黒原敏行のレビュー一覧

  • すばらしい新世界

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    ネタバレ

    ディストピア小説に挑戦中で、これはジョージ・オーウェル『1984年』の次、2冊目に選んだもの。

    『1984年』よりも古いのに、西暦2540年を描いているから?今の社会と比べる感覚で読めるのが良かった。コミカルでおもしろくて不気味!

    家族、老い、苦痛、忍耐がない世界。「母親」が卑猥な意味になる世界(なぜなら人は母体ではなく瓶で作られるから。妊娠と出産は卑猥でグロテスクなものとされる)

    「条件づけ」や「睡眠学習」によって管理下で育つ人々は、恋愛や特定の人への執着はせずフリーセックスを楽しむ。新しい清潔なものだけを好む。出自や身分に不満を抱かない。死を重大なことと捉えない。達成感や感動を機械的

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    2026年03月15日
  • ザ・ロード

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    マッカーシーのピュリッツアー賞受賞作。終末の地球を歩く父と子の姿を、悲しみに満ちているが乾いた筆致で描いた。人類は自ら招いた恐怖と絶望を超えられるのかと、少年を通して語りかける。感動作。
    父親と少年が、何もかも燃え尽きた地表を南に向かって歩いている。

    理由は 訳者あとがきから
    舞台はおそらく近未来のアメリカで、核戦争かなにかが原因で世界は破滅している。空は常に分厚い雲に覆われ、太陽は姿を現さず、どんどん寒くなっていく、地表には灰が積もり植物は枯死し、動物の姿を見ることはほとんどない。生き残った人々は飢え、無政府状態の中で凄惨な戦いを続けている。そんな死に満ちた暗澹たる終末世界を、父親と幼い息

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    2026年03月02日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    残酷な事件の裏に漂う哀感。コーマック・マッカーシーの世界を読む。
    「チャイルド・オブ・ゴッド」は初期作品(1973年)だか、映画化によって2013年に邦訳された。

    アメリカ、アパラチア山脈にある貧困部落で、母は男と逃げ、父は自殺した。身寄りがなくなったレスター・バラードが育った小屋を含め周りの土地まで、税金滞納で競売にかけられるところから始まる。

    住処をなくした彼は、破れ小屋を見つけ、孤独な自給自走の生活が始まる。それが7~10歳のころ。

    粗野で粗暴で村人にも馴染まなかったが、車で森に入ってきた若者のカップルを見つけて殺し、それから連続殺人が始まる。

    妹に対する近親相姦から、殺した女を

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    2026年03月05日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    闇のなかに横たわっていると、自分が追放者であることがよくわかる。「なぜならぼくにはいくらか分別があるからだ」

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    2026年02月21日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    少年たちの旅の中で、美しい馬が旅に寄り添い慰め、より美しく輝いている。 全米図書賞。 全米書評家協会賞受賞作。
    コーマック・マッカーシーの世界はグロテスクで残酷だ。が、国境三部作といわれる第一作のこれは、ストーリー性が豊かでエンタメ小説の趣もあり読みやすかった。

    故郷のテキサスからメキシコに不法入国するいきさつや、つねに寄り添っている馬、行動を共にする友人も、少年というより未成年、未成熟な年頃の、精いっぱい運命に向かう姿が痛々しくもありどことなく危うい。
    16歳の少年の(アメリカだからもう充分大人だけれど)青春、成長譚だ。
    コーマックのドライで区切りの少ない独特の筆は、ユニークではあるが読み

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    2026年02月15日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    とても面白かった。
    海外文学は翻訳によっては読みにくいなと感じることもあり読むのを躊躇していたけれど、読みやすかった。

    探せども見つからない幻の女、なぜか誰も見ていない誰も覚えていない。
    もしかして主人公の幻覚?それとも女じゃない?など色々と考えてしまうし、死刑執行までどんどん日にちが迫ってくる緊張感。
    なぜ妻は殺されたのか、犯人は誰なのか…
    そして、幻の女は見つかるのか。
    最後まで展開が気になり読む手が止まらなかった。

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    2026年02月13日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    ネタバレ

    美しい風景描写に救われるが、そこに血の跡を残していくインディアン討伐隊。マッカーシーは汚れつつ生まれたアメリカ開拓期の一面にある歴史を書く。
    ビリーが繰り返す不幸そうな恋愛と、ジョン・グレイディの共演は面白そうですがなんだか気が乗らずおいてあったのですっきりしました。

    そして取り掛かったのが「ブラッド・メリディアン」でこれは読んでおかないと一応マッカーシーの締めにならないと思って。

    あとがきでは「20世紀アメリカ文学屈指の傑作。歴史的現実を尊重するもの」とか。あちこちでこれは傑作だという評があふれています。でもしっかり理解できず多少のもどかしさが残るのです。特に、時を経て判事と少年が再会し

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    2026年02月10日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    妻殺しの罪を着せられた男に死刑執行の時が刻一刻と迫る中、事件当夜のアリバイを証明できる「幻の女」を探すというタイムリミット・サスペンス。最近似たような設定の国内作品を読んだが、本作は冤罪とか法曹の問題とかに焦点を当てるわけではなく、あくまで謎解きを中心に据えた作品なので、余計なことを考えずシンプルに楽しめた。
    今から80年以上前に発表された作品であるにもかかわらず、古臭さをあまり感じずに読めるというのが何気に凄い。文体も特徴的で、格調高さに最初はやや違和感があったんだけど、すぐ慣れて途中からこの作品にはこの文体以外考えられないと思うに至った。真相は言われてみればなるほどといった感じだけど結局読

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    2026年02月06日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    『ナイル殺人事件』でなく、『ナイルに死す』というタイトルがまずカッコイイ。ナイス訳。

    時代が変わっても古びない、人間の心模様とはそうそう変わるものではない。あの2人怪しそうだけど、とは思ったけれど、ポアロのようにはいきません。
    ポアロの紳士な態度も好感度⤴️

    『オリエント急行殺人事件』くらいしか多分読んでいないから、ポアロ、これから機会があったらまた出会ってみたい。

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    2026年01月10日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    さすがアガサクリスティー。やっぱり大好き。
    長編だし登場人物は多いけど、その分丁寧に書かれてる。登場人物にすごく人間味がある。
    面白かった。他にも買ったから読む。

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    2026年01月08日
  • 平原の町

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    コーマック・マッカーシーの「平原の町」を読み終える。
    国境三部作「すべての美しい馬」「越境」そして「平原の町」。
    平原の町では、前に2作では交わることのなかったジョン・クレイディとビリー・バーハムがともに出てきて、読み手としてはとてもうれしくもあったが、その結末は辛いものとなる。
    哲学的でかつ人生の憂いを深く感じさせる小説だった。

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    2026年01月01日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    一文目で一気に引き込まれる。これぞ名書き出しであろう。
    現代の我々が読むと、もちろん粗はある。ただ、それ以上に魅力的。

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    2025年12月17日
  • シャギー・ベイン

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    圧巻の600ページ。1980年代のグラスゴーにて、自己破壊的だが美しく誇り高い母アグネスと、3人の子どもたち、そしてアグネスを良いように扱う男たちを描く。サーチャー政権下の炭鉱閉鎖、失業、貧困、有害な男らしさと女性蔑視、性的指向、アルコール中毒、カトリックとプロテスタントの対立とこれでもかというくらい暗い要素ばかり。機能不全の家庭のアル中の毒親の虐待物語と突き放すこともできるが、そういう要素を否定できないからこそシャギーの母への愛がとにかく美しく悲しいと感じた。2020年のBooker賞受賞作。

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    2025年11月21日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    現代の社会実験として十分に説得力があり、ところどころに挿入される寓話は物語としても強固である。中でも「野蛮人」へとすり替わる描写は我々の先入観を強烈に刺激する。

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    2025年11月12日
  • 蠅の王〔新訳版〕

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    ネタバレ

    乗っていた飛行機が無人島に不時着した少年たち。最初は大人のいない自由な生活を楽しんでいたが、次第に摩擦が生じ、殺し合いに発展していく。
    少年たちは、大人ならこんなことにならなかったのでは?と考えるが、ラストに描かれた巡洋艦がその考えの否定を示唆している。作中では科学や知性の象徴である眼鏡が殺人に使用される。現実でも科学の産物が戦争に使用されている。この島は世界の縮図ではないか。私たちの中には〈獣〉が潜んでいる。それを自覚する必要があるのだ。

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    2025年11月02日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    素晴らしい読書体験、読後の爽快感と満足感に感動を覚えた。タイムリミットが刻々と迫る焦り、結末が気になってページを捲る手がとまらなかった。これが80年以上前に書かれたとは驚嘆に値する。
    テンポの良いストーリー展開、どんでん返し、そして美しい文章から漂う幻想的な雰囲気と3拍子揃った傑作だと感じた。
    次はぜひ、原書にチャレンジしたい。

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    2025年10月13日
  • すべての美しい馬

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    イアン・マキューアンを読んで以来、現代海外文学の面白さに気づき、いろいろ読んでみたくなった。で、コーマック・マッカーシーを手に取ってみた。
    本作はメキシコが舞台の辺境3部作の一冊。

    いや〜面白かった。なんだろう。久しぶりの感覚。起承転結ありの正統派小説。血生臭くてグロくてあまりにも残酷な成長物語。

    馬と暮らしたい、牧場で働きたいとの漠然とした気持ちからグレイディは友達のロリンズと馬に乗り、テキサス州からメキシコへ国境を越えて行く。野宿をし銃で狩った兎をバラして食べ、川の水を飲み行く宛を探しながら旅をする。命の危険と隣合わせの旅。途中で見ず知らずの少年に会う。この少年も銃と立派な馬を持ってい

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    2025年09月30日
  • 八月の光

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    一生忘れられない作品になりました。実験的な作品構造と、思考を強要させられるような表現に驚かされつつ、出来のいい人間ドラマとしても楽しめました。
    現代人が直面するアイデンティティの不在に対する問題意識は、クリスマスの苦悩と重なる部分があると思います。

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    2025年09月30日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    ネタバレ

    小学生の時に映画の『ナイル殺人事件』を見てこのトリックにとても驚いてミステリにはまるきっかけの1つになった。最近また映画を見たけど、少し無理があるのかな~って思ったけど、原作だと少しカバーできていた感じ。殺人事件が半ばまで起きないけど飽きずに読めるのはさすがだな~。

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    2025年09月25日
  • ナイルに死す〔新訳版〕

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    ポアロシリーズ。
    今回の舞台は、ナイル川を遡上する豪華客船。クリスティー作品ではお馴染み(?)の裕福な美女を巡るロマンスを軸に、登場人物たちの不穏な思惑が複雑に絡み合う。

    ミステリー作品なんだけど、中盤までなかなか事件は起きない。それでも著者の卓越した描写力で、普通に人間ドラマの読み物としても面白い。

    本作は何と言っても、ポアロの魅力がふんだんに詰まった作品だと思った。謎を解き明かす観察眼と推理力は言うに及ばずで、一癖も二癖もある登場人物たちとの関わり方、言葉の選び方、思いやりや慈悲深さなど、ポアロの人としての魅力が印象深かった。

    エジプトのナイル川での旅情や、事件発生後の犯人探しは最後

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    2025年09月06日