される感覚までも追体験してしまった気がした。
    断片的に知っていた彼の人生をここまで見事に、彼の小説

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    2020年08月22日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    いやー長かった。1冊の本にこんだけかかったの久しぶりやわ。本の重み(内容じゃなくて重量)で腕つりそうになるし、肩凝るし…。

    話の筋は単純な冒険活劇勧善懲悪もん。地味な時計職人が巻き込まれていく全世界崩壊的悪巧みを防ぐために獅子奮迅の大活躍。

    それだけの話にどれだけ盛るんやと…スチームパンクありゴシックありホラーありスパイ小説あり拷問あり格闘あり銃撃戦ありエッチあり百合ありショタあり…

    バラエティとかてんこ盛りとか既存の言葉では言い表せんくらいに盛りに盛って、あちこち破たんしまくってそれでもとりあえず、力技で全伏線回収してる(と思うが数えきれんので分からん)

    ほんで、これが大事なんだけど

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    2020年04月14日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    『彼はある郊外の二階に何度も互いに愛し合うものは苦しめ合うのかを考えたりした。その間も何か気味の悪い二階の傾きを感じながら―芥川龍之介「或阿呆の一生」昭和二年(一九ニ七年)』―『地獄変の屏風 HELL SCREEN』

    芥川龍之介の文章から受けるイメージは読むたびにその鈍色(にびいろ)の光沢が薄れるような印象がある。思春期の頃には、まるで外科用の刃物のような鋭い光を放っていると感じたものが、読み返してみると、私生活が半透明の薄皮一枚のすぐ下に透けるような酷く生々しいものに見える気がする。形而上学的な言葉と思えたものが単に陳腐な感情の吐露だと判明してしまったかのようでもある。作家に関する余計な知

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    2020年03月22日
  • 闇の奥

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    英国の作家ジョセフ・コンラッドによって書かれた中編小説。20世紀における英語文学の傑作として知られる。仏国の貿易会社に雇われた船乗りマーロウが、アフリカの出張所を訪れるためにコンゴ川を遡行し、やがてクルツという名の代理人を求めて大陸の奥深くへ足を踏み入れるが……というストーリー。背景には当時のベルギー国王によるコンゴ自由国に対する苛烈な植民地支配が存在し、本作にはコンラッドの船員時代の経験が反映されている。

    本作では語り手マーロウの出航から帰還までが作中作の形で展開し、プロットを辿れば物語の全体像は把握できるものの、作品を包み込む重厚なーーあたかも倫敦を覆う陰鬱な闇のような雰囲気が、テクスト

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    2019年09月10日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    コーマック・マッカーシーの描く、国境3部作の第1作目。祖父が亡くなって、牧場が人手に渡ることとなってしまい、馬を愛する少年ジョン・グレイディ・コールは、相棒のレイシー・ロリンズとともにテキサスを出てメキシコへ向かう。

    マッカーシーの技巧的ながら硬質な文体が、貧困と血と暴力の光景の中で、自然とそこにすむ生き物たちの美しさ、人間存在の確かさと不可解さ、友情の輝き、恋の激しさ、そして悲しさを描き出す。

    原題は『All the Pretty Horses』。すべての馬が“Beautiful”でなく“Pretty”――強い印象を与えない好ましさ――であるのは、文中にあるように「馬という生き物は全体で

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    2019年03月28日
  • 八月の光

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    街の中に暮らす様々な人たち。彼らはみんなどこか愚かで、どうしようもない。そのどうしようもなさが、リアルで、自分の中にもあるものとして感じられる。
    閉塞感や孤独、回復できないほどの精神的傷なんて、現代社会に限るものではないんだと思った。どうやって、より良い社会を築けばいいのか、途方にくれる。
    ワインズバーグ、オハイオの後に読んだのは、正解だった。

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    2018年09月17日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    長かった。そして大変面白かった。とてもとてもイギリスだと思った。
    ミステリで冒険小説でSFで、そして元気なばあちゃん(失礼)が大勢活躍するあたりが実にイギリスっぽいと思ったの。
    「モンティ・パイソン」みたいで。
    紳士の国だけど労働者の国でもあるイギリス。
    取り澄ましたところもあるけれど、下世話なところもあり、ブラックなユーモア(しかも結構なドタバタ)が大好きなのがイギリス人。

    そんなわけで、最初は非常にとっつきにくいのです。
    そうね、150ページくらいまで。

    主人公はまだ30代だというのに、世界の片隅で時計の修理をなどを行う機械職人としてひっそりと生きている。
    じーちゃんの技、じーちゃんの

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    2017年02月19日
  • エンジェルメイカー

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    長くて読むのに時間がかかってしまいましたが、ミステリーもSFも大好きな自分はとても興奮しました!世界の命運をかけた戦いを軸にした理工学系ファミリーの壮大なサーガだったようにも思えます。登場人物たちが時計の歯車のようにカチッとはまる終盤はまさにクロックワーク!ジョーがギャングとして覚醒し、無敵状態になるのはちょっと面食らいましたが。

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    2016年10月23日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    トラックの行き交うハイウェイの横を馬で南へと進んでいく、そんな印象的なシーンが序盤にあって、ある意味ここら辺から発展を遂げているアメリカに対する主人公の反抗的精神かうかがえる。

    古き良きアメリカ――広大な大地を馬で駆け抜ける、そんな憧れが主人公ジョン・グレイディにはあった。

    ちなみにジョン・グレイディは16歳。牧場経営の家に生まれ育ち、小さい頃から馬に慣れ親しんできたこともあり、将来は自らが牧場に携わるはずだった。しかし親父が死んでしまい、残された母は牧場を売り払うことを選択してしまう。

    だからジョン・グレイディは国境を越えてメキシコに行くことを選んだのである。

    そこには何かがあるのだ

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    2016年07月17日
  • 闇の奥

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    もっと難解なものを想像していたが、物理的に近いところに住んでいるおかげか、情景を思い描くことも感情の追体験をすることも意外なほど難しくなかった。最も近いと言っても国も違うし、100年以上の月日の間にフラット化されてしまった世界、そして何よりマーロウよりはいくらか擦れてしまっている心のせいですべてが緩やかにしか感じられないが、マーロウが見たもののかすかな面影は私の日々の生活で、そこかしこに感じられる。白人(黒人目線ではアジア人含む)のコミカルでシニカルな様なんか今もほぼそのまま。別訳・原著も読みたい。

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    2016年07月06日
  • 闇の奥

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    解説があってよかった。また、訳者の言葉もあってよかった。なぜなら、ともにこの作品について思いをめぐらすことを促してくれたから。読みながらも、読み終わっても、一筋縄ではいかない作品であると感じた。スタイルもメッセージもわかりにくいのだ。

    信頼できない語り手?いや、最後に婚約者にみせた「配慮」はいたって理性的だ。

    植民地主義や狂気、好奇心、利己心などが扱われているが、それがメインテーマではない。

    うねうねした、理解を超えた世界に生きる経験?その強烈さ?
    なのに聞き手がいるという矛盾?

    なるほど。強烈な経験をしたからこそ、本当は言えない。そこにフィクションという真実、真実はフィクションという

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    2016年04月30日
  • 闇の奥

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    ネタバレ

    いろいろな解釈を取れる作品は
    どうしても評価が明確に分かれてしまいます。
    それは、この作品のラストです。

    この作品の鍵の人物となるクルツは
    結局のところ熱病(?)で命を落とすことと
    なってしまいます。

    そしてその後に、婚約者にあうこととなるのですが…
    これ、すべてを打ち明けられないでしょ。
    もしもそれを打ち明ければマーロウにも
    危険が及んだかもしれませんしね。

    どこか見えぬ霧が漂っていたり
    黒いものがあったりする感覚が
    気持ち悪くもありました。

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    2015年12月31日
  • 越境

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    は!コーマックマッカーシーの「越境」をだいぶ前に読み終わったのに読んだを書いていない。さらに前に読んだ「すべての美しい馬」も。読書中にかなり消耗したし読後は気持ちが昂っているから寝かそうとしているうちに時間が経っちゃった。でも今でもあんまり書けないな。好きな作家なんだな

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    2025年08月10日
  • エンジェルメイカー

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    楽しかったです。離れがたかった。

    実は300頁辺りまでのれなかった。
    楽しげだけれどなかなか集中できなくて。
    (二段組に慣れていないのが大きい)
    でも400頁辺りから俄然面白くなってきて
    あとはラストまであっという間。
    みんな愛おしい。悪役さえも。


    いま
    過去をかたることも
    悲しみ泣くことも赦されていない
    残されているのは
    読むことだけ
    ただそれだけ
    ただそれだけが
    なにかを証明できるかもしれない
    そうして今夜も
    読んでいる

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    2015年09月12日
  • 世界が終わってしまったあとの世界で(下)

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    え?っとなる展開が待っていて、じゃあ今まで語られていた世界とぼく、何だったのか、驚かされる。竹宮恵子的世界もあるね、と同じく読み終えた者と語り合う。
    あとは、やはりウッドハウス好きなのね、と。親子でね。

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    2014年06月28日
  • 闇の奥

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    《コンラッド著「闇の奥」を読む》
     (光文社古典新訳文庫で)

     「英語で読む村上春樹」の題材『かえるくん、東京を救う』に登場するコンラッドという作家読んでみたくて選択したのがこの作品。「ロードジム」を読んでみたかったが入手が面倒だったのでこちらの「闇の奥」にした。

     コンラッドは難しいとか堅苦しいとかいうイメージがあって取っ付きにくいと言われているそうだ。しかし私は出だしこそ確かに難しそうな気がしたが、間もなく主人公マーロンの語り口に引き込まれ、一気に読むことができた。これは新しい翻訳のせいかもしれないし、実はコンラッドはとても魅力的な文章を書いているのではないだろうか。

     英文学の古典

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    2014年01月22日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    まさに私が感じたことを、黒原敏行さんが訳者あとがきで簡潔に述べてくれている。⇒バラードの内面描写などはいっさいなく、まるで動物か昆虫の生態を観察するかのように行動を追っていくうちに、殺人、屍姦というおぞましい所業も含めて、これが人間なのだと深く納得させられてしまう。これはそんな恐ろしい、しかし不思議な高揚感と生命肯定感を与えてくれる稀有な小説だ。

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    2013年11月25日