黒原敏行のレビュー一覧

  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    人生ベスト級
    句読点が少なくセリフに「」がなかったり読みづらくはあるのだが冷徹さと重厚さを備えていて唯一無二のその文章には圧倒される。人にはお薦めしづらい内容ととっつきにくさはあるのだが興味をもった人にはぜひ読んでいただきたい
    読んだあと意外だったのはこの話はSamuel E. Chamberlainの自伝『わが告白』に描かれているグラントン団での出来事を元ネタにしているということだった。名前までそのまんまだ。さらにびっくりなのがあの超人然とした判事までもがモデルがいるという。俺は本書の判事が好きで彼の語っていることは完全に同意せずともそれなりに共鳴するところもあり気に入っている。
    あまり関係

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    2023年10月03日
  • シャギー・ベイン

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    ネタバレ

    世のアルコール依存症に悩む人々に是非読んで欲しい凄い小説。失踪日記(吾妻ひでお)や今夜すべてのバーで(中島らも)に並ぶアル中文学の大傑作。

    主人公シャギー・ベインの母はエリザベス・テイラー似の美人。この女が主人公以上に物語の核なんだが、ちょっとしただらしない性格で、そのだらしなさからアルコールに溺れていき依存症となる。

    アグネスの周囲の人々がまた本人以上にクズみたいなヤツばかりで、浮気性でハラスメント要素をもつ夫シャグをはじめ、アグネスの酒を助長する連中ばかり。

    一度は断酒を決意するアグネス、1年以上も成功した断酒をぶっ潰したのはシャグと同じタクシードライバーのユージーン。多分こいつが作

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    2023年09月26日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    名作。コーエン兄弟のアカデミー賞受賞作『ノーカントリー』の原作。映画をみてから原作を読んだけれど、映画には映画としての良さがあり、小説には小説の良さがある稀有な作品。映画ではシガーの無表情に殺戮を犯して行くシーンや、アメリカの荒野の印象が深く、またモスの妻の妙な可愛らしさが印象的だったけど、小説ではここの保安官のベルのモノローグが印象的。彼のモノローグに漂う世界に対する絶望感が作品に満ちている。こんな酷い世界に生きる意味はあるのか。それでも人は生きているのだけれど、それって何でなんだろうか、、。そんな思いを抱く。

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    2023年09月23日
  • ザ・ロード

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    灰色の世界を生きる父と子の物語。
    作者の「息子に捧げる」という何とも心にズシンとくる計らい。
    父の子を守ろうとする強さと、子の父や(こんな状況でも)他人を思いやる純粋無垢さが、世界の荒廃、人間性の崩壊に対して、どう立ち向かい、導かれていくのか。
    星の光以外見えないような暗闇、静寂の中で読んだこともあり、世界、人間の行く末を、この本から見てしまったのか…?と深慮を巡らす。

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    2023年09月05日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    「幻の女」はおよそ80年前に出版されたミステリー小説だ。しかし今読んでも全く色あせていない。
    冤罪をきせられたスコットの無実を証明するため、アリバイを実証してくれる見知らぬ女性を探す。しかし、バーやレストラン、タクシー、劇場・・・スコットは女性と同伴だったにもかかわらず、誰もがそんな女性は知らないと言う。
    一体誰が嘘をついているのか本当のことを言っているのか。実際にその女性は存在したのか・・・。
    スコットの冤罪を晴らすために親友のロンバートとスコットの恋人キャロルは奔走するが、なかなか決め手に辿り着かない。
    スコットは死刑をまぬがれるのか・・・。
    久しぶりに読み応えのあるミステリーに出会った。

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    2023年08月21日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    終末を迎えつつある世界でなんとしてでも息子を守ろうとする男が、最後まで父親として存在していたのが良かった。信じられるのはお互いだけ、という点が揺るがなかった。だから孤独で危険な旅も続けられたし読者としても安心できた。
    父親のサバイバルスキルが高くて、色んな工夫を読んでいるだけで面白かった。読点がほとんどない、流れるような思考と会話の中に、記憶が混じってくるのも物語に没入できる理由なのかなと思う。
    人が人を食うほど食べ物がない事態で、自分も痩せ細ってしまったのに少年の心は清らかで、他者を殺してまでは生きたくないという意志が強かった。その彼が無惨に殺されるようなことがなく保護者が現れ、いくらか救わ

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    2023年08月18日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    戦争か事故か天災か何かが起こった後の、人類の終末期を生きる父子の物語。
    解説には近未来と書かれているが、未来的な道具立てがほとんどみられなかったので、例えば冷静時代に核のスイッチが押されたとか、そういう状況もありうるのではないかとか思いながら読んでいた。何であったとしても話にはあまり関係ない。
    父子のひたすら南へと進む旅が、とにかく削ぎ落とされた文体によって淡々と表現される。
    最後の父の死以外には起承転結に関わるできごとは起こらないが、ものすごい緊張感の中、まったく飽きずに読み進めることができた。
    わずかに生き残った人間は、もはや人間としては生きていない。人類どころか、動物も植物もだめになって

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    2023年07月02日
  • 平原の町

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    国境3部作完結。
    ようやく読み終えたー。

    馬の主人公ジョングレイディと越境のビルが同じ牧場で働いている設定、というのにまずしびれる。
    ビルにとってジョングレイディは、弟のボイドと重なるところがあって、とても大切にしている。
    ほかの大人たちもジョングレイディを見守っているけれど、そんな時間は長くは続かない。

    1952年、街が大きくなって、馬と牛と共に生きてきたカウボーイが次第に行き場を失っていく時代が舞台。野生動物が追い詰められていく姿を見るようだ。

    ビルが人生を穏やかに閉じられそうでよかった←それは本当にはまだ分からないけれど。

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    2023年06月05日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    コーマック・マッカーシー『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』ハヤカワepi文庫。

    2007年に扶桑社ミステリーとして刊行された『血と暴力の国』を改題、改訂、再文庫化。再文庫化にあたり『No Country For Old Men』という原題の正式なタイトルに戻したようだ。

    4年程前に仕事でタイに向かう飛行機の中で本作が原作の映画『ノーカントリー』を観たところ非常に面白く、無性に読んでみたいと思っていた。

    強烈な印象を残した映画のシーンを頭の中に描きながら読んでみると、老保安官のエド・トム・ベルも、奇妙な武器を操るマッシュルームカットの太目で残忍な殺し屋のアントン・シガーも、ヴェト

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    2023年03月30日
  • すばらしい新世界

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    ネタバレ

    当時こんなことを考える人がいたことは驚きだ
    本気でやっている苦悩をエンターテイメントとして受容されることのなんと耐え難いことか…
    モンドの苦悩が大多数の幸福を支えている歪さがいい意味で気持ち悪かった

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    2023年03月10日
  • 幻の女〔新訳版〕

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    ネタバレ

    間違いなくミステリーの傑作。これまだ読んでなかったんだな。びっくりする作品はだいたい二重構造とか、ひとつのことに二つの意味があって、読み終わったら、なんで気づかなかったんだろうって、ちょっと体調とか、冴えてるときだったら、分かってたのにとか思ったりするけど、これは自分がどんなコンディションでも、解ける気がせず。すごい。うまい。
    冒頭のリリカルな表現はもちろんスタイリッシュでいい感じ。別れるときの女のセリフもちょっとクサイくらいあるけど、なんか好きだな。

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    2023年02月20日
  • 越境

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    ネタバレ

    『すべての美しい馬』とこれと『平原の町』で国境三部作とのこと。
    気になる.

    そして1995年単行本を読んでいる.
    最初に、主人公が夜寝床から起き出して、狼の姿を見守る場面でもう絶対にわたしの好きな物語だと確信したし、読み終わるのがすでにもったいないと思った。

    そして読後、すばらしくて、訳わからなくて打ちのめされる。。。

    主人公は手に入れたいものを追ってアメリカとメキシコの国境を3回越境する。2回は手に入れたいものが手に入らなかった、3回目は手に入れたけどほしいかたちじゃなかった、といった意味の文章がある。
    狼を追っていって戻った後、まだ物語が続いて、なんでだろうと思っていたけれど、読み進

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    2023年02月27日
  • すばらしい新世界

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    来るかもしれないディストピアを描いた作品。フィクションを通じて、自由主義・資本主義の問題点を伝えている。どんなイデオロギーが妥当か、正直議論が抽象的すぎて、自分にはわからない。けどとにかく、今の社会を生きる人間として、読んでおいてよかった!

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    2022年11月29日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    芥川龍之介が書いた作品と伝記的エピソードをコラージュし、この世という地獄を彷徨う作家の姿を描いた〈芥川版ドグラ・マグラ〉のような幻想怪奇小説。


    日本在住のイギリス人作家が英訳された芥川作品を使って書いた小説の邦訳、というひねった成り立ちで、発売当時から気になっていた一冊。とにかく黒原敏行の訳文が格好良すぎる! この小説は芥川をそのまま引用してるところも多いけど、だからこそ芥川とピースの文体をつなぐ役割を見事に果たしている訳文に痺れずにいられない。
    そしてやはり語りの声こそ、この小説の肝だ。芥川の文章を切り貼りしたコラージュが、いつのまにか呪詛のような、読経のようなグルーヴを持つピースの声に

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    2022年06月20日
  • キル・リスト 下

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    ジワジワと追いつめていく追跡者。迫力。
    エピローグの、追跡者のその後の、ソマリアへは決して行かなかった。がいい。

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    2022年06月18日
  • 黒い天使

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    ネタバレ

    泣けた。静かに泣けた。夜の切なさに包まれたかのようだ。やはりウールリッチはすごい。

    『喪服のランデヴー』に代表される連作短編集のように物語を紡ぎだすウールリッチのスタイルは健在。今回は夫の冤罪を晴らすべく浮気相手の4人の男と妻アルバータの物語として描かれる。
    1人目はミアに魂を抜かれた元夫で人生のどん底の貧民街で暮らす男の話。
    次はミアを麻薬の運び屋に使っていた違法医師の話でスリラータッチのこの話がもっともぞくぞくした。
    3人目の男は資産家の遊び人だがとても魅力的な男との話。
    そして最後の男はナイトクラブを経営する裏稼業に足を突っ込んだ男の話。

    最初の2人目まではおろおろしながらも勇気を振

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    2022年03月15日
  • すばらしい新世界

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    登場人物の台詞に時折ぐさっとくることがあるはず。そのくらい現代にも示唆的な小説だった。
    シェイクスピアの引用も面白い。そして切ない。

    作者は1946年のあとがきで、われわれが権力を分散し、応用科学を人間を手段として使うためではなく、自由な諸個人からなる社会をつくるために利用する道を選ばないとすれば、取りうる選択肢は軍事優先主義もしくはそれがエスカレートした世界、もしくはここに書かれたようなユートピアの2つしかないだろうと言っている。偶然にも前者も未だ現実的であることを思い知らされている現状が世界で起きており、考え込んでしまった。

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    2022年03月08日
  • 八月の光

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    フォークナーをこんなに面白く読めたのは初めて。翻訳が素晴らしい。各登場人物のこだわりが凄まじく、おかしくなるほど。執念に近い強い意志で、周囲がなんと思おうと自分の思い通りに行動する。でもその源には、祖先や両親や慣習などの影響力が働いていて、結局のところ、本当に自由には生きられない。シンプルな考えで動くリーナが一番力強くて明るい。

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    2022年02月07日
  • 八月の光

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    錯綜するそれぞれの登場人物の過去と思想。
    それらはまるで繊細な毛糸のような絡み合い、解けてゆく。
    シェイクスピア
    ワインズバーグ、オハイオ

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    2021年11月02日
  • すばらしい新世界

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    文庫版の裏表紙に書かれている本書のあらすじは、下記の通りだ。

    【引用】
    西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、フリーセックスの奨励、快楽薬の配給によって、人類は不満と無縁の安定社会を築いていた。だが、時代の異端児たちと未開社会から来たジョンは、世界に疑問を抱き始め・・・・驚くべき洞察力で描かれた、ディストピア小説の決定版。
    【引用終わり】

    本書の初版の発行は、1932年であり、なんと約90年前のことだ。ディストピアはユートピアの反対語であり、反理想郷とか、暗黒社会とかと訳されるようだ。
    ディストピア小説と表現されているが、この物語に描かれている社会は、ある意味ではユートピア社会だ。

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    2021年08月31日