野中香方子のレビュー一覧
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1972年ローマ・クラブが公表した「成長の限界」、読んでないが「人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」というマルサスの人口論がベースなのは何となく知っている。実際にはピークオイルは技術の発展や新しい油田(例えば海底油田)の発見で可採年数が伸び、一方で緑の革命や灌漑面積の増加、遺伝子組換え作物などの技術も有り食料も増産されてきている。成長の限界を作成するのに関わった物理学者のヨルゲン・ランダースが40年後に再度40年後の世界を予想したのが本書だと思ってもらえば良い。基本的には過去40年の変化を下敷きにして、ある程度のイノベーションを織り込んだ予測になっている。
まず予測の基本となるのは人口動態でここでは人口は約81億で飽和すると見ている。先進国だけではなく発展途上国においても衛生状況の改善による若年死亡率の低下、長寿命化は進んでいて、農村から都市への移住も大きな流れとなっている。農業主体で若年死亡率が高い場合は児童労働が経済的にプラスになり出生率が高くなる。一方で都市で住むのは一人当たりのコストが高くなりがちで、長寿命化し若年死亡率が低下すると教育費の問題も有り少ない子供に高度な教育を受けさせる方が経済的に得になる。日本の少子高齢化は個々人が合理的な行動をとった結果であり、世界がこれから経験する方向でもある。
過去40年間成長の限界は来なかったが今後40年間はと言うと、未来は暗いが暗すぎはしない。避ける方法は有るが人類は総体として問題の先送りを続けるだろうと言うのが著者の基本的なシナリオになっている。過去40年新しい資源を発見してはいるが地球と言うバランスシートの上では資源は消費され続けており、ストックは減り続けている。例えばシェールガス革命は天然ガスの可採年数を大きく伸ばしたが、中東の在来型天然ガスより安く掘り出せるわけではない。大消費地のアメリカが産地になったためアメリカは大きく恩恵を受けたがいずれは無くなる。最も問題なのは今の所は水だろう。著者はエネルギーが豊富に有れば海水の淡水化や新しい灌漑技術など解決方法は有ると見ているようだがコストが上がることは間違いない。
気候変動、いわゆる温暖化は進むだろうというのが一つの予測の基本でおそらく今世紀中には2℃ほど気温が上昇する。気候は100kmほど極地に向かって移動し高緯度地域が今より発展し、砂漠はさらに拡がる。これを防ぐには出来るだけ早く二酸化炭素排出量を減らす取り組みをするべきながらおそらく国際的な合意はできず、痛い目に遭った後でより高いコストをかけて対策をすることになるだろうと予測されている。見過ごせないのが海水の酸性化の影響で一番わかりやすい例としてはカルシウムが水に溶けやすくなり、珊瑚礁が死滅する。これはあまり来てほしくない未来だ。
この本での政治的な決断に関する象徴は「既得権」に有る。民主主義や金融資本主義は短期利益やポピュリズムに流れやすいと言う見立てには賛成で、NIMBY(Not In My Back Yard、日本語で言えば総論賛成の各論反対、「やるのはいいがよそでやってくれ」という素直な感想・・・)が積み重なるとあらゆる所で抵抗勢力という自分の権利(既得権益)を守ろうとする普通の人々が現れる。ここにはもう一つ見えていない世代間闘争が有りNot In My Generationとでも言えば良いのか「やるのはいいが後でやってくれ」と既得権者は本人も気がつかずに言っているに等しい。
乱獲により魚がいない海はニューファンドランド島のタラが有名で、ウナギもほぼ仲間入りしているがまあそういうことだ、原発の放射能廃棄物も同じ様な問題である。
結局はGDPが資源を掘り起こしたときにも成長としてカウントされるのが問題なんだろう。持続可能な成長とは良く言う話なのだが持続可能性と成長の二者択一になったときにどうしますかと言うのが本書の質問なのだと思えば方向はあってるはずで、そんなことは起こりえないと言うのも、ただ祈るのも同様に役には立たない。市場経済で無視されている外部コスト(例えば乱獲、天然資源の浪費、環境の悪化、公害などなど)がいずれ対策が必要になったときに思いもよらぬ高コストにならないように早めに手を打つべきだが、おそらく短期利益を追求する政治体制はその決断をしないだろうと予測されている。天然資源のバランスシートとCF(資源フロー?)計算書が必要なんだろう。
エネルギーに関しては石炭と天然ガス消費が一旦伸びいずれは再生可能エネルギーが主力になると言う見立てだ。風力と太陽光、バイオエタノールが増えるとあるがキーとなるのはスマートグリッドなどの電力網とバッテリーのイノベーションだろう。書いてないけど超伝導送電も必要とされるイノベーションだと思う。食料については牛はあきらめて鶏と養殖魚だが飼料というか水はなかなか解決が難しいように感じる。原発は民衆の反対に会い独裁国家以外は自然に減って行く。
本書には30本以上のいろいろな未来予測が載っておりこれはどれが正しいと言うものではないのだと思う。こういう予測があるでいいのではないか。全般的な予測の方向はおかしくない。
本書の予測でどうしても賛成できないのが1点。民主主義の限界を感じているからか中国共産党の効率性というか長期的な計画性を多分に評価し過ぎている。この本ではアメリカ、中国、OECD先進国、BRISE(比較的大きな新興国)、その他の5地域をそれぞれ予測している。中国の独裁体制は民主主義よりもNIMBYに対して有効と見ているのだろうが中国共産党がいかに優秀であったとしても多分そうそう統制は効かない(見ている限りつぎはぎだらけだ)。また中国のGDPがハイテク産業の雇用と設備投資に支えられて伸びると言うのも楽観的だと思う。すでに都市人口が増えた中国の雇用の受け皿はサービス業に変わってきており雇用の割にGDPは伸びないようになっている。私の個人的な予想では中国は今後も発展し経済規模はアメリカに匹敵するようになるが道のりは平坦にはほど遠いだ。
最後に少しだけ日本がのっていた部分を紹介。この20年間日本の景気は悪化の一途をたどって来ておりGDPは1990年から2010年までの成長率はわずか14%だった。しかし同時期に消費は30%成長した。GDPが低いのは投資率が下がっているからで、一人当たりの消費は33%成長し現在の平均的日本人は1990年に比べてずいぶんと裕福になった。個人の幸福感はGDPではなく一人当たり消費と相関が強いことを思えば悪くない。ただ幸福感は基準値によっても左右されるので、もっと成長をと望めば足りなく感じ、期待値が低ければそこそこ幸せでいられる。投資は将来の消費のためのものなのでいつまで幸せでいられるかはわからないのだが。 -
Posted by ブクログ
情報量は多いが論理的であり読みやすい。予測の根拠や方法論が明確化されており大いに参考となる。過去40年間の実績に基づき、今後40年間の我々の社会の先行きを予測する。「成長の限界」で用いられた方法論にもとづいているが、民主主義社会や自由主義社会の意思決定の特性などを踏まえたアレンジがなされている。予測によれば、今世紀の後半に、地球温暖化によって「崩壊」と呼ばれる事態を招くことになる。2052年までに「崩壊」を経験することはないが、資源枯渇、汚染、気候変動、生態系の損失、不公平といった問題を解決するための投資が必要となるため、先進国では「衰退」を経験することになる。成長はいずれ衰退を招く。著者は、できるだけ早く未来のために大きな投資をする決断をしなくてはならないと繰り返し述べている。一方で、将来への投資は極めて難しい行動であるとの問題意識も繰り返し述べている。
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1冊の本との出会いで、人生が変わるということがもし本当にあるのであれば、この本であってほしいと思い、病気で悩む友人に贈りました。
うつ病、 ADHD、不安、ストレス、依存症。いずれも、脳の神経の機能不全によるが、これらは、運動によって改善しうる。
というのも、運動によって、脳の配線を作り直すことができるからだ。
運動には、
・免疫機能を強化、大幅に改善し、病気や癌に対 する抵抗力を上げる
・海馬の萎縮を予防し、記憶力を向上させる
・神経伝達物質であるドーパミンとノルアドレナリン、セロトニンが増え、日々の生活に活力が出す
・うつや認知症を導く、コルチゾールによる腐食を抑える
効力がある。
やる気が出るから体が動くのではない、体が動くからやる気が出るのだということをわからせてくれる。
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多くの優れた才能がただの金儲けやブルシットジョブに空費されている現代、持てる能力を人類社会そして世界の課題解決のために使えばよいのに、そして実際に倫理的に頑張った人々は歴史上にもいたし今もいるよ。という本。問題提起や実践している人々の紹介は興味深い。ただ、倫理目的の投資の話が多めかも。実際に手足を動かして課題に取り組む人たち(国境なき医師団とか)の話もあったらよかった。資金をだすだけで手を汚さずだと、ちょっと、貴族気味な印象。でも人類未曾有の危機に直面しているらしい今の時代、本書の問題提起は同感だし声高に叫びたい。世の賢い人たち、賢さを本当に大切なことに使ってー!!
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Posted by ブクログ
効率的な生産や貿易、競争による進歩、努力が報われるというモチベーションなど、資本主義社会であるメリットは大きいのはわかる。一方、これが行き過ぎると格差を生み、対立や摩擦を生むのも、今の社会を見ればその通り。さらに、地球温暖化や資源浪費、環境破壊を生み出す原動力にもなっているという。確かに、GDP至上主義・成長絶対主義が、不必要な投資や消費につながっているという指摘はごもっとも。本書の最後で著者は、この状態から脱するために今すぐ可能な幾つかの方法を示している。例えば、CEOの報酬総額と平社員の給与の差を数十倍程度に抑える法案。マックのCEOは社員の平均の3100倍だそう。平社員が3100年働いてやっと社長と同じになるって、やっぱりおかしい。一方、こういうことは政治が決めることであり、大多数の平民が望めば変わりそうなものだが、どの国、町や市でもそうなっていないのはなぜなんだろう。
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人は基本的には善でおり、お互いがコミュニケーションを取り良く理解し合うことが寛容を生み、人に多くのものを与えることで、多くを得られると説く。
綺麗ごとにも聞こえる一方、人種間の対立をはじめとした相手への不信感は、相手への無知や無関心に由来することが多く、お互いを良く知ることが争いをなくすことにつながるという論旨に納得もさせられる。文化の違いはあれど、基本的には生まれながらにして相手を傷つけたいと思う人などほぼいない、という考え方には賛同。
人間同士のあらゆる関係性において関心と寛容が極めて重要。
・人は相手の目を見つめながら殺すことはできない。第二次世界大戦での死者の大半は爆撃など遠隔地からのもの。そう考えると、人の手をほぼ介さず遠隔地から攻撃できるドローンやAI兵器がいかに恐ろしい兵器かを思い知らされる。
・血統書付きのコンサルタントとマネージャーが、自分たちの必要性を高めるために、単純なことをできるだけ複雑にしている。このことがいわゆる「知識経済」の大部分を駆動しているのではないか。 -
Posted by ブクログ
『Humankind』上下巻を通して読んで、最後に強く残ったのは、「人の本性は善か悪か」という根源的な問いである。著者のルトガー・ブレグマンは、歴史や心理学の通説に疑問を投げかけ、人間は本来善であるという立場から議論を展開してきた人物だ。本書でも、スタンフォード監獄実験やミルグラム実験といった、「人間の本性は悪である」ことの根拠としてしばしば語られてきた研究を再検証し、その解釈や広まり方に大きな問題があった可能性を示していく。
この本を読む前の自分なら、「人の本性は悪か」と問われれば、おそらく悪だと答えていたと思う。人類の歴史を振り返れば、争いや戦争の記録があまりにも目立つからだ。人は互いに争い、傷つけ合いながら、それでもようやく平和や秩序を築いてきたのだと思っていた。
しかし、読後にはまったく逆の見方ができるようになった。人間はもともと善良で、協力し合う性質を持った生き物であり、むしろ文明や制度の発達のなかで、その善良さが見えにくくなったり、歪められたりしてきたのではないか。そんなふうに考えるようになった。古くから人間の善良性を唱えていたルソーの問題意識も思い出され、『社会契約論』をもう一度読み返したくなった。
本書が示しているのは、人間は天才的な個として生き延びてきたのではなく、社会性を強みにして生き延びてきた存在だということだ。そして、その社会性の核にあるのが、他者に共感する力なのだと思う。さらに、その善良性は伝播していく。そこにこそ、人間に対する希望があると感じた。
一方で、本書が面白いのは、共感を単純に美しいものとしては描いていない点である。共感はしばしば、自分が関心を持てる相手だけにスポットライトを当て、視野を狭めてしまう。だからこそ、遠い国や見えにくい立場の人々にも想像力を広げ、与えられた情報を鵜呑みにせずに考えることが必要なのだと思った。
ニュースでは、人間の悪の部分ばかりが強く印象づけられることがある。だが本書を読むと、そうした断片だけを見て、人間の本性そのものを決めつけるのは危ういと感じる。少し距離を置いて事実を見つめ直し、それでもなお人間の善良性を信じてみること。その姿勢自体が、この本の大きなメッセージなのではないかと思う。