あらすじ
これがいまを生き抜くための教養だ!
世界史の圧倒的教養を誇るライフネット生命会長・出口治明氏と、『日本のいちばん長い日』などで知られる日本近現代史の歴史探偵・半藤一利氏が初対談。「日本は特別な国という思い込みを捨てろ」「なぜ戦争の歴史から目を背けるのか」「アメリカを通してしか世界を見ないのは危険だ」など、日本人の歴史観を覆す世界の見方を伝授。「世界のなかの日本」の地位を正確に知ることが、いまの時代を生き抜く最低限の教養なのだ。
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Posted by ブクログ
現代史にあまり興味はなかったが、一般教養として手に取ってみた。非常に勉強になったし、現代史を勉強しないといけないと思った。
一つの事象、判断をその小さな視点だけでしか見ないのが今までの日本史だと感じた。世界情勢があっての、日本のある事象であり、判断なのだ。日本国内のある事象を論じるときも、日本史ではなく、世界情勢の中で論じられるべき。
そんな意識を植え付けられた。
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歴史作家の半藤一利氏と立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏の対談である。この二人の対談なのだから内容が濃いのはもちろんだが、改めてこの二人の教養の高さを感じた。
最近は自分が信じたいことが書いてあるものしか読まないという人が増えています。そして日本では中国はこんなにもひどいという本はたくさん出版されています。でも中国には「日本はこんなにひどい国だが中国はこんなにも素晴らしい」という内容の本はほとんど見当たらないようです。中国にとってもはや日本など眼中にないのです。
この二人が共通して危機感を持っているのは日本人の知性の劣化です。OECD諸国の大学進学率の平均は62%で日本は50%で最低レベル。教育予算のgdp比率もOECD諸国で最低です。しかも日本の大学では学生がほとんど勉強していない。
戦後日本が経済大国となったのは、冷戦時代で日本はアメリカにとっての不沈空母であり、アメリカに追いつけというキャッチアップモデルがあり、人口ボーナスなのですから何も考えずひたすらがむしゃらに働けば8%程の経済成長を実現できました。そしてその頃は、あまり考えるより黙って働くことの方が重要でした。多くの人にとって教養は邪魔でしかなかった。だから日本人は勉強することはしないで、ただひたすら長時間働いた。
明治時代の岩倉使節団は、国ができたばかりのときに、政府の半分くらいの大幹部が1年半もかけて出かけているので、ものすごい英断だった。その人たちは、日本がどれだけ遅れてしまったかということをつぶさに学び、「日本は富国強兵」をして西欧諸国と肩を並べる力を身につけなければ日本は植民地化されてしまうという危機感で国を引っ張る。
戦前の日本人は、日本は遅れているという危機感を持って、世界に伍したいい国にしようと思って、一生懸命に勉強した。
今の日本人は、「日本は素晴らしい国で、中国や韓国はひどい国だ」と決めつけながら、自分の意見と合う情報しか獲ようとしない。
若い人でこの2人のように、しっかり勉強している人が増えなければ、日本の将来は危うい。私は65歳の年寄りだが、日本人の一人としてしっかり勉強しなければと思いました。
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歴史上の具体的な事実や明確な数値データを用いて、メディアにはびこる「日本すごいブーム」や、隣国に対する見苦しい誹謗中傷「嫌韓・嫌中」を真っ向から叩っ斬る書。本当に見つめなければならない日本の現状や未来に対する課題、これから日本人がするべきこと等が、分かりやすく記されている。
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稀代の教養人である半藤・出口両氏の対談本。
まず、両氏の尋常ならざる読書量に驚かされる。
そして、自分の不勉強さと無教養を思い知らされる。
主たるテーマは、近現代の日本を、世界史の流れと結びつけて捉えることにある。
両氏の語る内容は、現代(日本)社会の抱える問題点を浮き彫りにする、極めて深いものであるが、それでいて非常に分かりやすい。
とにかく「多く」かつ「深く」読書をしようと思わされた。
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日本人なのでどうしても日本史と言う見方をしてしまいますが、世界の中での日本の歴史と言う視点を持つ事の重要性を学びました。
大きな流れや全体を俯瞰する視点はビジネスでも役立つと思います。
日本人の教養のなさや勉強のしなさは、現役世代としては耳が痛い話ですが、昭和の人たちだって満員の通勤電車の中で新聞とか本とかを読んでいたと思いますので、労働時間の問題だけではないような気がします。
今の時代、スマホからはいくらでも知識や情報が得られると思いますが、それを知性として生活や仕事に生かす事は、本も読まずにスマホに齧り付く人々には、そもそもそんな視点すらないのではと心配になります。
本書でも新書を3、4冊読んだくらいで、と言われていますが、実際にどれだけの人が”それだけの数の”新書を毎月読んでいるのかな?と思えば、本を読むだけマシと言えるのではないでしょうか?
本書でお勧めされている本も読んでみようと思います。
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日清戦争で戦争は儲かると国民に思わせてしまった。
日露戦争の日本はこれ以上戦争を続けられない状態でルーズベルトに仲介を頼んで、日本の国力を考えれば120点の講和条件を得た。
ただ日本政府はメディアや国民に正しい情報を知らせず、勝った勝ったと発表していたので、賠償金が取れないとわかった世論が激昂し政府が攻撃され、さらにその恨みが仲裁をしたアメリカに向き、反米感情が芽生えた。
国民に戦況を正しく伝えなかったのがことの発端だが、そこから海軍軍縮条約からの脱退、国際連盟脱退、ノモンハン事件と進み、太平洋戦争と続く。
このパターンは国家でも企業でも個人でも同じ。傷が浅いうちに引き返せば何とかなるのに、何度か誤った選択を行うと引き返せないところに行ってしまう。
日本は過去と同じ失敗をしないと言い切れるのか、考えさせられる。
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歴史はそれぞれの楽しみ方があっても良いし、どの人物の視点で解釈するのかによっても理解が変わる。浅学非才の身と謙遜しながら、メモ書きも準備せず、半藤一利相手にズケズケと自説を述べる出口治明という構図に新鮮な思いを感じながら。それって出口氏の感想でしょうと苦々しく読みつつも、しかし、それを裏付ける両者の教養の深さに、最後には圧倒されてしまった。勉強になりました。
第二次世界大戦はノモンハン事件から始まったとするアントニー・ビーバーの考え。満州事変から語る天皇陛下。ドイツ軍がポーランドに侵攻したのがスタートだと言う見方。1936年のスペイン内戦から始まったと言う歴史家もある。あるいは第一次世界大戦から続いていたと、30年戦争だと言う考え方もある。多角的な視点、それぞれのスケールや論理。面白い。
著者二人にボコボコに言われる松岡洋右。国際連盟脱退。対比して称賛されるのが小村寿太郎。国民に増税、我慢を強いながら何とか勝利した日露戦争。伊藤博文は初めからアメリカの仲介で戦争を終わらせることを考えて金子堅太郎をセオドアルーズベルトとの交渉にあたらせていた。これ以上戦争は続けられない状態の中、何とかポーツマス条約を取り付けたのが小村。しかしロシアから賠償金は得られず、国民はこれ以上戦争を続けられない事情も知らされていなかったために反発。3万人規模が集まっての日比谷焼き討ち事件に繋がる。マスの操作は難しい。危機感を煽るか、嘘を言って士気を高めるか。自虐史観が自尊史観か。会社経営も同じだと。確かにそうだ。戦況の詳細が敵国に伝わる。自国民に詳細を語れぬ場合、どうすべきか。
マウントのためではない真実に近づくための多面的な知識、教養をきちんと身に付けたいと、意欲に繋がる読書となった。
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直前に読んだ「日本国紀」とは異なり、日本の歴史を、まさに世界史の視点で、冷静に捉えている印象を持った。どっちの捉え方が適切なのかも含め、自分で絶えず勉強して教養を積んでいかなければならないと思った。いずれにしても、自分の国の、一見すると日常とは関わりが薄いと思ってしまう安全保障なども含め当事者意識を持って政治に参加していかないとならないと思った。
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出口氏と半藤氏、お二人の知識量と学びの意欲に敬服。彼等よりも若手の世代に向けた、もっと教養をつけろという叱咤に、目を合わせられない。新書を数冊読んで知ったかぶっているのは僕だ。
quarto
当時の陸軍のエリートたちが根拠なき自己過信を持っていた
驕慢なる無知であった
エリート意識と出世欲が横溢していた
偏差値優等生の困った小さな集団が天下を取っていた
底知れず無責任であった
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日本史だけを見るのではなく、世界史の中でその出来事がどうして日本で起きたのかを見なさい。豪華なこのお二人の対談のメッセージです。明治維新の頃、欧米では何が起きていたか(ボーア戦争で英仏は手が離せず、アメリカは南北戦争)。高度経済成長が可能であった条件とは(冷戦、人口ボーナス、軍事費負担なし)。現在の日本の諸問題も、同じように世界の状況の中で考えなければならないだろう。
それにしても、出口さんの博識ぶりにはあらためて驚愕。半藤さんがあとがきで書いておられますが、出口さんは対談中、一切のメモ書きを持たずに、これだけの内容をすらすらと話されたという。ビジネスの世界に身を置きながら、ここまで教養を深められるのか。
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恥ずかしながら歴史に関する知識ゼロの私にとっては、どの話も新鮮で、そしていかに日本が「世界のなかの国のひとつ」であるかを知りました。
不勉強であることは悪じゃないけど罪になるよな。うん。
それと、本の主旨とは違うけど……
歴史修正って単語が囁かれつつあるけど、出口さんがこの本でも仰るようにに、目の前に出された言説に根拠はあるか、それをチェックするように心掛けないといけないのだと、改めて肝に命じた。
「君たちはどう生きるか」にもリンクする話かな。
あと、ポスト真実の話とも絡むことだ。
Posted by ブクログ
対談形式なので読みやすいかな・・・なんて思ってたらとんでもなかった。自分の知識不足を痛感させられるばかりで、読みこなすというにはほど遠いレベルだった…。
この2人のような人を「教養人」「知識人」と呼ぶのだろう。足元には全然及ばないのだが、少しでも近づくべく、もっと勉強しなければ。
Posted by ブクログ
海に囲まれて、独特の歴史を作り上げてきたニッポン。それゆえに日本人は日本史を他の世界と切り離して考えたくなる。それはそれで日本固有の文化、性格を賞賛されることもある。が、その結果、日本はガラパゴス的な発想で世界から置いてけぼりになりがちだ。小さな島に閉じこもらず、グローバルな視点を持とう。まずは世界史の中から日本史を覗いてみよう。というのが本書の趣旨。
語るべき人は半藤一利と出口治明。非学者の中で歴史を語るべき巨頭といえば、この2人。2人は日本人へ日本史を正しく理解せよと訴える。
近代において、日本は植民地化されず、自らの手で近代国家体制へ移行することができた。また、大戦の敗戦後もいち早く復興を遂げた。それは誇るべきことで、すばらしいことだ。が、最近の日本はその優越感に浸りすぎている。日本は決して特殊な国じゃないし、日本人は特に優れた民族でもない。多くの失敗もしたし、世界の中で劣っている部分も多くある。
日本人は司馬遼太郎の「坂の上の雲」で登場するような魅力にあふれた人ばかりじゃない。世界史を勉強することで、新たな日本が見えてくる。
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日本史を考える際には、その当時に世界では何が起こっていて日本にどう影響を与えたかということも考えないと本当の意味での理解はできないという当然といえば当然のことだが、日本の歴史教育では、そこがなおざりにされている。
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好きな2人が対談されてるので、嬉しい。私は日本史は好きだけど、世界史は苦手であまり勉強してないのですが。やはり世界の大きい流れの中で日本も突き動かされてきた訳だから、日本史だけを勉強して完結するのは、まさに木を見て森を見ずと言う事だと理解しました。世界史も勉強します。またこの対談を一切のメモを見ずに話されたという出口さんって本当に凄い。
Posted by ブクログ
『昭和史』『日本のいちばん長い日』で知られる半藤一利氏とライフネット生命代表取締役兼会長の出口治明氏の対談本。ともに歴史に造詣が深い方かつ、流れや補足説明がきちんと盛り込まれているので読みやすい。
2020年の新学習指導要領「歴史総合」にもつながるような「世界史の中の日本史」が描かれている。グローバル化かナショナリズムかが問われる現代だからこそ、世界全体を見渡し、戦後から現代へのつながりを見つめ直す、契機となる一冊。
特に印象的だったのは以下の2点。
・自尊史観(日本は素晴らしいと語ること)は、自虐史観の裏返しで、元を辿れば同根である
・「経線思考」(本来は違うのにイエスと言い続けて現実との乖離がどんどん大きくなると、もはや後戻りができなくなること)によって、日本は戦争に負けた
例)日露戦争で息も絶え絶えになんとか勝利した戦況を、国民の戦意喪失を恐れて正確に伝えなかったために、日比谷焼き討ち事件が起こり、反米感情が生じてしまった
また、理解を深めるためのブックガイドつきでさらに深掘りしたくなる。全ては難しいが、幾つか読んでみたいと思う。
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最近思う、日本のメディアリテラシーの無さに対して、少し回答が得られるような対談。個人的なまとめとしては、もっと多視点から物事見ようぜ!ってこと。多視点を得るには色々な視点を積極的に手に入れないといけない。
では、どうやって手に入れるか?。ヒントとして、日本史と世界史両方から見ていくことが大切という事に気づけた。この時点で少し視点が増えたことになるわけで。
偉大な人生の先輩方から学ぶことが多すぎる一冊。もっと勉強、旅しよう。
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近年よくある、〈日本は、日本人は素晴らしい〉といった本やTV番組に不安感を抱いていた。
日本が特別な国だと思いたい気持ちは理解できるが、冷静にその思い込みを捨てたほうが良いと思う。
自尊史観の危うさを見事に喝破してくれた。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 日本は特別な国という思い込みを捨てろ
第2章 なぜ戦争の歴史から目を背けるのか
第3章 日本が負けた真の理由
第4章 アメリカを通してしか世界を見ない危険性
第5章 世界のなかの日本を知るためのブックガイド
第6章 日本人はいつから教養を失ったのか
<内容>
『昭和史』の半藤一利さんと『全世界史』の出口治明さんの歴史をキーワードとする対談集。二人の意見は一致していて、”無教養”な日本人(それは、現在だけでなく、明治期はOKだが、戦前の指導者も無教養だったと著者たちは言う)が、日本を誤った道へと導きつつある中、世界史を踏まえた日本を学び(それは「本」を読むことに尽きるが)、殊に20世紀の歴史が大事だとする。そういう意味で、高校の歴史の教科書を通常の形でやると、1年間では到底20世紀には到達しない、私たちの教え方(もしくは教科書の配分)に問題があるのだろう。しかし、学校のせいにせず、自ら学ぶ姿勢がここでとても大事になるわけで、このテキストは多くの人に読んでほしい。
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日本国を日本史のみを通して考察するのではなく、世界史>日本史>日本の歴史的事実と捉えるべきというエクスキューズ本。現在の世界における日本の立ち位置を把握するのに、非常に示唆に富んだ一冊だと思います。
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対談を通じて、現在の日本がどうあるべきか、日本人としてどうあるべきか、それに対しての問題意識を共有することができる。
歴史のカバレッジという意味では、特に近代史、特に第二次世界大戦前後の世界、日本を取り巻く史実が中心。
両著者が対談の中で推奨する歴史書籍を紹介しているので、この情報は貴重、保存版。
対談集なのでどうしても歴史を学ぶ、という観点では不十分だと思うのだが、これらの書籍を興味に応じて読んでみるのが良いのだろう。
「世界史としての日本史」という表題の中には、第二次大戦時に日本は世界の潮流を見誤った、という反省と、「日本美化論」が華やかな昨今の日本の状況がそれに類似している、という注意喚起の意味を有している。
以下引用~
・終身雇用とか、系列取引とか、日本企業の伝統と思われているしくみの大半が、実は1940年体制から生まれたもののようですね。1940年体制は、満州での実験から学んだことを、本国でもやろうとしたもののようです。
・「メシ、風呂、寝る」でいい仕事ができると思いますか?
僕(出口氏)の言葉で言えば「人、本、旅」で、たくさんの人に会い、たくさんの本を読み、いろいんなところに行って見聞を広めて、勉強して初めて、「これは使える」「これを試してみよう」と気づくことができ、いい仕事ができるようになるのではないでしょうか。
戦後システムでは、体力の再生産だけで良かったが、これからは知的能力の再生産が必要になってくる。寝る間を惜しんで長時間働いていたら勉強する暇がない、バカンスがなければ勉強する暇がないのです。
Posted by ブクログ
日本史というか日本近代史。対談形式でとても読みやすい。「第2次世界大戦はノモンハン事件からはじまった」など、なるほどと思わされる部分が多い。
最終章の推薦図書が非常に参考になった。これから少しずつ読んでみようかなとおもう。
Posted by ブクログ
今どきのひとは勉強が足りませんよ。もっと広い視点で物事をとらえましょうね、という話が、俺は好きなんだろうなぁ。なんかそういう話を聞く(読む)と、ついほうそうなんですか、と耳を傾けてしまう。
実は再読なんだけどね。ふと手に取って読み始めたら、つるつると最後まで読んでしまった。知識的な部分も面白いし、勉強しようよと誘ってくれるところも気持ちが盛り上がる。
まぁこういう新書ってのは、読みやすさが売りだからね。こういう本で刺激を受けたら、もう少し歯ごたえのあるものに進んでいくのが筋というものなんだろうな。こういう本ばかり読んで、勉強した気になるんじゃなくてね(苦笑)。
Posted by ブクログ
出口氏が日本史を論評する対談本
出口氏は日本の世界史への影響をほぼゼロと評価しているらしいと思ってました。
本著は、この考えを裏付けるものでした。
・昨今メディアに氾濫する日本特殊礼賛番組
→反対。日本は、世界史的にみて平凡、受け身でしかなかった。
・戦時中の日本政府、軍部のシステム的な不備
→軍閥入閣必須も酷いが、ガバナンスが皆無というのが致命的。
(満州国を溥儀で建国したことも、関東軍の独断で低レベルな謀略に過ぎない)
・さらに、出口戦略のないまま、開戦、戦線拡大。
→実は、リットン調査団の報告を受け入れ国際連盟に加盟継続していれば、満州の権益の実質的維持と国際的孤立を免れたはず。
→松岡国連大使のスタンドプレーか。
Posted by ブクログ
日露戦争は、海軍こそバルチック艦隊を全滅させ華々しい勝利を飾っているが、陸戦の方は、息も絶え絶えというのが現実であった。どうにもないぐらいに兵力がなく、兵站もなければ弾薬も決定的に不足していた。圧倒的に兵力が足りない日本は、戦争に勝ってもロシア軍兵士を結局、逃さざるを得なかった。包囲殲滅戦ができないから、生還したロシア兵は再び組織され、攻撃してくる。さらにはハルビンに30万人という大兵力を集結させていた。もし、講和会議がまとまらなかったら、一気に日本を攻めるという準備さえ整えていたのだ。そんな状況の中、小村寿太郎は、泥沼化しそうな戦争を終わらせたうえ、樺太までぶんどってきている。よくぞ戦争を終結させたと褒められてしかるべきなのに、賠償金を取れないとは何事かと非難されている。本当はかろうじて勝っただけという正確な情報を流しておれば、小村を非難する論調は決してなかったはず。連戦連勝だと偏向的な情報ばかりを流す当時の報道が市民を誤った道へと導いてしまった。日本史の中にとじこもっていただけでは、見えなかった視点が世界史を通してクリアーにされている。中ほどには、「日本もかつてはISと同じことをやっていた」といった、そんなトリッキーな章も用意されている。歴史認識の再構築を迫られる一冊。