黒原敏行のレビュー一覧

  • 闇の奥

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    アフリカの奥地に象牙を狩猟するために送り込まれた男を追って「闇」の奥に足を踏み入れる男。
    そこに口を開けていたのは、想像を超える深々とした「闇」だった。
    人間の心の禍々しさに触れる。

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    2020年10月25日
  • キル・リスト 上

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    フォーサイスの作品で、良く登場するイスラムと欧米国家との争い。海外の作品にありがちな長々しい描写は好みが分かれるのでは。テンポという点では弾まない気がするものの、イスラムと欧米キリスト教国家との対立を少なからず、今回の作品からも学べた。

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    2020年04月14日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    乾ききった大地を進み
    汚れに汚れ、殺す、虐殺する
    原住民であろうがなかろうが
    まるで、それが当然の自然の行為であるかのように
    語られるほどの神も法もなく、
    なんの感情も必要以上の情報も加えず描き切る。
    凄惨なはずの津を死も不合理な死も
    あさましい生と同等に当然、自然の存在、行為として
    なにもまじえず描かれる。
    自分たちが倫理の名のもとに飾っている世界が
    乾いた風に吹き飛ばされ、腐敗した肉と乾いた風に
    吹きさらされた骨と皮、朽ち果てるであろう人工物
    その葬列の中を生き延びた先に待つのは悪のダンス

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    2019年12月04日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
    これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
    さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって組合さった結果、芥川の人生がこんな風に「文学と狂気」に染まるのか、と。(もちろん、あくまでこれは「創作」であって「評伝」ではないです。なので彼の人生の中で色々な重要な出来事が描かれてないので、史実とはごっちゃにしないように注意……でも、そうかも?と思わせる魅力がある…凄い)
    英文を翻訳するときに、あえて新規に翻訳するのではなく、元作品の芥川の文章を引き直すことで日本語へと戻していく様もお見事。これによってとても芥川作品味が増して、溺れるように濃厚な芥川ワールドになってました。

    ドッペルゲンゲルに河童に歯車、そしてマリア観音はじめとするキリスト教…と芥川に詳しい人ほどこの作品の細部に散らされた構成の妙に感心すると思います。特に、芥川の作品の「○○もの」とされるアレをああいう風に扱ったのには感心しました。(ホント実際に読んで堪能してほしい……)
    本書には漱石、久米、菊池、茂吉、川端、内田百閒、永見徳太郎等々も登場し、基本的に彼らの動きは随筆等で知られている通りの動きをしてますので(細部には創作がみられますが!)、近代文学ファン的にはそんなところにもゾクゾクする一品でした。

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    2019年08月17日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    ネタバレ

    芥川龍之介の世界観を積み重ねて、
    独自の世界を築くという
    小説でしかなしえない離れ業を成し遂げている。

    最後にあげられた日本文学の英訳の
    列挙をみて、日本人、もっと
    日本文学読もうよ、と思った。

    脇を固める、斎藤茂吉などの作品も
    改めて読み返したいと思った。

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    2019年05月01日
  • エンジェルメイカー

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    ネタバレ

    とても厚い本でした。途中、2つの時間軸で構成される。現代と、イーディの若かりし頃と、話が進む。またイーディがかっこいい。痛快な活躍ぶり。現代でもだけど語りっぷりが面白いのです。命は永遠ではないのはわかってるけど無くなったのはショックでした。
    あとジョーの父親と祖父との関係が泣かせる。影で支えるって美徳だ。自分なんていいことをしたら認めてもらわずには言われないような気がする。マシューは息子として、父親として偉大だった!

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    2019年04月23日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    面白そうと勧められ、なんとなく、これは読んだ方が良さそうだな、と思って購入。

    「蜘蛛の糸」が芥川自身と重なって、下を見下ろすと、自分が関わってきた人々、モチーフ、登場人物の蠢きを知る。
    このままでは、追いつかれてしまうな。
    そう分かって、手を離す時の芥川が、なぜか鮮やかに思い浮かべられて、切なくなる。

    明治天皇の崩御や、関東大震災、夏目漱石や文豪たちとの交流、自殺。
    彼を形作った、様々な出来事。
    「蜘蛛の糸」で見下ろした光景の一つ一つを、芥川の作品とコラージュさせながら、紡いでゆく。

    作者と作品の関係性とは、何か。
    人としての儚い時間を終えた彼だが、もう一度、他者の手によって、作品の中で存在し直す。
    し直す、という言葉が適当かどうかは分からないけれど、誰かによって生み直されたのだから、まあ、そう言っても間違いではないとしよう(笑)

    なかでも。
    河童のトックが芥川に、芥川がトックに重なっていくシーンを、作品として落とし込んだ。
    そんな、いつぞやの空想を現実に生み出してくれたことに、感謝したい。

    さて。
    デイヴィッド・ピースとは実は初めての出会いではなかったようで。
    巻末に『それでも三月は、また』というアンソロジーに寄稿した「惨事のあと、惨事のまえ」が「災禍の後、災禍の前」と変更され、載せられている。

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    2019年04月21日
  • Xと云う患者 龍之介幻想

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    日本在住のイギリス人著者が芥川作品の英訳を多数引用して作品を構成しているわけだが、その部分も含んで日本語に訳す、という単純ならざる訳業。
    「戻し訳」ではなく芥川の文章そのものを使ったことや、当時の表記(エドガア・アラン・ポオ、レエン・コオト、ジョオンズ、洋燈と書いてランプとルビをふるなど)にも細やかに配慮されたこと、更に引用や出典も無理なく収められていることなど、訳者の力量に恐れ入る。文壇の人名や明治から大正の時代の雰囲気もよく盛り込まれ、誰が書いたのか戸惑うほど。
    こうなると半分は訳者の作品だよね。うん。

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    2019年04月16日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    アメリカ西部の歴史はある意味虐殺の歴史。

    荒野の焚き火の中で浮かび上がるような血みどろの判事の神々しさに、畏れを感じると同時に惹かれざるえない。

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    2019年04月15日
  • ブラック・ハンド

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    ネタバレ

    【245冊目】19世紀末から1910年代にかけて、ニューヨーク市を中心に誘拐や爆破で米国を震撼させた「ブラック・ハンド」という犯罪結社と、それと戦うニューヨーク市警のペトロシーノ刑事の話。

    色んな角度から興味深く読んだ。まずは、移民の話。ブラック・ハンドは主にイタリア系移民のならず者たちの集まりで、その餌食になるのもイタリア系移民。それと戦うペトロシーノは、イタリア系初のニューヨーク市警刑事。この頃のアメリカ社会のマジョリティは、イギリス系やオランダ系。そして、警察官や消防士といった下級公務員のマジョリティはアイルランド系であった。そうした社会状況の中、ブラック・ハンドの存在は、元々差別的な扱いを受けていたイタリア系移民の立場をますます追い込んでいった。そして、対峙するペトロシーノも、NYPD内での冷たい視線に抗いながら、刑事としての実績を積んでいく。

    もう1つは、犯罪組織の形態論としての視点。これを学術的に学んだ人には分かるだろうが、おそらくブラック・ハンドはブランドであって、組織の実態を指す言葉ではない。本書の筆者が指摘するとおり、新聞というマスメディアを通じて多くの人がその存在を知り、また、何百人という逮捕者が出ても壊滅しなかったというならなおさらだ。その名やブランドに力があるという意味では、かつての「イスラム国」と似ているし、犯罪者がその名を求めてアドホックに集まるという意味ではピンク・パンサーにも似ている。

     こうした角度から見るとき、本書の物足りなさはその結末にある。すなわち、なぜブラック・ハンドが衰退したか、ということだ。その原因を二度の世界大戦に求めることも可能だろうし、イタリア系移民の統合に求めることも出来るだろう。NYPDの強い取締りがなんらかの構造的な変化をもたらしたのかもしれない。いずれにせよ、本書がペトロシーノの伝記ではなく、「ブラック・ハンド」として出版されるのであれば、退潮の原因まで研究してほしかったところである。

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    2019年03月17日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
    本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を待っていた。最高の職業が最高のやり手を待っていたんだ」でしたが、これを始めとした生と死、善と悪、神と人間といった哲学的な内容にリアリティを持たせるための舞台装置として、先述した残虐なシーンとか、シンプルなストーリー展開とか、読者に緊張感を与える長い文章とかを揃えているんだな、と解釈しました。そう考えると著者の伝えたいことは伝わってきたし、これも一つのオリジナリティだとすれば、好きなタイプの小説ではないけれどまあ悪くもないかな、と思えてきました。
    正直誰にでもお勧めできる作品とは言い難いのですが、現代小説に物足りなさを感じている人、硬派で歯ごたえがあるスルメのような作品を欲する人であれば、かなり楽しめるのではないかと思います。

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    2018年11月25日
  • 八月の光

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    ノーベル文学賞受賞のフォークナーの代表作。アメリカ南部の田舎町ジェファスンを舞台に、外見は白人でありながら黒人の血を引くクリスマスと天真爛漫な生粋の南部娘であるリーナの物語を主軸に(しかし交わらずに)アメリカが抱える澱みを描く。

    本作品を理解するにはそもそもの時代背景を知る必要がある。北東部では新たな跳躍の希望を抱き、対する南部では依然として閉塞感と黒人差別が残り禁酒法下の鬱憤とした時代、相反する感情を伴いアメリカとして自信が揺らぎいいしれぬ怒りが漂う時代。それらを端的なメタファーを用いるでもなくカタルシスを生み出すでもなく、直接的描写をしつつも明確にはせず重奏的に物語を紡ぎ出す。

    正直一度読んだだけでは理解できたとは言い難いが本作が持つ迫力と凄みが伝わってくる。少し時間をおいて再読したいと思う。

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    2018年10月28日
  • 闇の奥

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    "「地獄の黙示録」という映画を見たことがあるだろうか?何度も見ている映画の一つ。より、その深淵を理解するにはこの本を読むべきだという使命感?から購入したもののなかなか読み始められなかった。コンゴ河をさかのぼっていく物語。読み応えのある一冊。モラル、価値、人間そのものを見つめ直す。岩波文庫の翻訳も読んでみたい。
    この本も上記の映画同様、何度も読み返したくなる魅力がある。"

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    2018年10月20日
  • 八月の光

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    訳注も親切で読み易さバツグンの黒原訳にも関わらず、難儀した。読むのに難儀したというよりも、む?どう受け止めよう?と。
    昔読んだのにすっかり忘れていて、こんな話だっけ?というのと、誰の立ち位置に立てばいいんだ?という戸惑いで、終始頭の中がグチャグチャだった。

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    2018年07月09日
  • 闇の奥

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    辺鄙な場所に赴任したら、
    空き家をタダで貸してもらえるとて、
    一人暮らしには広すぎる田舎の一軒家で、
    夜は虫の声を聞いて過ごす羽目になった人が言うには、
    数日も経つと誰もいないはずの奥の部屋が
    ざわめくことに気づいた、とか……。

    もし、放り出されたのが電気も月明りもない、
    真の闇の中だったら、どんな気分になっただろう。
    そこにないはずのものが見えるような錯覚に陥ったり、
    幻聴に怯えたりしなかったろうか。

    これは19世紀末、ヨーロッパ帝国主義時代のアフリカで、
    収奪に邁進した企業の
    有能な社員が呑み込まれた暗黒についての話。

    大変有名な映画(恥ずかしながらこれも未見)の
    原案に採用された小説なので、
    ストーリーは人口に膾炙しているが、
    さて、実際はどんなものかと、
    読みやすくて気に入っている古典新訳文庫版を
    手に取ってみた。

    船員マーロウは気心の知れた仲間たちと共に
    遊覧ヨットに招かれ、一同に思い出を語った。
    マーロウは、かつてベルギーの貿易会社に入って、
    植民地であったコンゴ自由国へ向かい、
    象牙の輸出に活躍する
    クルツという名の責任者の噂を耳にして、
    彼に強い関心を持ったという。
    接触する者を激しく魅了するか、
    または逆に――
    仕事のやり方で意見が対立するためだが――
    ひどい嫌悪感を抱かせるか、
    両極端な反応を引き起こすクルツは、
    得体の知れない深い闇に捕まり、
    その色に染まってしまったらしい。

    作者の経歴を反映したと思しきマーロウの、
    育ちはいいが諸般の事情で荒くれ者に交じって働き、
    時には喧嘩腰で事態を解決していく様が小気味よく、
    彼のキャラクターに惹きつけられて
    グイグイ読み進んでしまった。
    マーロウはクルツが魅入られた深淵の正体を
    恐れながら理解し、
    囚われるも逃げ帰るも判断は紙一重だと考えた様子。
    これは過去の忌まわしき時代の遠い地での物語だが、
    彼らが覗いた闇の奥に潜む魔物は、
    現代の我々の傍らにも蠢いているのかもしれない。

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    2018年01月25日
  • 闇の奥

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    ネタバレ

    本国イギリスの影響が及ばない植民地時代のコンゴにおいて独自の権力を築き上げたクルツという男がいた。マーロウは彼を救出に向かう。クルツは最後に死にかけた状態で物語に現れるのみで、それまでの周囲の人間から彼を噂を聞くのみである。それでもこのクルツという人物の特異性やカリスマをうかがい知ることができるが、それをマーロウの目を通して見ることはできない。文明社会から隔絶された未開のジャングルで独自の地位を築き上げたクルツの人生を間接的に外側から描写する。

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    2017年12月30日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑

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    2017年08月02日
  • アメリカン・ブラッド

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     世界は広い。そう感じさせる作家がまた一人登場。何と、ミステリにのめり込むあまり、高校生時代に習作なのだろうが長編小説を二作ほど書き上げた挙句、大学時代に、シリーズもののミステリを三作も出版させたというのがベン・サンダース。しかも聞いたことも読んだこともないけれど、この人はニュージーランドの作家だ。

     なのに『アメリカン・ブラッド』という、アメリカの小説で世界デビュー。こうして日本でも翻訳されているのだが、作者の生年月日を考えると26歳で書き上げた作品ということになる。驚きの才能としか言いようがない。

     荒削りというのが日本の二十代作家の印象なのだが、世界戦を挑む作家だけあって、むしろ緻密。新鮮で若い感性がもたらす瑞々しい文章を、骨太のストーリーと、大人のキャラクターたちの上に被せてゆくのは並の努力ではなかったろう。

     大人たちと言えども、まともな社会に生きる者たちではなく暗黒街の人々の会話を、若い作家がよくここまでシニカルに描けたものだ。小説で難しいのは登場人物たちの会話だとぼくは常々思うのだが、それがハードボイルドの分野ともなると、描写よりもさらに重要視されるのが、後世にまで伝わるほどに気の利いたセリフ回しやへらず口、と来ている。そうしたセリフによる脚本力のような力も、この青年作家は十分に持っているところが凄い。

     陳腐で型にはまったシーンの累積に陥りがちな若さが、書くという訓練を経て既に出版界に評価されたのだろう、だからこそ作者は本書を書くためにアメリカを訪れ、コーマック・マッカーシーやコーエン兄弟の好きそうなアルバカーキからサンタフェに至る道程を取材したのだろう。

     地平の砂漠と人間の悪意という砂漠の中を、血と心を持った熱血主人公が走り回る展開は魅力的である。殺し屋、やくざども、警察の三つ巴の攻防の中、隠密捜査の果てに証人保護プログラムを与えられている主人公マーシャルがジョーカーとして動き回り、銃撃のシーンを作り上げる。基本的には小気味よいノンストップ・アクションである。

     ワーナーでの映画化も決定しているそうなので、作家よりも映画の方が早歩きしてゆく可能性もある。早買いが好きなマニアの方には垂涎ものの一冊が出たとこっそりお伝えしておきたい。

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    2016年12月31日
  • 闇の奥

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    難解な小説(英文学)として認識していた
    この本ですが、新訳で非常に読みやすく、わかりやすかった
    です。でも一部難解な部分が残っている感じです。
    うまく書くことができないですが、落語にもにた
    一人語りの部分で、物事のたとえが高度になっていて
    その部分がわかりずらい部分を残したのではないかと思います。
    内容的には、聖人であったと思われるやり手の英国紳士が
    アフリカの奥地で暴虐・残忍な略奪を繰り返していく様が、
    植民地支配や人種差別の奥を描き出しているような
    内容です。
    誰にでもある残虐性とそれに対して、人生の最後に
    恐怖を感じてしまう人間性がよく出ていると思います。

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    2016年11月25日
  • エンジェルメイカー

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    時計職人が修理した機械は、世界を破壊しかねない物だった!
    国際的陰謀に巻き込まれた青年の、波乱の冒険物語☆

    時計が専門の機械職人ジョーは、祖父の店をついで地道に暮らしていました。
    父親は、じつは名の知れたギャング。
    ある日ジョーは、何だかわからない機械を修理したことから、謎の男達に追われる羽目に。

    機械を持ち込んだ奇妙な老婦人イーディは、じつは往年のスパイ。
    彼女の回想がやたら濃厚で、インドの藩王や、陰謀をたくらむ秘密組織が入り乱れます。
    ジョーの祖母に当たる美女フランキーも深く絡んできます。

    前半は方向性がわからない状態で細かい描写が繰り広げられ、主人公は危機に陥るばかり。
    後半は俄然テンポがよくなります。
    ジョーが父親のことをやや見直し、封印してきた自分の半面を生かすことに。
    幼馴染の兄妹マーサーとポリーや父の仲間達が、絶体絶命のジョーを助けようと奮闘してくれるのが楽しい。

    作者は高名なスパイ小説作家ル・カレの息子だそう。
    その事実は隠してデビューしたそうです。
    主人公が父親とは別な道を行こうとする気持ちがわかるのかな?(笑)

    ハヤカワ・ポケット・ミステリを日頃から読んでいる人になら、そりゃあ読んでください!とオススメ出来ます。
    楽しそうに書き込んであって、読み応えあり。
    これぞスチーム・パンク?というインパクトも。
    冒険ものの華やかなハリウッド映画が好きな人にも、後半の展開は喜んでもらえそう☆

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    2016年10月21日