上野千鶴子のレビュー一覧
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息子介護はブラックホール。解説で上野千鶴子は指摘する。介護、をめぐるシチュエーションは息子介護に限らず、100人いれば100通りのそれがある。しかしそれにしたってブラックホールなのが息子介護なのだ。
理由はなんとなく、感覚としてわかる。それこそ「もう一つの男性学」ではないけれど、日本の男という生き物を考えたときに、そうなるよね、という確かな感覚がある。が、ゆえにこの本に価値があり、意味があると思う。
介護の専門家ではない著者だからこそ、の、単なる事例集でもなく、公約数探しでもなく、みんなにやってくるそのときを、それぞれに考えさせる本。
上野先生、勝手にしなれちゃ困ります、とセットがいいんでないでしょうか。 -
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ネタバレ読後の”気圧され感”がとても強い鼎談録だと思います。
角田美代子、三橋歌織…と東電OL・木嶋佳苗以外で関心の高い人物の話題も多く、特に木嶋佳苗と同時期にニュースになっていた上田美由紀の事件に対する考察は、両者の比較もありとても興味深いものでした。
そして、自分が知らず知らずのうちに男性目線の報道を何の疑問も持たず受容していたことに気づきました。
でもまたしばらくしたら忘れちゃいそうですが。
北原さんのあとがきで、信田さんに壇蜜をどう思うかと訊ねた際の
「私、好き!あの人、女のパロディだから!」
という一言が強力にヒットして電車の中で思わず笑いそうになりました。
その後の「なぜパロディなのか」という話は面白いですし頷けます。
でも「パロディ」とは…言いえて妙です。 -
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最近や介護や市民社会についても発言することの多い上野千鶴子さんと、新進気鋭……もとい若手の社会学者とされる古市憲寿さんの対談。話題は自分の親の将来の面倒を見る覚悟のない古市さんに対して、上野さんが介護保険など社会の仕組みを説明しつつ、古市さんの漠然とした不安に迫り、緩和させる相談に乗っているといったところ。
とにかく、古市さんがカッコつけたり知ったかぶることなく、情けない青年っぷり丸出しで上野さんに教えを乞うているのがいい。このくらい地に下りないと、読者は実感をもって上野さんの教えが染み込んでこないだろうから。
介護保険制度はなかなかによくできた制度で、ある程度、下りていく覚悟を持って将来を見据えて生きていけば、いたずらに不安になる必要はないんではないかな。
ややヨコな話だが、古市さんの育った家は、友達のような親子関係で、食事中にケータイいじるのなんか普通の家なのだとか。自分との世代差も感じたし、こういう家だから親に対する責任の持ち方、距離感に迷うのかなとも思った。 -
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上野千鶴子と古市憲寿の対談集。
基本的には「介護」がテーマなのだが、お互いの専門であるジェンダーや若者論だけでなく、経済、歴史と幅広く議論している。
大学院に入ることを本学のごく一部の先生は「入院」という。この言葉結構広まっているみたい。本書では次のように説明されている。(p.29)
入院……大学院に進学すること。特に文系大学院に進学すると、将来が非常に限定されてしまうため、「入院した」と皮肉られる。一般の病院とは違い、入院したからといって「病気」が治るとは限らず、むしろより病状が悪化する可能性が高い。
団塊世代は親からの援助が得られない人がほとんど。何が何でも歯を食いしばって就職せねばならんという覚悟はあった。スキルがなくても魚をゲットできた時代かもしれないけど、(団塊世代は)親は釣った魚を与えてくれないという予期はあったはず。(p.33)
親が突然死ぬのは珍しい。病気になってジワジワ弱っていく。それに気づかずに(心の準備ができずに)突然親が弱ると驚く。介護するのも大変。その準備のためにも、親と関係を気づくことが大切。「あそこが痛い」と話を聞いているうちに親の介護(どのように死にたいか、老後はどうしたいか、お金はどれくらいあるか)について話をしておくことが大事だと上野はいう。(pp.62-63)
家での食事で各人が違うものを食べたり、一人だけコンビニ弁当を食べたりといった「食卓の崩壊」をセンセーショナルにレポートした岩村暢子『変わる家族 変わる食卓』(勁草書房)が気になる。
最後に考えたいこと。(pp.241-242)
古市:ブラック企業に勤めている人や、非正規雇用ですごい低賃金で働かされている人がいたとします。客観的には不幸なんだけど、本人はその状況に不満を感じていない。その時に「本当はあなたはこんなに不幸なんです」っていうべきなのかどうか。それとも主観的に幸せなら、何の問題もないと放っておけばいいのか。
上野:(略)その余計なおせっかいをフェミニズムはしてきたわね。「あなたは幸せそうな顔をしてるけど、ほんとは不幸だ」っていうことを、たくさんんお女に言ってきたから。そう、やってきましたね。
古市:(略)上野さんの本を読んで不幸になった人も多いと思うんです。たとえば専業主婦とかの人が読んで「こんなことだったの!?」と気づいてしまって、平穏な日常が崩れる、なんてことがあったかもしれない。それはすべきなんですか、しないべきなんですか。
上野:たとえばどんなにつらい現実であっても、まず事実を知ることが必要。それに対処する選択肢が生まれるから。選択肢を示すってことは大事だと思う。(略)選択というのは、知っていて選ぶのと、知らずにそれだけしかなくて選ぶのでは、大きな違いがある。たとえ結果が同じになってもね。
(まっちー)