入間人間のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
食堂のアルバイトのコックと同棲しているニートの女性。毎日ジョージ・ハリスンの曲を駅前でかき鳴らすが、全く収入のあてがない。高校でモテないグループにいる少年は、同級生の食堂の娘が気になる。ギターの女性の向かいに同棲している男は、万引きの多発する近所の本屋の息子。交わることのないそれぞれの人生が、ネットの掲示板と北本食堂の660円のカツ丼を中心に交差をし始める。
この人の本は実は初めてで、続編シリーズだらけの中から、1冊完結のこちらを選んだが、あら驚き、2/3は仕事をするでもない人たちのなんてことのない日常を描いた作品だ。奔放というか刹那的に動くギターを弾く女性や、刹那的に万引きを重ねる少年など、やるせない何も変わらない日常と、なにか変われるのではないかという希望。
それが、北本の爺さんの章で無理やり束ねられ始め、ライトノベルらしい都合の良い結末へ引っ張られていく。だが、やはり本編はとりとめのないそれぞれの人生が描かれるのが本作の魅力であろう。ある意味、芥川賞的な純文学的な雰囲気も有るが、気取りもてらいもなく、こういう文が書ける人なのだなと感心する。ライトノベル特有の、主語のないちぎれた文は有るものの、ほとんどは主語述語も明らかで、丁寧に書かれていることがわかる。
家出少年少女の章はぼんやりと、北本老人の章はテンポが悪い。それでも十分楽しめる、純文学未経験者の入口としても使える一冊だ。
なお、少し前に読んだものとも重なるのだが、ネットを取り込んだ小説って、ネットにいる人がみんながみんな小さな街に集中しているのは、ご都合主義としてもちょっとないんじゃないのかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表紙から想像できるような恋愛小説ではなく、全てを捨てて殺戮を決意した復讐劇… だと聞いて読み始めた。
最後まで読むとそこが本質ではないことに気づく。
まずこの小説は、我孫子武丸の「殺戮にいたる病」を例に挙げられるような、エゲツない描写のカモフラージュに包まれたどんでん返しミステリーである。5章の最後「俺が食おうと思ってたのに」で主人公へのイメージが一変する。実はプロローグで彼女である東雲陽子を車椅子の男たちに食べられていた「拓也」は、1〜5章のタクヤとは別人だった。
さすがに拓也さん、あんな目にあったとはいえ人格変わりすぎでは、と思っていたが人どころか時代まで違っていたのである。
ネタバレを知った上で読み直すと、この車椅子のタクヤの行動は常軌を逸している。帯の「この物語に同情の余地などない」などという表現ではタクヤには生ぬるく、この世に存在する悪を全て集めたような外道っぷりを最後まで披露してくれる。
食い物の恨みは恐ろしい、その言葉の重みを何倍にも感じられるような作品だった。
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Posted by ブクログ
本編が終了した後の二十歳の時や社会人になり同棲している時、安達や皆の死後のおばあちゃんになった時、死後、3700年後の安達としまむらを描いた短編集。
登場人物の心情が丁寧に掘り下げられて描かれており、時を経て変わってしまうこともあるものの安達としまむらのお互いを思いやる心や愛は変わらないことがヒシヒシと伝わってきた。また、死後の風景は今までの軌跡を思い返すような美しい描写で、幸せな最期を迎えられたと知れたのが嬉しかった。
どこまでも時間の流れに対し無力な人間に対し、全く変わらないものとして、ヤシロの存在があり、3700年経ってもしまむらの願いを叶えているのが象徴的だった。二十歳になった章で「変えられない過去も悪いものじゃない」と思ったしまむらの言葉にもあるように、変わらないヤシロはある意味、何があっても立ち返る最初の場所として、昔の記憶や思いを錨のように留めておき今の感情を相対的に考えさせるための存在なのかと思った。
ファンとしてはとても満足で泣きそうになるくらいだったが、物語自体には特に大きな動きがあるわけじゃないためキャラが好きだから読めた部分はあると思う。死後であったり〇〇年後とか二次創作でよくありそうな話を公式がやるとは思わなかった。 -
Posted by ブクログ
これは...ホントに入間先生ですか!?(^ ^; と言うのが正直な第一印象(^ ^; 「バカが全裸で走ってくる」ような作品を描いていた人とは、とてもとても思えない重厚で息苦しいくらいの作品(^ ^;
まずは時代劇である。太平の世になって久しい、おそらく江戸時代に、敢えて「剣に生きる」ことを選んだ、いや「選ばざるを得なかった」者たちの物語。
永遠のライバルとの命がけの仕合や、「ただ強い者と斬り合いたい」という、剣に魂を奪われたような漢とのやりとり、はたまた仇討ちに取りつかれた女との邂逅... と書くと、司馬遼太郎先生とか池波正太郎先生とかの世界かに見える(^ ^;
が、これを「SF」とカテゴライズしたのは、主人公は「切られて死ぬと、その少し前に戻って人生をやり直す」という業に取りつかれている、という設定による(^ ^; タイムリープというか、タイムループというか...とにかく主人公は「死ねない」(^ ^; 切られると、その仕合をやり直して、勝つまで繰り返すから(^ ^;
おぉ、生き残れたラッキー! ...とはならず、死ぬ度に痛いし苦しいし、生き残った(生き返った?)としても、人を殺めたことにより「追われる身」となって、真っ当な道を歩むことはできない。ある意味あっさり死ぬより、ずっと長く苦しい人生を送らされているという無間地獄(^ ^;
乱暴に言ってしまうと、これと言ったはっきりした筋立てがあるわけではない。ただひたすら斬り合い、仕合以外の時間は逃亡生活を送っている、その事実と心象を「高い粘度で」描き続ける。正直、読んでて疲れる(^ ^;
オチも、はっきりしたハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、ループはこれからも続いていくんだろうなぁ...という(^ ^; とにかく「カツ丼は作れますか」とか聞いてた人が書いたとは思えない(^ ^; 乙一の帯じゃないけど、何なんだこれは、という印象(^ ^;
面白いのかどうかよく分からないが、とにかく読み進んでしまう不思議な一冊。惜しむらくは、所々誤字とか校正の甘さが感じられる。変な当て字を多用してるからか!?(^ ^;