黒原敏行のレビュー一覧

  • ザ・ロード

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    純文学性が高いが一気読みした。ポストアポカリプスものではあるが、SFという感じはしない。
    人間を食べるか食べないかは人として究極の善悪の彼岸だが、善悪というルールは世界の破滅と共に消えてしまった。そんな世界でも人を食べないと誓い、ひたむきに生きる親子はとても美しく、火を運ぶものを名乗ることには神話性も感じる。
    2018.3.22

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    2024年08月09日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    妻と喧嘩した男は、街で風変わりな帽子をかぶった女と出会う。気晴らしにその女と劇場などで過ごして帰宅すると…。

    どうやら私は海外ミステリー沼に足を踏み入れてしまったみたいだ。

    誰も自分のことを信じてくれない。
    自分は幻を見ていたのか?
    面白くてどんどんはまっていく。

    章立てが「死刑施行日の○○日前」となっているので、迫ってくる執行日に男と同じ気持ちで焦る。ネタバレを見ずに読めて良かった。さすが名作。最後まで面白かった。
    訳者さんのおかげで、海外ミステリ初心者の私でも楽しめた。

    「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」
    冒頭の1文。クリスティーとはまた違う魅力

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    2024年07月28日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    すごく好きだった。何回も読めば鮮明に状況を想像できる様になると思う。最後の展開が急転直下で興奮したまま読み終えた。

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    2024年07月16日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    中盤まで事件らしい事件が起こらないが、それでもただ登場人物たちの人間関係を追っているだけでも面白く読み進められてしまうのが不思議。事件が起こってからは怒涛の展開。殺人で霞んだからか盗難事件に対してはちょっと甘い采配?なのが気になるけれど少しは救いがないとしんどいから仕方ないか。

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    2024年07月11日
  • すばらしい新世界

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    1984よりは明るいディストピア
    明るいからと言ってもディストピア
    1930年代に書かれたと言うのは驚き。
    今の世界も実はジワジワとこのすばらしい新世界になっていってるのかも。
    思考を手放したら蟻と同じ。
    蟻の巣のような世界だ。

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    2024年06月23日
  • ステラ・マリス

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    ネタバレ

    正直なところ、『通り過ぎゆく者』はそれほどじゃなかったのだけれど、こちらを読み出したら、俄然面白い。やー、すごい。さすがだ。コーマック・マッカーシーはこんなところへまで到達していたか。しかしやはり『通り過ぎゆく者』あってのこと。あくまで対であり、『通り過ぎゆく者』を先に読んでのことかと思う。そしてこの後もう一度『通り過ぎゆく者』いん立ち帰れば、更に良さそう。

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    2024年05月29日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    映画を先に見てあまりのインパクトに原作も気になりやっとの思いで購入。改訂前の方?全然売ってなかった!

    映画のシュガー訳わからんかったけど原作も訳わからん。普通に話してると思ったら次の行で平然と人殺しててめちゃ怖かった。
    第一章のベルの語りがこの恐怖の全てを物語ってるわ…
    生きてると何が起こるかわからないけど、こういうサイコパスと遭遇せずに一生を終えたすぎる

    ヒッチハイクで出会った女の子とモスの会話だけがこの物語の唯一の癒し

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    2024年05月26日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    1950年代に書かれた人間の根源的、性質的部分を自身の体験をもとに宗教的要素を絡めながら物語として描かれた作品。
    時代背景などを考えながら、なぜ「蠅の王」なのか、自分がもしこの一員だとした、などと考えながら読んでいくとこの物語の恐ろしさを体感、実感できる。

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    2024年05月16日
  • ザ・ロード

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    凄い言葉を生むための物語。

    胸に押し当てたいほど美しいものは全て苦悩に起源を持つ。それは悲しみと灰から生まれる。
    - 63ページ

    かたちを喚び起こせ。ほかになにもないところでは無から儀式を創り出しそれに息を吹きかけよ。
    - 86ページ

    善意が見つけてくれるんだ。いつだってそうだった。これからもそうだよ。
    - 326ページ

    全て凄い言葉。言葉に、“凄さ”を付与するための話。

    「火を運ぶ」という言葉が多義的に解釈されている。解釈に一側面を付け加えるならば、これは“律”だ。そして律は、人間の主観なしには作り得ない。人間が作るものには全てが信仰が含まれる。それは律であっても例外ではない。

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    2024年05月06日
  • エンジェルメイカー

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    大物ギャングを父に持つ機械職人が、からくり仕掛けの本を修理すると、それが世界を破滅させる最終兵器だった…というスチームパンク冒険活劇。
    英国風ユーモア(?)満載の文章だが、読みにくくはない。長いけれどスイスイ読める。
    「こういう効力の最終兵器で世界は破滅するかなあ?」という疑問もあるが、ストーリーは賑やかで楽しめた。

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    2024年05月04日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    追われる男、追う男、その跡をたどる男

    雨と銃と血の匂いのする物語は、ストーリーの矛盾を回避しようともせず、ひたすら“何か”を描き続ける。
    作者は、暴力と流血の中に、この世界と人の絶望を、独特の文章で綴る。

    「できることが何もないなら、そもそもそれは問題ですらない」
    そのことが、また、絶望につながる。

    わかったようでわからないこと……唯一無二のこの読後感は、嫌いではない。

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    2024年04月03日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    子供だけの楽園だと思っていたが・・・最後には・・・。
    最近日本でもイノセンツという映画が公開されていましたが、それと同じで子供って実は残酷なんですよね。
    子供だけではなく本来人間の内にはこういう残酷な1面がみんなにあって、それを理性で抑えてるだけなんですよね。
    第十二章の最後の展開には今までのゆったりとした展開からのギャップが凄く食い入るように読んでしまいました。

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    2024年03月27日
  • 悪の法則

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    おれにわかるのはあんたが自分のした間違いを何とかしようとしている世界はあんたが間違いをしてしまった世界とは別の世界だってことだ。
    あんたは今自分が十字路に立って進むべき道を選ぼうとしていると思っている。でも選ぶことなんてできない。受け入れるしかない。選ぶのはもうとっくの昔にやってるんだから。

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    2024年03月26日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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     無人島に不時着した飛行機、そこで生き残った子供達による生活を描いたものであるが、新訳版ということもあり、非常に読みやすくはあったものの、西洋の文化的な下地などをあまり理解できていなくても考えさせられるのは名作たる所以なのであろう。
     果たしてこの作品の主人公ラルフは何歳の設定で、一体どの程度の人数が不時着し、何日ほど島で過ごしていたのであろうか。これらをあまり絞りすぎていないからこそ想像に頼らざるを得ない。
     そもそも子供たちによる自治について、この作品では失敗に陥っているのであるが、何故にそうなったのかを考察することは、必要不可欠であろう。その要因たるものとして、集団心理より人の残虐性や人

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    2024年03月03日
  • ザ・ロード

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    荒廃した世界をひたすら南に進む父と子の話。
    父として、息子としての考え方や心情態度の変化がおもろい。

    火を運ぶ者たちである。

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    2024年02月16日
  • シャギー・ベイン

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    作者の自伝的小説らしい。作者=シャギーではないにしろ、作者が社会的に成功しているということで、読み切れた気がする。
    子供は親を選べない。どうしようもない母親だが、最後まで見捨てなかった少年。

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    2024年01月19日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    私はこの作品における「ほら貝」は組織や社会といったシステムのメタファーであると考えた。強いカリスマ性を持つものが作り上げた組織ではそのリーダーが強い発言権を持つ。しかし、それはリーダーであるもののカリスマによって成り立っているものであり、民主的な行動(組織全体に発言権を持たせたり平等に接し合うこと)を行うのは有効ではない。また、物語終盤でほら貝が破壊されたのはシステムの崩壊を暗喩している。カオス状態の環境でシステムを維持するのは難しく、これまでのリーダーの行動に異議や不満を抱いていたものがそのシステムを崩壊させる行為はまさしく世界の縮図であると感じた。
    非常に面白く色々と考えさせられる作品だっ

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    2023年12月28日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    小説、久しぶりに読みました。

    購入します、面白かった、また読みたい(あっ、借りた本なので)。
    芥川龍之介作品で1番好きなのは、「白」。

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    2023年12月25日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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     荒野に放置された弾痕の残る車輛と複数の死体、多額の現金と麻薬を見つけたら、そのまま放置して警察に連絡するに限る。現金を持ち帰り、再度現場を訪れるようなことをすると、地の果てまで追われることになる。

     冒頭から物語に引き込まれ、ストーリーや登場人物の行動、セリフに引っ張られ、終盤まで連れていかれる。章立て冒頭の保安官のモノローグの印象が残っているうちに、主人公と追手が繰り広げる逃走劇が脳内に入り込んでくる。ストーリーが脳内に入ってくるのは、著者の作品『ロード』でも同じだ。その文体がそうさせるのだと思う。

     主要な登場人物はすべて戦争経験者だ。オールド・メンの条件が戦争経験のように思うが、ア

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    2023年10月31日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    一言で、血なまぐさい。
    しかし、人間の本性というか、根っこというか、生物の一種としての存在としてというか、そういう部分では、もしかしたらこういう感覚や行為はあるのかもしれない。
    読み進むのに楽ではないところもあるし、この本を読んでいる間はずっと鼻の奥に血の匂いがあるような感じまでしたが、人間とはどんな生き物なのかということをマザマザと見せつけてくるような感じという点では、すごい存在感がある一作。
    読む人は選ぶのかもしれないけれど。

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    2023年10月28日