半藤一利のレビュー一覧
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半藤一利の昭和史に関する対談集。
対談なので、話し手お二人のどちらかを知っていれば共感できること、基本的に楽しく会話していらっしゃるので昭和に関する興味関心の入り口になりやすいことなどをまず感じました。
巻末にこの本が編まれた経緯について触れられています。これまで重ねてきた対談から昭和史に関するものを選んで一冊の本にしたんだとか。
「昭和史」というタイトルながら太平洋戦争をめぐる対談がほとんどでしたが、このように単発の対談を集めて一冊の本にしたからでしょう。
その太平洋戦争については、従軍経験のある人、空襲などを体験したことがある人、「戦後」の記憶のある人、研究している人、それ以外の人と、立場によって語る内容とスタンスが違うのは当然なのでしょうけれど、読者にとってはその違いが目立ちます。そして、それがとても面白い(戦争の記憶に「面白い」は不謹慎かもしれませんが、でも面白い)のです。
まず、本対談集のホスト半藤さんは「体験したことがある人」「戦後の記憶のある人」兼「研究している人」。
で、「体験したことがある人」との対談が一番話が弾んでいるように読めます。吉村明さんとの対談が最たるものです。最近読んだ「昭和史の10大事件」にも出てきたドゥーリトルのマフラー問題が決着(?)しています。
それから「戦後の記憶のある人」丸谷才一さんとは、切り取る話で大盛り上がりしています。あんまり楽しそうなので、織田作之助の「世相」読む気になっちゃいました。
ですが体験談は当然感情移入が激しくなります。満州に関する話題の中で自戒していますが、やっぱり大変だったこと、悲惨だったこと、または大変な状況なのに楽しかったこと、あっけらかんとしていたことなど、物語としては面白いものの昭和【史】にはなりにくい。
「研究している人」との対談は、特に「指揮官たちは戦後をどう生きたか」などは読んで粛然とした気持ちになりました。一方で戦術レベルで作戦行動を論っている人もいますが、これは後知恵感が鼻につきます。
あと、敗戦で思想の柱のようなものを失ってしまったことを野坂昭如や辻井喬が語っていますが、これってただの「今どきの若い者は」論だよねえ…。あなたたちが、失ったものに代えて金儲けを柱に据えたんじゃないの?
以下、各対談に一言ずつ。
ふたつの戦場 ミッドウェーと満州 澤地久枝
澤地久枝さんはお名前は存じ上げているけれど著作を拝読したことがないかたの一人。
ミッドウェーの検証をなさっていたのは知りませんでした。
ただ、「通説がおかしいのでは」前提で話が進むので、結果論では何でも言えると感じてしまいます。
満州については経験だけで歴史を語ることを戒めつつも貴重な体験が語られています。満州については、溥儀の名前と日本人が威張っていたこと、敗戦で立場が逆転して酷い目にあったことくらいしか知らない自分にとって、語られている内容すべてが興味深いものでした。
指揮官たちは戦後をどう生きたか 保阪正康
戦いが終わった後の指揮官に焦点が当てられることは稀で、初めて知ることが多く、感心したり、腹を立てたりしながら読みました。真摯さに触れて粛然とさせられる人もいれば、唾棄すべきと感じさせられる人も。それにしても辻政信に投票した人は何を考えているんだろう。
なぜ日本人は山本五十六を忘れないのか 戸髙一成
山本五十六「米との国力の差を認識して開戦に積極的ではない中、乾坤一擲の真珠湾奇襲を成功させた智将」という通り一遍の内容でまったく満足せず、長岡藩士であった出自まで掘り下げた貴重な対談。阿川博之の「山本五十六」を読みたくなりました。
それにしても、さすがの山本長官も自分が美少女化されるとは思っていなかったことでしょう。
天皇と決断 加藤陽子
まもなく退位される今上天皇は行動のほか、お言葉としてもご自身のお考えを示されてきました。昭和天皇についてはもはやかなわないこととはいえ、伝聞ではなく直接お考えをお話しになるのを聞きたかったものです。「昭和天皇独白録」読んでみようか悩みます。そういえば高須クリニックの院長先生が原本を買って寄贈したなんて話もありましたっけ。
栗林忠道と硫黄島 梯久美子
硫黄島での戦いは知識として概略は知っていました。バロン西のエピソードや天皇陛下が上陸した時に靴を脱いだ話を読んだこともありますし、映画「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」も見ました。
でも「硫黄島については、日本軍があそこであんなに頑張ったばかりに、本土に原爆を落とされたと言う人もいるんですよね」と言う話は初めて聞きました。
そんなことを言ってしまう心なさ、またはそんなことを言わざるを得ない境遇を思うと自然に背筋が伸びる想いです。
撤退と組織 野中郁次郎
例えば「失敗の本質」やビジネス書などで同様の話を読みました。ただ、この知識を行動や決断に還元できるかと言われると…自信はありません。
東京の戦争 吉村明
空襲の体験談を語る二人。凄惨な話のはずなのに楽しそうです。悲惨なものであっても思い出は思い出だということなのでしょう。
戦争と艶笑の昭和史 丸谷才一
「阿部定事件」をネタに盛り上がっています。事件の名前を聞いたことはあるのですが…みんなそんなに楽しんだのでしょうか。本の名前がいくつか挙がっていますので、そんなに楽しいのなら読んでみようと思います。それにしても、同じちょん切っちゃった話でも、先日あった弁護士のをちょん切ってトイレで流した事件に比べるとあっけらかんと明るく楽しそうです。
無責任論 野坂昭如
年寄りが「いまどきの若い者は」って嘆いてる話。敗戦直後の「僕らの父親世代」がお粗末だったけど、責任があるのは私たち年寄りではなく、団塊の世代の親御さんの責任って何だよそれ。
でも、野坂昭如が言うとなぜか憎めません。改めてお名前を聞き写真を拝見すると、死んじゃったんだなーとしみじみ思います。
幕末から昭和へ 熱狂の時代に 宮部みゆき
「時代の熱に同調せずに、淡々と穏やかに頑張れるかどうかで、人間は真価を問われる」って宮部みゆきが言ってますがこれ、難しいですよね…。ベクトルが逆に向いている人って一定数いますが、その人たちのベクトルの長さってたいていものすごく長いですよね。どっち向きのベクトルにも巻き込まれちゃいけないって、言うは易し行うは難しの典型では。自分にはできるかな…。
清張さんと昭和史 佐野洋
この対談集で唯一太平洋戦争が関係ない対談。松本清張がそれだけ偉大だったということなのでしょう。
自分にとって松本清張はまさに「点と線」が代表作の推理作家なのですが、もともと「芥川賞作家で時代小説作家」なんですねえ。恥ずかしながら膨大な著作のほんの一部しか読んでいない証拠です。
戦後六十年が問いかけるもの 辻井喬
自分にとっては辻井喬より堤清二として印象に残っている方ですが、亡くなってしまいました。
そんな年寄り二人の「今時の若い者は」対談。ここからの日本がチャンスはあると楽観視できるのか、ダメだと思うのかを、野坂昭如ならともかく、「週刊文春」「文藝春秋」の編集長とセゾングループの総帥が他人事のように好き勝手語られてもなあ、と思ってしまいます。
対談集なんてそんなものなのかもしれませんけれど。
ふたつの戦場 ミッドウェーと満州 澤地久枝
「本の話」2000年3月号・「諸君!」1999年10月号(文藝春秋発行)
指揮官たちは戦後をどう生きたか 保阪正康
「文藝春秋SPECIAL」2008年夏号(文藝春秋発行)
なぜ日本人は山本五十六を忘れないのか 戸髙一成
「新潮45」2011年1月号(新潮社発行)
天皇と決断 加藤陽子
「中央公論」2010年9月号(中央公論新社発行)
栗林忠道と硫黄島 梯久美子
「Fole」2007年4月号(みずほ総合研究所発行)
撤退と組織 野中郁次郎
「Φ(ファイ)」1998年10月号(富士総合研究所[現・みずほ情報総研]発行)
東京の戦争 吉村明
「文藝春秋」2001年10月号(文藝春秋発行)
戦争と艶笑の昭和史 丸谷才一
「オール讀物」2008年6月号(文藝春秋発行)
無責任論 野坂昭如
「Voice」2000年11月(PHP研究所発行)
幕末から昭和へ 熱狂の時代に 宮部みゆき
「オール讀物」2010年2月号(文藝春秋発行)
清張さんと昭和史 佐野洋
「オール讀物」2009年1月号(文藝春秋発行)
戦後六十年が問いかけるもの 辻井喬
「論座」2005年9月号(朝日新聞発行) -
Posted by ブクログ
日本が大戦で負けた理由をその当時の当事者を交えた座談会形式で解き明かしていくもの。
失敗の本質的の様に戦略論ではなく外交や組織という面から見る。
南方侵攻を進める海軍。北への侵攻を進める陸軍。お互いが組織の本質を見極めることなく、お互いをカバーすることなく戦争に突き進む。外交面ではアメリカは戦争に参加することはないだろうと言う考えと、ドイツがソ連を倒してくれるという楽観論と他力本願。そして戦争が泥沼化しても誰も責任を取ろうとしない無責任体質。
戦争は始めるのは容易かもしれないけど、どのように終わらせるかも考えてもらいたい。そもそも戦争はしない方がよいのですが。
戦争をしないためには、戦争を知ることが大切という意見には納得してしまいました。 -
Posted by ブクログ
★★★2019年5月★★★
半藤さんが語る幕末史。ペリー来航から西南戦争まで。筆者も述べているように、どちらかと言えば幕府に同情的な立場で書かれている。確かに、薩長のやった事は無理無体なことも多いし、幕府の肩を持ちたくなる気持ちは分からないではない。
中でも特に評価しているのは勝海舟だろう。
咸臨丸による太平洋横断から、江戸城無血開城、西南戦争に至るまで、常に勝海舟が登場する。
左遷されたり、抜擢されたり、幕府が倒れた後は駿府にこもったり、新政府に出仕したり、勝の身辺はいつも騒がしい。
「日本」を第一に考えながらも、薩長と一戦も辞さないという強い覚悟。胆力。これがあっての勝海舟だろう。
薩長の中では、西郷を高く評価しいているようだ。しかし一方で大久保については、実力は評価するがあまり好きではないようだ。
権力闘争に明け暮れた新政府の重鎮については激しく批判している。
改めてざっとこの作品を見渡して、どの辺に書いてあったか発見できないが、「幕末のある段階で国論は開国で一致していたのに、幕府を倒す必要があったのか」という意味のことを書いてあった。
では、幕府を倒さなければその後歴史はどう動いただろうか。興味深い話だ。 -
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★★★2019年3月レビュー★★★
ロシア・ソ連の歴史に造詣の深い佐藤氏と、昭和史の第一人者半藤氏の対談。昭和史、主にノモンハン事件~太平洋戦争について語り合う。
佐藤氏がソ連に詳しいので、日ソ関係日ロ関係の話題が豊富。特に感銘を受けたのは、ロシア人と日本人の国境線に対する概念の違い。日本人は、国境を「線」として考えるが、ロシア人は違う。国境は「面」である。他国との間に緩衝地帯がないと落ち着かないのだ。そのような国境観の違いが1939年のノモンハン事件につながったといえる。
さらに刺激的だったのが、ソ連の侵攻がもう少し早ければ北海道東部はソ連に占領されていたかもしれないという事。日本が分割されていれば、北海道東部は北朝鮮のような国家になっていたことになる。考えるだけで恐ろしいことだ。
組織の利益を第一に考える、官僚主義は現在の日本にも根付いていると警鐘を鳴らして対談は終わる。
対談者2人も述べているように、昭和史から学ぶことは多いと思う。やはりそのためには本を読まねば。対談で紹介された本を読んでみようかな。 -
Posted by ブクログ
昭和史研究の重鎮4名による討論集。
正直昭和史そのものについてはまだ初学者なので内容をどうのと言える立場ではないが、少なくとも初学者レベルの本でないことは分かる。初学者を一歩抜け出たぐらいの人に一番適しているのではないかと思う。
戦争関連本や昭和史の本は必ず読んでおくべきという認識が、改めて強まった。「歴史は繰り返す」という言葉があるが、戦争の歴史を繰り返さないためには、徹底的に検証・反省して繰り返さないための方策を生み出していかなければならない。特に、戦前に生まれた人たちがどんどん減っていく中で、戦争を直接知らない人たちが同じ過ちを繰り返さないこと。だから、昭和史学習は必須。 -
Posted by ブクログ
歴史から何を学ぶかが重要。そして、歴史は勝った者が作るので、負けた側から見ることも重要。
1.この本を一言で表すと?
・ペリー来航から大久保の死までの歴史を反薩長史観でまとめた本
2.よかった点を3〜5つ
・薩長暴力革命
→維新を美化していない。天皇の尊い意志を推戴して成しとげた大事業であるなどということではまったくない
・尊皇攘夷から尊皇倒幕
・どのような国家をつくるか、統一の機軸はなかった
→ビジョンはなく、攘夷の空気にうまく乗った権力闘争だったということは意外だった
・徳川慶喜
→いざとなるとすぐに逃げ出すクセ、根性の無さは
イメージが全く違っていた。
・昭和史の敗戦直前の状況とよく似ている
・統帥権の独立(p495)
→軍部暴走、太平洋戦争敗戦の布石がこの時にできていた
・ガス抜きのための台湾出兵
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・勝海舟褒めすぎ
・昭和史と絡めたところが結構あり、昭和史を先に読んでいない人はわからないと思う
3.実践してみようとおもうこと
・日本人が戦争から学ぶ一番大切な点は、「熱狂的になってはならない」ということ
ところで、「攘夷」「攘夷」と言っていますが、では下級武士や浪人たちはいったいどのような理論構成のもとに攘夷を唱えたのか、当然問題になるわけです。
が、正直申しまして、攘夷がきちんとした理論でもって唱えられたことはほとんどなく、ただ熱狂的な空気、情熱が先走っていた、とそう申し上げるしかない。
時の勢いというやつです。
そこがおっかないところで、理路整然たる一つの思想があって皆がそれを学び、信奉し、行動に出るなら話はまだわかるのですが、それがほとんどなく、どんどん動いていく時代の空気が先導し、熱狂が人を人殺しへと走らせ、結果的にテロによって次の時代を強引につくっていく。
テロの恐怖をテコに策士が画策し、良識や理性が沈黙させられてしまうのです。
むしろ思想など後からつくればいいという状況だったのではないでしょうか。
いつの時代でもそうですが、これが一番危機的な状況であると思います。(p149〜150)
4.みんなで議論したいこと
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5.全体の感想・その他
・歴史には様々な視点があり、勝った者が作った歴史だけでなく違う視点でも見る必要があることが理解できた